太陽の宮④
「お前、聞こえなかったか?目覚めたのかと尋ねているのだが」
そう言われてとっさに振り返った。
それは、条件反射だった。
あ。
振り向いてしまった。
私は目を見開いた。
真っ白い空間の中に、黄金色の髪と、黄金色の瞳をした、それはそれは美しい人の形をした“それ”は立っていた。
“それ”が纏っているオーラから、間違いなく人ではないことが分かった。
気を引き締めていないと、その眩しいオーラに焼き殺されてしまうように思えた。
先程老若男女不明だと言ったが、姿形は青年である。不気味なほどに白い肌と、太陽のような強い輝きを放つ金髪。そして、淡々とした光を据えた瞳。
太陽のように熱いオーラを放っているのに、その瞳は冷え切った月のようだ。
同じ体に正反対のものを備えてるこの男に、僅かながら興味が湧いた。
その他の私のこの男に対する感情は全て畏怖である。
男が薄い唇を開いて言葉を紡ぐ。
「地球人の小娘よ。名は?」
「え?」
思わず容姿観察に目がいってしまい、私は質問を聞き流してしまった。
私が問い返すと、男はめんどくさそうに再び質問をしてくれた。
「だから、名前を教えて」
…な、名前を教えろだぁ?
上から目線とかふざけんな!こんな怪しい奴に名乗る名前なんてないわ。
普段ならそう思うだろう。
けれど、流石に逆らってはいけない相手だと思う。これも本能からのお達しだ。
「風間、千鶴です。漢字はそよ風の風に、時間の間、漢数字の千に、千羽鶴の鶴です」
「ふむ。では千鶴。お前は地球のどの辺りに住んでいた?」
は、はあ?
なんで住み場所まで言わないといけないの!?
これ、もしかして詐欺だったりする?
でもこの男明らかに人外だし、なんだか逆らえないし。
グッと堪える。
「えっと日本という島国の、東海地域です」
それでも僅かな反抗心が、県名まで言うのを阻んでいた。
私はこの男に、また別の感情を持ち始めた。
それは怒りだ。
態度が尊大で威圧的。一体なんなのこの男は。
人の名前聞くもんなら自分から言うのが礼儀でしょうよ。
なんだかムカムカしてきた。
何度も言うが私は短気だ。
はじめ畏怖で震えていた足も段々としっかりしてきた。
男は、誰かに連絡しているようだ。
耳に親指と小指を伸ばし、その他を折り曲げた右手を持っていく。
よく学生がやる「電話ポーズ」と言う奴だ。
「ああ、これが例の娘だろ?ほら、海王星の…」
やっぱりなんか詐欺なの?
何?例の娘って。
海王星とか何?新ドラッグの隠語?
でも私死んだはずじゃないの!?
記憶もあるし。
それか死後の世界にも詐欺たるものが存在するの?
もーいい!
人外でも怖くっても、もう私は死んでるし!
恐れるものはありません!
「…あんたさ!」
おっと声が裏返った。
やっぱりまだ怖いみたい。
男が私に視線を寄越す。
「悪い。また後で。」
男は電話ポーズを解除して私を見る。
「なんだ?」
「なんだじゃ、ないわよ…っ!あんた、自分から名乗るのが礼儀でしょ!?なんで上から目線なのよ!」
男は目を見開いたが、なんだか面白そうに目尻だけ上げて笑い出した。
その、笑っているのに笑っていないような冷え冷えとした笑みに、ゾッとした。
「あ、あんた…っ!」
「まーそりゃそうだ。私、お前より偉いから」
「は、はぁ!?」
「私の名前?いいよ。言ってあげる」
男はクスクス笑った。
「私の名前はアポロン。太陽の神で音楽の神だ」
男はクスクス笑いから元に戻った。
「よろしくな、風間千鶴。お前は今日から天王星の星天師だ」
これが、全ての始まりで。
全ての終わりに繋がることだった。
星天師と言う単語出てきましたね
この小説かなーり長くなる予定ですので引き続きよろしくお願いします。