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94話 風邪

 マルクさんの話によれば、コロネの病気はエルフ特有の疲れからくる風邪なのだそうだ。

 エルフが人間領土に来るとごく稀にかかる事があるらしい。

 風土の違いからくるものなのか気疲れからくるものなのかは未だわかっていない。

 エルフの医者しか治療できないらしく、エルフ領から医者を連れてこないといけないとのこと。

 

 相談した結果、マルクさんとアルファーとリリの3人で行くことになった。


 マルクさんは医者を連れてくるのに地理がわかっているので必須。

 リリちゃんはマルクさんを背負って瞬間移動で移動するので必須。


 アルファーは、念のために二人の護衛。

 竜型のときに襲われたら苦戦するので護衛も必要だし。



 で、結局私一人残ることになったのだ。

 


 出かけていく3人を見送ってベッドで寝ているコロネの方に視線を戻せば、かなり顔色が青白くなってしまっている。

 ゼェゼェと苦しそうに息を吐いているが……意識はないようで時折、苦しそうにうめいていた。


 たぶん、かなり無理をしていたのだろう。

 レオンの件も気持ちの整理がつく暇もなく、内政に追われ、そこにきて、レプリカ疑惑が確信に変わってしまったのだ。

 精神的ショックもよほどのものだったのかもしれない。


 魔法で部屋の温度を上げつつ、毛布でくるんでやってはいるがそれでも寒いのかコロネの身体は震えていた。

 

 私が布団をかけなおしてやれば、意識が戻ったのか


「………猫様…」


 コロネがそっと目をあける。

 

「ああ、悪い起こしちゃったか?」


 私が言えばコロネは力なく微笑んで


「………いえ。大丈夫です。

 申し訳ありません」


 と目を細めた。それでもその手は震えていて、唇は真っ青だ。妙に痛々しい。

 何かしてあげたいが、結局何もしてあげれない。

 ポーションは効かないらしいし、日本の風邪の知識で動脈を冷やすとかもしては絶対ダメとのこと。

 基本的に身体の構造が同じに見えるし所々似通ってはいるが最終的には全然違うのだ。

 マルクにはひたすら身体を温めるしか手はないと聞いている。

 それでもその手をとれば、寒い所にいるのではないかというくらい冷たくて。


 自分で発熱できないから布団も暖まらないのかな?

 湯たんぽとかがあればいいのにな。

 流石にゲームキャラが風邪を引くということはないのでその手のアイテムは何も持ってないし。

 なんとかコロネをあったかくしてやれないかな?

 寒い所で身体をぽかぽかにするアレンジ魔法は使えたので、自分の身体だけならあったかくできるんだけど。

 

 あ、そうだ。


「コロネ、ちょっと隣いいか?」


「……はい?」


 私がコロネの布団にそのまま潜り込めば、コロネが驚いた顔になる。

 にしても、コロネまじ冷たい。

 布団の中にいるのが嘘じゃないかってくらい冷たい。

 コロネの身体自体が発熱してないから布団も温まらないらしい。

 ぽかぽかになる魔法で自分の身体を発熱して布団をいい感じにあっためてやる。


「……ね、猫様?」


 しどろもどろになるコロネに、


「ほら、もっと身体くっつけて。たぶん自分で発熱できないから温まらないんだろ。

 私が温めてやるから」


「……ですが……」


 すこし顔を赤くしてアワアワするコロネに


「いいから少しは人に甘えとけ」


 言って抱き寄せれば、コロネはこちらの顔をチラリと確認したあと


「………はい」


 と、大人しく私の胸に顔をうずめた。

 今だガチガチと震えてるコロネの背中をさすってやれば気持ちがいいのか、少しウトウトしだす。

 普段のコロネならもっと、猫様と寝るだなんて!とか抵抗しそうなものだが、今は抵抗する力もないくらいつらいっぽい。


 マルクさんに睡眠の魔法をかけていいか聞くべきだったな。

 ぐっすり眠れれば治るかもしれないのに。

 ウトウトしては時々怯えたように身体がびくりと震えるコロネの背中を撫でてやれば、やっと眠れたようで、スヤスヤと寝息がきこえてきた。


 まぁ、あの洞窟の中でのことも話したい事もあるけれど、風邪が良くなるまでは封印したほうがいいな。

 思い出したらまたハイ状態になって行くとかいいかねないし。

 変態になると風邪すら吹き飛ばしそうだ。

 や、吹き飛ばしてくれた方がいいのかも?


 などと考えながら私はコロネの背中をさするのだった。


 リリ達が医者を連れてくるのはそれから5時間程あとだった。


 結局。リリ達が連れてきた医者に見てもらえば、やはり風邪とのこと。

 症状にあわせて薬を処方してくれるとのことで、薬をもらい、ウトウトしているコロネに飲ませ、ベッドで寝かせる。

 睡眠作用のある薬なのでぐっすり眠れるとのこと。

 ただ、帰ってきたリリが、リリもコロネと猫と寝るーとそのままベッドに潜り込み、ぺったりと三人で寝ることになった。

 うん。しかしリリちゃん。

 この場合コロネにくっつくもんじゃないのだろうか。

 いや、まぁ、風邪気味のコロネにリリちゃんの腕枕をしろとは流石に言えないが。

 何故かリリちゃんとコロネの二人に腕枕をして寝る羽目になる。

 うおーなんだ。

 何両手に花(?)状態。いや、片方おっさんだけど!

 これ結構きついんだけど!?


 アルファーに大変ですね。

 と同情されたが、助けてくれる気はないらしく見張りがありますから!と物凄い爽やかな笑顔でマルクさんにくっついてどこかへ行ってしまった。

 逃げたなあいつ。


 結局スヤスヤ寝だしたコロネとリリちゃんを起こすのは可哀想だと変な格好で寝る羽目になるのだった。


 次の日。自由の効かない体勢で寝たため身体が痛む事になるのは言うまでもない。


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