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《⭐︎》国外追放される悪役令嬢らしいです


☆さらっと読めるショートショートです。


「エレディン様! 国外追放が決まったそうですね!」


 王立学園でいきなり不躾な言いがかりを付けられた私は足を止めました。

 私は、ルージェ公爵家の長女エレディン・ルージェ。そして公爵令嬢を(ののし)っているのは、聖魔法が発現して特待生として学園に通う事になった平民のアメリア嬢。

 平民が公爵令嬢に喧嘩を売るなんて、命知らずな行いだと誰か彼女に教えてあげなかったのかしら。


「婚約破棄されて家も追い出されるなんて、哀れなものですね!」


 私がいつ婚約破棄されたのかしら。


「でも仕方ないわよね! あなたはヒロインを虐めた悪役令嬢なんだから! ざまあって本当にあるのね! いい気味だわ!」


 言うだけ言って走り去るアメリアを見送ります。

 知らない言葉だらけで、侮辱されているのでしょうがよくわかりません。平民の符牒かしら?



「国外追放って、何の事かしら?」

 唖然として見ていた周りの人たちに聞くと、一人の女生徒が

「エレディン様が他国の方と婚姻の約束を結ばれた事を言っているのでは……」

と、答えました。

「平民は、他国に嫁ぐ事を『国外追放』と言うのかしら」

「まさか!」

 他の方たちも首を振っています。


「なら……不味いですわね。こんな事が相手国に知られたら国際問題ですわ」

 自分と結婚する事を国外追放と思われているなんて知られたら……。

 皆も、まだ公表されていない私の婚姻の相手がかなりの身分である事は推察したようです。


「帰ります。急いで父と国王陛下に時間を取っていただかないと」


 私は、はしたなくならない程度に足を早めてその場から去りました。






「申し訳ありません!」

 アメリアの教育係のマリス夫人が、土下座せんばかりの勢いで頭を下げます。


「いいのよマリス夫人。あなたを責めるつもりは無いの。どうぞ座って」

 王妃様が優しく勧める。ええ、アメリアの思考回路を理解しろというのも無理な話ですものね。


 ここは王宮の一室。護衛や侍従も外に出され、シンプルなテーブルを六人が囲んでいます。

 今日のアメリアの蛮行を聞いた国王陛下が、密かに王妃様と私の父とマリス夫人と、第三王子にしてアメリアの真実の愛の相手のオスカーを呼び寄せたのです。


「しかし、アメリアには困ったものだ」

「ええ、なぜ国外追放なんて思いつくのかしら」

「アメリア様は、ご自分を物語のヒロインと思ってらっしゃるのです。貧しい平民の美少女が聖女に目覚めて王立学園に通うようになり、王子様と愛し合うという」


「はあ……、アメリアの脳内の物語では、私はアメリアを虐める役なのですね」

 理解出来るような分からないような……。

「とりあえず、『婚約破棄』と言ってましたからオスカーは見事に仕事をしているようですわ。アメリアは、オスカーが私よりも自分を好きになって私を捨てたと信じているみたいです」

「当然だ」

 オスカーが胸を張りました。オスカーには、小娘にそんな勘違いをさせる事など簡単でしょう。

 そして、そこまでしてくれる王子にアメリアが夢中になるのも当然です。



 第三王子と、王女のいない国の公爵令嬢とは、他国との縁を繋ぐ要員です。私たちはどの国に行ってもやっていけるように教育されました。状況によっては「人質」となる覚悟も。

 でも、なかなか条件の合う縁組が無く、婚約者のいない私たちはよくパートナーを組んでました。


 その状況が一変したのは一年前。


 聖魔法を発現した平民の少女が現れ、オスカーは次期聖女を王家に取り込むため、アメリアに接近してたらし込み、失礼、真実の愛が生まれたと思い込ませました。


 私は、隣の隣の国の王太子の婚約者が病で亡くなったとの情報を得て、外交担当者が新しい婚約者に私を薦めている間にその国の歴史や言語や王族貴族の関係を徹底的に学び直していました。そして先日、私は正式に新しい婚約者に決まり、他国に嫁ぐ事になったと発表したのです。

 ……まさかそれを「国外追放」と思われるとは思いませんでしたけど。



「オスカー。アメリアに迂闊(うかつ)な事を言わないようにさせろ」

「ええ~。そんな無茶な」

 国王陛下の命令にオスカーが悲鳴をあげます。


「簡単よ。私が破談になったらオスカーが結婚するしかない、って言えば、何としても国から追い出したくて口を(つぐ)むわ」

 アドバイスしてあげます。


 でも、国を追い出されると思ってた私が学園の卒業パーティーで他国の王太子にエスコートされるのを見たら、アメリアが悔しがるでしょうね……。

 なんて面倒くさい聖女様。まあ、そこはオスカーに任せましょう。


「エレディンも、婚約者を亡くした王太子を上手く慰めてやれよ」

「まさか。慰めてもらうのは私よ。幼い頃から大好きだった第三王子を聖女に取られたんですもの」

「くくっ、そういう設定か」

「嬉々として後釜に収まりに来たと思われるより、庇護欲をそそるでしょう?」

 私たちを、部屋の皆が頼もしそうに見ています。


 あら、本当に悪役令嬢みたいですわね。

テンプレの悪役令嬢とか婚約破棄とか国外追放とか、内情はこんなじゃないかなという話でした。


2025年1月9日

日間総合ランキング 11位!

ありがとうございます!

今年もよろしくお願いします!

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