MPとは
お次はMPです。
マジックポイントまたは魔力と呼ばれる類のこの数値。魔法を発動する際に必要な魔力を消費するのが一般的だが、これは少し複雑だ。
人によって設定に違いがあるし∞なら使い放題でも問題ないからだ。大気中のマナがどうのこうのという設定も、体内に無限の魔力があるからと言われてしまえばおかしなところは何も無いように思える。
しかし、やはり10倍や100倍では無理がある設定だと分かったので証明しよう。
多くの作品では、魔力を消費すると回復のために大気中のマナを吸収するという設定がある。多分、酸素のようなものだろう。ATP(アデノシン三リン酸)がADP(アデノシンニリン酸)とリン酸基に分かれてエネルギーが発生すると同時に魔力なる物が生み出されている、という設定なのだろうか。まさに呼吸である。
そして、ここで一つの矛盾が生まれる。
まず、魔力の数値が100倍とはおそらく魔力の器が大きいということだろう。チートキャラは普通の人よりも貯めておける魔力量が多いということか。しかし、呼吸による魔力回復速度はどうなっているのか。
まさか呼吸による酸素の取り込み量まで100倍ということはあるまい。本当に肺活量までもが100倍なら、そのキャラクターが寝ている間に周辺の酸素は全て二酸化炭素に変わってしまって、誰も一緒に寝ることが出来ないのではなかろうか。
異世界で女の子と朝を迎えようとしたはずが起きてみれば隣でその子が窒息している、ということになるかもしれない。
なんてことはない。これもまた殺人鬼である。
ここで問題にしたかったのは、「どれだけ魔力を使っても一晩寝れば元通り」という展開に無理があるだろうということである。
例えば一日の回復量が50として、一般人が10の器を持っているとすると毎日全快でも頷ける。
全ステータス5倍のキャラであってもまだいい。
では10倍はというと、半分しか戻らないので全力で魔法を使えるのは二日に一回ということになる。
じゃあ100倍なら……計算すると二十日に一回。
全力を出すことはなくても強力な魔法を使えば元に戻るまで時間がかかる。毎日、毎話、毎回。無双系主人公を描きたいならステータスは登場させないほうが無難ということにならないか。
精神力が魔力の替わりだと言う人もいるかもだが、一つ問いたい。
精神力100倍とは具体的にどういうふうに100倍なのだろうか。比較出来る物なのだろうか。
筋力や素早さと違って外面ではなく内面の能力である精神力を数値化することはそもそも可能なのか。
ここまでで言いたいのはステータスを用いるなということではなく、安易に数値化すると後々作者様が苦労しますよ、ということである。
まあ、数値上とはいえ、数十年もの間研鑽を重ねた大賢者よりも精神力で勝る若者がいたらそれはそれで面白いかも知れないが。