焦がれたこれは恋じゃない
「ハルカ先輩って白井先輩のこと好きですよね」
「ん゛ん゛っ」
待て待て。どうしてそんな話になった。私はさっきまでこの後輩ちゃんと部活の話し合いをしてたはず。
…まあ案の定雑談に発展したわけで。
それでちなみにこの後輩、いつものことだが言葉の火力が高すぎるのである。よく言えば素直、悪く言えば……
「君って本当にデリカシーがないよね…」
「今更気付いたんですか?」
「思ってたけど言わなかっただけだよ」
そうだ、話し合い兼雑談が、いつのまにか恋バナにすり替わっていたのだった(女子校で恋バナが始まるのも甚だ疑問ではあるが)。まあそこまではいいとしよう。
しかしそこで、私の友人であり部長の白井モモの名が出るのは納得いかないのである。確かに彼女のことは友だちとして好きだし、部長として尊敬してはいるけれども、恋バナにあがる道理なんてどこにもないのだ。
「で、白井先輩のこと好きなんですよね!?」
「なんでそこにモモちゃんの名前が出てくるのさー。友だちとしてはもちろん大好きだけども」
「だってハルカ先輩、白井先輩のことよく目で追ってますし、特別仲が良いわけでもないのによく一緒に帰ってるじゃないですか」
「えっっ」
え??いや、うーーーーん、確かに、モモちゃんのことは自然と目で追っちゃうな…。あとなんか、隣にいたい!って思うんだよな…。え、これ恋なの?
…いやいや!これはモモちゃんと対等でいたいなっていう気持ちで………。
あれ?というか、後輩ちゃん…
「よく私のこと見てるね?」
「えっあっいや、えーと、あっ!先輩が分かりやすすぎるんですよ!!白井先輩に対する好意だけめっちゃ抜きん出てるっていうか!!」
「嘘、私そんなにモモちゃんのこと好きだったの…?えぇ…?」
…恋??そもそも恋ってなんだ?付き合いたいとかそういうやつ?でもでも、私もモモちゃんも女の子だし…友だちのままでいいじゃん!?
あ、でも、高校卒業したらきっと会うこともなくなっちゃうんだろうな…それは寂しい。恋人だったら、そんな心配しなくていいのかな?
頭がぐるぐるする。整理が追いつかない。まったく、なんてことを言ってくれたんだこの後輩は。
…いや、しかし。
「いーーーーーっや、でもだめだよ女の子同士なんて!そうだよこれは恋じゃない!友愛!敬愛!」
「先輩、今は多様性の時代ですよー」
「〜〜〜〜〜だとしても駄目!私が受け入れられない!…と、とりあえず恋バナはおわり!!………以上っっ!」
顔が熱い。…とりあえず落ち着かなければ。
これは恋じゃない。そうだよね?
私はそそくさと部室を後にした。
*
先輩、ごめんなさい。わたし、嘘をつきました。
白井先輩への気持ちを察したのは、ハルカ先輩がわかりやすかったからじゃない。わたしがハルカ先輩のことをいつも目で追っちゃってたからなんです。
先輩、わたし、先輩のことが好きです。
でも先輩は、女の子同士じゃだめ、なんですよね。
なら、わたしはこの気持ちに蓋をして、墓場まで持っていきます。
だからせめて、
先輩が卒業するまでは、何も知らずにわたしの隣にいてください。




