目が覚めたら、そこは爆乳でした。
「起きて、・・・」
声が聞こえる。もしかして、私を呼んでいる・・・・?
うるさい、死んだんだからせめて静かに逝かせて欲しい。
いくら可愛い声の女の子に呼ばれたって起きないよ、私は。
いや、まあ可愛い娘が二人並んでいるのだとしたら全然起きるけどね!
「起きて、起きて下さいっ・・・」
もう、本当にうるさい。
・・・ん?何で私死んだのに他の人の声が聞こえるんだろう。
もしかして・・・天使!?
そう思った私はいきなり起き上がって、目を見開いてみる。
本物の天使と会えるなんてそうそうないことだ。
そして、天使は外見も中身もマジきゅーと。
その可愛い天使達のくんずほぐれつは正直いって大好物である。
ぽよん。
ん?なんだろう、目の前が暗い。天使の姿が見えない。
しかも何だかとても柔らかいものに当たっている・・・これは!?
「おっぱい!?」
「きゃっ・・・あ!すみません苦しかったですよね、ごめんなさいっ」
焦りを帯びた声が聞こえ、天使は顔に押し付けていたおっぱいらしきものをどける。
その柔らかいものはやはりおっぱいだったらしい。
こ、ここまでの巨乳はなかなかいないぞ・・・
H・・・Iカップくらいか?
そして、天使さん。そんな見た目をしていたのか。
金髪碧眼で、長い髪をお団子にしている。スタイルもかなりいい。
まるで二次元のキャラクターの様な風貌をしている。
どこかで見たキャラクターにそっくりだ。
隣に可愛い女の子がいなかったことが残念でたまらない。
・・・というかここは何処だ?
おっぱいと可愛い天使につられて思考がおっぱい天使になっていた。
とてつもなく広い部屋。
見たことも無い大きなシャンデリア。
天涯付きのベッド。
この天使?はメイド服を着ているし・・・
私たち人間が小さい頃から教えられてきた“天国”とは明らかに違う。
なるほど。
教えが間違っていただけで、実際の天国はこういう所なのだろう。多分。
私がそう結論づけた所で、天使が再び口を開いた。
「あ、あのう?お嬢様・・・?どうかなさいましたか?」
「ん?」
「いつもと様子がちがうような・・・・」
いつも?さっきここに来たばかりなのに?
おかしい、何かがおかしい。
ここはやはり、天国ではないのだろうか・・・?
そう思い、取りあえずベッドから降りようと手を動かした。
見えたのは、小さい手。
まるで5歳児ほどの、可愛らしい手だ。
・・・この手私の手じゃん。
元々の私の手とは全く違う、ペンだこもない綺麗で可愛いらしい手。
しかし、私の命令した通りに手が動く。
これが、自分の手だと理解するのに時間はかからなかった。
「え、えええええええええ!?」
いきなり大きい声をあげたので、天使?が驚いた顔をしている。
いや、驚いた顔可愛いけど!
今は混乱してて、それどころではない。
「ど、どどどどうなさいました!?どこか痛いんですか!?」
「ね、ねえ、そこの可愛いお嬢さん!!私は誰ですか?」
死んでしまい、天国へいくはずの私が何故こんな所にいるのか。
そして、私は誰なのか。
全く理解できず、つい少し乱暴に聞いてしまっていた。
身を乗り出し、顔を近づけたせいか、天使?の良い香りが鼻孔に届いた。
「へ?何を言ってるんですか・・?お、お嬢さんって・・・」
「いいから!答えて下さい!私の名前は!?」
「え、えっと・・・お嬢様は、シャーロット・グレース・ヒルトン様、
ヒルトン公爵家のご息女にあらせられるお方ですっ」
誰やねん。
私の名前はそんな大層な名前じゃないし、ミドルネームなんてものもついていない。
そしてもちろん、公爵家のご息女でもない。
「・・・ここは、天国?ではないですよね?
そしてお嬢さんも天使ではないですよね・・・?」
戸惑いながら聞いてみる。
正直、脳が正常に働いてくれない。
「て、てんっ!?ちがうに決まってるじゃないですかっ・・・!
私の名前も忘れてしまったのですか・・・?メイドのクララですよっ」
「ですよねー・・・」
天使改めクララさんは、かなり困惑した様子でこちらを見ている。
まあ、私も大分困惑しているのだが。
多分、クララさんは“ドジッ娘”属性なのだろう。
落ち着きが無く、いかにもバナナの皮で転びそうなタイプだ。
まるで「紅カン」のシャーロットみたい。
可愛いなあもう。
そういえば、シャーロットもバナナの皮で転んでいたなあ・・・
ん?シャーロット?
シャーロット・グレース・ヒルトン様!?
さっきは困惑してて気づかなかったけれど、
それって、あの「紅き欠片のカンタービレ」の悪役令嬢じゃない!
私が愛してやまないカップリングの、最高の“受け”の名前じゃない!
同姓同名?いや、ミドルネームまで全く同じなんて滅多に無い。
まさか・・・・
「またまた質問良いですか、私の婚約者って・・・。」
「え!?お嬢様が何故、そのことを!?まだお伝えしていないはずなのに・・・
教えてもいいのかな・・・?」
「答えて下さい、・・・お願いします。」
どうやら私にはまだ伝えてなかったことみたいだった。
・・・しかし私には予想がついている。
私がシャーロットなのだとしたら、婚約者はもちろんー
「えっと、本当は本日、当主様からお伝えする予定だったのですが・・・、
お嬢様の婚約者は、この国の第一王子であらせられる、リチャード様ですっ。」
やはりそうだ。
悪役令嬢シャーロットの婚約者であり愛してやまなかったリチャード王子。
ここまで判断材料が揃ってしまうと、もう認めるしか無い。
私は所謂「転生」したのだ。
私の大好きな「紅き欠片のカンタービレ」のシャーロットに。
畜生!!!
何で私がシャーロットに転生するんだよ!
そうせ転生するなら、主人公とシャーロットの恋愛事情を見守るべく、
お付きのメイドとかになりたかったぜ!!
つまりクララさん!
「紅カン」に出てくるメイドのクララ・アディントン!!!
貴方に成りたかった!
混乱と困惑と混沌につつまれたこの部屋で、
私はそんなことを考えながらしばらくの間、ベッドの上で固まっていた。
百合は人生。