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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
京平の決意
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甘えまくる京平(京平目線)

「亜美、寒くないかな」


 亜美から送られた星の写真を見ながら、呟いた。

 なんだよ、「京平みたいに綺麗だよ」って。亜美のが綺麗だろ。


 体力を付けたかったから走る事を選んだけど、亜美の事がやっぱり心配で。

 亜美も頑固だから、待つと決めたら待ってるだろうし。

 しょうがない。亜美からは見えないだろうし、少しペース上げるか。これ以上待たせたくない。


 にしても、体力落ちてんなあ。

 そりゃ午前中働いただけで、寝ちまう訳だよ。

 情けないよな。もっと強くならなきゃ。

 うん、まだいけるな? ペース上げよっと。


 ◇


「亜美、お待たせ」

「京平、お疲れ様。ご褒美買って来たよ」

「お、何買ったの?」


 亜美、待ってるだけじゃなくて、何か買ってくれたみたいだ。何だろう?


「ケーキ。ほら、この前買ってこいって言われたの」

「お、嬉しい。ありがとな」


 走った後のケーキ! 最高じゃん。亜美、本当にありがとな。

 

「でも京平、息切らしてないね。私より速いし走ってるのに」

「身体がまだ走る事を覚えてるからだな。8ヶ月ぶりにしては走れたよ」

「私もそんだけ走れるようになりたいな」

「毎日少しずつ走れるようになるよ。続ければ」


 俺の場合、小さい頃から夜走ってたからな。

 そうしなきゃ眠れなかったから。

 当時は今より希死念慮も酷かったし。

 亜美達に会ってからは、大分落ち着いたけど。


「そうだね。頑張るぞ!」

「また遅番始まったら、体力使うしな」

「確かに。今の内に体力付けなきゃ」


 看護師は内科医以上に体力が必要だしな。

 亜美は体力ない中、よく頑張ってるよ。

 亜美ならもう少し体力が付けば、少し本気モードもいけるんじゃないかな?


「明日は休みだから、ご飯食べたら勉強するぞー!」

「え、俺、飯食べたら寝るから、勉強は明日にしな」

「明日休みならいいじゃん!」

「ダーメ」


 俺が寝てる時に亜美に勉強なんてさせたら、また亜美は机で寝そうだしな。

 信次も帰ってくるの遅くなるし、それは阻止せねば。

 今日は色々あったから、さっさと寝ちゃいたいんだよ。すまんな、亜美。


「もー。解ったよ」

「明日起きたら勉強みてやるから」

「え、それは嬉しい!」

「だから、俺が寝付くまで側に居て欲しいな」

「甘えん坊なんだから。いいよ」

「ありがと、亜美」


 何だかんだで亜美に甘えまくってんな、今日の俺。

 でも亜美のお陰で、落ち込んでたけど立ち直れたよ。

 だから、強くなりたいから、今日はもうちょっと甘えさせて。


「「ただいまー」」

「今日も信次が晩御飯作ってくれてるな」

「信次、帰ってから作ってくれたのかな? 本当にありがたすぎる」

「だな。温めるから待ってろよ」


 昨日は亜美が飯を温めてくれたから、今日は俺が飯を温めよう。

 飯食べ終わったら、余計な事を考える前に寝ちまおう。


「ほい、お待たせ」

「お、今日はロールキャベツ! また手間の掛かりそうな物を」

「「いただきます」」


 ふーふー。走って寒かったから、こういう飯はありがたいな。

 亜美の身体もこれなら温まるな。

 俺、ロールキャベツ上手く出来ないんだよな。

 何故か知らないけど、キャベツが綺麗にロールしてくれないんだ。

 また暇な時に教わるとするか。入院食の参考になるかもだし。


「んー、身体も温まるし、ジューシーな肉汁とキャベツの相性が最高すぎる。美味しい!!」

「俺、教えた覚えないのに作るもんな。すげえよな信次。美味いし」

「京平、ロールキャベツ出来ないもんね」

「おう、ロール出来ないからな」


 でも、出来ないって事は、伸び代があるって事だよな。

 他にもそういうのを伸ばして、改善の手助けをしたい。

 患者様も喜んでくれたみたいだし、まだまだ頑張らねば。


「ごちそうさまでした。さ、ケーキ食べよっと」

「あ、ホットミルク作るね。この後、京平寝るもんね」

「お、ありがと、亜美」


 亜美、まだご飯食べ終わってないのに、俺の為に。

 そんな亜美の優しさに、いつも救われてるよ。

 今日も、もたれかかった時、最後まで泣かせてくれてありがとな。


「ほい、どうぞ」

「ありがと。あちっ、でも温まるな」


 そして、ケーキとの相性も抜群だ。

 亜美はケーキを3つも買って来てくれた。

 信次には内緒だって。

 亜美には間食禁止って言ってる手前、申し訳ないけど、ありがたくいただきます。


「あー、疲れた時の甘いもんは最高だな。美味い」

「私も来月はヘモグロビンA1cクリアして、ケーキ食べるんだから!」

「日々の血糖コントロールが大事だぞ」

「と、運動でしょ。解ってるよ」


 寧ろ亜美は今まで運動せずにクリアしてきたから、そっちのが凄いんだけどな。

 間食してなかったら、今月もクリアしてただろうし。

 運動する癖がついたら、よりヘモグロビンA1cも安定しやすくなるから、頑張れ亜美。

 

「亜美の買って来たケーキ美味いな。何個でも食べれそう」

「走ってた場所から近いケーキ屋さんだから、来月一緒に行けたらいいな。カフェも併設してたし」

「お、カフェもあるのか。亜美次第だけど、行けるの楽しみにしてるな」

「おっし、頑張るぞ!」


 そう言えば、デートも全然してないよな、俺達。

 今一文無しだから、何処へも連れて行けないし。

 亜美、期待してたかな? 明日とか。

 こんな事なら、信次に頼んで前借りしとくべきだったな。

 でも、無いもんは無いし、謝っておくか。


「亜美、明日なんだけど」

「明日はゆっくり休んでね。勉強見てくれるのは夕方で充分だし」

「お、おう。ありがとな」


 気遣われてしまった。本当に亜美には敵わないな。

 我慢させちゃう分、小遣い入ったら、楽しい思いをさせてあげたいな。

 こんなに優しい亜美だからこそ。


「ふー。ケーキ美味かった。ごちそうさま」

「私もごちそうさま。食器だけ流し台持ってってね。後で洗うから」

「ありがとな」


 洗い物を流し台に持っていった後は、歯磨きしてパジャマに着替えた。

 お風呂はもう明日でいいやって感じ。もうかなり疲れた。


「ほら、亜美も部屋行くぞ」

「はーい」


 とは言え、俺、疲れてても寝付き悪いからなあ。

 今日なんて走ってるから、本当は亜美の力を借りずに寝たいんだけど、嫌な事考えちゃって無理だろうな。


「亜美、こっちおいで」

「うん」


 俺は亜美を抱きしめた。これが1番眠れるんだよな。

 亜美もやる事あるだろうに、甘えちゃってごめん。

 そんな俺の気持ちとは裏腹に、亜美も俺に抱きついてくれた。

 そして、俺の頭をポンポンして。

 俺って幸せ者だな。こんなに愛してくれる人がいるんだから。

 亜美といると、本当に安心出来るよ。


 ふわあ、安心したら、眠くなってきた。


「おやすみ、亜美」

「おやすみ、京平」


 愛してるよ、亜美。おやすみ。

亜美「京平、疲れてたのに走ってたし、早めに寝てくれて良かった」

信次「兄貴、無自覚に頑張りすぎるからね」

作者「明日は京平休みやから、たくさん寝てくれたらいいね」

亜美「うん、色々あったみたいだしね」

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