あの頃
ねぇ わたしたち あの頃は信じ合っていたはずでしょう
柔らかな日射しや
穏やかに吹き抜ける風
丘から見下ろす限り広がる花畑には
虹のような蝶が舞っていて
まだ隣り合っていられた頃
わたしたちは確かに通じ合っていた
そこに壁など何一つとして存在せず
ただ純粋に
ただ真っ直ぐに
そっと見つめ合うことができていた
そこに影などありはせず
ただ純粋な
ただ真っ白な
そんな瞳で視線を重ねられていた
ねぇ わたしたち あの頃は想い合っていたはずでしょう
思えば曖昧な関係で
そこにあったものがどういうものだったのかは
もう思い出せないけれど
それでも見つめ合う二人の間には
誰にも消せない色が存在していて
好きなんて言葉では弱い
そう断言できるほどに
ほかのどんなものよりも確かなものだった
いつから変わってしまったのだろう……
恋だとか
愛だとか
浮かれていたわけではなくて
ただ傍にいたかった
ただ同じ景色を見つめていたかった
小さな夢が
夕暮れに溶けて
涙の奥で
音もたてず砕け散る
夜が来る前に
すべてをこの手から流してしまいたい……
ねぇ わたしたち あの頃は信じ合っていたはずでしょう
柔らかな日射し
穏やかに吹き抜ける風
丘から見下ろす限り広がる花畑
舞い踊る蝶の虹
そのどれもが愛おしいものだった
胸の奥に残された
小さな水彩画には
今もなおその輪郭
静寂の中で刻まれて……




