93話 記憶の喪失
「ネコ!おはようっ!!!」
次の日。私たち三人に用意された食堂で私がコーヒーを飲んでいれば元気なリリちゃんが起きてきた。
……うん。昨日あんなに人間嫌いと泣いていたから、もうちょっとブルーになって起きてくるかと思ったのだが……
「リリ、大丈夫なのか?」
私が聞けば
「うん?リリ大丈夫?だよ?」
と、リリちゃんが不思議そうに私を見ながらボスンと席につく。
「ああ、ならよかった」
私がワシャワシャ頭を撫でてあげればリリちゃんは嬉しそうに微笑み
「あ、そういえばネコ」
「うん?なんだ?」
「リリ、昨日何してたんだっけ?」
と、聞いてくるのだった。
▲△▲
「……申し訳ありません。猫様。自分も遺跡で神殿を調べたところまでは覚えているのですが……
その私の子供姿のロボットについては記憶にありません」
言ってコロネが食堂の座席に座りながら、答えた。
私達の前には石化させたコロネ(ショタ)が鎮座している。
コロネにもリリにも見せてみたが二人とも覚えてないとのこと。
結局、何故か二人とも昨日の記憶が一部抜けていたのだ。
リリは昨日一日分の記憶が。
コロネは神殿風の遺跡に入ったところから全部。
結局、昨日の私の記憶をリリを通じて二人に見せることになった。
「……猫様が覚えているのに、私とリリ様だけが忘れている。
そしてリリ様だけが記憶を全部抜かれているということは……神々的にはその情報は触れてはいけないものだったのかもしれません」
「どういうことだ?」
「脳の処理能力の違いかと。人間・エルフ・龍では処理能力が違います。
先ほどリリ様を通じて猫様の記憶をいただきましたが、断片的に景色が見えているだけで、内容までは理解できません。
私もあの光景だけでは、私の憶えている記憶と、本来の記憶が別であると判断できる材料はありませんでした。
つまり、猫様には見えていなかった何かを見ていたのでしょう」
「うん。リリも見たけど人間酷いと思う。サラ達殺したの許さない!!!
でも泣かない!我慢する!」
と、リリちゃん。
「ってことは二人はあれ以上の何かが見えていたのか?」
「はい。おそらくは。
何故猫様だけ記憶が残っているのかが問題です。
猫様はプレイヤーだったため、記憶操作ができなかったか……。
もしくは、猫様が理解した程度の情報なら記憶を消すほどでもないと思ったのか」
言って考え込むコロネ。
「でも神様が私たちに記憶干渉してきたとなると、神様達も出てきてくれてもいいと思うのだけれどな」
「何か理由があって出て来れないのか。
はたまた、私達の記憶を消したのは神ではなくシステムなのか……」
と、私とコロネがうんうん唸りながら考えていると
「所で、ネコ、コロネ。
この子って、ダンジョンから出した状態で石化を解けばリリみたいに意志をもつのかな?」
と、リリちゃんがまた違った爆弾を投下してくる。
「確かに、リリもダンジョンから出た事でシステムから解放されたわけだから……。
この子コロネも、石化を解けば意思をもつのかも?」
「いや、流石にそれは……元々ダンジョン化が適用されていない場所をあとからダンジョンにしたようですし。
リリ様とは違うのではないのでしょうか?」
コロネがムムムムとショタコロネを見つつ言う。
「ええーでもシステムから解放されたら意志とか持つのかな?
ちょっと試してみたいよな」
私もショタコロネを見ながらいえば
「じゃあ石化解いてみる!」
と、リリちゃんが元気いっぱいに言う。
「いえ、流石にそれは……何が起こるかわかりませんし」
「でも気にならないか?
システムが解ければ何か知っているかもしれないぞ?」
「ですが、確信をつくような内容は記憶を消されてしまうのですから、無理をするほどのことでもないでしょう」
「確かに言われてみればそうだけど、一度気になってしまうと気になるっていうか」
「ねね、ネコ、いやな予感する?」
リリに聞かれて私は首を横にふった。
特に嫌な予感はしない。
「ネコ嫌な予感しない!だから大丈夫!」
「それは根拠になっていません。
確かに気にはなりますが……何か起こるかわからない以上、やめておくべきかと」
と、コロネ。
く、意外と融通きかないな。
でもまぁ、ハルト達の呪いの物体の件で失敗した経験もあるし……確かに下手にいじらない方がいいのかもしれない。
「了解、やめとく」
言いつつ、私が子コロネをアイテムボックスにしまえば、隣でみていたコロネの身体がグラリとよろける。
「ちょ、大丈夫か?」
私がささえながら聞けば
「ああ、すみません」
と、手で頭を抑えながら謝るがその顔色はかなり悪い。
「もしかして記憶を抜かれた時に何かされたとか!?」
私が言えば、コロネは首を横にふり
「いえ、昨日から少し風邪気味でしたから。
恐らく風邪だと思います。
少し寝ればよくなりますから」
確かにコロネの言うとおり、昨日から食欲もなく顔色が悪かった気がする。
一時期はっちゃけてたが、あれもハイ状態なだけだったのだろう。
どれどれと、私がコロネの額に手をおけば――
冷たい。物凄く冷たい。
「ちょ!?コロネすごい身体冷たいんですけど!?」
「はい。風邪ですから」
「え!?風邪だよな?熱あるんじゃないのか?」
「ああ、エルフと人間とでは少し違います。
エルフは極端に体温が下がる状態を…………」
コロネが言いかけてそのままがくんと身体が崩れ落ちた。
あわわわと私がコロネを受け止めれば、どうやらそのまま辛そうに身体がガクガクと震えている。
「大丈夫かっ!?」
私が言えば、コロネがガクガクと震えながら、「すみません……」と力なく微笑む。
「エルフ特有の風邪は、急に体温が下がり様態が急に悪化するのも特徴です。
人間の風邪とは違いますから、絶対に身体を冷やすようなことはやめてください」
まるで私たちに説明するかのように、言ったのはマルクさん。
慌てて駆けつけたアルファーと、マルクさんが、アルファーに担がれて、窓から入ってきた。
念話をアルファーにつないだ状態にしてあったので、リリがアルファー達を呼んでくれたらしい。
「コロネだいじょうぶ?」
と、リリがハラハラとコロネの後ろをいったりきたりしているのだった。








