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102話 不覚

 本を読んだコロネから聞いた話は――あまり宜しくない内容だった。


 綴られていたのはエルフ達が滅亡に向かっていくその様だ。


 セシウスなどの本来この世界にいた神々を邪教扱いしだした人間たちは大神マゼウスという新しい神々を祭りだした。

 そしてエルフや獣人、竜人などの人間以外の種族が殺されていく様子が書いてあったのだ。


 ちなみに、ゲーム上では、この大神マゼウス達は光の神セシウス達に追い払われてる事になっている。

 けれど実際の歴史では、神々は異界の神々に敗れたらしい。


 エルフ達の滅亡は――予想外にはやかった。

 ある日、神託として神々の意志を伝えていた巫女達が突然発狂し、死亡した。

 それが事件のはじまりだった。

 それ以後、エルフに神々から告げられていた神託はおりなくなり、神々の恵みで豊穣の恩恵を受けていたエルフの地は突如、荒廃していった。

 

 そして、セシウスなどの神々を邪教扱いした人間たちが、エルフを邪神の使いとして迫害しはじめたのだ。


 当時神官長になっていたコロネやリュートが対策をするように当時の王であったセズベルクにいろいろ助言をするのだが……彼はその全てを却下し、全て悪い方向へと事を進めてしまった。


 あとは――私があの洞窟で見たような内容である。


 エルフ達は迫害され、殺され、かろうじて残った僅かなエルフ達があそこに隠れ家をつくり立てこもったのだ。

 

 そこにはコロネもリュートもグラッドもレヴィンもいたらしい。

 あとは日記には延々とセズベルクの悪口と、今日も誰が人間に殺されたようだという内容と、人間への恨みが綴ってあり――そこで日記は終わっている。


 リュートやグラッド達の死を綴っていなかった所をみると、リュート達よりはやくこの日記の主は殺されてしまったのだろう。


 コロネがあらかた私たちに読み聞かせてくれ、そこでため息をついた。


 あまり、聞きたい内容ではなかったのだろう。

 

 

「この世界は一体どのような状況なのでしょうか」


 本をとじ、コロネが大きくため息をつく。

 ちなみに私たちはもう城から出ている。

 コロネにちょっかい出してくる帝国領にはあまりいたくなかったし。

 いまは安全な場所で、私の3LDKテントを広げてその室内で休んでいる状態だ。



「神々が滅んだ世界を巻き戻してゲーム化したと思っていたけど……肝心の神様も異界の神に破れてるんだよな?」


 私の問いにコロネが頷く。


「しかし現在使っている私達の魔法には神々は応えてくれています。

 これもシステムなのでしょうか。

 それとも、こちらの世界の神々が、異界の神より世界を取り戻したのが現在の世界……なのでしょうか」


 コロネがトントンと机を叩きながら考え込むが――答えがでたところで正解を教えてくれる人がいるわけでもない。

 何がどうなっているのかわからない状況に私は大きくため息をつくのだった。


 △▲△


「さて、聖水探索隊もリュート達に頼んだし、どうしたものかな」


 私はお風呂で背筋を伸ばしながら考えた。

 あれから数日経過し、リュートに頼んで用意してもらったエルフの部隊をレベルをあげて、聖水をとりにいってもらっている。

 これで定期的に人間領に聖水を配達できるようになるはずだ。


 すでに魔石で育った作物で汚染されてしまっている人たちを癒す事ができるだろう。


 帝国ではしばらくは魔石を使って作物を育てるらしいが徐々に魔石を使わない田畑も開拓していくらしい。


 今日はリリちゃんはゲームをしたあと寝てしまったため、私は一人でのんびりとお風呂につかっていた。

 たまにはいいよね一人風呂も。


 どうもこの世界、コロネの作った身体をきれいにする魔道具が便利すぎて、貴族はお風呂に入る習慣がなくなってしまったらしい。


「やっぱ風呂サイコー」


 私はお湯で顔を洗いながらのんびりする。


 どうも最近いろいろ人間関係が面倒すぎて、引きニート気味だった私にはきっついものがあったし。

 そういえば……宝くじがあたって仕事やめてから完璧ヒキコモリ状態だった。

 最低限出かけることしかしなかったし。

 人間関係マジ面倒くさい。


 お風呂につかりながら考える。

 このあとの行動のことだ。


 人間領の他にプレイヤーに支配されているところを制圧するにせよ、そうするとまた内政をやらないといけなくなってコロネの負担が半端ないわけで。

 何もなかったかのように振舞ってはいるが、風邪を引くほど精神の疲れが半端なかった所にまた、レプリカだの帝国のゴタゴタだのあったからなぁ。

 あまりこれ以上心労をかけたくない。


 なんとなく、引き寄せられて真面目な顔で「頼っていただけないでしょうか?」と言われた時の光景が浮かぶ。


 あの時のコロネは――どこか縋るようで。

 まるで飼い主に置いて行かれる子犬を見ているようだった。


 コロネは何をあんなに不安に感じているのだろう。

 もしかして、記憶は消されたが、コロネが見た過去のトラウマがコロネの中でそのまま残っているのだろうか?

 リュートの死体を抱えているコロネの姿が浮かんで、私は首をふった。


 あんな光景を延々と見せられたら、いくら記憶が消えたとはいえ不安になるのは仕方ないのかもしれない。

 それに、私ももう少しちゃんとコロネに頼りにしている事を伝えるべきだった。

 

 でも難しいな。あまり露骨に褒めるとコロネのことだから察しちゃうだろうし。

 リリちゃんみたいに褒めて終わりじゃないからなぁ。


 にしても……。


 不覚にも引き寄せられた時少しカッコイイと思ってしまったのは内緒である。

 顔は好みなんだよね。顔は。


 私はぶくぶくとタオルで気泡をつくるのだった。


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