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星天師〜星空の湊〜  作者: 下村美世
第2章 星天師として
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ほぼ同期!?木星星天師②

 門番さんは、私とローラさんを引きつれて、王宮の一番上階へと案内をしてくれた。

 エレベーターの足元は御丁寧にもガラス張りで、どんどんと登っていく感覚と遠くなる地上との距離に、思わず息をのむ。高いところは苦手ではないけれど、得意でもない。

「千鶴様。あれがイオタワーでしょうか…?久々に来たので忘れてしまって」

「いや、私に聞かれても…。でもすっごい高いタワーだね。それに、綺麗」

 たくさんの集合住宅の中でひときわ目立つラウンドタワーが、私たちの目を奪う。

 それはありえないことに雲の上を突き抜けていて、タワーの頭頂部が見えない程に巨大だった。

「従者様の仰る通り、あちらはイオタワーでございます。最近改修したばかりですので、従者様が以前いらっしゃったときより更に大きくなっているかと思います」

「そうですね、言われてみれば前より大きいような…?でも大変だったでしょう?ここまで大きなタワーですもの」

 そこでチン♪と音が鳴ると、エレベーターやようやくピタリと動きを止めた。

 扉が開くと、門番さんは目の前に聳え立つ大きな扉を指さした。

「タワー改修に関しては、私どもの口からは詳細は言えません。それに、アルフレッド様にとっても結構地雷案件だと思うので…。あまり、そのあたりは触れないことをお勧めしておきます」

「…それは何故と、聞いても?」

「私どもにもよくわからないのです。ですので、このお話はこれにておしまいにしましょう。さあ、言ってらっしゃいませ」

 二人は深々とお辞儀をすると、片腕を扉の方へと向ける。

 深い色の木造の扉はとても荘厳な雰囲気を醸し出していて、心臓がドキドキと高鳴る。

 この扉の中にいる人は、果たしてどのような星天師なのだろう。

 さあ。行こう。


 コンコン、とドアをノックすると、中から誰だ?と声がかかる。

「天王星星天師の風間千鶴と申します。木星の星天師様にご挨拶したく、従者のローザとともに参りました」

「左様ですか。確認してまいります。少々お待ちを」

 いや、アポくらい通しておけよ……と思いつつも、ジッと待つ。

 10分、20分、30分……。

「お、遅くない…?」

 ローザさんの方をバッと振り向くと、彼女も同じことを思っていたのだろう。

「そうですね。お忙しいのでしょうか……?」

「ええ……。でも、アポ取ったときには大丈夫って言ってたんでしょ?」

「まあ、そうなんですけどね。ただ、想像以上の業務に追われていると、致し方ないといいますか」

 ほ、ほへえ。

 ローザさんの思考が大人なのか、私が神経質なのか。

 でも友達との約束ならまだしも、新米とはいえ公式の訪問なんだよ?大事な挨拶なんだよ?

 これってなんだろう。もしかして、舐められているのだろうか。

「私って、やっぱり一番新人だし、あんまり歓迎されてないのかな」

「あら、どうしたのですか千鶴様。突然そのようなこと……」

「なんか、挨拶回りとか迷惑だったのかなって今更思っちゃってて。ウラノス様のご意向だから従うしかないけど、よく考えたら星天師って定例会みたいなものあるみたいだし、そこで挨拶でもまあ良かったのかなって」

 そう言ったらローザさん、柔和な笑みを浮かべちゃって。

「そんなことありませんわ。千鶴様が星天師の皆様にご挨拶がしたい!という御意思があるということを示せることは大きなことです。それに、各惑星の雰囲気を軽く掴んでおくことも、星天師としては必要なことです」

 ローザさんの言葉は、私の胸にストンと綺麗に収まった。

 まあそうよね。大事なのは、これから星天師としての仕事に気合を入れていくこと。これは、その一環に過ぎない。けれど、とても大切なこと。

「……そうだよね。うん、ありがとう。もう少し前向きに考えるね」

「その意気です!勿論、私もどこまでもご一緒しますから、共に頑張りましょうね」

 うん、と返事をしようとして、そこでようやく扉がギギギ……と重い音を立てて開いた。

 すぐに居住まいを正すけれど、中からは誰も出てこない。これは、入ってこいということだろうか。

「失礼しま~す…」

 扉の中をのぞくと、長い通路に真っ白な絨毯が敷かれている。その先を視線で追うと、大きな広間に繋がっているようだった。

 ローザさんとともに足を踏み出すと、中に入ったとたんにドアがバタンと閉まる。どこかで監視されているのだろうか。

 ヒタヒタと通路を歩いていると、両側の壁に飾られた種々の絵に、思わず感嘆しそうになる。

 親子の絵、軍人の絵、女神の絵など、そのどれもが美しく、繊細だった。これは星天師の趣味だろうか。

 やがて通路を抜けると、そこに広がっているのはやはり大広間だった。

 中央部に大きな椅子が何個も設置されていて、さながら巨大すぎる会議室のような空間だ。その中の1つにポツンと誰かが座っていて、私たちの姿を見ると立ち上がった。

「よっ。お前がカザマチヅル…?」

 う、うおおっ。いきなり呼び捨てで来たな。

 目の前の人物は立派な恰幅をした青年だった。

 薄茶色の髪を短くカットし、身長はかなり高く、見るからに筋肉質だった。

 瞳の色は青色に近く、私が驚いたのはその色より眼光である。とても強いパワーが漲っていて、迫力がある。とても力強そうだった。しかも釣り目気味で、切れ長のアイラインをしているので、なおさら鋭い印象を与える。しかし、口元は柔和に微笑んでいて、怖いだけではなくどこかおおらかな印象もあった。

 優しさと厳しさが同居しているような、まさにTHE・リーダーといった感じの男だ。

「はい。この度は、お忙しい中、お時間を作っていただき……」

「わははっ!そーいう堅苦しいのはいいって。オレも、お前には会いたかったしな」

 その瞬間、背筋がゾッとするのを感じた。

 なんだ、今のは。

 別にこの人はおかしなことは言っていない。歓迎してくれているようだし。

 でも、なぜかその低い声の中に、ものすごい悪意を一瞬感じたのだ。何故かだなんてわからない。ただ、一段と深くなった瞳の色がどことなく恐ろしくて、私の本能が、彼を油断できないと叫んでいた。

「ふ~ん」

 私の姿をジロジロと見つめると、彼はなんてことないように笑った。今度の表情には変な翳りはない。

 さっきのは、なんだったんだろう。

「お前みたいな硬派そうな奴は久々に見る。ほら、星天師って変わったやつ多いしさ~」

 あなたもだよ、と突っ込もうと思ったが勿論堪える。

 どうやら私は彼の目から見て、硬派に見えているらしい。

「私はまだ悠さんと余暉さんにしか会っていないので……」

「へ~そうなんだな。その二人から会えるなんて運のいいやつだな」

「そういうものでしょうか」

「うんうん。ま、オレが集合時間プラス一時間以内にこうして来れるなんて、もっと運がいいんだけどなっ」

 遅刻した自覚あるんかいっ!

 少しも悪びれないその態度に内心イラァ……とするものの、なんとなくルーズそうな印象だし、何より相手は先輩になるわけだし……。グッと堪えた。こんなことでいちいち怒っていたら、この先やっていけない。

「お前、結構顔面イケてるよなあ」

「い、イケてる……ですか」

「うんうん。オレが地球にいたころ、近所にいた美少年にそっくり。ちょっと驚いた。ライバルが増えるの、正直微妙なんだよなぁ」

 ……うん?

「あの」

「ん?」

「私、女なんですけど」

 時が止まった。

 彼はエッと言葉を詰まらせると、私の姿をもう一度上から下へと眺める。

「……まじ?」

 ブチッ。

 いや、別に自分が父親によく似ていて、中性的な容姿である自覚はある。ショートヘアだし、今日着ている服もローブだから体型から性別が判断しにくいだろう。

 そ、れ、で、も、だ。

「声でわかりません?」

「……あっ。……ごめん」

 素直に謝られると尚更傷つくんですけど。

 いや、まあ、別にいいんですけどね?私も自分が女の子らしいとも思わないし、性別に特に拘りなんてないんですけどね?

「なんだよチヅル。女なら先に言えよな。ささ、どうぞ腰かけて」

 こ、こいつ……。

 女だと判明した途端、態度を変えやがる。

「じゃあお言葉に甘えて」

「そっちの従者ちゃんもどうぞどうぞ。久しぶりだよねぇ、ローザ」

「ええ、そうですわねアルフレッド様。私が天王星初の女性星天師、千鶴様の従者になってから、ここに来るのは初めてですから。お久しぶりですわね」

 ニコッと笑いつつ、とてつもない怒気を発しているのが分かった。

 いや、なんで私より怒ってるの。落ち着いてローザさん。

「んじゃ、紹介遅れてごめんな~。オレの名前はアルフレッド。呼び方はアルでもフレディでもなんでもいいけど、大抵のやつはアルフレッドって呼ぶな。好きなものは女と金。嫌いなものは退屈だ。オレには他の星天師のやつみたいに際立った特技はないけど、人を誘導するのはかなり得意だな。それでなんとかこのデカい惑星を指揮してる」

「えっと、それじゃあ、アルフレッドさん。普段はこのお部屋でお仕事を?」

「まさか。今日はこの後会議やら何やらで天手古舞だよ。でも、時間を作った。それは、お前のためだよ、チヅル」

 う、うおお。恩着せがましい!

 本当に女好きというか、態度がめちゃくちゃ違うのに笑いそうになる。

 地球にいたときも似たようなタイプはいたけど、ここまで露骨なのはそうそういない。

「すみません。お忙しいのに」

「いいっていいって。それよりお前と会うことの方が重要だ」

「は、はぁ……どうも」

「それに、オレたちは多分、一番歳が近いと思うし。仲良くやってこうな。天王星とは交流もあるし」

 ん?ちょっと待って。

「あの…歳が近いというのは?」

 どう見てもアルフレッドさんの方がずっと年上のように見えるのだが。 

「ああ、オレの実年齢が70歳だからさ。お前多分十代半ばくらいだろ?俺の星天師年齢は24くらいだから、どっちもまあまあ近いな」

「星天師年齢……」

「星天師になった時の年齢のこと。まあ、外見の年齢とイコールだな。他の奴なんて実年齢は何百年とかだしなぁ。悠なんて凄いだろ?あんな可愛い顔して、3000越えなんだ」

「つまり、星天師全体から眺めると、あなたの70歳というのはとても短い…ということですか?」

「そうそう。オレもまだまだ若いんだよ。だから、ほぼ同期だなっ」

 70年違いが同期なんて、……とんでもない世界ですな。

 

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