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終章 ―弟子の勤め―

これは後日談になります。

まずは私の容態ですが、紅茶ちゃんが心臓の代わりを担ってくれていたお陰で、重傷ではあるものの命を落とすことはなく、入院して人工心臓に慣れる為のリハビリ生活を送っています。

紅茶ちゃんが『住み心地が悪くなった』と愚痴ってはいますが、それ以外は平穏を取り戻しつつあります。


次に協会の内部事情ですが、こちらは特に変化はありません。

お父様は相変わらず忙しそうに働いておられるし、セシルさんからは手紙で(あれ以来文通友達になりました)息災であると伺っています。

あの一件の直後は、セシルさんが責任をとって辞任すると言い出して騒ぎになったのですが、周囲から制止されて留まりました。人望があるのはいいことです。


結社の方も、痛手を被ったことで慎重になっているのか、大人しくしています。

そのまま自然消滅でもしていてくれればいいのに、と協会の偉い人たちが言っていましたが、望み薄だろうともぼやいていました。

いつの時代も、反権力派というものは必ず存在するのです。


最後に師匠の査問ですが、そちらは少々奇妙なことになってしまいました。

査問の最中は、師匠を封印処置して今後の憂いを断つとの意見が過半数を占めていたのですが、終盤になって名目上の最高権力者である会長が言ったそうです。

「彼の苦悩の発端は、魔王を討った後彼らを放置していた協会にも責任がある。時の協会が彼らに対して真摯に接していたなら、今回の騒動も防げたはずだ。今彼を罰するならば、協会としてもなんらかの責を負わねばならないだろう」

もちろん周囲は反対しましたが、そんな中で起きたのが会長の意見に賛成を示したセシルさんの辞任表明です。

セシルさんを引き留めるために、師匠への裁量は改められることとなりました。

その内容というのが、次の文です。

『木戸藍楽の魔術使用を大きく制限する。そして弟子である水川渚によく尽くすこと』

どうしてここに私の名前が出てくるのかというと、査問の最中に師匠がこう言ったからだそうです。

「心残り?それはもちろん、死に損なった……それ以外?んー、弟子を泣かせたことかなぁ」

セシルさん曰く、私は面倒を押し付ける相手として選ばれてしまったんだそうです。

つまり、魔術を制限したことで再犯は防げますし、あとは面倒――何かあったときの責任――を押し付けられる相手が欲しかったわけです。

いや、まあ、私としては師匠が戻ってきてくれるだけで嬉しいのですが。

それにしても、弟子に尽くすって変な言い回しですよねぇ。

今師匠はついでとばかりに科せられた謹慎の真っ只中なので、入院中の私は会いに行けませんが、個人的には良かったと思います。

だって、止めるためとはいえ、キ……キス、して……。

……とにかく、冷却期間が必要だと思うのですよ。


空の向こうに思いを馳せます。

もしかすると、私は師匠に残酷な仕打ちをしたのかもしれません。

いくら私が師匠と共に生きることを願おうとも、私自身は師匠を置いて死んでしまうのです。私も不死を得るというのも一つの手ではありますが、それでは師匠の死への渇望を癒せはしません。

だから、私は捜そうと思います。

師匠が死ねる方法ではなく、奇跡を打ち消す方法を。

師匠の不死性が魔術によって付加されたものならば、魔術によって打ち消せることもあるかもしれません。

奇跡を塗り潰すには、奇跡を起こすしかありません。

いつか、私も奇跡を起こしたいと願います。

それが、弟子の勤めだと思うのです。



……お母様に報告します。

好きな人が、出来ました。


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