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星天師〜星空の湊〜  作者: 下村美世
第1章 宇宙へやってきた
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試練!神々の集い②

ところで、先述した通り太陽の神と星天師、そして太陽人と区別される人々は太陽に住んでいるわけではない。


太陽の近く(と言っても、太陽とは大分離れたところだが宇宙単位で考えると近いと言える)に太陽神アポロンが天体を作りだし、そこに住んでいる。

ちなみに、その天体の名前を太陽住居星たいようじゅうきょぼしと言うそうだ。


あっ、これらの情報は余暉さんやマリーさんから聞いたものだけどね。


さて、考察をしようではないか。


私は今、体がアポロンによって保護されている。

いくら太陽から離れたところに住居を作ったとしても、地球に比べれば太陽の側にある。


地球にいた時に比べれば格段に地表温度は高いはずだ。

それなのに、暑くもなく寒くもない、いたって普通の気温だ。体感、日本でいう秋のような感じ。



最初はアポロンの力ゆえかと思ったが、星天師の余暉さんやマリーさんを見て、彼らもいたって平気らしかった。マリーさんは太陽人だから先天的に熱さに強い耐性があるのかもしれないが、余暉さんは地球人だ。


なのに平気だというのは何か秘密があるに違いない。

あぁ、ここに温度計があったのなら正確な温度が分かるのになぁ!

好奇心が疼いて仕方ない。


「どうカナ?乗り心地、悪くナイ?」


余暉さんがハンドルを握りながら私を見た。


「ええ、大丈夫です。私比較的乗り物強いんです」

「そうなんダ!…でもネ、星天師は基本的に乗り物酔いしないんだヨ」


乗り物酔いをしない?


「神様達のおかげデ、体調は一定に保たれてるんだヨ」


今サラリとすごいことを言ったな、余暉さん。


「この乗り物が酔わない構造なんじゃないんですか?」


そう、この乗り物。

現在太陽王宮を離れて月へと向かっている。

地球にいた頃は考えもしなかった。まさか、こんなに太陽系では文明が進んでいたなんて。


普通に考えて(と言っても地球人の私にとっての普通だが)太陽付近から月までなんて距離が遠すぎる。地球の現段階の文明ではまず不可能であろう。そうでなくとも太陽に行く時点でロケットの機体なんて熱で溶けてしまうに違いない。


しかし、この乗り物…。




『チヅル!今から月にいくヨ』


『は?』


着飾って、さあいざ謁見しようとしていた私に、とんでもない言葉を余暉さんは放った。


いかんいかん、思わず目上の人に素の反応をしてしまった…。

顔を引き締め直したが、あまりに現実味のない言葉をもらったので心では大混乱が起きていた。


『今ネ、王宮の中庭にスペースモービル置いてあるカラ、それで行こうネ』


待って待って、情報量多いな。

まず横文字出てきちゃったよ。何?スペースモービル?



『あの!な、なんです?スペースモービルって』


余暉さんはキョトンとしてからハッとしたように跳ね上がった。



『そうカ!チヅルってスペースモービル見るの、初めてだもんネ!』


それから中庭に向かうまでの間、彼はそれについて説明してくれた。


まず、スペースモービルとは宇宙間の移動に適した乗り物であること。

光速より何千倍も早いスピードで移動することができるため、地球でいう自動車のように星天師に常用されているということ。


光速より早いだなんて、肉体がもたないのではないか。

そう質問したら、余暉さんは同じことを言うのだ。


『大丈夫だヨ!神様が、俺達の体を保護してくれてるカラ!』




というわけで、ただいまスペースモービルの車窓から景色を眺めているんだけど、速すぎて何も見えない。星間をくぐり抜けるのだが、速すぎるせいで残像がわずかに見えるだけ。


たまに小惑星やら天体やらにぶつかりそうになるけれど、この乗り物で すごくって。


自動安全装置なるものがあるのか知らないが、そういうものは避けたり排除したりできるらしい。


この常識を逸した状況に思考を止め、私は脳を休めることにした。


ここは宇宙。私のいた地球の常識は、通用しないんだった。

何回もそう言い聞かせてるのに、なのにあまりに衝撃的だから。だから突っ込んでしまう。



私は目を閉じ、運転している余暉さんの後ろ姿を眺めながら眠った。




……



「チヅル…チヅル!」


「え?」


目が覚めたとき、スペースモービルは止まっていた。

車窓から外を眺める。

青白い地表に着陸していた。

この美しく白い地表面は見覚えがある。


これは…。



「月に着いたんですね」


余暉さんはゆっくり頷くと、ガチャっとモービルの三重扉を開け始める。


外の空気が入ってきても案の定普通に呼吸ができるし、やっぱりこれも神様のおかげなのだろう。


「さ、降りテ」


差し伸べられた手を握り、私は重い腰を起こした。


スペースモービルは車輪のないフェラーリのような外観をしていて、色はオレンジ色だった。 余暉さんがいうには“惑星カラー”というものがあるらしく、太陽はオレンジ色なのだそう。


ちなみに水星は水色、金星は金色、火星は赤色、木星は茶色。土星は紫色で天王星は白色。海王星は青色、らしい。


ということは、私の勤めることになる天王星のスペースモービルは白色ということだろう。


「余暉さん、運転ありがとうございます」


「ううん!どういたしましテ!チヅルも星天師になったらモービルの免許必須だカラ!でもチヅル頭いいしすぐ取れるヨ!」


「はあ、そうですか?」


「大丈夫!自信持って!」


自信なら有り余っているんだけど。

言わずに飲み込む。


余暉さんはサクサクと月面を歩いていく。


その背中を慌てて追いかける私。


「チヅル。神々の集会はネ、“月の宮”で行われるんだよ」


「月の宮?」


「うん。神様達の溜まり場みたいな感じヨ。今回も定例会みたいな感じで、チヅルはそのついでに挨拶するんだヨ」


つ、ついでって。

私なんて一人間だってわかってるけど!



「でもその月の宮ってどこにあるんです?」


「うん。ここだヨ」


余暉さんが地面を指差した。

私は辺りを見渡す。


「でも、見た感じ辺り一面ボコボコした月面だし…」


「ううん!だから、地下だって!」


「え!?」


彼はニッと笑うと、地面に向かって叫んだ。


「太陽の星天師の余暉です!!入れてもらえますカ!!」


え!?え!?そんな方法で入れてもらえるの?

てか、地下って、え!?



「チヅル!入っていいって」


どこから応答受けてんのよ貴方。


「どこから入るんです!?」


「あ!そか!チヅル、初めてじゃん!ごめんネ!俺の真似してネ」


余暉さんは地面に力強く踏み込む。


「せーの!」


ピョンっと彼は飛んだ。

すると、地面にポッカリ穴が開いて、彼は吸い込まれるようにして落ちていった。



「.……」


あれ、どうしたのこれ。

どうすればいいのこれ。


彼が消えた後、穴はみるみる小さくなっていく。

いけない!私も入んないと塞いでしまう!


ああもう!はいればいいんでしょ!


私はジャンプして穴へ突撃した。






一瞬だけ真っ暗な空間に入り、その後すぐー…。

ドスンッ!

思いっきり頭から着地。



「いっつ…!頭、ぶつけた…」


痛覚は普通にあるみたい。

頭から着地なんて初めて…穴、そんなに深くなかったのにこんな間抜けな着地するなんてね。私こんなに運動神経悪かったのね…。


「てか、余暉さん何処ですか!?」



「余暉なら先に我のところにきているぞ」


あ、また。




また、この感覚。


アポロンと会った時の、あの痺れ。



これは…っ。


バッと声がした方に振り返る。


そこには、まるで9つの立ち席が円形に設けられており、足元には赤いカーペットが。

洋風なお城にありそうな柱も9本立って、真っ白い屋根を支えていた。


バカみたいに広い空間で、各々の席の感覚も4メートル以上離れている。


その席2つ除いて、7つの席に立っていた。





…初対面でもわかる、人の形をしたものすごい高貴な“それら”が。






「ウラノス。この娘が例の」


アポロンが私を見つめて微笑んだ。

よくぞ来たな、とでも言いたげに。


「ああ。名前は伺っておるよ。風間千鶴というんだよね」


ウラノスと呼ばれた男が長くて白い顎髭を触りながら私を舐めるように見た。

この人が…ウラノス。

アポロンから話は聞いていたけれど、本当にかなり年を召している。

人間でいう、80歳くらいのおじいさんだ。


この人はアポロンの血縁というだけあって、金髪に碧眼。


いや、ギリシャ神話の話によると、神々はほとんどが血縁だ。

みんな同じ毛色であってもおかしくない。

案の定、立っている7柱の神々は皆個人差はあるけれど、金髪は共通していた。



「じゃあこの子が新しい天王星の星天師なのね?天王星で女の子の星天師って久しぶりねぇ」


唯一の女性がねっとりとした甘い声で言った。女の神様…それで太陽系の神ってことは、これは、アフロディーテ!?むちゃくちゃ美人なんですけど。

胸元が思いっきり開いてて、スリットがあるものすごいセクシーな服を着ている。


「でも見た感じ、顔はまあまあだが普通の小娘だぞ?」


美形だけど何処か廃れてそうな若い男が私を見据える。

この神…よくわからないけど多分火星の神・アレスな気がする。若い男性神自体そんなにギリシャ神話には出てこない。アポロンを消すと消去法でアレスになる。


「彼女は神剣を使ったからね。だから仕方ないよ」


ウラノスがアレスと思われる神をたしなめた。


「あー、なるほどな」


アレスは納得したように頷く。


「そんで?まだ父さんはいねーの?」


父さんとはおそらくゼウスのことだろう。

アレスの父親はゼウスのはずだし、何より先程から私もゼウスを探している。


でも、それと思える神がいない。



「アレスちゃんったら慌てすぎよん。あの人のことだからねぇ。また遅れてくるのよ」


ああ、この女性口調。

見た目はかなりガッシリした男性なのに、くねくねした動きでまるでオカマ…。


この特徴ありすぎる神は、マーキュリーだろう。アポロンの話と照らし合わせれば間違いない。


「あ、そういやアポロンちゃん。アルテミスはどうしたのぉ?」


アポロンが気まずそうに頭を掻いた。


「いやー、あいつ、来ないって言っていたよ」


…と、話がズレにズレて、結局私の話題は薄れていく。

え?このまま放置されるの?私。


さっきから腰が抜けて、まともに立てないし。抗議する気力もないし。

ボケーと耳を傾けることしか、今の私にはできない。





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