デート前(信次目線)
「んー、よく寝た。昨日の昼寝も合わせると、かなり寝てるな。僕」
朝5時。いつも通りの時間に起きれたのは良いんだけど、昨日は昼に4時間、夕方にまた4時間、で、昨日は23時に寝たから6時間。どう考えても寝過ぎだね。
でも、溜まっていた疲れは無事取れたかな。今日は、のばらさんと遊ぶ日だし。
のばらさんとは、昼から遊ぶ約束をしてるから、それまでは家事と瀬尾家の看病をしなくては。
「亜美、おはよ」
「おはよ、信次。休みなんだし、寝てても良かったのに」
「それは亜美に申し訳ないよ。ちゃんといつも通りやるよ」
「洗濯機は回しといたからね」
「ありがとね、亜美」
さーて、昨日は豪勢なご飯だったし、朝はさっぱりお茶漬けにしようかな。
漬物も仕込んであるしね。かぶときゅうりと瀬尾家の梅干しがある。
あられもまだ残ってたよね。それと、だし巻き玉子にしようかな。
「今日は京平、また入院食の改善担当だからなあ。大丈夫かなあ……変なジジイいるし」
「ああ、兄貴の病気の事考えたら、もう無理はしないで欲しいんだけどね」
「そうだよ、そもそも京平は医者なのに!」
「それでも出来ちゃうから、やっちゃうんだよな、兄貴」
入院食を初めて作った兄貴に対して、怒るというとんでもない人がいる話には、僕もびっくりしたからなあ。
普通はそもそも出来ないし、出来たとしたらそれだけでも御の字のはずなのになあ。
事実、兄貴が指導に入ったら、入院食は美味しくなったらしいしね。
「京平が心配だから、私も院長に頼んで、入院食の改善担当にして貰おうかなあ……」
「怒られる人が増えるだけだし、亜美が怒られたら兄貴が……」
「あ、それもそっか。悪いジジイとは言え、やっちまうのはマズいもんね」
そう、亜美に何があった時の兄貴は、誰も止められないから、絶対何かが起きちゃう。
その爺さんの命も保証は出来ない。
ただでさえ正義感の強い人だから、理不尽な事に関しては歯向かうタイプだし。
「何事もない事を祈ってるね」
「うん、私達に出来るのはそれだけだよね」
頼むから爺さん、命が惜しければ亜美を巻き添えにしちゃダメだからね。
未だに兄貴、日比野さんの事許してないし。
当人同士は、ちゃんとお友達に収まったのにね。
まあ、ぶっちゃけ僕も許してないけど。
「よし、朝ごはん完成! 洗濯物干してくるね」
「ありがとね、私もあとちょっとで完成するよ」
兎に角、亜美が恋愛関係でもう傷付かないといいな。揺るぎない愛があるからこそ、なんだけど、亜美は優しいから相手の事を考えすぎて、傷付いてしまうから。
兄貴が裏切る事はないから、もう誰も亜美を好きにならないといいんだけど。
いや、亜美だから、兄貴に裏切られても愛し続けそう。変なとこお父さんに似てるよね。亜美って。
そんな事を考えながら、僕は洗濯物を黙々と干すのであった。
「よーし、お弁当完成。今日は2個だから早めに仕上がったぞ」
「僕もいま干し終わったよ」
「まだちょっと早いから、コーヒータイムにしよっか」
「そうだね。まだ早いしね」
そんな訳で、僕は亜美と僕の分のコーヒーを淹れた。朝のコーヒーって美味しいよね。
因みに僕達は兄貴の影響で、コーヒーはブラック派。
「あー、信次の淹れてくれたコーヒー美味しい。ありがとね」
「どういたしまして」
よく考えたらこの後お茶漬け食べるのに、コーヒーなんだよね僕達は。
もう何かルーティンと化してるよね、この時間も。ほっこりタイム的な感じで。
「そろそろ京平起こしてくるね」
「じゃあ兄貴の分のコーヒー準備するね」
そして、亜美が兄貴を起こしにいくのも、もうルーティンだね。
たまに来るのが遅い時は、そう言う事なんだろうなあ。って察してる。
あ、今日もちょっと遅いから、そういう事だね。
「おはよ、信次」
「おはよ、兄貴」
「最近亜美達が朝寝かせてくれるから、頭スッキリしてきたよ」
「それでも足りてないから、昼もなるべく寝とくんだよ」
「そうだよ、明日はデートなんだから」
「今日は寝れるだけ寝なければ」
とは言っても、早起きは厳しいだろうなあ。兄貴の体質とは言え、ちょっと亜美に同情する。
でも、亜美は兄貴のそんなとこも受け止めている。仮に寝坊しても、怒らないだろうなあ。
「昨日は沢山食べたから、お茶漬けちょうどいいね。美味しい」
「俺くらいの歳になると、胃もたれがやばいから助かるよ。昨日も胃薬飲んだし。茶漬け美味え」
「兄貴も、もう若くないもんなあ」
見た目は兎も角、中身はどんどんおっさんになってく兄貴だけど、なるべく健康でいて欲しいな。ずっと元気でいてね。
「ごちそうさまでした」
「胃もたれしてた割にはペロリと食べたね」
「信次の茶漬け美味いからな」
「私もごちそうさま。だし巻き卵も美味しかったよ!」
なんだかんだで食欲はあるようで良かった。
亜美も兄貴も、綺麗に完食してるや。
それがやっぱり1番嬉しいよね。
今日は余裕あるし、ちょっとまったりしてから支度しようかな。洗面台も混み合うしね。
「京平寝癖やばいよ!」
「亜美もやばいけどな」
うん。2人ともやばいからちゃんと直してね。
◇
「「いってきまーす」」
「いってらっしゃーい」
さて、そろそろ支度して瀬尾家に行こうかな。
海里もお腹を空かせてるだろうし。
皆少しずつ良くなってるけど、今日はどうかな?
僕は歯を磨いて、顔を洗って、普段着に着替えた。デート前に服は変えるつもり。
瀬尾家にいくと、案の定海里が出迎えてくれた。
「信次ー、ゴホゴホ、お腹減ったー」
「海里、寝てなきゃダメでしょ。すぐ作るから待ってて」
「折角のイブなのに風邪治んねえ」
「治したかったら、素直に寝るんだね」
海里のバカ。そうやって度々起きるから、治るものも治らないんだよ……。
海里のお母さんとお父さんの容態はどうかな?
僕は、海里のお母さんの部屋をノックした。
「おはようございます。信次です」
「ああ、信ちゃん。どうぞ」
「お加減はいかがですか?」
「まだちょっと熱があるかねえ。朝から海里がうるさくてすまないね」
「いえ、いつもの事なので大丈夫です」
良かった。大分熱は引いたみたい。あと少しって感じだね。
「ご飯は食べれそうですか?」
「食欲は戻ってきたから、普通に食べれるよ」
「じゃあ、朝ご飯作りますね」
お、食欲は完全復活したみたいだね。これなら治りも早そうだな。
僕は海里のお母さんの氷枕を変えた後、続けて海里のお父さんの様子を見に行く。
まずはノックをして、と。
「おはようございます、信次です」
「お、信ちゃん。どうぞ」
僕が部屋に入ると、海里のお父さんは仕事にいく支度をしていた。
「信ちゃんのお陰で治ったよ。ありがとな」
「それなら良かったです。顔色も良くなってますもんね」
海里のお父さんは病弱だから、悪化しないか心配だったけど、悪化せず無事に治って本当に良かった。
「後は芳子と海里か。海里、素直に寝ないからなあ」
「本当に。普通に寝てれば治るものを」
お腹空いたからってわざわざ出迎えたり、勝手に勉強したり、上げ出すとキリがないけど、熱あんのに色々やってるもんなあ。
「今、灯がキッチンにいるから、手伝ってくれると嬉しいな」
「解りました!」
という訳で、海里より先に灯の手伝いをする事にした。
灯は、皆の朝ご飯を作っていた。
「おはよ、灯」
「あ、信ちゃんおはよ。いまお味噌汁出来たとこだよ」
「じゃあ、おかずは僕が作るね。後、文句大魔王の海里のお粥も」
「ありがとね、じゃあ私支度してくる!」
灯、自分の支度もそこそこに料理してたんだなあ。
お父さんに、無理をさせたくなかったのかな。優しいね、灯。
さーて、こっからは任せてね。
ほうれん草のお浸しと、卵焼きと、鯵の開きにしようかな。
並行して、海里のお粥も作ろう。
と、考えてる間に、ほうれん草のお浸し完成。
よーし、少しずついい感じに出来て来たぞ。
まずは海里のお粥が出来たから、持って行くか。
「海里ー。取り敢えず鰹節粥にしたよー」
「待ってたよ、信次! 早く早く!」
「熱いから気を付けろよ」
「あちいいいい。でも美味し」
あー、早速熱いって言ってるよ。おバ海里だなあ。ゆっくり食べなきゃ。
後は氷枕も変えてっと。まだ海里、熱高いね。
咳も治らないし、本当寝て欲しいよ。
「ご飯食べたら薬飲んで、さっさと寝ろよ」
「うう、イブに遊びにも行けないなんて」
「まずは風邪を治さなきゃね」
さてと、朝ご飯完成させなきゃ。
と、思ったら、準備の終わった灯が、続きを作ってくれていた。なんなら、完成させてくれてる。
「灯、ありがとね」
「えへ、なんか共同作業になったね」
「確かに」
こうして出来上がったご飯を、僕は並べる。
灯は、お母さんの分を運んでくれた。
「おねえちゃん、おはよ」
「おはよ、縁」
「お、縁ちゃん、自分で起きれるんだ。えらいねえ」
亜美なんて21歳で、やっと起きれるようになったのに偉すぎるよ。しかもかなりうるさいアラームで、だし。
「おはよ、灯、縁。ご飯ありがとな」
「おはよ、父さん。ほとんど信ちゃんが作ってくれたよ」
「そうか、信ちゃんもありがとね」
「いえいえ」
何はともあれ、手助けが出来て良かった。
「じゃあ僕は、昼ご飯と夜ご飯作ってるから、皆ご飯食べててね」
「今日出かけるらしいもんね。寂しいなあ」
「灯は今日も仕事でしょ」
「だってイブなのになあ」
そうだね、イブなのに海里とお母さんは風邪引いてるし、パーティー気分ではいられないよね。
でも今日は、ごめん、灯。僕にとって、一世一代の大勝負をするから。悪く言えば、灯に構ってる暇がない。
僕は、灯の声が聞こえていないフリをした。
意地悪だね、僕。
◇
「海里、ご飯は冷蔵庫の中にあるからね」
「正直、取りに行くのしんどいけど、頑張るわ」
そうだよなあ。海里、まだ熱高いし、そらしんどいよね……。
いいや、のばらさんなら解ってくれるよね。
「は、流石にキツそうだから、昼もここにくるよ。夜は兄貴かもだけど」
約束の時間は12時だけど、事情を話してちょっと遅くしてもらおう。ご飯は僕の奢りで、で、許して貰えると信じて。
「でも、信次予定あるんだろ?」
「優しい人だから解ってくれるよ。僕の愛した人だから」
「え、ま、信次、そう言う事なの?! 頑張れよ」
「ありがと。どうなるか解らないけどね」
僕は早速のばらさんにライムする。
「ごめん、瀬尾家の看病があるから、待ち合わせ12時半にしてもらってもいいかな?」と。
あ、ライム電話が架かってきた。のばらさんだ。
『信次くん、いま大丈夫ですの?』
「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
『実は、のばら、楽しみすぎて……』
あ、嫌な予感がする。僕は瀬尾家の外に出た。
すると、思っていた人と視線が合った。
『もう、来ちゃいましたの』
今は朝10時。早すぎるよ、のばらさん!
のばら「てへっ、ですわ」
信次「どうしよ。海里放置して遊びたい欲が」
海里「見捨てないでええ」




