明るい町の奥の人
練習です。
大通りに出て三つ目の交差点を左、更にそこから三つ目の曲がり角を右へ。途端に真っ暗な街道に入る。それを恐れず進むとある一つの建物に突き当たる。
「伝言はそれだけかしら?」
扉の前の女は空を見上げ、どこかへ問う。
「ですね・・・あぁあと、たまにはこっちにも顔を出せ、と」
扉の向こう、女の後ろから一人の男が出てきた。目は眠たげで、立ち姿なんて今にも倒れそうである。
「あらあら。わかったわ。言っておいてあげる」
「助かります。では、またの機会に」
ギィィ、と扉が閉まろうとする前に、女が扉の隙間にヒールを挟む。ガッという音が響き、再び扉が開く。
「・・・なかなか危ないことをなさるんですね」
「私からも、伝言があってね」
「伝言?」
振り返らず告げる女に男はいぶかしげな視線を送る。
「えぇ」
すると女は男の方に向き直り、こう言った。
「素敵な人を紹介してくれてありがとう。って伝えておいてちょうだい」
ヒールの刺すような音を最後に、女はその場を去った。
「ふむ。素敵な人とは今回彼女を匿ったヤクザの組長だろうか・・・いやでも取り次いだのは僕だしな。もしかしたら彼女は誰か運命の人に・・・?確かに僕は常時付いてはいなかったからその可能性は・・・だとしてもなぜ僕に伝言?うぅむ・・・」
男は頭を悩ませながら扉を閉ざす。
閉ざされたそこには『私情怨恨なんでもお任せ 暴き屋鵬一』の文字が。
怪しき事務所は市街の深くで営業中。
入試用の。