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96話 サーカス

『じゃあリリ 魔素 吸う!!』


 リリがそう言い、私とレヴィンを背後に乗せた状態で空中を飛びながら息を吸い込む。

 木々や田んぼの稲穂が揺れ――(たぶん)魔力の塊が吸い込まれていく。

 既に日も暮れ、周りに人がいないのを確認すると、城下に広がる田園で私達は魔素を食べる作業にとりかかったのだ。


 ちなみに私もリリも、レヴィンがかけてくれた夜も明るく見える魔法で、視界はばっちりだ。


『食べ残しがないように気を付けて』


 私が言うとリリが


『はーい』と元気よく返事を返す。


 結局、私たちが城壁内の魔素溜をすべて処理するのは明け方になっていた。



 △▲△▲△▲△▲△▲


「……もう おなかいっぱい リリ 食べられない……」


 全て終わらせ宿屋の自室に戻った途端――リリはベットにそのまま雪崩込んだ。


「大丈夫か?リリ?」


 私の問いにリリは、


「大丈夫!リリ頑張った!」


 と、えへへーと頭を撫でてと言わんばかりに私の膝の上にダイブしてくる。


「うんうん。リリ偉かったぞ。

 今度何かご褒美あげるからな」


 と、そのままリリの頭をわしゃわしゃしてやると


「ほんと!?

 じゃあ リリ サーカス行ってみたい!」


 と、オメメを輝かせた。

 ああ、サーカスならゲームでも夏休み期間になると、たしか王都で毎年やっていた気がする。

 300年たった今でもどうやらサーカスは続いているらしい。


「サーカスか。よくリリはサーカスあるの知っていたな?」


「うん!サラちゃんと一緒に絵本読んだ!面白そうだった!」


 と、リリ。因みにサラちゃんはグラッドの娘の名前だったはず。

 どうやらグラッドの家で子供たちと遊んでる間に身に付けた知識らしい。


「じゃあ行ってみるリリちゃん?今日の夕方には第6地区のダルズの広場でやるはずだけど?」


 と、レヴィン。パーティーチャットではない会話は基本オカマ言葉だ。

 うん。この人のキャラは今ひとつよくつかめない。

 あの会話以後は妙にフレンドリーなので、そこそこ気に入ってはもらえたのだろう。たぶん。


「うん!行く!楽しみ!」


 リリが身を乗り出して答えた。


「じゃあ、チケット買ってきておくわ♪

 ああ、ついでに変装用の衣装も必要ね。

 その間リリちゃんも猫ちゃんも休んでおいてね。

 ここは私の縄張りだから変なのが紛れ込むこともないと思うし」


「うん!リリちょっと眠くなったから寝ておく!」


「んー♪リリちゃんいい子ね。じゃあ時間になったら起こすからゆっくり寝ておいてね」


 言ってレヴィンがウィンクするのだった。


 


 △▲△▲△▲△▲△▲



『……にしても、他の格好はなかったんですかね……』


 煌びやかな貴族のような格好をして、私は呻いた。髪の毛も金髪に染めている。

 会話はPTチャットだ。

 ちなみにリリちゃんも金髪ロールの可愛いお人形さんみたいな格好だ。

 耳も魔道具で人間のようになっている。


『お二人とも顔立ちがいいですから。下手に庶民の格好をするとかえって浮いてしまいます。

 それくらいで丁度いいと思いますよ?』


 と、サーカスのわりとよく景色の見渡せるいい位置にある豪華な座席に陣取りながらレヴィンが説明する。

 ちなみに……レヴィンもいつのまにか紫の髪が黒髪に変わり、普通に男の格好で執事のような格好になっている。

 何故かオカマのときより体型がスレンダーだ。うん。意味不明。

 女装のがごついってどういうことなの。

 この人の本当の体型はどんな体型なのか謎である。


『えへへーリリ絵本のお姫様みたい!』


 と、リリちゃんは変装にご満悦だった。


『にしても、急だったのに随分いい座席とれたな?』


 と、私が言えばレヴィンはにっこり微笑んで


『ええ、この手のチケットには伝手がありますから』

 

 と、何やら怪しげな笑を浮かべる。


 ……うん。どんな伝手なのか怖いから聞かないでおこうと思う。

 


 △▲△▲△▲△▲△▲



「さぁさぁ、お次は空中剣舞です!!

 光と騎士達の華麗な演舞をおたのしみください!!」


 サーカスの団長の声が響き、魔道具だろうか?薄暗い室内を綺麗な蝶々や小鳥たちが飛び交う中、白銀の鎧の戦士と黄金の鎧の戦士が華麗に宙に浮いた状態で剣技を披露する。

 魔道具という特殊能力があるせいで、下手をすると現代日本で見るサーカスより幻想的で綺麗だったりする。


 うん、魔法の力半端ない。


 リリはサーカス中ずっと興奮しっぱなしで、嬉しそうにはしゃいでいる。

 まぁ、確かに私も楽しいし、来てよかったかななんてぼんやり考えていると――


 戦士達が闘うその間を、白銀に光り輝いたユニコーンが通り過ぎ――光に包まれ、弾ける。


 なかなか幻想的な演出だが……


 何かがおかしい。そのユニコーンが弾けた後に舞い散るキラキラ光る光の甘ったるい臭いに私は眉根をよせた。

『猫様、お気づきになりました?いまユニコーンとともに舞散ったのは催眠作用のある薬です』


 表情一つ変えずに、隣に座っていたレヴィンが言う。


『催眠?何かの演出目的で使ってるのか?』


『いえ、私が仕入れた情報ではここの団長はレオンとかいうプレイヤーと大分懇意にしていたようです。

 しばらく観客は団長の言うことを素直に聞いてしまう状態になると思います。

 このサーカスの客を人質にとって、コロネ様とレオン解放の交渉をするつもりなのでしょう』


『……。なんつーか、恐ろしい事をさらっと言うな。

 もしかして、ここに来たのって……』


『はい。事前に情報をつかんでいましたから、捕まえようと思っていたのですが。

 何分証拠もなく、サーカス自体ものすごく国民に人気がありまして……。

 まだコロネ様も、この時代の民衆の心はつかんでおりませんから。

 下手に手出ししてコロネ様が反感を買ってしまうのを避けたかったので。

 そこで、猫様とリリ様のお力を借りようかと』


『人を利用する気満々だな』


 私が呆れ顔で言うと


『コロネ様のためになるのですから、利害は一致してるのでは?』


 と、にっこにこで答えてくる。

 うん。こいつも腹黒キャラ認定しておこう。リュートに続き腹黒2号。


『っということは魔法少女リンリン✩の出番なのかな!?』


 と、リリが瞳を輝かせながら言う。

 ……うん。前と微妙に名前が違うような気もするのだが、ツッコミ所はそこじゃない。


『リリ、またあれやるつもりなのか!?』


『今やらないでいつやるの!?』


 と、真顔でリリが返してくる。


『照明関係は私にお任せください』


 ニコニコ顔のレヴィン。


『って止めないのかよ!?』


『いいじゃありませんか。悪のサーカス団が美少女の正義の味方に倒される。

 国民にとってセンセーショナルなニュースになるはずです。

 催眠効果は私が無効化しておきますし。

 重要なのは正義側がコロネ様側になるということです。

 むしろコロネ様こそ褒め称えられるべきです』


 と、真顔でレヴィンが告げる。

 ……うん。前から思ってたけど、本当レヴィンってコロネ大好きっ子だよね……。

 まるで変態になったコロネを見ているようで、私は深いため息をつくのだった。


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