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第4話 月下の理解者
その夜、2人は初めてまともな会話をした。
喧嘩ではなく、戦いでもない。
「お前さん、あの時ちょっとだけ、昔の力が出てたな」
「あなたこそ、もっと悪魔の力を使えば簡単に逆転できたでしょうに。なぜしなかったの?」
「……新しい肉体が弱すぎる。無理に使えば、この器が持たない」
沈黙が流れる。
「次の満月の夜だ」
煉が突然言った。
「月の光が最も強くなるとき、短時間だけ元の姿に戻れる。ほんの数分だけどな」
「……どうしてそれを教えるの?また戦うつもり?」
「戦いたくないわけじゃないが」
煉は窓の外の月を見つめた。
「今のこの姿じゃ、勝負にならん。次に戦う時は、ちゃんと翼と角を持った状態でな」
桜は煉の横顔を見た。
悪魔のはずなのに、月光に照らされたその顔は、どこか寂しげに見えた。
「……そうね。次に戦う時は、お互い完全な状態で」
それから彼らの関係は少しずつ変わっていった。
相変わらず口喧嘩は絶えなかったが、かつてのような殺意のようなものは消えていた。
むしろ、お互い唯一の「理解者」であることを、無意識に認め始めていた。




