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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
クリスマスの準備
89/243

コンシェルジュさん

「えっと、医学書コーナーはどこかな?」

「あ、あっちよ。亜美」


 のばらに引っ張られながら進んだ先には、数千冊はゆうに超える医学書が並んでいた。

 京平が持ってないのは、この中のどれなんだろう? 百冊を超えるから、流石に覚えてないな。

 そもそも信次が第一希望としているのは、どんな種類なんだろう。

 ダメだ、私お姉ちゃんなのに、信次の事、意外と知らないや。


「亜美、悲しそうな顔してどうしたの?」

「私、信次の事、知らないなって」

「そう言えば信次くん、医者になりたいとは言ってますけど、外科とか内科とか精神科とか、希望職種は話したことないですわね」

「うん、私も聞かなかったし。あーん、どうしよう!」


 何で弟の事なのに、私は今まで気にして来なかったんだろう。大切な事なのに。

 信次だし、もうどの職種にするか決めてるだろうし、きっと出来るだろうし、なのに。


「それなら、家族セットにしましょう亜美。内科と精神科と異能、で」

「あ、確かに家族セットだ。これなら嫌な気はしないよね。流石のばら!」

「家族思いの信次くんですから、喜んでくれるはずですわ」


 私はその種類の中で、なるべく見覚えがなくて、沢山知識が詰め込めそうな医学書を選んだ。

 内科のは、寧ろ私も勉強したくなっちゃう。

 それと私用に、糖尿病療養指導士の本も買った。


「よし、選べたぞ。重いけど」

「カート持って来ましたわ」

「ありがと、のばら」


 こうして、まずは信次のプレゼントが買えた。

 次は京平なんだけど、私はもう決めている。


「深川先生には、何がいいかしらね?」

「冬用のパジャマ買おうと思って。いくら京平でも、今の時期に夏用パジャマは寒いだろうし」

「じゃあ、紳士服売り場ですわね。確かに深川先生、夏用のパジャマ着てらしたものね」


 紳士服売り場は、3階。カートがあるので、エレベーターを待つ事にしたんだけど。


「中々、降りて来ませんわね」

「日曜日だから、混んでるもんね」

「あ、来た……けど、満員ですわ」


 そんなやり取りを3回くらい繰り返して、やっと空いてるエレベーターが来てくれた。


「そう言えば、のばらはプレゼント買わなくていいの?」

「私も紳士服売り場で買いたいものがありますの。だから、一旦別行動にしましょ。亜美、体調は大丈夫?」

「うん、了解! もう大丈夫だよ」


 とは言ったんだけど、のばらは私に水を渡してくれた。

 うう、のばら優しい。ありがとね。

 

 でも、私にセンスの良いパジャマ選べるかな?

 けど、この百貨店なら、ダサいものは無さそうだし、なんとかなるかな?


「じゃあ、私はこっちに行きますわ」

「私はこっち。お互い良いの見つかるといいね」

「後で迎えに行きますわね」

「ありがとね、のばら」


 えっと、パジャマコーナーはここかあ。

 京平のサイズは2Lだけど、丈が足りるかどうかも見ておかなきゃ。

 羨ましい事に足長いからなあ、京平。


 お、このパジャマならフカフカだし、うさちゃん模様がとても可愛いし、いいかも!

 サイズも京平に合いそうだし、最高だね。

 京平が温かく眠れますように。


 あ、あと、靴下もプレゼントしよう。

 今のは、大分ボロボロになって来たもんね。

 五十嵐病院は、白の靴下って決まってるから、白い靴下5足セットにしよう。


 よし、京平のプレゼントも買えたぞ。

 ちょうどのばらも買えたみたいで、私を迎えにやってきた。


「おまたせ亜美。良いの買えました?」

「うん。ばっちり!」

「亜美は後何個くらい買う予定ですの?」

「えっとお、後5個」

「そんなに?! 誰にあげるんですの?」

「のばらと友くんと蓮と朱音と、パーティー用」


 のばらはかなりびっくりしていた。

 友達皆にプレゼントを贈りたいだけなんだけどなあ。


「のばらへのプレゼントも考えてくれてたんですね。こんなの初めてですわ」

「嘘、のばらは沢山友達いるでしょ?」

「亜美が初めての友達ですわ」


 のばらは泣きながら、私を抱きしめた。

 そっか、ずっと悲しい思いをしてきたんだね。

 私ものばらを抱きしめた。

 これからもずっと友達だよ。


「のばら大好き!」

「照れますわ。では、のばらのとパーティー用以外のは、一緒に回りますわ」

「ありがとね、のばら。皆のは何がいいかなあ?」

「ここは紳士服売り場ですし、落合先生と日比野さんのを選んでもいいかもですわ」

「なるほど! ちょっと探して見よっと!」


 蓮と友くんには何がいいかなあ。

 2人ともおしゃれだし、仕事も頑張ってるし、ちょっとお高めなボールペンとか良いかも。

 後はおまけで靴下でも付けとこう。


「あら亜美、その靴下は、うん、辞めといた方が」

「え? 可愛いじゃん!」

「面白ファッションじゃなくて、それだとダサいのですわ」

「なんと……!」


 うう、丸英百貨店にも、ダサいのが存在するなんて聞いてないよ。

 

「落合先生のはこっち、日比野さんのはこっちが良いんじゃないかしら?」

「お、面白いし、なんかおしゃれ!」

「亜美が買った深川先生のパジャマ大丈夫かしら? 亜美がこんなにセンスないの、知りませんでしたわ」

「は、ハッキリ言わないでええ! と、後はボールペンも買いたいな」

「ボールペンは文房具だから2階ですわね。そろそろコンシェルジュ呼ぼうかしら」

「え?」


 のばらが携帯で電話してると思ったら、デパートの店員さんが2人、のばらの所にやって来た。


「冴崎様、入館した時点で呼んで下さって良かったんですよ」

「予定外に荷物が多くなってしまって。のばらのと、友達の亜美の荷物を持って欲しいのですわ」

「かしこまりました。冴崎様」


 えええ、何このサービス。聞いた事無いんだけど!


「驚かれてますね。冴崎様は常連様かつ、年会費をお支払い頂いてるので、このようなサービスを提供しているんですよ」

「他にも、服を選んだり、お勧めの品のご案内などもお任せください」

「じゃあ、亜美の友達に贈るボールペンを、見繕ってくれるかしら? 亜美、予算はどれくらいですの?」

「1つ3000円くらいかな?」

「かしこまりました。では、2階に行きましょう」


 百貨店って、コンシェルジュさんがいらっしゃるんだなあ。知らなかったよ。

 コンシェルジュさんは、私の重たい荷物も軽々と持ってくれたので、私達はエスカレーターで、楽々文房具売り場まで来れた。


「男友達に渡す予定なんですが……」

「なるほど、若い男性の方には、こちらとか人気ですよ」

「これはどうかなあ?」

「そ、それは……」

「亜美、コンシェルジュさんを困らせないで。亜美はセンスが無いんだから」

「ううう、また言ったあああ!」


 どう足掻いても、センスのない物に辿り着いてしまう。悲しいやら悔しいやら切ないやら。


「えっと、あげる友達は1人はやんちゃ坊主で、1人は物腰が綺麗、って感じなので、イメージに合ったものを選んで頂けますか?」

「かしこまりました。2名様分ですね」


 コンシェルジュさんは、商品棚から蓮と友くんのイメージに合ったボールペンを出してくれた。

 蓮のが向日葵を思わせる黄色で、友くんのは凛とした青色で。

 うわあ、私がさっき選んだものよりも断然おしゃれだし、素敵。

 これなら使って貰えそうだね。


「じゃあ、この2本を下さい」

「かしこまりました。一緒にプレゼントされる物はございますか?」

「あ、この靴下と一緒に包んでください」

「かしこまりました」


 コンシェルジュさんは、レジの担当の方に指示を出して、靴下とボールペンを綺麗に包んでくださった。

 ああ、のばらありがとう。私コミュ障だから、こういうの助かるよ。


「次は朱音のプレゼントだなあ。どうしようかな?」

「朱音は二つ縛りが可愛いから、髪ゴムとか良いんじゃないかしら? または、可愛い髪飾りが合いそうですわ」

「では、4階の婦人服売り場まで案内しますね」


 可愛い髪飾りや髪ゴムが見つかるといいな。

 私達は、4階の婦人服売り場の一角にある髪飾りコーナーに足を進めた。


「お友達のイメージは、どんなイメージですか?」

「えと、お姉さんって感じで笑顔が可愛くて、恋愛に積極的です!」

「亜美、そこまで言わなくても……」


 コンシェルジュさんは、なるほどって顔をして、幾つか朱音のイメージに合わせて持って来てくれた。

 うわあ、すごい。どれも朱音に似合いそう。


「これとこれとこれなんかは、朱音っぽいかもですわ」

「あー、でも全部可愛いから、全部ください!」

「迷いなく決めましたわね、亜美」


 よし、これで後は、のばらのとパーティー用だね。


「じゃあ、ここからは二手に分かれましょう。のばらも亜美にプレゼントしますわ」

「え、気にしなくて良いのに」

「のばらが気にしますわ。お楽しみにですわ」


 こうして二手に分かれて、16時に1階のカフェ前で待ち合わせる事になった。

 のばらのプレゼント、頑張って選ぶぞ!


「私も協力いたしますね」


 そうだね、コンシェルジュさんも居るしね!

亜美「コンシェルジュさんはありがたかったなあ」

のばら「亜美との買い物も、スムーズに進みましたわ」

蓮「お金持ちの特権ってやつだな」

亜美「本当にありがとね、のばら」

のばら「亜美の為なら、お安いご用ですわ」

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