お父さんとの電話
それから私達はのんびりと抱きしめ合って、気付けば夜20時になっていた。
「20時か。そろそろ亜美のお父さんに連絡するか。心配かけただろうしな」
「うん、幸せだよって伝えなきゃ」
「まずは退院した事から、な」
「あ、そりゃそっか」
京平は固定電話の子機を私に渡す。
電話番号はもう暗記してる。だってお父さんの番号だもん。
私はちょっと緊張しながら、番号を押した。
と、同時に、京平がバックハグをしてくる。
もう電話架けちゃったよ。ま、いっか。
『もしもし、時任ですが』
「もしもし、お父さん。亜美だよ」
『亜美か。無事退院出来たんだな。良かった……』
「うん、京平がすぐに病院連れてってくれたから」
京平が早く病院に連れてってくれてなかったら、脱水症状も起こしてただろうし、こんなに早く退院出来なかったもん。
『そうか、流石京平くんだな』
「いつも私がピンチの時は助けてくれるの」
『亜美は昔から風邪引きやすかったし、糖尿病も悪化しやすかったからな。前は4年前だったかな』
「うん、その時と同じように助けてくれたよ」
京平は昔から、私の事を助けてくれてる。
それはお兄ちゃんだった時も、彼氏の時も、何にも変わってないよ。
「あとね、先週の日曜日からなんだけど、京平と遂に付き合い始めたよ」
『亜美に気を遣っただけなんじゃないのか?!』
「失礼な。京平から告白してくれたんだよ」
『そうか、両思いだったのか。亜美、ずっと京平くんの事を愛してたもんな。京平くんに迷惑掛けないようにな』
「うん、大切にするよ。幸せにしてくれたから」
早速風邪からの高血糖で迷惑を掛けているんだけど、私も沢山京平を守っていきたい。
世界一大切な人だから。強がってしまう人だから。いつも私の為に無理しちゃう人だから。
「お父さんは何か変わった事無かった?」
『聞いてくれよ、やっとお母さんの写真捨てられたぞ』
「あの女でいいよ! でも、一歩進めたんだね」
『頑張ってるぞ!』
父親も、凄く頑張ってる。前に進もうとしてる。
いつか、一緒に暮らせたらいいね。まだ、先の話にはなるだろうけど。
その時には京平と結婚……って、バカ。またこんな想像しちゃってる。まだ付き合って9日だぞ!
「少しずつだね。私も少しずつ頑張るね」
『亜美は頑張りすぎちゃうからな。無理するなよ』
「だって負けらんないもん!」
『負けず嫌いも程々にな』
「はーい」
私、いつも負けたくなくて焦っちゃうからな。
お父さんみたいに、少しずつ頑張る事も覚えなきゃ。
でも、入院中はほぼ寝てたし、京平からも勉強禁止されちゃって何も頑張れてないから、しばらくは気合い入れて頑張ってもいいよね?
『そうだ、京平くんとも話したいんだけど、今変われるかな?』
「ちょっとまってね、京平電話出れる?」
「こっちから掛け直すって言って」
ん? すぐ変われば良いのになあ?
まあ、京平が今気分じゃないなら、しょうがないか。
「あ、お父さん、また掛け直すって」
『そうか、23時までなら出れるよって伝えといてくれ』
「うん、了解。後、何度もいってるけど、仕送りもう要らないからね? 私もう働いてるし」
『何を言ってるんだ。デートにもお金はいるだろう? 亜美も女の子なんだし』
「自分で稼いでるから大丈夫だってば」
もう普通に働いてる社会人なのに、未だに振り込み止めてくれないからなあ。
そもそも普通の養育費としても高めの金額だし、心配がすぎるでしょ!
「それに毎月20万なんて、お父さんの生活が大変でしょ?」
『失礼な。不動産やってるから正直余裕だ』
余裕だったのか。なんてこったい。そうだよな、じゃなきゃ最初から20万なんて言わないよなあ。
でも、そういう問題じゃなくてね?
「私も大人になったから、信用して欲しいな」
『でも、亜美だしなあ』
もー、結局最終的には、亜美だしなあ、だもん。
もうちょっと私を信用してくれてもいいのにな。
「解った。もっと頑張るから見ててよ」
『楽しみにしてるぞ』
「じゃあ、また後で京平から掛けさせるからね」
『なる早で、って京平くんに伝えてくれ』
「はーい。じゃあね」
こうして、私とお父さんとの電話は終わった。
でも、京平はバックハグを続けてる。
「京平、お父さん、なる早で掛け直して欲しいって言ってたよ。すぐ変われば良かったのに」
「ゆっくり話したかったの。でも、なる早かあ。亜美が寝てから掛け直そうと思ってたんだけどな」
「つまり、私には内緒にしたいのね?」
「よく解ってるじゃん」
全く、私には内緒にすんなって言う癖に、自分はよく内緒にするんだから。不公平が過ぎる。
「ぶー」
「鳴かないの。男同士だけで話したい事があるの」
「まあいいや、ご飯食べよ」
「もう21時か。飯食べたら掛け直そうかな」
「信次が作ってくれたから、温め直すね」
私は冷蔵庫から、信次の作ってくれた晩御飯を温める。その間にご飯を盛って、と。
晩御飯は、チキン南蛮。凄くボリューミー。
そうそう、こう言うのが食べたかったの!
「お、良い匂いだな」
「はーい、お待たせ!」
「ありがとな、亜美。あー、腹減った」
もう21時だもん。そりゃお腹減るよなあ。
抱きしめ合うのも、程々にしなきゃだなあ。時間を忘れちゃう。
「「いただきまーす」」
んー、美味しいよお。めちゃめちゃジューシーな鶏肉とタルタルソースの相性が最高過ぎる。
幸せが戻ってきた感覚。今は京平もいるし、尚更だね。
「うーん、幸せだなあ。私。美味しい」
「突然なんだ? 俺も幸せだけどさ」
「美味しいご飯を、愛してる京平と食べれるって幸せだなって」
「ありがとな。俺も今、亜美が居てくれて幸せだよ」
幸せだって言い合えるのって、凄く素敵だよね。
これからもこんな風に過ごして行きたいな。
亜美「幸せだなあ」
京平「俺も幸せだよ、亜美」
信次「2人を見てると、僕も幸せな気持ちになるよ」
のばら「羨ましいですわね」
作者「次回は京平がお父さんと電話するよん」




