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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
クリスマスの準備
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またまたやらかした!

「亜美、風呂出来たぞ」

「ありがと、京平。じゃあ早速入ってこよ」

「よく考えたら、亜美風呂長いよな? 今から走ってくるよ」

「無理しないようにね」

「サクッと走ってくるよ」


 京平はそう言って、走りに出かけた。

 さっき怠いとか言ってたけど、大丈夫かなあ?

 お風呂から出ても帰っていなかったら、様子見に行かなきゃ。


 はあ、でもお風呂はやっぱ気持ち良い。

 この入浴剤いい香りするなあ。いつの間に買ったんだろう?

 お肌もすべすべになってる気がするよ。

 京平、ありがとね。


 はあ、今日は一緒にお風呂入れると思ったのにな。

 でも、下手したらずっと一緒に入れなくない?

 私が走る時に、寂しがっちゃうからいけないんだけどさ。

 しかも、よく考えなくても、京平に負担かけちゃってる。

 強くならなきゃな。付き合ってから、私甘え過ぎてるもん。

 こんなに甘えるの、私らしくないもんね。

 京平に相応しいレディにならなくては。


 そうと決まれば、大人っぽく生きなきゃ。

 私は、京平を守りたいんだもん。

 身体も綺麗に洗って、香水付けちゃおう。

 髪の毛も洗った後、コンディショナーをたっぷりと。

 ふふん! これでいつもより大人な亜美ちゃんだぞ。

 京平が帰って来たら、この大人の包容力で包み込んであげなきゃね。


 私がお風呂から上がると同時に、京平が帰ってきた。

 よし、大人っぽく振る舞うぞ。


「ただいま」

「お帰りなさいまし。京平」


 ん、なんか京平が変な顔してる。

 あ、深くため息を吐いたぞ! 何故?!


「京平、お風呂に入るといいのですわ」

「だから、のばら敬語禁止! 紛らわしいぞ!」


 ええ?! 大人っぽいと言えばのばらじゃん。

 私は大人っぽく振る舞っただけなのに、解せぬ。


「後、変な匂いするから風呂入ろーな」

「あらやだ香水だわよ、おほほほほ」

「気持ち悪い喋り方止めろ! 話聞かせろ」

「あー。ほっぺ引っ張らないでえええ」


 京平は私をお風呂に連れて行くと、真っ先に私の身体を洗い始めた。

 そんなに変な匂いだったのかなあ、この香水。

 全然使ってなかったけど、友くんからの誕生日プレゼントだったのに。


「で、何で急にキモくなったんだ?」

「違うもん! 私、甘えてばっかりだから、大人っぽくなりたくて……今日だって、寂しいって我儘を通しちゃって、京平に迷惑を」

「何言ってんだよ、亜美のバカアホまぬけ」


 京平は後ろから私を抱きしめてきた。


「俺、亜美が甘えてくれるの、嬉しいんだぞ。俺も亜美の為になれるんだな。って。寧ろ足んないよ、もっと甘えてくれよ」

「京平は傍に居てくれるだけで充分だよ。迷惑かけたくないよ」

「亜美が亜美らしくない方が嫌だよ。亜美は亜美でいてくれよ」

「そのままで、いいのかな?」

「そのままがいいの。俺が」


 そして京平は、私の髪の毛も洗い始めた。


「そんで、髪の毛コンディショナーつけすぎ。ちゃんと流せよ」

「やー、大人っぽく艶やかに」

「艶やかじゃなくて、ベタベタだけどな」


 ああ、またやらかしちゃった。

 自立した大人になりたかっただけだったのに。

 甘えてばかりだな、私。


「だから、甘えていいんだよ。頑張ってるから、亜美は」

「そうだね。そういえば私、京平にしか甘えられなかったや」


 拠り所は京平だけだもんね。私の場合。

 甘えてもいいんだね。ありがとね、京平。


「後、その香水はもう使うなよ。日比野くんと同じ匂いがするし」

「え、マジか」

「鈍感だな、亜美。ちょっと日比野くんに同情するよ」

「変なもんプレゼントしたんだな、友くん。私を友軍団の一員にしたかったのか?」

「あはははは、ドンマイ日比野くん」

「あ、私も京平の背中流すね」

「お、ありがと!」


 京平、走って帰ってきたから、汗いっぱいかいてるね。

 でも、その匂いがまた好きだなあ、なんて。

 ん? 私、どんどん変態になってんな?


「確かに香水は嫌だよね、そのままがいいよね」

「あはは、そうだな。亜美の匂い、俺も好きだよ」


 違う違う、匂い、だってば。

 なのに、私、何でこんなに顔真っ赤になってんの。

 間接的にも好きって言ってもらうの、付き合って初めてだからドキドキしちゃった。


「あ、ありがとね」

「ど、どういたしまして」


 あれ? 京平もちょっと照れてる?

 無意識に好きって言って、それに今気付いて照れてるのかな。可愛いね。


「じゃん、髪の毛京平にしてみた!」

「お、じゃあ俺は、ほれ亜美!」

「京平、ショートヘアー似合うじゃん」

「散髪代ケチりたいから、髪型変える気はないけどな」

「美容院くらい普通に行こうよー」

「だって医学書買いたいし」


 京平、お小遣いの大半を医学書に費やしてるからなあ。

 あんなにあって、読めてるのかなあ?

 そんな頑張り屋の京平も、好きなんだけどね。


「ほら、流すぞー」

「ああ、ボブヘアーがああ」

「自力で伸ばしな!」

「京平も流すよ!」

「ふー、サッパリしたわ」


 お互いサッパリした後はお風呂に入った。

 私、香水の匂い取れたかな?

 友軍団になるとこだったからな。危ない危ない。


「いつもの亜美に戻って良かった」

「私なんだろね? 変わろうとすると毎回失敗するんだよ」

「変わる必要がないからだよ。亜美は元が素敵だから」

「へへ、ありがとね」

「じゃなきゃ、俺だって惚れてねえよ!」

「あああ、ほっぺ引っ張らないでえええ」


 在りのままの私で良いんだね。

 そんな私を、愛してくれてありがとね。京平。


「大体亜美だって、俺が日比野くんみたいな喋り方になったらキモいだろ?」

「うん、確かにらしくないしキモい」

「それと一緒だよ。自分らしく、だな」

「だね。自分にちょっと自信が持てたよ。ありがとね」

「亜美ほど素敵な女性は居ないのに。自信無かったのか」

「そういう京平もね!」

「うう、痛いとこ突かれたわ!」


 そうだよ。京平ほど素敵で格好良くて優しくて、人のために怒れる自慢のお兄ちゃんであり、自慢の彼氏なんて他には居ないんだからね。

 俺なんて、って、思わないで欲しいな。

 あれ、なんかフラフラするし、頭が。


「はにゃ、なんか頭がボーッとする」

「あ、珍しく亜美がのぼせたか。風呂から出な」

「うう、肩貸してくれてありがと。はあはあ」

「2度目の風呂だったもんな。亜美の自業自得とは言え。よっこらしょ」


 京平は私をお風呂から出すと、お姫様抱っこしてくれた。

 フラフラしてたから、正直かなり有難い。


「部屋で横になってな」

「うん、はあはあ、そうする」


 京平は私の布団にタオルを敷いて、私を寝かせてくれた。

 その後京平は、サッとパジャマに着替えて、私を団扇で煽ぐ。


「あ、その団扇、私と京平で作った親子制作のだ」

「そ、宝物。亜美が絵描いてくれたもんな」

「京平、絵だけはダメだもんね」

「あの時はかなり焦ったよ。どうしようって」


 私達の場合、正しくは兄妹制作だけど、私の小学校で毎年あった行事で、6年生の時は団扇だったんだよね。

 京平は、信次のとこにも行かなきゃで、あまり一緒には作れなかったけど、楽しかったなあ。


「懐かしいなあ」

「ある意味、亜美との共同作業だったしな」

「ふふ、確かにね」

「これからも、2人で生きていこうな」


 うん、これからも2人で生きていこうね。

 どんな困難も、2人でなら乗り越えられる。

 そんな気がしたんだよ。

信次「亜美、甘えすぎとは言ったけど、やり方が違いすぎるでしょ!」

のばら「そうですわ! まるでのばらがキモいみたいになってるのですわ!」

亜美「反省してます……」

京平「亜美はそのままで良いんだよ。ただ、もっと甘えて欲しいかな」

信次「兄貴! 亜美に甘すぎるよ!」

友「そして、友軍団ってなんなんですか! 僕はただ、亜美さんを僕色に染めたかったのに」

京平「亜美の発想、すげえよな。うん」

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