一日一説【盆明け】
テレビを点けると、ニュース番組で少女がインタビューを受けている。少女の背景には行き交う人々。場所はお盆明けの帰国ラッシュでざわめく空港の国際線ターミナルだ。リポーターは少女に「お休みの間はどこに行きましたか?」と問いかける。少女は楽しそうな様子で、「ハワイ!」と答える。その後も問答は続く。バナナボートに乗ったことが特に思い出に残っているという。
盆とは、そもそも先祖の霊が現世に戻ってくるのを迎えるためのものなのではなかろうか。先祖を供養するために、そして、忘れないために……。
この少女は一片ほどの過失もない。だが、連休だからといって、盆の意義を疎かにし、あまつさえ国外に旅行なぞ、この一家の先祖の御霊は、家に辿りつくことが出来ず、さまよっているのではなかろうか。そのような思いやりの気持ちもなく、よくもまあ海を越えて飛行機などに乗れたものである。罰が当たって飛行機が堕ちたとしても、なんらの不思議もないのだ。ただでさえこの時期は、日航機の墜落事故が起きている。絶対に必要だという場面以外は、飛行機なぞ、遠慮するものである。しかも、行先は、ハワイ。真珠湾の攻撃があった場所、そして、この時期は終戦の話題で持ちきり、あまり、今時期気持ちの良い場所には思えない。
そもそも、このテレビはなんなのだ。平然と、長期休暇は海外に行く者が多いという報道をする。そしてわざわざ飛行場に張り込み、帰国者を直撃する、特に家族連れを狙う。
テレビがこんなだから日本の文化は衰退する、何がクールジャパンだ。しかもモラルも欠如していく。常識が、変化していく。
大体、盆だというのに休みをとれない者の気持ちを考えたことがあるのか!ゴールデンウィークもそうだが、~連休が始まります!などと、暦上ですら確定していない謎の連休を吐きつけやがる!
インターネットが文化の中心になりつつある昨今においても、テレビはその傍らで文化の中心を担っていると思う。年配の方はもとより、ネットでの話題もテレビの話題を輸入したものも多い。その文化の中心たるテレビが人に対する思いやりの気持ちを持たず、唯々、話題性と何らかの思惑を流布したいがための放送しかしないのであれば、日本の未来に暗雲が立ち込めることに疑いの念を持たざるを得ない。
何ィ?ガタガタ御託並べて、本当は羨ましいだけだろうって?当たり前だろうが!俺だって行きてえよハワイ!!