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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
クリスマス事変
96/240

信次の長い1日(信次目線)

「お腹いっぱいになりましたわ。また明日ですわ!」

「明日もお楽しみにね」


 結局のばらさんは、炒飯を大盛り二杯おかわりして、我が家を後にしていった。

 相変わらずの気持ち良い食べっぷりに、また僕はメロメロになるんだよな。

 さーて、明日から学校も休みだけど、買い物に行きたいし、瀬尾家の看病もしたいし、学校にいって宿題貰ってこなきゃ。海里の分も。

 意外と暇がないな、こりゃ。パーティーいけるかなあ?


 まあ、いいや。今日はお風呂入ってすぐ寝よ。

 兄貴からもあれから連絡あって、瀬尾家の看病はしてくれたみたいだしね。

 本当にありがとね、兄貴。

 あ、まだ湯船温かいや。兄貴か亜美が作ってくれたのかな。またまたありがたい。

 

 僕はのんびり、お風呂に浸かる。ふー、気持ち良い。

 今日は色々あったからなあ。九久平(くぎゅうだいら)先生に殴られた傷も、まあまあ痛むし。

 でも、のばらさんの美味しい顔を見れたのは、嬉しかったから良しとするか。

 

 そうだね、もう愛しちゃってるね。僕。

 片思いのくせに、こんなの重たすぎるよね。

 でも、愛しちゃったもんは仕方ない。それをどう伝えるか、だよね。

 正直に伝えたら重いかな、やっぱり。でも、ちゃんと伝えなきゃ。

 君に嘘は吐きたくないから。


 う、考え事しすぎたな。ちょいのぼせて来た。

 軽く身体と頭を洗って、早く出なきゃ。

 僕は身体と頭をサッと洗って、お風呂から出た。

 

 のぼせちゃったから、リビングのソファにタオルを敷いてひと休み。

 兄貴じゃないのに、のぼせるなんて久しぶりだなあ。

 横になってると大分楽だね。兄貴がのぼせた時、布団で寝転がる気持ちがちょっと解ったよ。

 すー、すー、あ、いけない。一瞬寝ちゃったよ。

 すぐ着替えて、今日はもう寝ちゃお。パジャマ、パジャマっと。

 よし、おやすみ、のばらさん。って、流石にこれはキモいな。もうやめよ。


 ◇


「んー、今日は起きれた」


 今日は早めに寝たのもあって、いつも通りに起きれて良かった。

 やる事もいつもよりあるし、頑張るぞ。

 僕はリビングに向かうと、今日も亜美のが早く起きていた。


「おはよ、亜美」

「おはよ、信次! 洗濯機はもう回しといたからね」

「ありがとね。助かるよ」


 よし。朝ご飯とお弁当作ろっと。昨日亜美は和食作ってたから、洋食にしようかな?

 僕は片手で卵を数個割って、箸で溶いて味付けをする。

 それを温めたフライパンに注いで形作れば、オムレツの完成だ。良い半熟具合だね。

 

「わあ、オムレツだ。美味しそう!」

「でしょ。朝ご飯をお楽しみに」


 我ながら良いオムレツが出来たぞ。次はコールスロー作ろっと。

 のばらさんのお弁当にもいれようかな。

 後はコーンスープも作って、朝ご飯は完成だ。

 お弁当は、何入れようかなあ?

 よし、あれとこれを作ろっと。そんで、準備して焼いたり揚げたり茹でたりっと。

 のばらさん、喜んでくれたらいいな。

 ご飯関係がひと段落したとこで、ちょうど洗濯機が終わりだよって鳴いた。干しにいこう。


 うーん、今日は天気が良くなさげだから、部屋干しにしよう。

 寒いし雪になるかなあ。普通に雨かなあ。

 なんにせよ、やる事いっぱいあるし、物事が滞らないといいな。

 まあ、交通網が止まっても、飛べばいいんだけどね。

 よし、洗濯物も完了。亜美は大丈夫かな?


「亜美、終わりそう?」

「うん、もう終わるよー」

「じゃあ、僕はご飯並べるから、兄貴起こして来て」

「オッケー!」


 亜美が起こした方が兄貴も嬉しいだろうしね。

 僕が朝ご飯を並べているうちに、亜美と兄貴が部屋から出て来た。


「おはよ、信次。朝ご飯と洗濯物ありがとな」

「おはよ、兄貴。どういたしまして」

「後はご飯の盛り付けだね。私やるね!」

「ありがとね、亜美」

「ありがとな、亜美」


 亜美が盛り付けたご飯を僕が運ぶスタイルを取って、朝ご飯はいい感じに揃った。


「と、血糖値測って……120。インスリン注入して」

「「「いただきます」」」

「やっぱ信次のオムレツ美味しい! 柔らかくて卵の風味が格別で。コールスローともめちゃ合うし」

「喜んで貰えて良かった」

「信次も成長してるな。オムレツ美味いぞ!」

「ありがとね、兄貴」


 おお、オムレツ好評で良かった。自信あったから尚更嬉しいな。

 のばらさんのお弁当も、喜んで貰えたらいいなあ。ちょっと気合い入れたんだよね。

 おっと、この後も予定あるし、早めにご飯食べなくちゃ。まずは学校へ宿題貰いに行かなきゃ。

 

「ごちそうさまでした」

「信次早」

「予定が色々あるからね」

「今日から学校休みなのに大変だな」


 という訳で、早々に朝の支度も終えて、一番最初に家を出た。最初に行くのは学校だから、制服に着替えた。


「いってきまーす」

「「いってらっしゃーい」」


 亜美達も居ないし、学校へは飛んでいってしまおう。

 僕は羽根を広げて、大空へと舞う。

 余りに高く飛ぶと、飛行機やらなんやら面倒臭くなるから、低空飛行ではあるんだけどね。

 あー、今日は朝から雨かあ。どうせなら雪ならロマンチックだったのにね。

 と、飛ぶと速いね。もう学校へ着いたや。


 倉灘高校は進学校という事もあり、冬休みの日でも朝6時から校門は開いている。

 自習する生徒が過半数を占める為だ。

 先生からはライムで連絡をくれていて、僕と海里の机の上に宿題を置いてくれたらしいけど……お、あったあった。

 これも今日海里に渡しとかなきゃな。

 僕は宿題を持って、学校を後にした。


 今は7時5分。亜美達ももう病院だろうし、飛んで家まで帰るか。で、着替えてっと。

 次は瀬尾家の皆様の看病をしなきゃ。皆様、少しは元気になってるといいな。


「おはようございます。信次です」


 と、一声かけて、合鍵で瀬尾家に入る。長い付き合いなのもあって、海里のお母さんからかなり前にもらったんだよね。

 結構早いから、まだ皆寝てるかな?

 それならそれで、海里の寝顔でも見物しとくかな。

 海里は気持ち良さそうに熟睡していた。

 って、氷枕微温いなあ。取り替えておこう。

 おでこを触ってみると、まだ熱も高そうだ。

 皆の様子を見終わったら、お粥作って、薬飲ませなきゃな。

 そして海里の机の上に、宿題を置いといた。


 次は海里のお母さんだ。

 ドアをノックしたら、起きていらしたので、まずは朝の挨拶から。


「おはようございます。お加減いかがですか?」

「ああ、信ちゃん、朝からありがとね。少し熱もひいてきたよ。完治とは行かないけど」

「少しずつ治って来たなら良かったです。食欲はありますか?」

「信ちゃんの卵粥なら食べれそう」

「では、後で作って持っていきますね」


 少し熱もひいたなら良かった。次は(あかり)さんと(ゆかり)ちゃんだね。

 僕はドアをノックして、様子を確認する。


「信次です。入っても大丈夫ですか?」

「ああ、信ちゃんか。どうぞー」


 (あかり)さん、かなり元気になったみたいだな。声に昨日より張りがあるもん。


「お加減……って、もう会社行くんですか?」

「熱も36.5度なら問題ないでしょ?」

「元気になって良かったです」

「本当は皆の看病したいんだけど、ちょっとでも来いって上司がね。信ちゃんと京平さんには迷惑かけちゃってるね」

「いえいえ、僕学校休みなので大丈夫ですよ」


 治ったとはいえ病み上がりなのに、もう会社に行かなきゃなのか。(あかり)さんも大変だなあ。

 スーツを身に纏う(あかり)さん、なんか格好良いな。


「あ、夜はもう来なくて大丈夫だからね。私が看病するし」

「いえいえ、手伝いますよ。お気になさらず」

「そっか、それは嬉しいな。有難うね」

「あと、元気になったのなら、宜しければ夜、家に来ませんか? パーティーやるんです」


 僕は(あかり)さんを、パーティーに誘った。クリスマス出来ないかもって言ってたし、折角元気になったんなら、楽しんで貰いたかったから。


「え、いいの?」

「一応プレゼント交換会ですが、ご飯は兄貴が沢山作りますし」

「なるほど、私もなんかプレゼント持ってくよ」

「有難うございます。看病しながらだから僕はあんまり居られないかもですが、楽しんでくださいね」


 何気今回、共通の知り合いってのばらさんと亜美と兄貴だけだしね。僕。今、(あかり)さんが増えたけども。


「ありがとね。あと、(ゆかり)も連れてっていい?」

「お、(ゆかり)ちゃんも元気になったの? それなら是非!」

「うん、無事熱が引いたからさ。やっと保育園連れてけるよ」

「あれ、そう言えば、(ゆかり)ちゃんはどこだ?」

「リビングで着替えてるよ。あ、着替え終わったみたいだね」


 ドアを開けた(ゆかり)ちゃんは、駆け足で(あかり)さんの胸に飛び込んだ。


「おねえちゃん、はやくいこ!」

「そうだね、そろそろ行こっか。信ちゃん、ありがとね。また夜ね!」


 (あかり)さんは、(ゆかり)ちゃんの手を繋いで、瀬尾家を後にした。


 と、ラストは海里のお父さんだね。

 僕はドアをノックしたけど、返事がなかったので、そっと部屋に入る。

 海里のお父さんは、すやすや寝ていた。寝顔は海里そっくりだなあ。

 熱はまだ少しあるみたいだなあ。簡易的な氷枕を作って、氷枕を取り替えた。

 

 次はご飯を作らなきゃ。卵粥を3人前だね。

 あ、ご飯がもうないや。炊くところからだね。

 お米を研いで、洗って、炊飯器に入れて、と。

 炊けるまで25分。うん。暇になったね!


 今は、9時か。スーパーに買い物に行こうかな。

 瀬尾家の買い物も、一緒に済ませちゃおう。

 えっと、瀬尾家の冷蔵庫は、大分寂しい状態だなあ。色々買い足しておこう。いつもお世話になってるしね。

 よし、スーパーまで、空を飛んでサラッといくぞ。

 雨はいつの間にか雪に変わっていた。うう、ちょい寒いなあ。

 羽根もちょっと震えるけど、スーパーにはすんなり着いた。


 お金もおろしておこう。3万あればいけるかな?

 兄貴のキャッシュカードを預かるようになってから、大分貯金も出来てきたしね。

 兄貴、医学書や酒を買いまくってたからな、それまで。

 僕はATMでお金を下ろしたんだけど、あれ? 大分少なくなってんな?

 兄貴……クリスマスプレゼント、すげえの買ったな、これは。嫌な予感がするよ。

 そこまでしなくていいのになあ。


 よーし、あとは沢山買い物するぞ!

 ローストチキンの材料に、チーズフォンデュの材料に、クリスマスはお金が掛かるね。

 しかも兄貴が作るから拘りそうだし、色々揃えておかなきゃ。

 なるべく安くて、かつ美味しそうな食材を、僕はカゴに入れていく。

 瀬尾家の分も、吟味しながら入れてって。

 亜美も確かシフォンケーキ焼くって言ってたな。その材料も、っと。

 兄貴もケーキ焼くかな? 一般的なケーキの材料も入れておこう。

 ふー、こんなもんかな。さ、レジに行こう。


 朝からだと混んでるなあ。セルフレジも大分並んでる。

 まだかな、まだかな、まだかな。よし、開いた!

 うわあ、普段と比べたらやっぱり高くなるなあ。こればっかりは仕方ないね。

 でもその分、楽しいパーティーになるといいな。

 よし、2万円に抑えたぞ。頑張ったぞ!


 僕は一旦我が家に帰って、パーティーの食材をしまった。冷蔵庫、パンパンだなあ。

 さ、早く瀬尾家の皆さんに朝ご飯作らなきゃ。

 僕は瀬尾家に戻った。

 瀬尾家に戻ると、お腹を空かせた海里が、僕の帰りを待ち侘びている。


「信次ー。腹減った!!」

「ちょうど、ご飯炊けたところだから、すぐ作るね」

「早くしてよ。ゴホゴホ」


 今は9時25分。僕、買い物早いからね。

 卵を割って溶いて、ご飯を鍋に盛って、水を入れて、塩で味付けして、沸騰させて、卵をサーって入れて、ネギを散らして完成!


「海里ー。出来たよー」

「待ってました!」


 まずはお腹を空かせた海里に、卵粥を持っていく。

 卵粥を海里に渡すと、海里はハフハフしながら卵粥を食べるのであった。


「うおお、美味え。ゴホゴホ」

「ご飯食べたら薬飲むんだよ」

「おう! ゴホゴホ」


 海里、まだ咳が辛そうだなあ。

 まだ扁桃腺が腫れてるんだろうなあ。

 薬でひいてくればいいんだけど……。

 

「後、机の上に宿題置いといたからね」

「おう、やらなきゃ」

「やるな、薬飲んで寝ろ!」

「ちぇー」


 全く、隙あらば勉強しようとするからな。

 僕はそんな海里に呆れながら、海里の部屋を後にした。

 次は海里のお母さんに、卵粥を持っていく。


「海里のお母さん、卵粥ですよー」

「ああ、信ちゃんありがとね。調子悪くてもこれは食べられるんだよね」

「それなら良かったです」


 今日も食欲はあるようで良かった。僕の卵粥が力になれたみたい。


「食べ終わったら、薬飲んでくださいね」

「うん、そうするよ。ありがとね」


 少しずつだけど、元気になってきてるようでよかった。


 次は、海里のお父さんだね。ドアをノックしても、また返事がなかったから、まだ寝てるみたいだね。

 僕はそーっと入って、卵粥と薬を置いといた。

 海里のお父さん病弱だし、悪化しないといいけど。


 で、ここでやっと瀬尾家の分の買い物を冷蔵庫にしまう。

 ふー、これくらいあれば瀬尾家も大丈夫だね。

 (あかり)さんと(ゆかり)ちゃんは、今日から普通のご飯食べられるだろうしね。


 ふー、やっとひと段落だね。

 あ、兄貴に、(あかり)さんと(ゆかり)ちゃんをパーティーに招待した事、伝えなきゃ。

 よし、ライム送ったぞ。一旦家に帰って、軽く昼寝でもしてから、勉強しようかなあ。

 うー、立て続けに色々こなしたから疲れたなあ。

 

「じゃあ、僕一旦帰りますね。何かあったら、ライムで呼んでくださいね」

「はいよー、ありがとね。信ちゃん」


 僕は家に帰って、手洗いうがいをしてすぐに、自分の部屋の布団にダイブした。

 アラームかけて、11時には起きよう。

 おやすみ、のば……ちょ、これはキモいから止めるって決めてたのに!

 なんか言いたくなるんだよなあ。


 ◇


ーーライムラーイムララライムー♫


 んん、ライムがめちゃくちゃ鳴ってるなあ。ふわあ、もうちょっと寝かせてよね。

 って、もう14時?! ライムの主は、やっぱり海里か。

 アラームに気づかないくらい熟睡しちゃってたよ。

 ライム電話だったので、僕は眠たい目を擦りながら出る。


「信次、腹減ったよー!」

「ごめん海里、めちゃくちゃ寝てた。いまから行くね」


 最近寝過ごす事が増えてきたなあ。

 疲れが取りきれてないのかな。いよいよ僕も歳なのか。

 や、兄貴は35歳でも頑張ってるし、言い訳にしちゃダメだぞ。

 僕は駆け足で瀬尾家に向かった。


「すみません、寝ちゃってました。今からご飯つくりますね」

「俺、梅干し粥ー」

「私は卵粥」

「俺は鰹節粥だな」

「私、野菜炒めがいいな」


 ん? なんか1人多い気がする。誰だ?!


「やっほー信ちゃん。私も手伝うよ」

(あかり)さん! 途中で帰れたんですね」

「家族を放っては置けないからね。帰らせて貰ったよ」

「じゃあ、お手伝い頼みますね」

「信ちゃん、いい加減私に敬語使わなくていいよ。(あかり)って呼んで」

「確かに付き合いも長いしなあ。宜しくね」


 という訳で、僕は(あかり)と手分けして、昼ご飯を作り始める。

 僕は卵粥と野菜炒めで、(あかり)はそれ以外のお粥。

 海里のお母さんは普段正社員でガッツリ働いてるから、ご飯は(あかり)がほぼ作っている。

 海里手伝えよ、って話なんだけど、ね。

 よし、卵粥は出来たから、海里のお母さんに届いてこよう。


「信次ー、まだー?」

「海里のはまだー」

「腹減ったああああ」


 でも食欲があるのは良い事だね。早めに治すんだぞー、海里。

 僕は海里のお母さんに、卵粥を渡す。


「お待たせしました。卵粥です」

「寝てたのにすまないねえ信ちゃん。ありがたくいただくよ」

「いえ、寝坊してごめんなさい」

「それだけ疲れてたんだよ、仕方ないよ」

「すみません。薬、ここに置いときますね」


 海里のお母さん優しいなあ。僕を気遣ってくれてるや。

 ますます寝坊した自分が情けなくなるよ。


 キッチンに戻ると、(あかり)も海里のお父さんの鰹節粥を完成させていた。


「あ、信ちゃん。お父さんに持ってって」

「了解!」


 僕は海里のお父さんの部屋に入って、鰹節粥をお届けした。


「お待たせしました」

「ありがとな、信ちゃん。起こしちまって悪かったな」

「いえいえ、寝坊してごめんなさい」

「ご飯作り終わったら、ちょっと休んでいけよ」

「お気遣いありがとうございます。薬置いときますね」

「いつもすまないね。ありがとな」


 海里のお父さんも優しいや。本当に寝坊してすみません。

 キッチンに再び戻ると、海里の梅干し粥も出来上がっていた。


「じゃあ、バ海里のは私が持ってくね。あいつ、空気読まない事言いそうだし」

「海里、お母さんもお父さんも優しいのに、あいつだけ空気読めないからなあ」

「瀬尾家の七不思議よ、うん」


 そう言いながら、(あかり)は海里の部屋へお粥を運んで行った。

 後は野菜炒めだね。(あかり)は病み上がりだから、ビタミン多めの野菜を使って、と。

 で、切ったら一気に炒める。塩胡椒で味付けして完成っと!


「ふー、バ海里、ねえちゃん作かよって文句言ってきたわ。あんにゃろう」

「相変わらずだね、海里」

「あー、でもそんな事より、野菜炒め美味しそう!」

「遅くなったけど、お昼にしよ」


 僕は野菜炒めとご飯を食卓に運ぶ。僕のお昼も亜美のお弁当があるしね。


「「いただきまーす」」

「うん、信ちゃんの野菜炒め美味しい!」

「それなら良かった。病み上がりだし、栄養しっかり摂ってね」


 喜んで貰えて良かった。そんで、亜美のお弁当は今日も美味しいや。

 

「お弁当は京平さん作?」

「や、亜美……ねえちゃんが作ってくれたよ」

「亜美さん、病院で初めて会ったけど、優しそうな人だったよね」

「亜美、コミュ障で友達少ないから、仲良くしてくれると嬉しいな」

「今日話しかけてみよっと!」


 (あかり)と亜美は歳も近いし、良い友達になれたらいいな。

 こうやって(あかり)を見てると、亜美のが年上だとは思えないんだけどね。しっかりしてるもんなあ、(あかり)


「ごちそうさま。ごめんね、まだちょっと眠いからまた寝に帰るね」

「あ、それならうちで寝てきなよ。私起こすし」

「でも寝る場所が」

「私の布団使って。私、洗い物とか洗濯するし」

「じゃあ、お言葉に甘えよっかな」


 そんな訳で僕は(あかり)の部屋で寝る事にした。疲れてたし、1人で寝るとまた寝坊しちゃうから助かるなあ。

 

「ふわあ、おやすみ、(あかり)

「おやすみ、信ちゃん」


 疲れていた僕は、緊張もなんのその。すぐにぐっすり眠るのであった。


「信ちゃんの寝顔、かわいいな」

信次「すやすや」

亜美「最近信次疲れてるよね。心配だなあ」

京平「それでも看病しにいくもんな。頑張るよな」

海里「ねえちゃんの梅干し粥普通ー。信次の食いたかった!」

灯「黙れ、空気読めないバ海里」

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