駆け巡る恋愛事情
「おはよー、友くん」
「亜美さん、シフト被るの久しぶりですね」
「今、私全部早番だもんね」
内科に向かうと、友くんが居たので話しかけた。
最近変態なのには困ったもんだが、諦めてくれるまでの辛抱である。
京平もそうなんだけど、私のどんなとこを好きになってくれたのかな?
私、自分に自信ないから解んないや。
「昨日休みだったので、プレゼント買って来ましたよ」
「早いねー。私は明日のばらと買いに行くよ」
「それとは別に、亜美さんの分も。お楽しみに」
「え、気にしなくて良かったのに」
「だって、僕は亜美さんを愛してますから」
ちょ、友くんってば、人が沢山いる中で、愛を叫ぶんじゃないよ!
私が困ってるのを察して、京平が来てくれた。
「日比野くん、病院で愛を叫ぶのは頂けないな」
「愛してるから仕方ないんですよ」
「俺叫んだ事ないだろ、耐えろ」
「そもそも京平から、愛してるとか好きとか言われた事ないけどね」
「あ、いや、それはだな……あははは」
自覚はあったんだ、京平。
京平って変なとこで、コミュ障になるからなあ。
気持ちは伝わってるけど、京平からの愛の台詞も聞きたいよ。
でも、京平だし無理だろうなあ。それも解ってる。
「じゃあ、僕のが愛を伝えてる訳ですね」
「伝え方は人それぞれだろ?」
「はいはい、ここは病院だから落ち着いて!」
また喧嘩が始まりそうな匂いがして、私は慌てて2人を止めた。
言葉なのか、態度なのかは、人それぞれだよね。確かに。
「あれ、深川先生、顔腫れてますね? 絆創膏貼りましょうか?」
「京平、昨日自分で自分を殴って」
「亜美さんを心配させちゃダメですよ」
「自分が許せなくてさ。亜美、絆創膏貼って」
「私が貼ってあげましょうか? 深川。もう時間よ」
あ、看護師長がやってきた。時計をみると7時。もう看護師ミーティングの時間だね。
「すみません。すぐ行きます」
「待ちな、深川の手当てが先よ。皆、傷の手当て方法を教えるわね」
「題材にされたわ、俺」
「亜美さん、めちゃメモしてますね」
◇
「おはようございます、体調はいかがですか?」
「最近ご飯も美味しいし、頑張れそう」
「入院食、実は深川先生が指導したんですよ」
「え、あのイケメン先生料理出来るんだ。隙が無さすぎる」
「凄いですよね。まずは血液取らせて頂きます」
でっしょー? 京平は凄いんだぞ!
イケメンだし頭良いし料理も出来るし優しいし! よく天然が炸裂するけど、それも可愛いんだぞ。
「はい、終わりました。続けて体温測りますね」
「あ、時任さん、深川先生と付き合ってるって本当だったんだね」
「え、何故香川さんの中で確信に変わったんですか?」
「だって、顔に描いてあったもん」
あー、遂に患者様にも見抜かれちゃったよ!
顔に描いてあるって、どういう事なんだあ?!
「はい、確かに私と深川先生は付き合っています」
「無茶苦茶照れてるじゃん」
「まさか香川さんに見抜かれるとは思いませんでした」
「あ、体温は36.5ね。またね、時任さん」
「他の患者様には内緒ですよ!」
うー、香川さんお喋りだから、内緒にしてくれないだろうなあ。
こりゃ患者様達に私達の事が知れ渡るのは、時間の問題だね。
私がトボトボしながら歩いていると、聞き慣れた声が響く。
「よ、亜美、お疲れ」
「あ、京平、お疲れ」
「どうしたんだ? なんかガックリしてるみたいだけど」
「506号室に入院されている香川さんに、私達が付き合ってる事がバレちゃって」
私が溜息を吐いていると、京平はなんだそんな事かってテンションで笑う。
「ああ、もう8割方にはバレてるだろ。亜美隠し事出来ないし」
「やっぱり、顔に描いてあるの?」
「うん。俺としては嬉しいけど」
何で私はこんなにも隠し事が出来ないんだ!
しかも付き合ってる相手までモロバレって、不思議が過ぎる。
「それだけ亜美が俺を想ってくれてるって事だよ」
「だって、愛してるもん」
「こら、病院で呟くんじゃない、照れるだろ」
「いひひ、お互い頑張ろうね」
いつもドキドキさせられてる分、たまには私からドキドキさせてもいいよね?
「ダメだ、やっぱ照れる。亜美のやつ……」
◇
「うー、休憩時間だあ」
「お疲れ様です、亜美さん」
「患者様から、深川先生とはどうなの? とか、めちゃくちゃ聞かれたからね」
やっぱり香川さんは隠し事が出来なかったみたいで、巡回して回った患者様全員に、聞かれる羽目になってしまった。
私も私で、顔に描かれちゃうから尚の事。
「僕も今日は緊急外来でしたが、何人かには聞かれましたね」
「嘘?! そんなに広まっていたとは」
「はい、そして僕が奪うって言っときました」
「余計ややこしくするでないよ!」
もー! 余計変な噂が立ちかねないじゃん。
なんて事をしてくれたんだ、友くんってば。
気持ち的に余裕がない時に、大切な人はやって来る。
「よ、2人ともお疲れ」
「京平、お疲れ」
「噂をすればなんとやらですね」
京平、会いたかったよ!
抱きしめたいけど、我慢我慢。
「休憩室、席空いてるかな?」
「この時間なら大丈夫ですよ」
「土曜は人も少ないしね」
休憩室に入ると、予想通り席は空いていた。
私達は日当たりの良い席を選んで座る。
「さ、ご飯たべよ!」
「「「いただきます」」」
「そういえば最近友くんも、いただきます言うよね」
「亜美さんのがうつったかもです」
変な事言うなあ、友くん。
まあいいや、ご飯たーべよっと!
「お、今日はミートボールか。亜美も成長したな」
「いろんな形にしてみたよん」
「流石亜美さん、可愛いですね」
えっへん。頑張ったもんね。
因みに今日のお弁当は、ミートボールと卵焼きとほうれん草と人参の野菜炒めとうずら茹でて染めたのと肉じゃが!
京平のは、ふりかけでハート描いたよん。
「我ながら美味しいな。もぐもぐ」
「今日のも美味いよ、ありがとな、亜美」
「えへ、それなら良かった」
今日は色々聞かれたから、なんか疲れたなあ。
昨日も寝たのに、今日も眠いや。
「「ごちそうさまでした」」
「お、同時だね」
「じゃ、一緒に寝ようか。亜美眠そうだし、俺もちょい眠いや」
「アラーム掛けとかなきゃ」
「あ、掛けなくていいですよ。僕が起こしますから」
「ありがと、友くん。助かる!」
友くん、めっちゃ気が利くじゃん。
これなら確実に起きられるね。
「おやすみ、京平、友くん」
「おやすみ、亜美」
「おやすみなさい、亜美さん」
私は京平を、京平は私をポンポンしながら、安心して眠りについた。
午後からも頑張る為に、しっかり寝とかなきゃ。
「そろそろ潮時かな、僕」
亜美「いろんな患者様にバレちゃったよお!」
京平「皆勘付いていただろうけどな」
友「亜美さんの顔に描いてありますしね」
亜美「隠し事出来ないもーん」
友「そんな亜美さんが可愛いです」
京平「こら、亜美に近づくな。しっしっ!」




