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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
クリスマスの準備
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のばらへのプレゼント

「のばらには何をプレゼントしたらいいかな?」

「冴崎様は食べる事が大好きでいらっしゃいますから、食品コーナーで見繕うのがお勧めですよ」


 うお、コンシェルジュさん、のばらの事良く知ってるんだね!

 確かに今日ののばら、嬉しそうに朝ご飯食べてたもんなあ。


「じゃあ、食品コーナーに行きます!」

「1階ですね。エスカレーターで降りましょう」


 百貨店の食品コーナーって、見慣れない物が多くありそうだなあ。

 その中で、のばらの好きな物を見つけられたらいいな。

 そう考えると、私、のばらの事も知らないなあ。ケーキ好きって事しか解らないかも。

 ちゃんと普段から聞けば良いのに、私のバカ!


「安心してください、冴崎様の好きな物は熟知しています」

「コンシェルジュさんにも見抜かれた?!」

「亜美様は、大変解り易いです。後、私の事は呼び捨てで梅野で結構ですよ」

「はい、梅野さん!」

「呼び捨てで宜しいのに」


 梅野さんは食品売り場まで案内してくれ、のばらの好きな物を色々教えてくれた。


「日持ちしませんけど、パティスリーイケマエのケーキは冴崎様お好きですよ」

「うわ、美味しそう。プレゼントとは別に、今日のお礼で買ってこうかな」

「冴崎様、お優しいですもんね。特にショートケーキが好きですよ」

「じゃあ、ショートケーキ3つ下さい」


 のばらのおかげでプレゼント選びもスムーズに進んだし、これくらいのお礼はしなきゃね。

 でも梅野さん、のばらの事良く知ってるなあ。


「プレゼントはいつ頃お渡しになりますか?」

「23日の夜です!」

「でしたら、変わり種ですが、こんなのはいかがでしょうか?」


 梅野さんは肉屋さんまで歩いていき、とんでもないものを見せてくれた。


「生ハムの原木です。冴崎様、良く買って行かれるんですよ」

「うおお、なんだこりゃ!」

「これを専用のナイフで切ると、亜美様もご存じの生ハムになるんですよ」

「お、お幾らなんだろか」

「ナイフ付きのセットで25,880円の所が、セールで20,000円です」

「な、中々良いお値段!」


 流石のばら、良い物食べてるなあ。予算は軽々オーバーしちゃうけど、24日に信次と遊んでくれるし、普段からお世話になってるし……。


「よし、買います!! プレゼントです!」

「まさか本当に買うなんて」

「梅野さん、今なんて?」

「何でもありません!」


 これならのばらも喜んでくれるね。良い買い物が出来た。余は満足じゃ。

 と、しまったあ。パーティー用のプレゼントの事、すっかり忘れてたよ。何にしようかなあ?


「全年代が喜びそうな物って、何かありますか?」

「そうですねえ、この時期ですと薔薇のライトでしたり、ブリザードフラワーも人気がありますよ」

「おお、なんてオシャンティ!」

「なんですが、無難にバウムクーヘンもありですね」

「確かに皆大好きバウムクーヘン」


 確かに誰が貰うか解らないし、皆大好きバウムクーヘンは最高かもしれない。

 薔薇のライトが京平に当たったら、1日で飽きる匂いしかしないしね。

 綺麗なのになあ、あれ。飽き性なんだよね、京平。


「じゃあ、バウムクーヘンにしようかな」

「バウムクーヘンはこちらですよ」


 梅野さんはバウムクーヘン専門店に案内してくれた。うは、美味しそう! これなら皆喜ぶね!

 どれにしようかなあ、っと。


「どれがお勧めですか?」

「期間限定の苺味美味しいですよ!」

「じゃあそれください、プレゼントで!」


 苺味のバウムクーヘンなんて聞いた事無いけど、どんな味なんだろね?

 そういうワクワク感も楽しめるから、良い物が買えて良かった。


「待ち合わせ時間の5分前ですね。そろそろ戻りましょうか」

「はい、今日はありがとうございました!」

「それと、冴崎様のお友達になってくれて、有難う御座います。冴崎様、いつも悲しそうな顔していらっしゃるのに、今日は嬉しそうで」

「私こそ、のばらにはめちゃお世話になってます。大切な友達だから」


 のばらも私と同じで、変なところが不器用だもんね。愛してる人に、中々愛してるって言えない所とか。

 よく似た所もあるから、仲良くなれたのかな?

 のばらの優しさと気高さには、いつも救われてるよ。


「それが聞けて良かったです。幼少の頃から、冴崎様にはお世話になってますから」

「流石お嬢様……!」

「また冴崎様のお話、聞かせて下さいね」


 そんな話を梅野さんとしている内に、待ち合わせ場所に着いた。

 のばらは既に待ち合わせ場所に到着していた。


「ごめん、待たせちゃったね」

「いえいえ、のばらも今来た所ですわ」

「梅野さんも、今日は1日有難う御座いました」

「松平さんも有難う御座いましたわ」

「お迎えの車は到着してますか?」

「ええ。いま着いたそうよ」

「では、荷物をお運びしますね」


 本当に何から何まで有難う過ぎるよ。これも、のばらの人徳なんだろうなあ。

 お金だけじゃなくて、のばら自身が魅力的だから、皆さん動いて下さったんだ。

 こんなにも魅力的なお嬢様が告白したのに、私を選んだ京平って、凄いよね。


「あ、この車ですわ」

「おかえりなさいませ、のばらお嬢様」

「松平さん、梅野さん、荷物をトランクへ」

「かしこまりました」


 松平さんと梅野さんは荷物をトランクへ詰め込むと、深々とのばらと私にお辞儀する。

 私達も、リムジンに乗り込んだ。


「梅野さん、またねー!」

「亜美様、またいらしてくださいね」

「松平さん、今日は有難う御座いますわ」

「冴崎様、ごきげんよう」


 私達は梅野さんと松平さんに手を振りながら、丸英百貨店を後にした。


「あ、のばら。これ、今日のお礼」

「きゃあ、パティスリーイケマエのケーキじゃない! 有難う御座いますわ。と、お土産のケーキですわ」

「あ、このケーキ達も、パティスリーイケマエのケーキだったんだね」

「そうですの。大好きですの」


 のばらが好きなくらいだから、相当美味しいんだろうなあ。京平と信次、喜んでくれるといいな。


「じゃあ、2度目のリムジンパーティーしましょ!」

「いえーい! シャンパン開けよ!」

「「カンパーイ!」」


 そして私達は懲りもせず、またもリムジンパーティーを始めるのであった。

 気の置けない友達と呑むお酒は、最高に美味しいよね。

 でもこのシャンパン、幾らするんだろ?

 私ごときが、ひょいひょい呑んで良いやつじゃない気がする。

 でも、美味しいから呑んじゃうけど。


 行きはのばらがトナカイだったから、帰りは私がトナカイで、のばらがサンタさん。

 お互いにお互いを撮り合ったり、2人で撮ったり、本当に楽しいや。

 のばら、めっちゃ薔薇生やしてる。ちゃんとファムグレ飲むんだぞ。


 だけど楽しい時間はあっという間で、シャンパン2本目を呑み切った所で、我が家に辿り着いた。


「今日はありがとうですわ、亜美」

「のばらもありがとね。また明日!」


 と、買ったプレゼントとケーキを持とうとしたんだけど、も、持ち上がらない。


「亜美、のばらが手伝い……」

「のばらお嬢様は握力がないでしょう! ここは私にお任せ下さい」

「任せたわよ、山田」


 山田さんは、私の荷物をヒョイっと持ち上げ、家の入り口まで運んでくれた。

 山田さん、明らかにご高齢なのに、凄すぎるよ!


「ただいまー!」

「「おかえりー」」

「では、私はこの辺で」

「山田さん、有難う御座いました!」


 山田さんが去り、私が家に入ると、京平と信次が出迎えてくれた。と、同時に、私のプレゼントの量にびっくりする。


「おかえり亜美。何だ? その荷物」

「ただいま京平。皆へのプレゼントだよ」

「友達皆に買ったのか。でも、亜美らしいな」

「はい、これ2人へのお土産。のばらからだよ」

「あ、これ、パティスリーイケマエのケーキだ! のばらさんにお礼しとかなきゃ」


 信次は意気揚々とケーキを運んでいった。私はプレゼントを、持ち上げられなかった。


「ほら貸しな。部屋まで運べばいいよな?」

「ありがと、京平。結構重いよ?」

「よっと。普通に持てるから安心しな」


 お、流石京平。握力結構あるなあ。のばらへの生ハムの原木と、信次への医学書だけでも、かなりの重量があるのに。

 私のプレゼント軍隊を運び終わった京平は、私に話しかける。


「ご飯出来てるよ。食べられるか?」

「うん、お腹ぺこぺこ」

「って、酔ってんな。歩けるか?」

「大丈夫、起きてるし」


 ん、私は何を言ってるんだ? でも、いつもなら寝ちゃうけど、起きてるもんね!

 と、歩き出したけど……あれ、視界が下にブレたぞ。何、で!


「ほら、言わんこっちゃない。酒弱いんだから呑みすぎんなよ」

「へへ、ごめんね。京平」


 ギリギリの所で京平が私をキャッチしてくれた。つまり、足元は覚束ないようである。


「ほら、肩貸すから、ゆっくり歩けよ」

「ありがと、京平」


 うう、中々お酒、強くなれないなあ。

 味は好きなんだけど、酔っちゃうとこはあかんよね、お酒って。


「今日は久しぶりに俺が作ったぞ」

「お、ハンバーグだ! 美味しそう!」

「亜美、手を洗っといでね」

「ほら、洗面台いくぞ」


 京平の肩を借りて、何とか洗面台に辿り着いた。

 手と、酔い覚ましに顔も洗って、と。消毒液もつけなきゃね。


「よっ、と。手洗い完了!」

「気を付けろよ、亜美」


 ふー、京平の力で無事食卓に着くことが出来た。


「えっと、血糖値は150でハンバーグだからインスリンはこのくらいで。っと」


 実はお肉って、あんまり糖質ないんだよね。

 とはいっても、ハンバーグは繋ぎにパン粉を使うから糖質はまあまあ有るんだけど、京平のハンバーグは豆腐も使うから結構ヘルシーなんだよ。


「「「いただきます」」」


 うひょ、ハンバーグなんて久しぶりだなあ。

 やっぱりハンバーグってテンション上がるよね!

 京平のハンバーグは、毎回ビッグサイズ。

 その理由が、小さかった私達がハンバーグが出る度、小さい小さい言ってたらしく、じゃあこれならどうだ! と、現在のサイズになったらしい。

 が、そんなビッグサイズのハンバーグも、私達は毎回ペロリと食べちゃうんだけどね。


「ああ、久しぶりのハンバーグ美味しい! 肉汁がジュワーで、そのジュワーでご飯も美味しいの!」

「というか、兄貴のハンバーグ縮んだ? 前より小さい気がする」

「変わってねえよ。まあ、信次も成長期だしな。次回はもっとデカくするよ」

「よっしゃ!」

「え! 私のも大っきくして!」

「今日のを食べても腹減ってたら、な」


 そこは余裕で食べ切る自信しかないけど、私の成長期はもう終わってるから、これ以上ハンバーグが大きくなったら、太る未来しかないな。

 でも食べたい。でも太りたくない……!


「何か亜美が葛藤してるね」

「亜美も乙女だからな」

「やっぱ食べたい!!!」

「食欲が勝ったみたいだけどね」

「そこは亜美らしいな」


 結局私達は大きなハンバーグをペロリと食べ尽くし、京平に更なる大きなハンバーグを要望するのであった。


「「ハンバーグ小さい!!」」

「マジか。400gでも足りないのかよ! 野菜もポテトも添えてるのに!」

「ご飯も食べたよ!」

京平「次は500gか。どうなってんだ、亜美達の胃袋」

信次「勉強して腹ペコで」

亜美「買い物して腹ペコで」

京平「つまり頑張ったって事だな。仕方ないな」

亜美「京平のハンバーグ大好きだもん!」

京平「お、ありがとな」

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