体力とは
最後に体力です。
HPやLPで表現されるこの数値。
最大値と現在値の差でどの程度ダメージを負っているかが分かりやすく、0になった時に戦闘不能か死亡するかの違いはあれど、優勢・劣勢を表す場合にこれほど便利なものはあるまい。また、作者様次第では幅広い応用も利く。
とても有用性が高いステータスなのだ。
しかし、この数値。ゲームではどの作品にも必須でありながら小説では見かけないこともある。
それはなぜか。
それは体力とは人によって定義が曖昧であり、増減の条件もまた複雑で多様だからと思われる。
ゲームならば自分の攻撃力と相手の防御力で算出されるが、異世界とはいえ現実で取り扱うことは難しい。例えとして、「1」のダメージがどれくらいか、体力は詳細に数値化できるものなのか、レベルアップ以外で上昇することはないのか、スタミナとの関連性はあるのかどうか、など。
その他にもいくらでもあると考えられる。
ところで全くもって私見ではあるが、ゲームではスタミナゲージというのをよく見かけた。これは、ゲーム内のダッシュや回避行動などで消費される数値であり、体力とは別項目のステータスのことをいう。これにより、体力とスタミナ(心肺機能)を分けて考えている人もいることだろう。
だが待ってほしい。体力とスタミナは本来関連性の高いものであるはずだ。
一例として挙げるならば、全速力で400mダッシュがある。
人はどれだけ頑張っても400m以上を全速力で走り続けることは出来ない生き物である。
走り終わった後は息も切れ切れで疲労がたまっていることだろう。
その後すぐ敵と戦闘になった際にいつも通り戦えるのかどうか想像してみてほしい。
おそらく無理だ。
現実において全力を出したあとでは会話すら難しい。これでどうして戦うことができよう。
むしろ、疲れ具合によっては体力が最大値の半分以下になることだってあるはずだ。
パフォーマンスも下がっているはず。
単に物理的なダメージだけしか頭にないと色んなところで不備が見つかることになる。
設定ミスが気にならないくらい読者を作品に夢中にさせる力があるなら結構なことだが、そうでなければ色々とつっこまれることになるかもしれない。
さきほどの例えで挙げた話を蒸し返すと、微小なダメージなら自然治癒でなかったことになるので描写は不要であるし、鑑定スキルがあったとして人の生命力を数値化することはやはり不可能だろうし、レベルアップでなくても身体が成長すれば体力は上がるはずである。
いつまでも考え出すとキリがないし、私自身としても躍起になって否定しにかかっている内容にも思えてきたが、伝えたいことはやはり一つのみ。
レベルやステータスはゲームのシステムだからこそ活きてくるもの。VRの世界なら作品の魅力を高める強力な武器ともなり得る。
しかし、異世界の世界観に用いることは簡単なように見えてそう上手くはいかない。現実世界ではときに矛盾を発生させ、作者様にまるで逆刃のように襲いかかることにもなりかねない。
まさに読んで字の如く『諸刃の剣』といえる。
ここまで、私の拙い意見を聞いてもし作者様方に熟考してもらえるならばこれに勝る悦はない。
それでも自分はレベル・ステータスを設定するという方はそれもよし。よくご注意された上で傑作・名作・大作を世に届けていただればと思う。
最期の最後に一言。
たかがレベルやステータスと侮るなかれ。ゲームと異世界はまるで別物ぞ。ソースは私。