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100話 密偵


「コロネ様は一緒ではないのですか!?」


 レベル上げ時。マルクさんとその側近の3名。そしてレヴィンとあと二人のコロネの密偵を連れて行けば開口一番に言ったのはレヴィンだった。

 ちなみにリリも、誰がマルクさんに敵対心があるか探るため心を読む必要があるのでコロネについていった。

 コロネは嫌がったのだがリリが役立つっ!!と張り切ってついていってしまったのだ。

 まぁ、コロネもアルファーもいるし大丈夫だろう。


「何故コロネ様が一緒ではないのでしょう?」


 と、大事な事だったのかレヴィンが二回目を言えば


「避けられたんだろ」


「うん、避けられたな」


 と、他二名のコロネの密偵が速攻突っ込む。


 確か名前はノーヴェとブラン。

 どちらも若い美形のエルフと人間のハーフだ。赤い髪と青い髪の青年で、人間領では姿を人間に変えて活動しているらしい。


「なぜっ!?」


 本気で信じられないという顔のレヴィンに


「お前の愛が重すぎるんだろ」


 と、ノーヴェ。


「愛というかあれは嫌がらせレベル」


 とブラン。


「しかし相手はコロネ様ですよ!?

 エルフの大賢者であるコロネ様をお慕いするのが全生物の義務でしょう!?」


「いや、その発想がもうキモイ」


「どうしてお前は一人ファザコンをこじらせたかな。

 そこまで重度なのはお前くらいだぞ」


 と、ジト目で見る二人。


 ……うん。コロネが一瞬嫌そうな顔をしたのがいまわかったわ。

 そういえばレヴィンって重度のコロネ信者だったもんな。

 私たちと一緒の時はわりと普通の人だったがコロネがいると違うのかもしれない。

 一緒に行動したくなかったのだろう。 

 まぁコロネも人の事言えない気がしなくもないが。

 てか変態化したコロネとほぼ同じような事を言ってるのは気のせいではないはずだ。

 それに、ファザコンってどういう意味だろう?

 まさか密偵全員がコロネの子供でした✩とかいうオチなのだろうか。

 結婚はしてないと聞いたが子供がいないとは聞いていない。

 未婚の子沢山もありえないことではないのだ。


 え、マジで。それはちょっと勘弁してほしい。

 コロネのイメージが変わってしまう。


「ファザコン?」


 私が聞けばマルクさんが柔和な笑を浮かべて


「一時期、孤児院を運営していたのですよ。あの子達は全員孤児だったのをコロネが引き取りました」


 と、答えてくれる。

 ……ああ、なるほど。びっくりした。

 そうだよね、300年も生きてるのだから、孤児の子達がここまで成長しててもなんら問題ないわけで。

 3人のノリがなんとなく友達感覚なのもそのためなのか。


「へぇ、孤児院なんてやっていたんだ」


「ええ、あの子達はハーフエルフや竜人といった一時期忌み子として、差別されてしまった子達ですから。

 誰も引き取り手がいなかったのですよ」


 と、マルクさんが目を細める。


 ハーフエルフが差別って……そういえばイベントのテオドールもそんなような事言ってた気がしなくもない。


 ……にしてもその論理でいくと、マルクさんも差別されていたのだろうか。

 実は以前鑑定したことがあったのだが、マルクさんもハーフエルフなのだ。


 私がチラリと横目で見れば、ナイスミドルなマルクさんがにっこりと微笑む。


「はい。私もコロネに助けられた一人です。

 人間の血の方が濃いため、あまり見分けはつきませんが」


 私の心を読んだかのように答え、マルクさんが遠くを見つめる。

 きっと私の知らないハーフエルフ達の歴史があるのだろう。


 この世界は純朴だと思っていたが、やはりどの世界でも差別や偏見はあるのかもしれない。

 私はこの世界をいい世界だと思い込んでいた事を反省するのだった。


 ▲△▲


「それにしても本物の猫さんに会えるなんて、思ってもみませんでした」


 レベル上げの休憩中。ノーヴェが感激と言わんばかりの表情で言う。


「え?なんで?」


「猫まっしぐら様と言えば、孤児院ではもうヒーローだったんですよ?

 コロネ様が毎週活躍を聞かせてくれましたから。

 子供達はこぞって猫様ごっこしてたくらいですし」


 と、ブラン。

 何でもヒーロー役が私でコロネ(役)を守りつつ魔獣を倒すというヒーローごっこをよくしていたらしい。

 何その羞恥プレイ。マジ恥ずかしいんですけど。

 あんの野郎子供たちに何吹き込んでるんだ。


「コロネ様の言った通り、本当に強いですね。動きが見えません」


 感動した声で言うブラン。


「いや、それはレベル差のせいだろ。同レベルなら3人とも私より強いんじゃないか。

 勝てる気がしないんだけど」


 と、私。特にレヴィンが同レベルだった場合怖い。

 アルファーすら気配に気付かなかったほどだし。

 私は結構殺気を感じて避けてる部分もあるので気配を感じ取れないのは正直つらい。


「猫様、恐らく気配を消した事を心配しているのでしょうが、あれは闘う気がないから出来たことですよ。

 もし戦いになれば、流石に殺気は押し殺せません」


 まるで見透かしたかのようにレヴィンが言う。


「そういうものかな?私も習えばできるのか?」


 と、私が言えば、三人が顔を見合わせる。


 うん。なんだろうこの間。


「猫様はその……感情が読みやすいというか」

「私たちは小さい頃からコロネ様のお役に立つために努力をしていたので、幼い時から修行して身に付けた術ですし」

「これ程何を考えてるのが顔に出やすい人ははじめてですから……」


 慎重に言葉を選びつつ言う三人に、私は察した。


 はい。無理なんですね。わかりました。

 どうせ私は感情が顔にでやすいですよすみません。


 と、私はちょっといじけるのだった。

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