コンシェルジュさん
「えっと、医学書コーナーはどこかな?」
「あ、あっちよ。亜美」
のばらに引っ張られながら進んだ先には、数千冊はゆうに超える医学書が並んでいた。
京平が持ってないのは、この中のどれなんだろう? 百冊を超えるから、流石に覚えてないな。
そもそも信次が第一希望としているのは、どんな種類なんだろう。
ダメだ、私お姉ちゃんなのに、信次の事、意外と知らないや。
「亜美、悲しそうな顔してどうしたの?」
「私、信次の事、知らないなって」
「そう言えば信次くん、医者になりたいとは言ってますけど、外科とか内科とか精神科とか、希望職種は話したことないですわね」
「うん、私も聞かなかったし。あーん、どうしよう!」
何で弟の事なのに、私は今まで気にして来なかったんだろう。大切な事なのに。
信次だし、もうどの職種にするか決めてるだろうし、きっと出来るだろうし、なのに。
「それなら、家族セットにしましょう亜美。内科と精神科と異能、で」
「あ、確かに家族セットだ。これなら嫌な気はしないよね。流石のばら!」
「家族思いの信次くんですから、喜んでくれるはずですわ」
私はその種類の中で、なるべく見覚えがなくて、沢山知識が詰め込めそうな医学書を選んだ。
内科のは、寧ろ私も勉強したくなっちゃう。
それと私用に、糖尿病療養指導士の本も買った。
「よし、選べたぞ。重いけど」
「カート持って来ましたわ」
「ありがと、のばら」
こうして、まずは信次のプレゼントが買えた。
次は京平なんだけど、私はもう決めている。
「深川先生には、何がいいかしらね?」
「冬用のパジャマ買おうと思って。いくら京平でも、今の時期に夏用パジャマは寒いだろうし」
「じゃあ、紳士服売り場ですわね。確かに深川先生、夏用のパジャマ着てらしたものね」
紳士服売り場は、3階。カートがあるので、エレベーターを待つ事にしたんだけど。
「中々、降りて来ませんわね」
「日曜日だから、混んでるもんね」
「あ、来た……けど、満員ですわ」
そんなやり取りを3回くらい繰り返して、やっと空いてるエレベーターが来てくれた。
「そう言えば、のばらはプレゼント買わなくていいの?」
「私も紳士服売り場で買いたいものがありますの。だから、一旦別行動にしましょ。亜美、体調は大丈夫?」
「うん、了解! もう大丈夫だよ」
とは言ったんだけど、のばらは私に水を渡してくれた。
うう、のばら優しい。ありがとね。
でも、私にセンスの良いパジャマ選べるかな?
けど、この百貨店なら、ダサいものは無さそうだし、なんとかなるかな?
「じゃあ、私はこっちに行きますわ」
「私はこっち。お互い良いの見つかるといいね」
「後で迎えに行きますわね」
「ありがとね、のばら」
えっと、パジャマコーナーはここかあ。
京平のサイズは2Lだけど、丈が足りるかどうかも見ておかなきゃ。
羨ましい事に足長いからなあ、京平。
お、このパジャマならフカフカだし、うさちゃん模様がとても可愛いし、いいかも!
サイズも京平に合いそうだし、最高だね。
京平が温かく眠れますように。
あ、あと、靴下もプレゼントしよう。
今のは、大分ボロボロになって来たもんね。
五十嵐病院は、白の靴下って決まってるから、白い靴下5足セットにしよう。
よし、京平のプレゼントも買えたぞ。
ちょうどのばらも買えたみたいで、私を迎えにやってきた。
「おまたせ亜美。良いの買えました?」
「うん。ばっちり!」
「亜美は後何個くらい買う予定ですの?」
「えっとお、後5個」
「そんなに?! 誰にあげるんですの?」
「のばらと友くんと蓮と朱音と、パーティー用」
のばらはかなりびっくりしていた。
友達皆にプレゼントを贈りたいだけなんだけどなあ。
「のばらへのプレゼントも考えてくれてたんですね。こんなの初めてですわ」
「嘘、のばらは沢山友達いるでしょ?」
「亜美が初めての友達ですわ」
のばらは泣きながら、私を抱きしめた。
そっか、ずっと悲しい思いをしてきたんだね。
私ものばらを抱きしめた。
これからもずっと友達だよ。
「のばら大好き!」
「照れますわ。では、のばらのとパーティー用以外のは、一緒に回りますわ」
「ありがとね、のばら。皆のは何がいいかなあ?」
「ここは紳士服売り場ですし、落合先生と日比野さんのを選んでもいいかもですわ」
「なるほど! ちょっと探して見よっと!」
蓮と友くんには何がいいかなあ。
2人ともおしゃれだし、仕事も頑張ってるし、ちょっとお高めなボールペンとか良いかも。
後はおまけで靴下でも付けとこう。
「あら亜美、その靴下は、うん、辞めといた方が」
「え? 可愛いじゃん!」
「面白ファッションじゃなくて、それだとダサいのですわ」
「なんと……!」
うう、丸英百貨店にも、ダサいのが存在するなんて聞いてないよ。
「落合先生のはこっち、日比野さんのはこっちが良いんじゃないかしら?」
「お、面白いし、なんかおしゃれ!」
「亜美が買った深川先生のパジャマ大丈夫かしら? 亜美がこんなにセンスないの、知りませんでしたわ」
「は、ハッキリ言わないでええ! と、後はボールペンも買いたいな」
「ボールペンは文房具だから2階ですわね。そろそろコンシェルジュ呼ぼうかしら」
「え?」
のばらが携帯で電話してると思ったら、デパートの店員さんが2人、のばらの所にやって来た。
「冴崎様、入館した時点で呼んで下さって良かったんですよ」
「予定外に荷物が多くなってしまって。のばらのと、友達の亜美の荷物を持って欲しいのですわ」
「かしこまりました。冴崎様」
えええ、何このサービス。聞いた事無いんだけど!
「驚かれてますね。冴崎様は常連様かつ、年会費をお支払い頂いてるので、このようなサービスを提供しているんですよ」
「他にも、服を選んだり、お勧めの品のご案内などもお任せください」
「じゃあ、亜美の友達に贈るボールペンを、見繕ってくれるかしら? 亜美、予算はどれくらいですの?」
「1つ3000円くらいかな?」
「かしこまりました。では、2階に行きましょう」
百貨店って、コンシェルジュさんがいらっしゃるんだなあ。知らなかったよ。
コンシェルジュさんは、私の重たい荷物も軽々と持ってくれたので、私達はエスカレーターで、楽々文房具売り場まで来れた。
「男友達に渡す予定なんですが……」
「なるほど、若い男性の方には、こちらとか人気ですよ」
「これはどうかなあ?」
「そ、それは……」
「亜美、コンシェルジュさんを困らせないで。亜美はセンスが無いんだから」
「ううう、また言ったあああ!」
どう足掻いても、センスのない物に辿り着いてしまう。悲しいやら悔しいやら切ないやら。
「えっと、あげる友達は1人はやんちゃ坊主で、1人は物腰が綺麗、って感じなので、イメージに合ったものを選んで頂けますか?」
「かしこまりました。2名様分ですね」
コンシェルジュさんは、商品棚から蓮と友くんのイメージに合ったボールペンを出してくれた。
蓮のが向日葵を思わせる黄色で、友くんのは凛とした青色で。
うわあ、私がさっき選んだものよりも断然おしゃれだし、素敵。
これなら使って貰えそうだね。
「じゃあ、この2本を下さい」
「かしこまりました。一緒にプレゼントされる物はございますか?」
「あ、この靴下と一緒に包んでください」
「かしこまりました」
コンシェルジュさんは、レジの担当の方に指示を出して、靴下とボールペンを綺麗に包んでくださった。
ああ、のばらありがとう。私コミュ障だから、こういうの助かるよ。
「次は朱音のプレゼントだなあ。どうしようかな?」
「朱音は二つ縛りが可愛いから、髪ゴムとか良いんじゃないかしら? または、可愛い髪飾りが合いそうですわ」
「では、4階の婦人服売り場まで案内しますね」
可愛い髪飾りや髪ゴムが見つかるといいな。
私達は、4階の婦人服売り場の一角にある髪飾りコーナーに足を進めた。
「お友達のイメージは、どんなイメージですか?」
「えと、お姉さんって感じで笑顔が可愛くて、恋愛に積極的です!」
「亜美、そこまで言わなくても……」
コンシェルジュさんは、なるほどって顔をして、幾つか朱音のイメージに合わせて持って来てくれた。
うわあ、すごい。どれも朱音に似合いそう。
「これとこれとこれなんかは、朱音っぽいかもですわ」
「あー、でも全部可愛いから、全部ください!」
「迷いなく決めましたわね、亜美」
よし、これで後は、のばらのとパーティー用だね。
「じゃあ、ここからは二手に分かれましょう。のばらも亜美にプレゼントしますわ」
「え、気にしなくて良いのに」
「のばらが気にしますわ。お楽しみにですわ」
こうして二手に分かれて、16時に1階のカフェ前で待ち合わせる事になった。
のばらのプレゼント、頑張って選ぶぞ!
「私も協力いたしますね」
そうだね、コンシェルジュさんも居るしね!
亜美「コンシェルジュさんはありがたかったなあ」
のばら「亜美との買い物も、スムーズに進みましたわ」
蓮「お金持ちの特権ってやつだな」
亜美「本当にありがとね、のばら」
のばら「亜美の為なら、お安いご用ですわ」




