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92話 神々の真意


 映像はあまりにも断片的だった。

 まるで写真を物凄いスピードで次から次へと見せられている。

 そんな感じなのだ。

 ただ、一つ言える事は……本来の歴史のエルフの末路が物凄く悲惨だったということ。

 十字架のようなモノにくくりつけられ、まるで見せしめのように死体が野ざらしにされている光景。

 首をきられた状態で吊るされた光景。


 いちいち全部語るには酷すぎて語りたくない光景が広がっている。


 ゲーム化する前の世界は……今とは比べ物にならないほどの残酷な世界だった。


 今よりずっと歳をとったリュートの首だけを大事そうに抱え込んで、蹲っているコロネの姿。


 子供達や奥さんの死体を前に剣を振り回して怒り狂うグラッドさんの姿。


 今では想像もできないような酷い光景がそこにはあったのだ。

 あまりにもめまぐるしく状況が変わってしまうため、全部は理解できない。


 ただ、わかるのは人間たちにエルフが無残にも虐殺されていく未来。


 そんな光景を通りすぎると――真っ暗な空間にたどり着く。


 そしてそこには――誰かがいた。

 眠るような状態で。


 姿は認識できない。


 それでも確実に誰かがいる。


 それだけはわかった。

 コロネが無意識に手を伸ばそうとし――



 目を覚ましたそれに弾かれた。



 まるで来るなと拒まれるかのように。

 それはコロネを弾いたのだ。


 そこで――私たちは目を覚ました。


 念話で意識を共有していたせいで、ほぼコロネの意志と同調してしまっていたらしい。


 ボロボロと涙が溢れてとまらない状態で……私は意識を元の世界へと戻したのだ。

 リリも悲しいのか泣き崩れ、コロネも呆然と突っ立っている。


 ただ、ショタコロネだけは、ピーピーという機械音を鳴らし


<<マスター認識・攻撃解除・スリープモード移行>>


という、機械音を発し……停止するのだった。



 ▲△▲



「一体何がどうなってるんだ……?」


 私が呆然と停止したショタコロネを見ながら呟けば


「……わかりません。一度魂がまるで吸い込まれるような感覚がありました。

 そのあとは……あまりにも情報量がおおくて理解がおいつきませんでした」


 言ってコロネが口をつぐむ。

 コロネも私たちが一緒に意識を共有していたことは理解しているのだろう、それ以上は何も言わずに俯いた。


「人間酷い。

 人間嫌い。

 だいだいだいだいっ大嫌いっ!!!!」


 子供のせいか、リリはモロに映像の影響を受けてしまったのだろう。えんえんと泣き始めてしまう。

 

「リリ、あれはすごい昔の映像だから、な?

 今の人間がやったわけじゃないから」


 私が言えばリリはいまだにえんえんと泣きながら私にしがみついてくる。


「……やはりあれはオリジナルの記憶でしょうか?」


 コロネが大きくため息をつきながらショタコロネの方を見ながら言う。


「だろうな。それ以外説明がつかない」


「……猫様。

 私はずっとゲーム化前の過去を覚えていると勘違いしていました。

 ……ですが、私が覚えていたと思っていた過去も、改変されています。

 ……一体何がどうなっているのでしょうか……」


 うつむくコロネの顔は……今までにないくらい真っ青だった。


 ▲△▲


 結局。私たちは聖水をもってそのまま帰路についた。

 あれ以上の探索はリリやコロネの様子からしても無理と判断したからだ。

 ショタコロネは……なぜかあれから鑑定ができるようになり、 コロネ・ファンバード・ダミーと表示され、ロボ扱いだった。

 レベルは300。戦った時は物凄く強そうだったのに何故かレベルが低い。

 とりあえず石化が効いたため、そのまま石化してアイテムボックスにしまい込んできた。


「何かあったのでしょうか?」


 すっかり泣きつかれて憔悴してして寝てしまったリリと顔を真っ青にして無口になったコロネを見てアルファーが私にこっそりと聞いてきた。


「うん。そりゃもういろいろ。リリを通して記憶を見せるのはあれだから、ちゃんと後で説明するよ」

 

 言いながら、私はリリを寝室へと連れていく。

 コロネも出迎えてくれたマルクとそれなりに会話を交わし聖水を渡すとそのままヨロヨロと寝室に向かってしまう。

 

 念話を通じて見た私たちよりもコロネの方がダメージがでかいのかもしれない。



 ▲△▲


「なるほど……そういう事が………」


 アルファーが私の説明を聞いて頷いて、そこで会話が止まる。


 私とアルファーの間に流れる沈黙。

 うん、流石に脳筋宣言しただけあってそこから会話を広げるつもりはないらしい。

 つい、コロネのように何か感想を言ってくれるのかと待ち構えてしまったがとくに返事はないようだ。


「うん。そういうことだから、コロネはあの状態だし、アルファーはもうしばらくマルクさんの護衛を頼む。

 天使連れなら他の人もマルクさんの言うことは聞くはずだし」


「はい。わかりました」


 アルファーは真面目な顔で頷くのだった。


 ▲△▲


 にしても……。

 リリが眠るベットで一緒に横になりつつ、私はため息をついた。

 一体全体何がどうなっているのだろう?


 いままでは純粋に神々が、滅んだ世界を哀れんでゲームの身体に元いた人間の記憶を写しこんでそのまま復活させたと思っていた。

 ゲーム化にともない多少歴史を改変したくらいは別に何も不思議じゃない。

 むしろゲーム化に都合よく歴史を改変したのはうなずける事なのだ。


 だが問題は、何故コロネだけには過去のゲーム化前の記憶を残したのだろう。しかも嘘の記憶だ。

 以前アルファーとの会話でもでたが……神々はこうしてゲームにプレイヤーが召喚されることを考慮して全てを進めていたのだとしたら。

 ゲーム化もひとつの通過点にしかすぎず、今現在の状況こそが神々が望んだ状況ということなのか?


 もんもんと考えては見るが……結局結論はでない。

 というか断片的に見た記憶が生々しすぎて吐きそうになる。


 この世界は思っているよりずっと複雑な状況なのかもしれないと、私はため息をつくのだった。


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