表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
京平の決意
72/221

半纏で温まろう。

「京平、寝たみたいだね。ぐっすり寝るんだよ」


 私は京平のおでこにキスをして、部屋を後にした。

 洗い物とかお風呂とか、まだやる事あるしね。

 本当は勉強したいんだけどなあ。


 まずは洗い物。この時期の洗い物は、お湯出さないと辛いよね。

 今日のロールキャベツはコンソメスープだから、汚れがこびりつかなくて助かるな。

 これがビーフシチュー仕立てになると、水に漬けてないと、かなりムカつくもん。

 ふふ、京平、食欲あって良かった。明日も京平が笑ってくれますように。


 次はお風呂。今日はシャワーにしちゃお。

 鼻歌混じりで浴びると、本当に気持ち良いんだよね。

 石鹸を泡立てて身体を洗ったり、1人で髪の毛を蓮の髪にしたり。

 ……うん、虚しくなってすぐ流した。

 ダメだなあ、京平の居ないお風呂ですら、ちょっと悲しいだなんて。

 お風呂が1人で悲しいなんて、今まで無かったのにな。


 ふー、さっぱりしたあ。

 まだかなり早いな? 何しようかなあ。

 こういう時こそ、勉強したいんだけども!

 でも、京平にバレたら、また勉強道具隠されちゃうしなあ。

 そうだなあ、ライム返してないの返すか。

 返してないのが……沢山あるや。


 あ、のばらから来てる。『ケーキ、いつ食べにいきますの?』か。

 私は食べれないけど、いつでも行けるよ、って返すか。


 次は蓮か。『風邪完治したてだから、無理すんなよ』か。優しいね、蓮。

 ありがとね。明日は休みだからゆっくり休むよ、って返した。


 あ、同期グループライムに友くんが『亜美さんを抱きしめたいです』って送ってるじゃん?!

 蓮にも、『バカじゃね? 友!』って、突っ込まれてる。

 友くん、せめて個人ライムにしよ!

 ダメ! のスタンプ押しとこ。えいや。


 あ、朱音からも来てる。

 『亜美ー、また合コン外れだったあ。良い人紹介してえ』だと?

 私、男友達、友くんと蓮しかいないよ? って返した。

 ごめんね朱音、友達少なくて。


 と、のばらからまた返信が来た。

 『ケーキ食べられないなんて、深川先生から禁止令が出たのかしら? それなら来月行きますわよ。ヘモグロビンA1cを下げるのですわ』か。

 のばら、全てお見通しか。凄いなあ。

 来月は絶対ヘモグロビンA1cを下げるからね、って返そ。


 友達がいなかった私だけど、今は、こんなに私を気にしてくれる人達がいる。嬉しいな。

 友くんが最近変態になって来たのはあれだけど。


 ライム返し終わっちゃったなあ。次は何しようかな。

 と、困っていると、救世主が現れた。


「ただいまー」

「おかえり、信次」


 よし、信次が帰ってきた! これで勉強が出来る!


「あれ、兄貴もう寝てるの?」

「京平、今日入院食の改善担当だったんだけど、なんか怒られたみたいで落ち込んでて。立ち直りはしたんだけど、疲れちゃったみたい」

「マジか。初めてやることなのに厳しすぎるよね。兄貴、苦労人だなあ」


 本当だよ、初めてやる事が上手く出来ないのは当たり前なのに、嫌な人がいるもんだよ。とっちめなきゃ。


「信次、ご飯は食べた?」

「うん、海里んちで作って食べて来たよ」

「海里家のご飯作ったんだ」

「教えて貰ったお礼に、ね」


 ん? 教えて貰ったお礼? なんだろ?


「教えて貰った、って、何を?」

「これを教わったんだ」

「ん? なにこれ?」

半纏(はんてん)って言うんだって。海里のお母さんに習って、皆で作ったんだ」


 信次、何か大きな荷物持ってるなあとは思ってたけど、こんなの作ってたとは。


「亜美も兄貴も、最近風邪引いてるし、温かくした方がいいかなって」

「確かに温かそう! ありがとね、信次」

「亜美のは赤色で、兄貴は青色で、僕のは黄色」

「ん、信号カラーだな?」

「それはちょっと狙った。兄貴も寒いだろうし、兄貴にこれ着せてきて」

「了解!」


 よし、半纏(はんてん)を京平に着せてこよう。

 これなら京平もより眠れるね。

 私はそーっと部屋に入った。


 京平は気持ちよさそうに寝ている。

 まずは京平の右腕に半纏(はんてん)の右側を通して。

 

「亜美、側にいてよ。むにゃむにゃ」


 ビビった。寝言かあ。

 どんな夢見てるのかな? 夢の私が、京平に酷い事してませんように。

 続いて、左腕に半纏(はんてん)の左側を通して。


「亜美、ごめん。甘えてばかりで。すーすー」


 何してんだ、夢の私!

 甘えていいだろうが! 京平に謝らせんなボケが!

 京平は頑張ってるからいいんだよ!

 全く、夢の私、空気というか京平を読めなすぎてムカつく。

 夢の私にブチ切れながらも、半纏(はんてん)を無事京平に着せる事が出来た。


「亜美、キスして。むにゃ」


 もー、しょうがないなあ。私は京平の唇に、唇を押し当てた。

 すると、京平は夢でもキスをしてるからなのか、舌を私の口の中に入れてくる。

 私も舌を絡めて、京平に応えた。

 夢の中の私、少しでも京平を幸せにするんだぞ。


「ありがとな、亜美。すやすや」

「どういたしまして。良い夢見てね」


 私はそう呟いて、部屋を後にした。


 ◇


「着せてきたよー」

「ありがと。亜美も着てみてよ」

「どれどれ? お、温かいー」


 半纏(はんてん)は、ふっくらしていて、私の上半身を包み込んでくれた。寒い冬にはぴったりだね。


「それなら良かった。じゃあ、お風呂入ってこよ」

「待って、私勉強したいから、まだ入らないで」

「無茶言わないの。僕が出てから勉強してね」

「あー、待ってえええ!」


 信次は普通に私を見捨てて、お風呂に行ってしまった。切ない。

 信次がお風呂から上がる頃には、私も眠くなってそうだから尚更。

 いや、違うな。もう眠いや、私。

 暖かくなったからかな?


 それなら、もう寝ちゃおうかな?

 いやいやいや、明日休みってタイミングで勉強しなきゃいつすんのさ。

 まあ、明日もするんだけど、今日もしたいんだよおお!

 でも眠い。でも勉強したい。

 どっちを優先したらいいんだよおおお!


 って、なんかまたライムが来たぞ。蓮からだ。

 『勉強は明日やればいいから、早めに寝るんだぜ』って、蓮に私の行動読まれてる!!!

 最近色んな人に、私を見抜かれるなあ。そんなに解りやすいのかな?

 でも、嫌だ! 勉強する! なんて、子供っぽくて言えないよね。

 ありがとね。早めに寝るね。って、送った。

 うん。そうだね。素直に寝ようっと。


 部屋に入ると、京平がさっきより幸せそうに寝ている。

 身体が暖まったお陰かな? 良かった良かった。

 私は、良い夢見れますように、って祈りながら、布団に入った。

 出来れば、夢でも京平に会いたいな。なんて、ね。

 私は京平を抱きしめた。世界で1番愛しい人。


「亜美、ずっと一緒だぞ。すぴー」


 あ、京平も抱きしめてくれた。

 ずっとずっと、一緒に居れますように。

 愛してるよ、京平。おやすみ。

亜美「半纏(はんてん)暖かいや」

信次「頑張って作った甲斐があったよ」

亜美「てことは、信次、勉強は?」

信次「勉強もやったから安心して!」

亜美「私のは誰作なの?」

信次「あ、僕だよ。兄貴のは海里で、僕のは海里のお母さん作」

亜美「皆裁縫うまいなあ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ