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劇薬

身体が、もう動かなかった。


由梨、ごめんね。

こんな重い遺言残しちゃって。



ね、泣かないでよ。


あんたの泣き顔見るのは辛いの。


だから、私のことなんか忘れて、幸せになって。



「嫌だ!千鶴!」



ああ、由梨の声も次第に聞こえなくなっていく。


死ぬってこんな感じなのかな。


五感がさえぎられ、何も感じず、身体が冷えていくのを感じる。


内部からジワジワと、冷えていく。



この寒さが私を侵食したとき、私は死体となる。


肉体は焼かれ、骨だけとなり、墓を建てられる。


なんとなく嫌だが、世の中には埋葬すらしてもらえない人もいるらしいし、そうおもうと私はもしかしたら幸せなのかも。



親友に見送られながら死ぬのなんて、理想ではないか。


目を、開けよう。


最後まで、この瞳に、友を写すのだ。


私はなんとか目を開いた。





「…………え?」







私は瀕死なのにもかかわらず、素っ頓狂な声を出した。



何故なら、由梨が短剣をこちらに向けていたから。

短剣は黒い柄に金色の曲線が描かれており、美しい白銀の刃をしていた。



由梨……何を…?



涙を流しながら、由梨はグッと短剣を握りしめる。



茶色の瞳に、強い意志がうかがえた。



「ごめんね、千鶴。


私の力では、貴方を助けるのはできない。


でも、私と引き換えになら、貴方を…」



由梨は息を吸った。



「宇宙で生かしてあげることができる!!」


…何、言っているの?


何故、そんな物騒な物を持っているの?


やめなよ。


由梨の優しい暖かい手のひらに、そんな剣は似合わない。


それに、宇宙で生かす?私が由梨と引き換えに?



所詮私が履修してたのは、知識だけだった。


実践的な状況に、頭がついて回らない。


由梨が何やら唱えはじめる。



「全知全能の神、ゼウスよ。私と引き換えに、かの者を救いたまえ」


ゼウス?


ゼウスって、確か神話の神様よね?


「千鶴」


由梨の優しい声が、私のすぐ近くに聞こえる。


「大好きだよ。私は、千鶴を、生かしてあげたい。こんなやり方しかできないけど……許してほしい」


本格的に、何を言ってるのか理解できない。


許すも何も、一体、由梨は何を?


由梨が、剣を構える。


矛先は……私!?


由梨、ねえ、どうしちゃったの!?


まさか、私を…!


由梨の涙が頬を伝う。


鉛色の空に、由梨の顔が妙に合っていた。


それほど彼女は、複雑な顔をしていた。


けれど何かを決心したように首を縦に勢いよく振り、由梨は私の目を見た。


「生きて」


腹部に衝撃がきた。


痛い!!


痛い……よ!!


「うああああ…っ!!あっ、うぐっ、いっ、いた、痛い!」


「ごめんね、千鶴、ごめんね!」


激痛に、私は力尽きた。


僅かに残っていた血が、ドクリと流れ出す。


ねえ、由梨、何故?



あなたは、一体何者なの?




どうして、私をー……殺した?





最後に私が見たのは、由梨を包み込む金色の光だった。



疑問を、声には出せなかった。


もう、私の意識は無かったから。








【キャラクター紹介】


風間千鶴かざま ちづる

 身長162センチ、B型

本作の主人公。頭脳明晰に加えがり勉の努力家で、その知力は国内トップの偏差値を誇る浪花なにわ高校において常に主席だった程。

 サバサバかつ正直な性格で、言いたいことははっきりと述べる。その性格故か、友達が少ない。

 だが由梨とは心から信頼している親友同士であり、狭く深く友人を作るタイプ。

 サラサラの短い黒髪が特徴の、美人。





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