表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
クリスマス事変
97/240

クリスマスパーティー

「「ただいまー」」

「あれ、信次まだ帰って無いのかな?」

「そうだね、部屋にもいないね」


 17時10分、我が家に帰ってきた私と京平は、パーティーの準備をする為に少し早足で帰ってきたのだけど、帰って来てるはずの信次が居ない。

 まだ瀬尾家にいるのかな? 私は海里くんにライム電話をしてみる。


『ちっす、亜美さんゴホゴホ』

「風邪ひいてる時にごめんね。信次、まだそっちに居るかな?」

『ああ、疲れてたみたいでうちで寝てるっすよ。18時くらいにご飯作って貰おうかなあって思ってたんで、それまで寝かせとこうって』

「ごめんね、信次昼寝だと中々起きないもんね」

『いえいえ、うちこそ連日の看病感謝っす。だから、心配しないで下さいね』

「うん、了解。じゃあね」


 もう信次ってば。瀬尾家でぐーすか寝てるんじゃないよ。迷惑をかけおって。

 あいつ、昼寝みたいに軽く寝るのが出来ないタイプで、寝るとガッツリ寝ちゃうからなあ。


「そっか、信次は瀬尾家で寝てるか。それなら良いんだけど」

「全く、看病しに行った人間が寝てどーするよ」

「冷蔵庫見ると買い物にも行ってくれてるし、疲れが溜まってたんだろうな。パーティーまでまだ時間あるし大丈夫大丈夫」


 京平はそういうと、手洗いうがいをして、エプロンに身を包んだ。

 京平、すっごいワクワクしてる。料理作るの楽しみにしていたもんね。


「私はなんかやる事ある?」

「そうだなあ、部屋の飾り付けでもしてもらおっかな?」

「ラジャー!」


 京平が昨日慌てて出したツリーも、クリスマスの訪れを教えてくれてるみたい。

 私は押入れから、クリスマスの飾り付けを出して、ツリーから部屋までを飾り付けしていく。

 なんだかんだで毎年パーティーはするから、飾り付けは揃ってるんだよね。


 一方で京平は、ローストチキンを焼きながら、ケーキを焼こうとしている。

 流石にケーキはキツいのでは? とも思ったんだけど、京平めちゃくちゃ手際が良い。

 出来るって確信があって作ってるみたいだね。

 あ、ローストチキンが2本出来た。次のローストチキンを作り始めたぞ。


 って、私は飾り付けしなきゃでしょ!

 ダメだなあ、ついつい京平を見ちゃうよ。目で追っかけちゃう。

 こうなったら、早く飾り付けして、じっくり京平を見ちゃうもんね!

 決意した私は早い。部屋の周りから飾り始めて、風船を膨らませたり、ツリーを飾ったり。

 あっという間に飾り付けは完了した。


「終わったよん!」

「じゃあ亜美は休んでな」

「はーい」


 ふへへ、休みながら京平見ちゃうもんね!

 ふむふむ、ローストチキンは仕上がってい、て。


「こら亜美、覗くんじゃないの」

「ええ、いいじゃんケチ!」

「ケチじゃないの。楽しみが減るだろ?」

「ぶー」


 私の願いも虚しく、私は京平にヒョイっと摘まれて、キッチンから追い出されるのであった。

 もー!!


 しょうがない。写真整理でもするか。前沢山撮ったの、チラ見すらしてなかったんだよね。

 お、のばら可愛いなあ。私はあほ面だけど!

 おお、これは私も可愛いんじゃない? のばらもやっぱり可愛いし。

 あ、こういう写真って京平は欲しいものなのかな?

 でも私とのばらしか写ってないしなあ。

 やっぱり京平とペアで写ってる方が嬉しいかな?

 一応聞いてみるか。恥ずかしいけど。


「ねぇ、京平って、私の写真欲しい人?」


 すると京平は勢い良く私の所にやって来て、私のスマホを凝視する。

 そして私のスマホを奪うと、ひょいひょいっと写真を選んで、自分のスマホにエアドロッポでダーッと送る。

 あ、欲しい人なのね。


「そう、欲しいの。これからは写真撮ったらすぐ送れよ」


 そう言って京平は、スマホを私に渡して、キッチンに戻る。

 思う以上に愛されているんだな、私。なんだか嬉しいや。

 でもね、京平。私も京平を愛してるから、私も写真欲しいんだぞ!

 今日寝る前におねだりしよっと。小さい頃の京平の写真とか、見てみたいし。


 んー。やる事がないなあ。暇だなあ。

 もはや寝るしかないのでは?

 私はソファーにごろ寝しながら、そんな事を考えていた。

 そんな時、暇つぶしになりそうな人が帰って来た。


「ただいまー」

「「おかえりー」」


 信次が帰って来た。時計を見ると、18時15分。瀬尾家のご飯を作り終わったのかな?

 

「信次、瀬尾家で寝ちゃダメでしょ!」

「ごめん、無茶苦茶眠たくてお言葉に甘えちゃったよ」

「最近疲れが溜まってんな。今日も早めに寝ろよ?」

「うん、明日は遊びに行くしね」


 そうだよね、明日はのばらと遊ぶんだもんね。

 のばらを楽しませるプランとか、ちゃんと考えてんのかなあ?

 そもそも信次、女性と遊ぶのも初めてなんじゃあ?

 のばら、つまらんかったら途中で帰るんじゃぞ。


「兄貴、手伝う事ある?」

「全然ないから寝てていいぞ」

「じゃあ、部屋で勉強してるね」

「私はソファーで寝とこ。おやすみ」

「こら亜美、ちゃんと布団で寝ろよ!」

「ダメだよ兄貴、もう亜美寝てる」

「全く、しょうがないな」


 むにゃむにゃ。京平の腕が、私の身体を持ち上げてるや。

 気持ち良いなあ。なんか安心出来るの。

 いつもこの腕で、守ってくれてありがとね。

 

「京平、愛してるよ。むにゃむにゃ」

「亜美……」


 京平は、優しくキスをしてくれた。


 ◇


「亜美、そろそろ皆来るから起きな」

「ふわあ、おはよ。京平」

「おはよ、亜美」


 京平は起きたての私を、ギュッと抱きしめる。


「京平?」

「亜美が可愛すぎるからいけないんだぞ」

「じゃあ、私も抱きしめよっと」

「ちょ、歯止めが効かなくなるじゃないか」

「へへ、京平が格好良すぎるからいけないんだぞ」


 そう言うと京平は顔を真っ赤にする。格好良いって、言われ慣れてないのかな?

 そんなこんなで、私達は部屋を出た。


「あ、おはよ、亜美」

「おはよ、信次。すっかり寝ちゃったよ」

「兄貴、何もやらせてくれなかったもんね」

「だって自分で作りたかったんだもん」


 そして、最初の客人がやってきた。信次が真っ先に対応してくれた。


「あ、(あかり)(ゆかり)ちゃん、いらっしゃい」

「今日は招待ありがとね。楽しもうね、(ゆかり)

「うん、たのしもーね」


 私も遅ればせながら、挨拶をする。


「いらっしゃい。今日はよろしくね」

「亜美さん、私、海里の姉で(あかり)です。宜しくお願いします」

「畏まらなくていいよ。私のことは亜美でいいし、タメ語でいいよ」


 お、コミュ障の私にしては、すんなり言えたぞ!


「じゃ、私のことも(あかり)って呼んでね」

「うん、宜しくね。(あかり)


 海里くんのお姉ちゃんなのに常識あって良い子だなあ。良い意味で似てなくていいね!


「あ、プレゼントどうしたらいい?」

(ゆかり)ももってきたよー」

「あ、私が預かるよ。ありがとね」


 さーて、皆のプレゼントは何処に置こうかな?


「京平、皆のプレゼント何処においとく?」

「クリスマスツリーの下に置いといて」

「了解ー!」


 そして、次第に人も集まってきた。


「亜美ー! お邪魔しますわ」

「よ、亜美。今日は宜しくな!」

「のばらに蓮、いらっしゃい」

「ほら、友、亜美来たぞ」

「え、友くんどこ?」


 と、友くんを探し切る前に、スチャーって音がして、友くんが私の目の前に土下座姿で現れた。スライディング土下座だ。


「亜美さん、この前はごめんなさい。傷付けるつもりは無かったんです」

「私こそ、泣いちゃってごめんね。パーティーの後も、また話そ」

「はい、僕も話したかったので嬉しいです」


 パーティーの後、ちゃんと友くんに言わなきゃ。友達でいようって。

 友達で居続けてくれるといいな。

 あ、よく見たら友くん、髪解いてる。久しぶりに髪解いた姿見たなあ。


「じゃあ、皆あがってって。プレゼントは、クリスマスツリーの下に置いてってね」

「あ、亜美へのプレゼント、いま渡しますわね」

「私ものばら達へのプレゼントあるから、持ってくるね」


 私にも家族以外にプレゼントを渡せる人が居るのは、幸せだなあ。皆、ありがとね。


「はい、これはの、ばら、に」

「亜美、プレゼント大きくありませんこと?!」

「梅野さんにお勧めされたからさ」

「なんだか解りませんが、有難うございますわ。はい、亜美へのプレゼントですわ」

「ありがとね、のばら。開けてもいい?」

「どうぞ。私も開けますわ」


 私達は、お互いにプレゼントを開けた。


「お、可愛い服! 25日のデートの日に着てこ! 有難うのばら」

「な、生ハムの原木?! う、嬉しいけど、びっくりしましたわ!」

「亜美、何プレゼントしてんのさ!」


 あ、私、ぶっ飛びすぎたかな? おかしいぞ、梅野さんのお勧めを買ったのに!


「重たいからうちで預かるよ。のばらさんのお弁当に使わせてもらうね」

「有難うございますわ。嬉しいですわ」


 あ、信次のお陰でなんとかなったか。良かった良かった。


「あ、蓮と友くんにもあるんだ。どうぞ」

「有難うございます。はい、亜美さんへのプレゼントです」

「ありがとな、亜美。俺も亜美にプレゼント、ほらよ」

「え? 蓮も? ありがとね」

「せーので開けよーぜ。せーの!」


 私達はお互いへのプレゼントを見る。


「お。友くんはブレスレットかあ。可愛い! ありがとね。蓮は、イヤリング! こっちも可愛い! ありがとね」

「良さげなボールペンじゃん。仕事で使うわ。有難うな。後、靴下面白えな」

「確かにおしゃれですね。有難うございます」


 2人とも私には勿体無い可愛いのプレゼントしてくれた。嬉しいなあ。

 ただ、京平が何故か後ろで睨みつけてきてるのが、気になるけど。


「プレゼント置き終わった人から、ご飯食べ始めてていいよ。人数分あるし」

「うわ、深川先生、めちゃ豪華な飯じゃん」

「美味しそうですわ」

「京平さんすごいなあ」

「おいしそーう!」


 と、数人がご飯を食べ始めたとこで。


「亜美ー、遅くなってごめんね!」

「京殿、お招きありがとなのじゃ!」

「深川くーん、今日はありがとね」


 朱音と麻生夫婦がやって来た。これで全員揃ったかな?

 

「よー、来てくれてありがとな、麻生に愛さん」

「朱音ー、来てくれてありがとね。これプレゼント!」


 私は朱音にプレゼントを渡した。喜んでくれるかな?


「うっそ、ありがと! 私も亜美に。はい、どーぞ!」

「え、朱音も用意してくれたの? ありがとね」

「招待して貰ったしね。開けてみて」


 私は朱音のプレゼントを開けてみた。


「あ、朱音も髪飾りなんだね。しかも可愛い」

「亜美のくれた髪飾りも可愛いな。なんだ、私達気が合うね」

「これなら髪が短くても、おしゃれ出来るもんね」


 皆可愛いプレゼントで嬉しいなあ。私の事を考えて選んでくれてるのが伝わって、すごく嬉しいな。


「あ、プレゼント交換用のプレゼントはどうしたらいい?」

「クリスマスツリーの下に置いといて」

「風ちゃん、私達も置きにいこっか」

「そうじゃな。よいしょっと」


 あ、麻生先生、ワインボトルだ。しかもこれ、絶対高いやつじゃん。豪華なプレゼントだなあ。

 でも京平は、すごく心配そうな顔してる。


「麻生、これ今出したやつか?」

「そうじゃ、だからブドウ糖が欲しいのじゃ」

「ファムグレ持ってくるから待ってろよ」


 あれ、いま、出したやつって言ってたよね? もしや……。


「そ、風ちゃんの異能。ワインボトルを出す事が出来るの。良いワインだすと、低血糖になっちゃうんだけどね」

「ちょ、危ないやつ!」

「本当だよ、ほら麻生。ファムグレ」

「おお、ありがとな京殿」

「ご飯もあるから、沢山食べとけよ」


 と、色々あったけど、これで全員揃ったね!


「皆グラス持ってるかー?」

「僕達未成年は、いまシャンメリー開けたよ」

「シュワシュワしてる」

「あ、信次、俺もシャンメリーちょうだい」

「兄貴禁酒中だもんね。はい」

「ありがとな、信次」


 京平と信次と(ゆかり)ちゃんは、シャンメリー。他の皆は、蓮が持って来たシャンパンを待っていた。


「今開けるからな。よいしょ!」


 シュパーン! と、シャンパンの開く音が響き渡った。うん、いい音だね!

 そして、飛んでったコルクは京平の頭にごっちんした。あちゃあ、痛いだろうなあ。


「痛い……」

「京平!」

「深川先生、すみません!」

「や、大丈夫。気にしないで」

「ん。じゃあ、シャンパン欲しい人グラス持っといで」


 シャンパンは欲しいけど、それよりも京平だ。すぐ手当しなきゃ。


「大丈夫? 京平」

「おでこに当たったわ」

「消毒液塗るね」

「うは、沁みる。痛え」

「我慢して。いま絆創膏貼ったからね」


 ふー、これで応急処置は終わった。シャンパンは無くなっちゃったけど、京平の怪我が酷くなくて良かった。


「信次、私もシャンメリーちょうだい」

「相変わらず兄貴が1番だよね、亜美は」


 信次は呆れながらも、シャンメリーを注いでくれた。


「それじゃあ、皆!」

「かんぱーい!!!!」


 こうして、パーティーは幕を開いたのであった。


「京平はソファーに座って休んでなよ。私、京平の分もご飯持ってくるね」

「頭痛いし、疲れてたから助かるよ。ありがとな」


 えっと、ローストチキンとブロッコリーとコーンスープと、チーズフォンデュも!

 まずはこんなもんかな。うーん! めちゃ美味しそう!

 ご飯を取ってると、のばらが話しかけてくれた。


「亜美、シャンパン飲み逃したでしょ? のばらのあげますわ」

「え、いいの? ありがとね、のばら」

「深川先生と楽しく過ごすのですわ」


 のばら、優しいなあ。しかも周りをよく見ているし。シャンパン、ありがたく頂くね。


「京平、おまたせ。一緒に食べよ」

「おう、食べよ食べよ」

「「いただきます」」


 私は真っ先にローストチキンを齧り付く。京平のローストチキンね、甘すぎないからすきなんだ。焦げ目も美味しいし。


「美味しいー! ありがとね、京平」

「喜んで貰えて嬉しいよ」

「沢山料理作ってくれてありがとね」

「皆楽しんでくれてるといいな」


 初めて私の友達をパーティーに誘ったけど、周りを見渡してみても、皆楽しんでくれてるみたい。

 いつもの家族とのパーティーも楽しいけど、皆で騒がしいのも楽しいね。


「亜美も皆のとこに行ったらどうだ?」

「やだ、京平といたいもん」

「嬉しいけど、亜美はいつも俺が1番なんだな」

「当たり前でしょ。愛してるもん」

「バカ、人前で照れる事言うなよ」


 その瞬間を、私達は激写された。犯人は、麻生先生だ。


「麻生、何撮ってるんだよ。後でよこせよ」

「仲良き2人が美しくてつい、な」

「まだ2人の写真少ないから嬉しいな」

「お、じゃあもっと撮らねばな。てや!」


 そう言って、麻生先生は沢山写真を撮ってくれた。


「私も、麻生先生と愛さんとの写真撮りますね」

「感謝じゃ! めぐたーん、おいで」

「なあに? 風ちゃん」

「亜美殿が写真を撮ってくれるそうじゃ!」

「嬉しい! チキン齧り付いたのとか撮って欲しいな」


 中々独特なシュチュエーションも交えながら、私は麻生夫婦の写真を撮った。2人とも仲良いよなあ。


「ありがとね時任さん、深川くんと仲良くね」

「はい、私からは絶対離しません」

「バカ、俺だって離さねーよ」


 京平は照れ臭そうに手を繋いでくれた。なんで京平に触れられると、安心出来るのかな。すごく嬉しいや。

 私もそんな京平の手を握り返した。


「じゃあ、そろそろお待ちかねのプレゼント交換いくぜ!」

「いぇーい! でも、どうプレゼント決めるの?」


 蓮は、ふっふっふと笑い、くじ引きを取り出した。


「すでにプレゼントには、番号を付けてあるから、くじを引いてプレゼントを決めるのさ」

「右回りから引いてけばいい?」

「そうだね、よろしくう!」


 てことは、私達は最後だね。誰のプレゼントになるのかなあ? 楽しみだなあ。


「なあなあ、麻生の当たったら呑んでもいい?」

「え、ダメだけど」

「やっぱダメかあ……」


 禁酒頑張ってね、京平。これも京平の身体の為なんだからね。


「ほい、亜美も引いて」

「ていや!」

「ラストは深川先生どうぞ!」

「ほい!」


 一体誰のが当たるのかな? ドキドキするね。


「じゃ、皆、自分の引いた番号のプレゼントを持ってって!」

「えっと、私は10番だ」

「俺は7番かあ」


 私達はプレゼントを取りに行く。


「お、これだね。何かな?」


 私の引き当てたプレゼントの中身は、膝掛けだった。サイズも大きめで温かそう。


「実はそれ、俺の。よく引き当てたな」

「京平のか。それはめちゃくちゃ嬉しい! 大切に使うね」

「ありがとな、俺のはクッキーの詰め合わせだな」

「あ、それ僕のだ。兄貴クッキー好きだしちょうど良かったね」


 京平のは、信次が選んだクッキーの詰め合わせ。京平クッキー好きだから、かなりベストなプレゼントを引き当てたね。


「えっと、僕は4番か。あ、これは可愛い」

「あ、それ(ゆかり)の絵だ。クリスマスを描いたんだって」

「ありがとね、(ゆかり)ちゃん。大切にするね」

「どういたしまして」


 信次は笑顔で(ゆかり)ちゃんを抱きしめた。(ゆかり)ちゃんもなんだか嬉しそう。良かったね。


「えっと、(ゆかり)は3番だ! あ、おいしそうだよ!」

「あ、それのばらのですわ。チョコレートにしましたの」

「ありがとね! のばらおねえちゃん」


 のばらはチョコレートにしたんだなあ。

 のばらの選んだチョコとか美味しいだろうなあ。

 また後で、どんなメーカーのか聞いてみよ!


「のばらは1番ですわ。あら、ハンカチですわ」

「それは僕ですね。普段使い出来るものにしました」

「まあ、ありがとうございますわ」


 友くんはハンカチかあ。おしゃれな友くんらしいね。のばらにも似合ってる。


「えっと、僕は8番ですね。あ、ブーツのお菓子です。可愛いですね」

「それは私だね。おうちで楽しく食べてね」

(あかり)さん。ありがとうございます」


 お、友くん既に(あかり)とも話していたのかあ。私は、自分で京平と居ることを選んだけど、少しは友達とも話すべきだったかなあ。

 今更ながら、ちょっと後悔したりして。

 いや、でも怪我した京平をひとりぼっちなんて、無理だったから仕方ないね。


「私は9番。やった! ワインだ!」

「おお、(あかり)殿が当てたか。チーズや肉との相性が良いワインじゃぞ」

「両親の風邪が治ったら、一緒に飲もっと!」


 京平が密かに狙ってたワインは、(あかり)が引き当てたみたい。(あかり)、お酒好きみたいだね。凄く嬉しそう。


「ふむ、我は2番じゃな。と、文房具セットじゃな。ちょうど蛍光ペン切らしてたから有難い」

「あ、それ俺っす! 使い勝手いいかなあ、って」

「いくらあっても困るもんじゃないし、有難うなのじゃ」


 蓮は文房具セットかあ。意外と現実的なプレゼントだなあ。あ、私も蛍光ペン切らしてたや。病院の売店で買わなきゃ!


「えっと、俺は6番。なんじゃこりゃ、ヘアワックスか」

「あ、それ私ー。麻生先生に当たったら、面白いかなあって思って」

「使えなくて困るだけだろ、バカ朱音」

「ふむ、確かに。我は使えんな」


 朱音ウケ狙いで選んだのか! でも蓮も、色々なワックス試しても髪が跳ねまくるから、使えるのかなあ? 結果はまた聞いてみよ。


「私は5番っと。あ、ママレードジャムだ!」

「これは私ね。手作りだから、好みの味だといいんだけど」

「めぐたんのジャム美味しいからすき! 有難うございます」


 愛先生、家庭的だなあ。ジャムを手作りかあ。

 私も最近お菓子作るし、ジャム作りチャレンジしてみようかな?


「最後は私の11番で、時任さんのね。あ、バウムクーヘンだ。風ちゃん、またお茶しようね」

「そうじゃな。めぐたんのジャムとも相性良さそうじゃしの」


 おお、喜んで貰えて良かった。夫婦で仲良くお茶してくださいね。


「では、宴もたけなわではありますが、これにてお開きにしたいと思います。深川先生、お料理と場所の提供有難う御座いました!」


 蓮が締めの挨拶をしてくれた。


「久々に沢山料理作れて楽しかったよ」

「それじゃあ、解散!」


 あんまり友達とは話せなかったけど、皆の笑顔が沢山見れて良かったな。

 また皆とパーティーが出来たらいいな。


「亜美、ありがとね。信次くんは、また明日ね」

「うん、また明日ね。のばらさん」

「のばら、ありがとね」

「信ちゃん、明日のばらさんと遊ぶの?」

「うん、明日は早めに行ってごはんだけ作っとくね」

「ふーん、了解」


 およ? なんか(あかり)がちょっと不機嫌になった気がした。

 信次が瀬尾家を放っておいて、遊びに行くのが嫌なのかなあ?

 これは京平にも相談しとくか。私が中抜けして看病しに行ってもいいしね。


「じゃあ、信ちゃん、亜美、またねー」

「またねー」

(あかり)(ゆかり)ちゃん、またね」

「じゃあねー! (あかり)


 続いて、(あかり)(ゆかり)ちゃんも帰っていく。


「亜美、おつおつー!」

「亜美、今日はありがとな。じゃあな」

「朱音、蓮、またねー!」


 今日は朱音の違う一面が見れて良かったな。笑いを取りに行く性格だとは、思わなかったもんなあ。

 蓮も、率先してパーティーを纏めてくれてありがとね。本当は私がやらなきゃだったのに。


「深川くん、今日はありがとね」

「またご飯にでもいこうぞ」

「ありがとな、またなー」


 麻生夫婦は手を繋いで、仲良く帰っていった。

 私もいずれは、あんな夫婦になれたらいいな、なんて。


「じゃあ、友くん。ちょっと話そうか」

「はい、僕も話したい事があったので」


 私達は家の外に出て、話す事にした。

 夜風が冷たいから、手短に、でも、しっかり話したいな。


「亜美さん、この前はごめんなさい」

「それはもういいよ。ショックではあったけど」

「信じてくれていたのに、その、耐えきれなくて」

「私の事、好きになってくれてありがとね」


 これは本当の気持ちだよ。自信のないちゃらんぽらんな私なのに、好きになってくれたのは嬉しかったよ。

 そして、大切な本音を言わなきゃ。


「でもね、私、京平の事愛してるの。きっと嫌われたって愛してるし、何があっても、私から京平を裏切ることは、絶対ないから。だから、友くんとは付き合えない」

「何があっても、愛するんですね」

「うん……」


 あれ、何で私泣いてるんだろう。本音を言っただけなのに。ダメだ、どんどん涙が溢れて出て止まらない。言葉も出てこないよ。


「そんな事だろうと思ってました。亜美さん、本当に深川先生を愛してますもんね」

「うん、京平しか愛さない。私は」

「解りました。もう僕から亜美さんを追いかけるのはやめます。これ以上、傷付けたくないから」


 気持ちに応えられなくてごめんね。私こそ、傷付けてしまってごめんね。


「でも、友くんは私にとって大切な友達だから、これからも友達で居たいの」

「僕も、それは変わらないです。亜美さん以上に、大切な友達はいないから」

「ごめんね、友くん」

「握手しましょ、亜美。仲直りの」

「うん、友」


 私達は握手した。これからも友達として、仲良く過ごしていこうね。友達として、大好きだよ、友。

 すこし、友の手が震えている。ごめんね、いっぱい傷付いたよね。


「それじゃあ、また病院で。たまには蓮とのばらさん交えて遊びましょうね」

「友、ありがとね!」


 友は、少し笑って、帰っていった。

 ごめんね、そしてありがとね。これからも宜しくね、友。


「俺の好きも、亜美を傷付けるだけかもな……」

「諦めるの? 蓮」

「亜美がここまで真剣に、深川先生の事を思ってるなんて。嫌われても愛してる、ってなんだよ」


 そんな私達を見ていた人影に、私は全く気付かなかった。

 だって、私はただ、ひたすら、泣いていたから。

 泣いたって、どうしようもないのにね。

 ひたすら泣いていたら、心配そうに声が掛かった。


「亜美、大丈夫……ではなさそうだな」

「京平……私、最低だよ」


 京平が中々帰って来ない私を心配して、外まで様子を見に来てくれたみたい。私は罪悪感でいっぱいだった。

 でも、やっぱり苦しかったから、京平を抱きしめた。嫌な女だな、私。


「友に、友達で居ようねって言えたの。でも、手が震えてて、私、傷付けちゃった……」

「俺からこれを言うのは、何様感あるけど、亜美は俺を、その……」

「うん、愛してるよ」


 うん、それだけは揺るぎないよ。京平を愛してるよ。


「亜美はそれを正直に告げただけだから、罪悪感を抱く必要はないよ。きちんと言えたんだろ?」

「うん。ちゃんと言ったよ」

「だったら、笑っていればいいよ。そうじゃなきゃ、日比野くんも前に進めなくなっちまう」


 そうだね、泣いたって気持ちに応えられるようになる訳でもないし、逆に友が罪悪感に囚われてしまうよね。

 寧ろ、友からみてもムカつく位幸せで居なきゃね。

 実際、京平は私を幸せにしてくれてるもん。


「ありがと、京平。ちょっと落ち着いた」

「家に入って温まろう。亜美、まだケーキ食べてないだろ?」

「え、でも間食は……」

「今日はクリスマスパーティーだろ、特別」


 久々のケーキ、しかも愛してる京平が作ったケーキを食べられるなんて、幸せだね。

 私は京平と手を繋いで、家の中に入っていった。


 家に入ると、信次も心配そうに私を見つめる。


「おかえり、亜美。気にする事はないんだからね」

「ただいま、信次。うん、そうだよね」

「ホットミルク作ったから、皆でケーキ食べよ」

「なんだ、信次も食べてなかったのか」

「ケーキは家族で食べたいな、って」


 ちょうど3つ残ったケーキが、家族の絆みたいだね。

 凄く温かい気持ちになるよ。ありがとね。


「「「いただきます」」」

「京平の作るケーキって、甘くどくなくて、優しいからすきだなあ」

「間食ダメな亜美でも、食べられるように作ってるしな。砂糖控えめ」

「そういう料理得意だよね、兄貴って」


 糖尿病の人でも美味しく食べられるものを、作れるように勉強したんだろうなあ。

 そんな優しい京平が主治医で良かったな。私も勉強頑張らなきゃ。


「ごちそうさまでした。美味しかったよ」

「亜美が落ち着いたようで良かった」


 京平は優しく笑ってくれた。どんな時でも、私の味方でいてくれる優しい京平に、もう何度も助けられてるね。ありがとね。


「俺もごちそうさま。亜美、お風呂入ろっか」

「うん、京平と入る」


 本当に私、甘えん坊だなあ。いつも、悲しい時は京平の側に居たくなるんだ。

 温かくて、安心出来る場所だから。


「まだ身体冷えてるな。先、湯船浸かりな」

「ありがとね、京平」


 いつも私の事を気にしてくれてありがとね。


「京平も一緒に入ろ?」

「しょうがないな。うりゃあ」


 京平は背後から私をギュッと抱きしめてくれた。いつもいつもありがとね。心も身体も温かいや。


「良かった。亜美が笑ってくれて」

「京平が一緒だと、安心して笑えるんだよ」

「ずっと一緒に居ような」

「うん、ずっと側にいるね」


 私は何があっても、京平の側にいるからね。

 飽きられても、嫌われても、だよ。覚悟しててね。京平。


「言っとくけど、俺しつこいからな。覚悟しとけよ」


 京平ってば、また私の心を読んでるや。うん、私も覚悟しとくね、京平。

亜美「友、ごめんね……」

のばら「亜美は本当に深川先生を愛しているのね」

亜美「愛してるって気持ちが、揺らぐ事はないから」

信次「明日は、のばらさんに告白するぞ」

のばら「あら、のばらになにを?」

信次「な、なんでもないよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ