百万回死んだ男
【名前: 柊 一輝】
【レベル: 1】
【年齢: 18】
【職業: 学生】
【スキル: なし】
【体力: 5】
【精神力: 2】
【魔力: 0】
【筋力: 3】
【素早さ: 5】
【デス: 0】
目の前に浮かぶ、ステータスの羅列。この並び――確か、高一のときに神奈とはまっていたネットゲームのステータス画面だ。
だが、最後の行。
【デス】。
この項目には見覚えがない。
それに、なんだ、ここは。
卵のようなものの中に閉じ込められたはずなのに、ずいぶんと広さがある。
暗闇で見えるのはステータスの羅列だけだが、この空間はなんなのだろうか。
ふいに、ぱっと周囲が明るくなった。
突然のことに眩しく感じながらも、周囲を見渡した。
森だった。
森の中に、俺は立っている。
見上げると、太陽もある。
「は、はあ?」
【モンスターが あらわれた!】
文字が浮かび上がる、と同時にずしん、と地鳴りを響かせ巨大なミミズ? が俺の前に立ちふさがる。
呆気に取られたままでいると、ミミズは巨体に似つかない動きで体を揺らし、俺に体当たりする。
「……! うぐぉ……ぅッ!」
数メートル吹っ飛ばされ、ぴくぴくと痙攣する。
息が、息ができない。
体が動かせない。
骨が、折れている。
内臓も……また……意識がなくなっ、て………。
【デス: 1】
ぴこん、とデスのカウントが追加され、何事もなかったかのように、俺は巨大ミミズの前に立っている。
瀕死、というより死んだと思っていたのに、なんともない。
いったい、どうなって――
「グォウ‼」
「うげッ……!」
先ほどの再現。
【デス: 2】
デスカウントが追加され、気付けば再び無傷でミミズと対峙している。
これは……まさか……!
「グォウ‼」
ミミズの攻撃を、寸前で後ろに跳んで避ける。
慌てて武器になりそうなものを探す――と、これみよがしにロングソードが落ちていた。
拾い上げようとして、
「おも……!」
あまりの重さに断念する。
まさか、あのステータス――筋力が一定値以上ないと持てないのでは……。
「グォウ‼」
「うごォッ⁉」
【デス: 3】
「くそッ、くそッ……ほかになにか武器は……⁉」
あった! 短剣だ!
よし、これなら使える!
「うぉぉぉぉぉ!」
「グォウ‼」
「ほぎゃッ⁉」
【デス: 4】
【デス: 5】
【デス: 6】
【デス: 7】
【デス: 8】
【デス: 9】
【デス: 10】
嫌だ。痛い。もう、死にたくない。
だが、死んで覚えているうちに理解したことがある。
モンスターの攻撃には法則性があって、隙がある。
そこを狙えば……!
「グォウ‼」
よし、この体当たりをかわして――今だッ!
「おぉぉぉぉぉッ!」
ミミズの脳天に短剣を突き刺した。
「グギャァァァ……」
巨大ミミズが、粒子となって消えてゆく。
【モンスターを たおした!】
テレッテ~♪ テンテテテ~ン♪
【イッキは レベルが あがった!】
【レベル: 2】
【スキル: なし】
【体力: 10】
【精神力: 5】
【魔力: 0】
【筋力: 6】
【素早さ: 8】
【デス: 10】
謎の軽快なBGMとともに、ステータスが更新される。
なんだ? 身体に、力がみなぎってくる。
レベルアップで、実際に俺が強くなったということなのか?
【モンスターが あらわれた!】
「……え」
息つく間もなく、再び文字が告げる。
うそだ、うそだ……!
「ギャォァッ!」
今度は、上空から現れる巨大な化け物の鳥。
対応する間なく巨大な爪で抑えつけられ、目玉をえぐられた。
「ぎゃあああああ! やめろやめろやめろやめろぉぉぉぉぉぉぉ!」
ミミズとは比べ物にならないくらい、強い。
一体、何度繰り返す⁉ 何度モンスターを倒せばいい⁉
おまえのせいか、神奈……! 許さない。
必ず見つけ出す……そのためだけに、俺は……ッ!
――500年後。
「おい、来てみろよ。なんか見つけたぞ」
種族ランク最下位の人類が唯一生息を許された島、エデン。
島の子どもが掘り当てたのは、白い、まるで巨大な卵のようななにか。
「ん? なんか、書いてあるな……えっと、なにが書いてあるんだ?」
【レベル: 999】
………
【デス: 1000000】