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TRPGはこわくない♪  作者: 高山マサムネ
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第1話ープロローグ的なものー

8年くらい前にmixiの日記に書いてたチラシの裏的な小説です^_^;



-ついさっきまでは間違いなく[人]の形をしていたものは、いまやそれとは大きく掛け離れた[異形のもの]へと変化していた。



[それ]に名はあるが、人の発声器官では正確にその名を呼ぶ事は出来ない。


[それ]にすれば取るに足りない存在、人に対しての蟻のようなもの、つまり人間が名付けた名は-




グゥルディルヌン。




もう誰にも使われなくなって久しい古代の言葉で、[神の輝ける右腕]を意味する。



「でぇーっ!こいつが神様だっての!?」

年の頃ならまだ十代半ばの、大きな瞳に可愛らしい唇、子供から大人への移行期の身体を持った少女が、セミロングの薄茶色をした髪を揺らせながら驚きの声を上げた。


「しかも神の右腕に過ぎないそうです」

少女の向かって右隣りに立つ青年が注釈を付け加える。

驚愕している少女とは対称的に、その端正な顔は落ち着き払っている。


「もう体力は残ってないぜ!俺の体力だがな!」

意味なく偉そうなのは、筋骨隆々で左目に眼帯を付けた戦士だ。

刀身の片方にのみ波模様を持つ、[叩き切る]剣ではなく純粋に[斬る]ことのみを目的に生み出された剣、<サムライ・ソード>を正眼に構えているので、サムライか剣士かも知れない。まあ、どちらでもいいが。


そういえば、もうひとりの青年は右手に何やら魔法使いが持つにはぴったりの杖を持ち、これまた魔法使いが着たらぴったりのローブを身に纏っている。


剣士、魔法使いとくれば残る一人は僧侶か盗賊に違いなく、盗賊には見えないことから少女は恐らく僧侶なのだろう。



「神が相手であれば、ここは僧侶たるあなたの出番ですね。<精神感応>の能力で神を手なずけて下さいよ」

魔法使いの青年-エリック-が少女-アリシア-に話し掛けた。


ほら、やっぱりな。


「ちょ、じょーだん!こいつどう見たって邪神じゃない。あたしは母なる海の神<ゼーラ>に仕えてるんだから、こんなえぐいピーな物体に話し掛けるのはおろか視界に入れるのさえイヤ!<精神感応>なんてもっての他よ!」

可愛らしい顔をこれでもかというくらいしかめて、悪態をつくアリシア。てか、あまり僧侶らしくないぞ。

そして素早く二人の後ろに下がりつつ。

「やっぱここは可愛い女子はキャーキャー叫んでBGM係に徹するべきよ。さあ、ヤローども!その杖と剣は飾りなの?ここはいたいけなあたしを護って戦いなさい!」

「ヤです」

「拒否する!断固な!」


コンマ数秒で異口同音に拒否権を発動する二人。


「き、貴様ら~」

こめかみのあたりをピクピクさせながら、何やら武術の型らしきものを取りはじめるアリシア。敵はそちらではありませんよ。まあ、あながち間違いではないですが。


「必殺!慈悲深き女神のー」

アリシアが何やら右手を発光させながら仲間(のはず。たぶん)に殴り掛かろうとした瞬間。


「-仲間割れか」


年老いた男のようなしわがれた声が響いた。


アリシアは攻撃を止め振り返り、エリックと隻眼の剣士-リュウガ-も[それ]を見た。



異形の神のぬらりとした皮膚の一部が裂け、老人の顔が-顔だけがまるでそこに縫い付けられているかのように浮き出していた。


その顔は三人にとっては見知ったものだった。


「あ、あなたは・・・」


「ま、まさか・・・」


「・・・知らん!全くな!」


けたたましい音を立ててズッコケるアリシアとエリック。

心なしか異形の神もこけかけたような気もする。


「依頼主じゃん!ほら、一週間前に!」とアリシア。

「過去は振り返らん主義だ!意地でもな!」

「いや、そういう問題ぢゃ…」

さすがのアリシアもあきれ顔だ。



「つまり、こういうことですね」

エリックが右手の杖で地面をコンと突いて話し始めた。

「一週間前、村に来た我々にあなた、村長はこう言いました。『掠われた少女達を救い出して欲しいのじゃ。恐らくは山賊の仕業じゃろう。なーに、あんたらならちょちょいのちょいじゃよー』と」


村長が喋り出した。妙に人間らしい声で。

「山賊はおったじゃろう?嘘は言うとらんぞ」


「確かにいましたね。ゾンビ化した<元>山賊がね」




ゾンビの恐怖とは、生きてる人間を襲うとか殺されたらゾンビになるとか頭を吹き飛ばさないと殺せないとかではない。

所詮は死体なので動きは鈍く、小学生でも彼らの攻撃を避けるのはたやすい。頭も悪い、というか脳も腐ってるので、複雑な行動も出来ないのだ。


ではゾンビの真の恐ろしさとは何なのだろうか。



それは・・・



ただひとえに気持ち悪い!それなのである。


ぐちゃぐちゃに腐ってずり落ちている皮膚。こぼれ落ちた目玉。体中に蠢く蛆虫。そして鼻をつんざく腐臭。

想像して見てくれ。頭からゲロを被った体臭のくっさいデブが君の方に近づいてくる様を…


「いやいやいや無理無理無理」

アリシアの顔面が蒼白になっている。

「あれ?確か、あのリビングデッド化した山賊達をそれは嬉しそうに、彼らの手の届かない距離から三節棍でフルボッコにしていたのはあなただったのでは?」

苦笑いを浮かべながらエリックが問い掛ける。

「ゾンビはいいのよ!ちょっと傷んだお肉みたいなもんなんだから」

「いや、それはちゃうやろ」

村長が関西弁でつっこむ。つっこみの出来る邪神。稀有な存在である。


アリシアは村長のつっこみを無視しつつ、納豆を無理矢理口に押し込まれた関西人のような顔をしながら言った。

「デブは駄目!しかも体臭のくっさい、汗かきのデブ!あー、想像するだけでなんか腹立ってきたー!」


・・・そっちか。

あやまれ。全国のすい~臭いのする、汗かきのデブの皆さんにあやまれ。



・・・すいません。



「・・・つまり全ては村長、あなたの計画通りに事が運んだ、というわけですね」

彼女をあえて無視するように話をまとめるエリック。助かるわー。


「そういうことじゃ。もうあの村には女子は一人もおらん。そこにちょうど活きのいいのが迷い込んで来たからのう」

「確かに俺は活きがいい!分かるぞ!」と筋肉を鼓舞しながらリュウガ。

「まあ、私の美貌に惹かれたのは仕方ないことです」髪をかきあげながらエリック。


「いや違うし!」

村長とアリシアが同時につっこむ。


あ、心なしか村長=神が小刻みに震えているような気が。


「えーい!アホ相手にこれ以上会話しても時間の無駄じゃ!娘、貴様でちょうど10人目の乙女。神の完全復活の礎となるが良い!」


「誰がアホよ!他の二人は確かにアホだけど」

「そうです!僕以外はアホですがね」

「アホではない!バカだがな!」



・・・・・・・・・・・プッツン。何かが切れる音がした。

給料袋や金〇袋の緒じゃないぞ。



「うがあああああっ!もうどうでいいわっ!貴様ら全員死ね!」


ついにぶちギレた神の怒りの攻撃が始まった!


三人は当然逃げ出した。猛ダッシュで。


「なんて短気な神様なんだ」

「あんたたちのせいだからね!」

「喋りながら走ると噛むぞ、舌をな!」


「グゥルディルヌン、ビィィィィム!」

村長の絶叫と共に開いた神のたぶんが閃光を放ち、粒子ビームを放出する。

「聖霊よ!より集いて我等が盾となり給え!『守護円陣』!」

アリシアが<護り>の呪文で輝く力場を発生させる。

神の放った光の束はその力場に弾かれて壁に命中した。


「ふふん!どんなもんよ!」 

得意げにガッツポーズを決めるアリシア。


「助かりました~」

「褒めてやるぞ!後でな!」

「さあ、とりあえず一旦退却するのよ!」


意気揚々と立ち上がった彼ら三人はそれを見た。

さっきの流れビームによって崩れ落ちた壁に塞がれたこの部屋唯一の出口を。



「・・・・・・・」

「ふ、不可抗力よ、不可抗力!」

開いた口が塞がらない二人にアリシアがまばゆいばかりの笑顔を向ける。

多少引きつっているように見えるのは、自分でもあちゃーと感じているからだろう。


「ぐははははは、逃げ場はなくなったな。おとなしく天に召されるが良い!」

口が煌めく度、二発三発と光線がアリシア達に襲い掛かる。

逃げながらそれらを全て器用に交わし、大きな石像の影に飛び込む三人。


「はぁはぁ。退路は絶たれた!こうなりゃやるっきゃないでしょ!」

「絶たれた、じゃなく絶った、の言い間違いでしょう」

「うるさいだまれしゃべるな」

「・・・・・」

「さあエリック、早くリュウガの<ムラマサ>に『炎の剣』をエンチャントなさい!」

「喋らなきゃ呪文は唱えられないんですがね・・・」

「(無言の圧力)」

「はいはい、分かりましたよ。あんたが大将ですよ。どーせ僕なんか魔法使いとマジシャンのぎりぎりにいるような男なんです。」

「くおらっ!早くしないかっ!」

「郵便ポストが赤いのも僕のせいです。あー生まれてきてすいません」

さらにぶつぶつ言いながらもエリックはリュウガの構える剣<ムラマサ>に呪文を掛けた。


『汝に力を与えん、其は全てを焼き尽くす紅蓮の炎也』


リュウガの握る<ムラマサ>から火柱が上がる!

「あっちい!」

上がった炎で顔を火傷しそうになるリュウガ。

「燃やす気か!俺を!」

「我慢しなさい!そして行くのよ、リュウガ!」

「おうよ!うおおおおぉぁぁああっ!」

炎の剣と化したムラマサを手に、グゥルディルヌンに向かって駆け出すリュウガ。


「ほう。魔を封じると言われる神刀<ムラマサ>に炎化の付与呪文を掛けて、対魔攻撃力を倍化させたか。しかし真の神たるわしには効かんのう」

ニヤリと村長が不気味な笑みを浮かべる。

「解説ご苦労様。」とアリシア。

「礼には及ばん。サムライ!貴様から消し飛ぶがよい!グゥルディルヌン、レイザアアアアアッ!」

両肩にある眼が見開かれ、そして輝き・・・出さなかった。不発のようだ。


「ぬわにぃ?!どういうことだ!グゥルディルヌンメーザー!コレダー!ミサイル!」

全く何も発射される様子もない。


「無駄無駄無駄無駄ァッ!無駄なのよ!周りを見てみなさい!このウスラハゲ!」

「なぜ私がハゲておることをっ?!い、いや、これは!」


グゥルディルヌンは囲まれていた。淡く輝く巨大な魔法陣に。


「く、くそぅ!いわゆる、逃げ惑う振りをしながら魔法陣を書いていた、というありがちなヤツかぁっ!」

「ちょっと!先に言わないでよね!かっこよく決めるとこだったのにー!」

「あのー。書いたの僕なんですけど・・・」


「クックックッ…」

しかし村長の顔に焦りの色はなく、不敵な笑みさえ浮かべていた。

「な、なんか余裕ぶっこいてるわね」


「この程度の結界がわしに効くとでも思ったのか。笑止!」

村長の眼が見開かれた!




・・・・・またしても何も起こらなかった。




キョトンとした顔の村長。案外かわいらしいかもしれない。

「ぬわにぃー!どどどどういうことだ!?」


「クックックッ…」

先程の村長以上に不敵な笑みを浮かべるアリシア。

「唯一絶対神<マザー>ならいざ知らず、あなたごときその他諸々の三下神様相手なら、より上位の神の力を借りれば動きを止めるくらい簡単なわけよ」

「あのー。その上位神と契約してるのも僕なんですけど・・・」


アリシア、お前の功績は1ミクロンもないぞ。


「さあ、リュウガとどめよ!サクッとやっちゃって!」

「おうよ!柳生流剣技!必殺!『紅 彗星斬』!!」

リュウガの身体が真っ赤に光り、通常の三倍の速度で邪神に突っ込んで行く!

そして炎を纏った<ムラマサ>は-邪神唯一にしてバレバレの弱点-村長の顔に突き刺さった。


「ぐあぁぁおおぉえおぁああ!!」

村長の断末魔と共にグゥルディルヌンの身体は塵となって四散していく。

そこから昇っていく幾つもの淡い光りは、神の生贄にされた少女達の魂なのだろうか・・・


遠くに鐘の音が聞こえてくるような気すらする。


「みんな、敵はとったよ」

「安らかに眠って下さい」

「うむ。成仏するがよい」



めでたしめでたし。見事大団円。



かと思われた。


その時、ガラガラッと勢いよく戸が開いて、一人の女生徒が飛び込んできた。


ん?女生徒?


「成仏するのはあんたらだーっ!」

見事な飛び蹴りが三人の男子生徒を椅子ごと薙ぎ倒した。



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