クリスマスパーティー
「「ただいまー」」
「あれ、信次まだ帰って無いのかな?」
「そうだね、部屋にもいないね」
17時10分、我が家に帰ってきた私と京平は、パーティーの準備をする為に少し早足で帰ってきたのだけど、帰って来てるはずの信次が居ない。
まだ瀬尾家にいるのかな? 私は海里くんにライム電話をしてみる。
『ちっす、亜美さんゴホゴホ』
「風邪ひいてる時にごめんね。信次、まだそっちに居るかな?」
『ああ、疲れてたみたいでうちで寝てるっすよ。18時くらいにご飯作って貰おうかなあって思ってたんで、それまで寝かせとこうって』
「ごめんね、信次昼寝だと中々起きないもんね」
『いえいえ、うちこそ連日の看病感謝っす。だから、心配しないで下さいね』
「うん、了解。じゃあね」
もう信次ってば。瀬尾家でぐーすか寝てるんじゃないよ。迷惑をかけおって。
あいつ、昼寝みたいに軽く寝るのが出来ないタイプで、寝るとガッツリ寝ちゃうからなあ。
「そっか、信次は瀬尾家で寝てるか。それなら良いんだけど」
「全く、看病しに行った人間が寝てどーするよ」
「冷蔵庫見ると買い物にも行ってくれてるし、疲れが溜まってたんだろうな。パーティーまでまだ時間あるし大丈夫大丈夫」
京平はそういうと、手洗いうがいをして、エプロンに身を包んだ。
京平、すっごいワクワクしてる。料理作るの楽しみにしていたもんね。
「私はなんかやる事ある?」
「そうだなあ、部屋の飾り付けでもしてもらおっかな?」
「ラジャー!」
京平が昨日慌てて出したツリーも、クリスマスの訪れを教えてくれてるみたい。
私は押入れから、クリスマスの飾り付けを出して、ツリーから部屋までを飾り付けしていく。
なんだかんだで毎年パーティーはするから、飾り付けは揃ってるんだよね。
一方で京平は、ローストチキンを焼きながら、ケーキを焼こうとしている。
流石にケーキはキツいのでは? とも思ったんだけど、京平めちゃくちゃ手際が良い。
出来るって確信があって作ってるみたいだね。
あ、ローストチキンが2本出来た。次のローストチキンを作り始めたぞ。
って、私は飾り付けしなきゃでしょ!
ダメだなあ、ついつい京平を見ちゃうよ。目で追っかけちゃう。
こうなったら、早く飾り付けして、じっくり京平を見ちゃうもんね!
決意した私は早い。部屋の周りから飾り始めて、風船を膨らませたり、ツリーを飾ったり。
あっという間に飾り付けは完了した。
「終わったよん!」
「じゃあ亜美は休んでな」
「はーい」
ふへへ、休みながら京平見ちゃうもんね!
ふむふむ、ローストチキンは仕上がってい、て。
「こら亜美、覗くんじゃないの」
「ええ、いいじゃんケチ!」
「ケチじゃないの。楽しみが減るだろ?」
「ぶー」
私の願いも虚しく、私は京平にヒョイっと摘まれて、キッチンから追い出されるのであった。
もー!!
しょうがない。写真整理でもするか。前沢山撮ったの、チラ見すらしてなかったんだよね。
お、のばら可愛いなあ。私はあほ面だけど!
おお、これは私も可愛いんじゃない? のばらもやっぱり可愛いし。
あ、こういう写真って京平は欲しいものなのかな?
でも私とのばらしか写ってないしなあ。
やっぱり京平とペアで写ってる方が嬉しいかな?
一応聞いてみるか。恥ずかしいけど。
「ねぇ、京平って、私の写真欲しい人?」
すると京平は勢い良く私の所にやって来て、私のスマホを凝視する。
そして私のスマホを奪うと、ひょいひょいっと写真を選んで、自分のスマホにエアドロッポでダーッと送る。
あ、欲しい人なのね。
「そう、欲しいの。これからは写真撮ったらすぐ送れよ」
そう言って京平は、スマホを私に渡して、キッチンに戻る。
思う以上に愛されているんだな、私。なんだか嬉しいや。
でもね、京平。私も京平を愛してるから、私も写真欲しいんだぞ!
今日寝る前におねだりしよっと。小さい頃の京平の写真とか、見てみたいし。
んー。やる事がないなあ。暇だなあ。
もはや寝るしかないのでは?
私はソファーにごろ寝しながら、そんな事を考えていた。
そんな時、暇つぶしになりそうな人が帰って来た。
「ただいまー」
「「おかえりー」」
信次が帰って来た。時計を見ると、18時15分。瀬尾家のご飯を作り終わったのかな?
「信次、瀬尾家で寝ちゃダメでしょ!」
「ごめん、無茶苦茶眠たくてお言葉に甘えちゃったよ」
「最近疲れが溜まってんな。今日も早めに寝ろよ?」
「うん、明日は遊びに行くしね」
そうだよね、明日はのばらと遊ぶんだもんね。
のばらを楽しませるプランとか、ちゃんと考えてんのかなあ?
そもそも信次、女性と遊ぶのも初めてなんじゃあ?
のばら、つまらんかったら途中で帰るんじゃぞ。
「兄貴、手伝う事ある?」
「全然ないから寝てていいぞ」
「じゃあ、部屋で勉強してるね」
「私はソファーで寝とこ。おやすみ」
「こら亜美、ちゃんと布団で寝ろよ!」
「ダメだよ兄貴、もう亜美寝てる」
「全く、しょうがないな」
むにゃむにゃ。京平の腕が、私の身体を持ち上げてるや。
気持ち良いなあ。なんか安心出来るの。
いつもこの腕で、守ってくれてありがとね。
「京平、愛してるよ。むにゃむにゃ」
「亜美……」
京平は、優しくキスをしてくれた。
◇
「亜美、そろそろ皆来るから起きな」
「ふわあ、おはよ。京平」
「おはよ、亜美」
京平は起きたての私を、ギュッと抱きしめる。
「京平?」
「亜美が可愛すぎるからいけないんだぞ」
「じゃあ、私も抱きしめよっと」
「ちょ、歯止めが効かなくなるじゃないか」
「へへ、京平が格好良すぎるからいけないんだぞ」
そう言うと京平は顔を真っ赤にする。格好良いって、言われ慣れてないのかな?
そんなこんなで、私達は部屋を出た。
「あ、おはよ、亜美」
「おはよ、信次。すっかり寝ちゃったよ」
「兄貴、何もやらせてくれなかったもんね」
「だって自分で作りたかったんだもん」
そして、最初の客人がやってきた。信次が真っ先に対応してくれた。
「あ、灯に縁ちゃん、いらっしゃい」
「今日は招待ありがとね。楽しもうね、縁」
「うん、たのしもーね」
私も遅ればせながら、挨拶をする。
「いらっしゃい。今日はよろしくね」
「亜美さん、私、海里の姉で灯です。宜しくお願いします」
「畏まらなくていいよ。私のことは亜美でいいし、タメ語でいいよ」
お、コミュ障の私にしては、すんなり言えたぞ!
「じゃ、私のことも灯って呼んでね」
「うん、宜しくね。灯」
海里くんのお姉ちゃんなのに常識あって良い子だなあ。良い意味で似てなくていいね!
「あ、プレゼントどうしたらいい?」
「縁ももってきたよー」
「あ、私が預かるよ。ありがとね」
さーて、皆のプレゼントは何処に置こうかな?
「京平、皆のプレゼント何処においとく?」
「クリスマスツリーの下に置いといて」
「了解ー!」
そして、次第に人も集まってきた。
「亜美ー! お邪魔しますわ」
「よ、亜美。今日は宜しくな!」
「のばらに蓮、いらっしゃい」
「ほら、友、亜美来たぞ」
「え、友くんどこ?」
と、友くんを探し切る前に、スチャーって音がして、友くんが私の目の前に土下座姿で現れた。スライディング土下座だ。
「亜美さん、この前はごめんなさい。傷付けるつもりは無かったんです」
「私こそ、泣いちゃってごめんね。パーティーの後も、また話そ」
「はい、僕も話したかったので嬉しいです」
パーティーの後、ちゃんと友くんに言わなきゃ。友達でいようって。
友達で居続けてくれるといいな。
あ、よく見たら友くん、髪解いてる。久しぶりに髪解いた姿見たなあ。
「じゃあ、皆あがってって。プレゼントは、クリスマスツリーの下に置いてってね」
「あ、亜美へのプレゼント、いま渡しますわね」
「私ものばら達へのプレゼントあるから、持ってくるね」
私にも家族以外にプレゼントを渡せる人が居るのは、幸せだなあ。皆、ありがとね。
「はい、これはの、ばら、に」
「亜美、プレゼント大きくありませんこと?!」
「梅野さんにお勧めされたからさ」
「なんだか解りませんが、有難うございますわ。はい、亜美へのプレゼントですわ」
「ありがとね、のばら。開けてもいい?」
「どうぞ。私も開けますわ」
私達は、お互いにプレゼントを開けた。
「お、可愛い服! 25日のデートの日に着てこ! 有難うのばら」
「な、生ハムの原木?! う、嬉しいけど、びっくりしましたわ!」
「亜美、何プレゼントしてんのさ!」
あ、私、ぶっ飛びすぎたかな? おかしいぞ、梅野さんのお勧めを買ったのに!
「重たいからうちで預かるよ。のばらさんのお弁当に使わせてもらうね」
「有難うございますわ。嬉しいですわ」
あ、信次のお陰でなんとかなったか。良かった良かった。
「あ、蓮と友くんにもあるんだ。どうぞ」
「有難うございます。はい、亜美さんへのプレゼントです」
「ありがとな、亜美。俺も亜美にプレゼント、ほらよ」
「え? 蓮も? ありがとね」
「せーので開けよーぜ。せーの!」
私達はお互いへのプレゼントを見る。
「お。友くんはブレスレットかあ。可愛い! ありがとね。蓮は、イヤリング! こっちも可愛い! ありがとね」
「良さげなボールペンじゃん。仕事で使うわ。有難うな。後、靴下面白えな」
「確かにおしゃれですね。有難うございます」
2人とも私には勿体無い可愛いのプレゼントしてくれた。嬉しいなあ。
ただ、京平が何故か後ろで睨みつけてきてるのが、気になるけど。
「プレゼント置き終わった人から、ご飯食べ始めてていいよ。人数分あるし」
「うわ、深川先生、めちゃ豪華な飯じゃん」
「美味しそうですわ」
「京平さんすごいなあ」
「おいしそーう!」
と、数人がご飯を食べ始めたとこで。
「亜美ー、遅くなってごめんね!」
「京殿、お招きありがとなのじゃ!」
「深川くーん、今日はありがとね」
朱音と麻生夫婦がやって来た。これで全員揃ったかな?
「よー、来てくれてありがとな、麻生に愛さん」
「朱音ー、来てくれてありがとね。これプレゼント!」
私は朱音にプレゼントを渡した。喜んでくれるかな?
「うっそ、ありがと! 私も亜美に。はい、どーぞ!」
「え、朱音も用意してくれたの? ありがとね」
「招待して貰ったしね。開けてみて」
私は朱音のプレゼントを開けてみた。
「あ、朱音も髪飾りなんだね。しかも可愛い」
「亜美のくれた髪飾りも可愛いな。なんだ、私達気が合うね」
「これなら髪が短くても、おしゃれ出来るもんね」
皆可愛いプレゼントで嬉しいなあ。私の事を考えて選んでくれてるのが伝わって、すごく嬉しいな。
「あ、プレゼント交換用のプレゼントはどうしたらいい?」
「クリスマスツリーの下に置いといて」
「風ちゃん、私達も置きにいこっか」
「そうじゃな。よいしょっと」
あ、麻生先生、ワインボトルだ。しかもこれ、絶対高いやつじゃん。豪華なプレゼントだなあ。
でも京平は、すごく心配そうな顔してる。
「麻生、これ今出したやつか?」
「そうじゃ、だからブドウ糖が欲しいのじゃ」
「ファムグレ持ってくるから待ってろよ」
あれ、いま、出したやつって言ってたよね? もしや……。
「そ、風ちゃんの異能。ワインボトルを出す事が出来るの。良いワインだすと、低血糖になっちゃうんだけどね」
「ちょ、危ないやつ!」
「本当だよ、ほら麻生。ファムグレ」
「おお、ありがとな京殿」
「ご飯もあるから、沢山食べとけよ」
と、色々あったけど、これで全員揃ったね!
「皆グラス持ってるかー?」
「僕達未成年は、いまシャンメリー開けたよ」
「シュワシュワしてる」
「あ、信次、俺もシャンメリーちょうだい」
「兄貴禁酒中だもんね。はい」
「ありがとな、信次」
京平と信次と縁ちゃんは、シャンメリー。他の皆は、蓮が持って来たシャンパンを待っていた。
「今開けるからな。よいしょ!」
シュパーン! と、シャンパンの開く音が響き渡った。うん、いい音だね!
そして、飛んでったコルクは京平の頭にごっちんした。あちゃあ、痛いだろうなあ。
「痛い……」
「京平!」
「深川先生、すみません!」
「や、大丈夫。気にしないで」
「ん。じゃあ、シャンパン欲しい人グラス持っといで」
シャンパンは欲しいけど、それよりも京平だ。すぐ手当しなきゃ。
「大丈夫? 京平」
「おでこに当たったわ」
「消毒液塗るね」
「うは、沁みる。痛え」
「我慢して。いま絆創膏貼ったからね」
ふー、これで応急処置は終わった。シャンパンは無くなっちゃったけど、京平の怪我が酷くなくて良かった。
「信次、私もシャンメリーちょうだい」
「相変わらず兄貴が1番だよね、亜美は」
信次は呆れながらも、シャンメリーを注いでくれた。
「それじゃあ、皆!」
「かんぱーい!!!!」
こうして、パーティーは幕を開いたのであった。
「京平はソファーに座って休んでなよ。私、京平の分もご飯持ってくるね」
「頭痛いし、疲れてたから助かるよ。ありがとな」
えっと、ローストチキンとブロッコリーとコーンスープと、チーズフォンデュも!
まずはこんなもんかな。うーん! めちゃ美味しそう!
ご飯を取ってると、のばらが話しかけてくれた。
「亜美、シャンパン飲み逃したでしょ? のばらのあげますわ」
「え、いいの? ありがとね、のばら」
「深川先生と楽しく過ごすのですわ」
のばら、優しいなあ。しかも周りをよく見ているし。シャンパン、ありがたく頂くね。
「京平、おまたせ。一緒に食べよ」
「おう、食べよ食べよ」
「「いただきます」」
私は真っ先にローストチキンを齧り付く。京平のローストチキンね、甘すぎないからすきなんだ。焦げ目も美味しいし。
「美味しいー! ありがとね、京平」
「喜んで貰えて嬉しいよ」
「沢山料理作ってくれてありがとね」
「皆楽しんでくれてるといいな」
初めて私の友達をパーティーに誘ったけど、周りを見渡してみても、皆楽しんでくれてるみたい。
いつもの家族とのパーティーも楽しいけど、皆で騒がしいのも楽しいね。
「亜美も皆のとこに行ったらどうだ?」
「やだ、京平といたいもん」
「嬉しいけど、亜美はいつも俺が1番なんだな」
「当たり前でしょ。愛してるもん」
「バカ、人前で照れる事言うなよ」
その瞬間を、私達は激写された。犯人は、麻生先生だ。
「麻生、何撮ってるんだよ。後でよこせよ」
「仲良き2人が美しくてつい、な」
「まだ2人の写真少ないから嬉しいな」
「お、じゃあもっと撮らねばな。てや!」
そう言って、麻生先生は沢山写真を撮ってくれた。
「私も、麻生先生と愛さんとの写真撮りますね」
「感謝じゃ! めぐたーん、おいで」
「なあに? 風ちゃん」
「亜美殿が写真を撮ってくれるそうじゃ!」
「嬉しい! チキン齧り付いたのとか撮って欲しいな」
中々独特なシュチュエーションも交えながら、私は麻生夫婦の写真を撮った。2人とも仲良いよなあ。
「ありがとね時任さん、深川くんと仲良くね」
「はい、私からは絶対離しません」
「バカ、俺だって離さねーよ」
京平は照れ臭そうに手を繋いでくれた。なんで京平に触れられると、安心出来るのかな。すごく嬉しいや。
私もそんな京平の手を握り返した。
「じゃあ、そろそろお待ちかねのプレゼント交換いくぜ!」
「いぇーい! でも、どうプレゼント決めるの?」
蓮は、ふっふっふと笑い、くじ引きを取り出した。
「すでにプレゼントには、番号を付けてあるから、くじを引いてプレゼントを決めるのさ」
「右回りから引いてけばいい?」
「そうだね、よろしくう!」
てことは、私達は最後だね。誰のプレゼントになるのかなあ? 楽しみだなあ。
「なあなあ、麻生の当たったら呑んでもいい?」
「え、ダメだけど」
「やっぱダメかあ……」
禁酒頑張ってね、京平。これも京平の身体の為なんだからね。
「ほい、亜美も引いて」
「ていや!」
「ラストは深川先生どうぞ!」
「ほい!」
一体誰のが当たるのかな? ドキドキするね。
「じゃ、皆、自分の引いた番号のプレゼントを持ってって!」
「えっと、私は10番だ」
「俺は7番かあ」
私達はプレゼントを取りに行く。
「お、これだね。何かな?」
私の引き当てたプレゼントの中身は、膝掛けだった。サイズも大きめで温かそう。
「実はそれ、俺の。よく引き当てたな」
「京平のか。それはめちゃくちゃ嬉しい! 大切に使うね」
「ありがとな、俺のはクッキーの詰め合わせだな」
「あ、それ僕のだ。兄貴クッキー好きだしちょうど良かったね」
京平のは、信次が選んだクッキーの詰め合わせ。京平クッキー好きだから、かなりベストなプレゼントを引き当てたね。
「えっと、僕は4番か。あ、これは可愛い」
「あ、それ縁の絵だ。クリスマスを描いたんだって」
「ありがとね、縁ちゃん。大切にするね」
「どういたしまして」
信次は笑顔で縁ちゃんを抱きしめた。縁ちゃんもなんだか嬉しそう。良かったね。
「えっと、縁は3番だ! あ、おいしそうだよ!」
「あ、それのばらのですわ。チョコレートにしましたの」
「ありがとね! のばらおねえちゃん」
のばらはチョコレートにしたんだなあ。
のばらの選んだチョコとか美味しいだろうなあ。
また後で、どんなメーカーのか聞いてみよ!
「のばらは1番ですわ。あら、ハンカチですわ」
「それは僕ですね。普段使い出来るものにしました」
「まあ、ありがとうございますわ」
友くんはハンカチかあ。おしゃれな友くんらしいね。のばらにも似合ってる。
「えっと、僕は8番ですね。あ、ブーツのお菓子です。可愛いですね」
「それは私だね。おうちで楽しく食べてね」
「灯さん。ありがとうございます」
お、友くん既に灯とも話していたのかあ。私は、自分で京平と居ることを選んだけど、少しは友達とも話すべきだったかなあ。
今更ながら、ちょっと後悔したりして。
いや、でも怪我した京平をひとりぼっちなんて、無理だったから仕方ないね。
「私は9番。やった! ワインだ!」
「おお、灯殿が当てたか。チーズや肉との相性が良いワインじゃぞ」
「両親の風邪が治ったら、一緒に飲もっと!」
京平が密かに狙ってたワインは、灯が引き当てたみたい。灯、お酒好きみたいだね。凄く嬉しそう。
「ふむ、我は2番じゃな。と、文房具セットじゃな。ちょうど蛍光ペン切らしてたから有難い」
「あ、それ俺っす! 使い勝手いいかなあ、って」
「いくらあっても困るもんじゃないし、有難うなのじゃ」
蓮は文房具セットかあ。意外と現実的なプレゼントだなあ。あ、私も蛍光ペン切らしてたや。病院の売店で買わなきゃ!
「えっと、俺は6番。なんじゃこりゃ、ヘアワックスか」
「あ、それ私ー。麻生先生に当たったら、面白いかなあって思って」
「使えなくて困るだけだろ、バカ朱音」
「ふむ、確かに。我は使えんな」
朱音ウケ狙いで選んだのか! でも蓮も、色々なワックス試しても髪が跳ねまくるから、使えるのかなあ? 結果はまた聞いてみよ。
「私は5番っと。あ、ママレードジャムだ!」
「これは私ね。手作りだから、好みの味だといいんだけど」
「めぐたんのジャム美味しいからすき! 有難うございます」
愛先生、家庭的だなあ。ジャムを手作りかあ。
私も最近お菓子作るし、ジャム作りチャレンジしてみようかな?
「最後は私の11番で、時任さんのね。あ、バウムクーヘンだ。風ちゃん、またお茶しようね」
「そうじゃな。めぐたんのジャムとも相性良さそうじゃしの」
おお、喜んで貰えて良かった。夫婦で仲良くお茶してくださいね。
「では、宴もたけなわではありますが、これにてお開きにしたいと思います。深川先生、お料理と場所の提供有難う御座いました!」
蓮が締めの挨拶をしてくれた。
「久々に沢山料理作れて楽しかったよ」
「それじゃあ、解散!」
あんまり友達とは話せなかったけど、皆の笑顔が沢山見れて良かったな。
また皆とパーティーが出来たらいいな。
「亜美、ありがとね。信次くんは、また明日ね」
「うん、また明日ね。のばらさん」
「のばら、ありがとね」
「信ちゃん、明日のばらさんと遊ぶの?」
「うん、明日は早めに行ってごはんだけ作っとくね」
「ふーん、了解」
およ? なんか灯がちょっと不機嫌になった気がした。
信次が瀬尾家を放っておいて、遊びに行くのが嫌なのかなあ?
これは京平にも相談しとくか。私が中抜けして看病しに行ってもいいしね。
「じゃあ、信ちゃん、亜美、またねー」
「またねー」
「灯、縁ちゃん、またね」
「じゃあねー! 灯」
続いて、灯と縁ちゃんも帰っていく。
「亜美、おつおつー!」
「亜美、今日はありがとな。じゃあな」
「朱音、蓮、またねー!」
今日は朱音の違う一面が見れて良かったな。笑いを取りに行く性格だとは、思わなかったもんなあ。
蓮も、率先してパーティーを纏めてくれてありがとね。本当は私がやらなきゃだったのに。
「深川くん、今日はありがとね」
「またご飯にでもいこうぞ」
「ありがとな、またなー」
麻生夫婦は手を繋いで、仲良く帰っていった。
私もいずれは、あんな夫婦になれたらいいな、なんて。
「じゃあ、友くん。ちょっと話そうか」
「はい、僕も話したい事があったので」
私達は家の外に出て、話す事にした。
夜風が冷たいから、手短に、でも、しっかり話したいな。
「亜美さん、この前はごめんなさい」
「それはもういいよ。ショックではあったけど」
「信じてくれていたのに、その、耐えきれなくて」
「私の事、好きになってくれてありがとね」
これは本当の気持ちだよ。自信のないちゃらんぽらんな私なのに、好きになってくれたのは嬉しかったよ。
そして、大切な本音を言わなきゃ。
「でもね、私、京平の事愛してるの。きっと嫌われたって愛してるし、何があっても、私から京平を裏切ることは、絶対ないから。だから、友くんとは付き合えない」
「何があっても、愛するんですね」
「うん……」
あれ、何で私泣いてるんだろう。本音を言っただけなのに。ダメだ、どんどん涙が溢れて出て止まらない。言葉も出てこないよ。
「そんな事だろうと思ってました。亜美さん、本当に深川先生を愛してますもんね」
「うん、京平しか愛さない。私は」
「解りました。もう僕から亜美さんを追いかけるのはやめます。これ以上、傷付けたくないから」
気持ちに応えられなくてごめんね。私こそ、傷付けてしまってごめんね。
「でも、友くんは私にとって大切な友達だから、これからも友達で居たいの」
「僕も、それは変わらないです。亜美さん以上に、大切な友達はいないから」
「ごめんね、友くん」
「握手しましょ、亜美。仲直りの」
「うん、友」
私達は握手した。これからも友達として、仲良く過ごしていこうね。友達として、大好きだよ、友。
すこし、友の手が震えている。ごめんね、いっぱい傷付いたよね。
「それじゃあ、また病院で。たまには蓮とのばらさん交えて遊びましょうね」
「友、ありがとね!」
友は、少し笑って、帰っていった。
ごめんね、そしてありがとね。これからも宜しくね、友。
「俺の好きも、亜美を傷付けるだけかもな……」
「諦めるの? 蓮」
「亜美がここまで真剣に、深川先生の事を思ってるなんて。嫌われても愛してる、ってなんだよ」
そんな私達を見ていた人影に、私は全く気付かなかった。
だって、私はただ、ひたすら、泣いていたから。
泣いたって、どうしようもないのにね。
ひたすら泣いていたら、心配そうに声が掛かった。
「亜美、大丈夫……ではなさそうだな」
「京平……私、最低だよ」
京平が中々帰って来ない私を心配して、外まで様子を見に来てくれたみたい。私は罪悪感でいっぱいだった。
でも、やっぱり苦しかったから、京平を抱きしめた。嫌な女だな、私。
「友に、友達で居ようねって言えたの。でも、手が震えてて、私、傷付けちゃった……」
「俺からこれを言うのは、何様感あるけど、亜美は俺を、その……」
「うん、愛してるよ」
うん、それだけは揺るぎないよ。京平を愛してるよ。
「亜美はそれを正直に告げただけだから、罪悪感を抱く必要はないよ。きちんと言えたんだろ?」
「うん。ちゃんと言ったよ」
「だったら、笑っていればいいよ。そうじゃなきゃ、日比野くんも前に進めなくなっちまう」
そうだね、泣いたって気持ちに応えられるようになる訳でもないし、逆に友が罪悪感に囚われてしまうよね。
寧ろ、友からみてもムカつく位幸せで居なきゃね。
実際、京平は私を幸せにしてくれてるもん。
「ありがと、京平。ちょっと落ち着いた」
「家に入って温まろう。亜美、まだケーキ食べてないだろ?」
「え、でも間食は……」
「今日はクリスマスパーティーだろ、特別」
久々のケーキ、しかも愛してる京平が作ったケーキを食べられるなんて、幸せだね。
私は京平と手を繋いで、家の中に入っていった。
家に入ると、信次も心配そうに私を見つめる。
「おかえり、亜美。気にする事はないんだからね」
「ただいま、信次。うん、そうだよね」
「ホットミルク作ったから、皆でケーキ食べよ」
「なんだ、信次も食べてなかったのか」
「ケーキは家族で食べたいな、って」
ちょうど3つ残ったケーキが、家族の絆みたいだね。
凄く温かい気持ちになるよ。ありがとね。
「「「いただきます」」」
「京平の作るケーキって、甘くどくなくて、優しいからすきだなあ」
「間食ダメな亜美でも、食べられるように作ってるしな。砂糖控えめ」
「そういう料理得意だよね、兄貴って」
糖尿病の人でも美味しく食べられるものを、作れるように勉強したんだろうなあ。
そんな優しい京平が主治医で良かったな。私も勉強頑張らなきゃ。
「ごちそうさまでした。美味しかったよ」
「亜美が落ち着いたようで良かった」
京平は優しく笑ってくれた。どんな時でも、私の味方でいてくれる優しい京平に、もう何度も助けられてるね。ありがとね。
「俺もごちそうさま。亜美、お風呂入ろっか」
「うん、京平と入る」
本当に私、甘えん坊だなあ。いつも、悲しい時は京平の側に居たくなるんだ。
温かくて、安心出来る場所だから。
「まだ身体冷えてるな。先、湯船浸かりな」
「ありがとね、京平」
いつも私の事を気にしてくれてありがとね。
「京平も一緒に入ろ?」
「しょうがないな。うりゃあ」
京平は背後から私をギュッと抱きしめてくれた。いつもいつもありがとね。心も身体も温かいや。
「良かった。亜美が笑ってくれて」
「京平が一緒だと、安心して笑えるんだよ」
「ずっと一緒に居ような」
「うん、ずっと側にいるね」
私は何があっても、京平の側にいるからね。
飽きられても、嫌われても、だよ。覚悟しててね。京平。
「言っとくけど、俺しつこいからな。覚悟しとけよ」
京平ってば、また私の心を読んでるや。うん、私も覚悟しとくね、京平。
亜美「友、ごめんね……」
のばら「亜美は本当に深川先生を愛しているのね」
亜美「愛してるって気持ちが、揺らぐ事はないから」
信次「明日は、のばらさんに告白するぞ」
のばら「あら、のばらになにを?」
信次「な、なんでもないよ!」




