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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
京平の決意
62/221

退院したよん

「亜美、遂に退院ね。よく頑張りました!」

「ありがとね、朱音。皆が来てくれたお陰かも」

「昨日はわちゃわちゃしてたみたいだしね」


 結局昨日は、あの後診察終わりの蓮も来て、何故か麻生先生まで来て、かなり賑やかしかった。

 のばらと京平は22時頃まで居て、再度信次がやって来た時に一緒に帰って行ったと思う。

 思う、なのは、3人で私を寝かしつけてくれたから。

 安心して、ぐっすり眠れたよ。

 だから、寂しいと思う時間は殆ど無かったな。


「お家帰っても、少し休んで、明日の出勤に備えてね」

「うん、ありがとね。そうしとく」

「後、蓮にもお礼言っときなよ。夜中も亜美の氷枕変えたり、血糖測定したりして、亜美を見守ってたらしいからね」

「およ? 誰情報?」

「ああ、看護師長から聞いたよん」


 蓮、私が寝てる間も見守っててくれたんだね。

 優しい友達を持てて、私は幸せだなあ。


「迎えは誰か来るの?」

「京平が中抜けして、家まで送ってくれるみたい。信次は学校だしね」

「優しいね、深川先生」

「うん、京平はすごい優しいんだよ」


 家から5分の距離なんだから放置してくれてもいいのに、荷物が重たいだろうからって付き添ってくれる事になった。

 しかも、今は私の入院費の支払いまでしてくれてる。

 自分で払うよって言ったんだけど、俺のせいだからって譲ってくれなくて。

 京平お小遣い制だから、前借りしても足りないはずなんだけど、どうしたのかな?


「荷物の片付け手伝おっか?」

「大丈夫、朱音は他の患者様の巡回してて。もう元気だしね」

「了解! 明日また病院でね」


 朱音はそう言うと、私の病室を後にした。


「シックデイの時は、もっと多めにインスリン注入しなきゃだったな。こんなに効きづらくなるなんて」


 私の体質だと、シックデイ時はかなりインスリンが効きづらくなるし、合併症も他の人より早めに出てしまうみたい。

 今後はより健康管理に気を付けて、対処していかなきゃ。

 もう風邪引かないようにしたい。

 京平もあと9年は風邪引かないはずだしね。


 そんな事を言ってたら、京平が病室にやってきた。


「亜美、お待たせ。帰ろっか」

「あ、京平。ちょっと待っててね。荷物がまだ纏まらなくて」

「俺も手伝うよ。よいしょっと」


 京平は高い所の荷物を素早く纏めてくれた。

 行動が相変わらず早い。私はバッグのチャックが閉まらなくて苦戦してるのに。


「少しこっちに詰めるから貸しな」

「これくらい入るかな?」

「入る入る。ほら、閉まった」

「よし、こっちのバッグも閉まったよ」


 荷物が片付いた事を確認すると、京平は全部のバッグを持ち始めた。


「ちょ、流石に重くない?」

「平気平気。亜美は携帯とか細かいもん忘れんなよ」

「もう小さいバッグに入れたから大丈夫だよ」

「よし、じゃあ帰ろっか」


 私達は並んで歩き始めた。

 そう言えば休憩室以外では、京平と並んで歩く機会は出勤と退勤の時だけで、病院内でこの姿を見せるのは初めてかも。

 私達が付き合ってるのは、何故だかもう広まっているのだけど、その姿を見るのは初めてって人も多かったみたいで、視線は私達に集中する。


 集中してんのに京平は、さりげなく手を握ってくるし。

 荷物全部片腕で持ってまで、手を握りたいのか。

 しょうがないなあ。私も手を握り返した。

 ちょっと照れくさいけど、やっぱり手を繋いでくれるのは嬉しいな。

 ありがとね、京平。いつもいつも。


「帰ったら入院疲れもあるだろうし、休んどくんだぞ」

「京平が毎日来てくれたから、眠れてるし大丈夫だよ?」

「あんな硬いベッドじゃ、身体中痛くなるだろ。素直に横になっとけ」

「じゃ、お言葉に甘えて、ちょっと休んでおくね」

「亜美の昼ご飯は信次が作ってくれたから、ちゃんと食べるんだぞー」

「やっと美味しいご飯が食べれる!」


 因みに私は後2日、京平は4日、信次によって料理を禁止されてしまった。

 あいつ受験生なのに、自分で自分を忙しくするからなあ。よっぽど大丈夫なのに。

 でも、久々に信次のご飯食べれるのは嬉しいな。


 ふー、やっと我が家に着いた。


「ただいまー」

「おかえり、亜美」


 京平は、ドカッと荷物を下ろすと、私を抱きしめてくれた。

 退院したら抱きしめる約束だったもんね。私も抱きしめ返した。

 一応お互いマスク付けてるから、大丈夫だよね?


「荷物は俺が帰ってから片付けるから、亜美は無理すんなよ」

「ありがとね、京平」

「と、お姫様を運ぶかな」


 京平は私をお姫様だっこして、部屋まで運んでくれた。

 全然動けるから大丈夫なのになあ。もー。


「しっかり休んどけよ。俺は病院に戻るけど、何か欲しいのあったら、ライムしろよ」

「ありがとね、京平。軽く寝とくね」

「それがいいぞ。おやすみ、亜美」

「おやすみ、京平」


 京平、戻るって言ったのに、私を抱きしめて頭ポンポンしてる。

 本当に優しいんだから。

 そうされると、私、眠くなっちゃう。

 おやすみ、京平。勤務頑張ってね。


「ゆっくり寝ろよ、亜美」


 ◇

 

「亜美、大丈夫? まだ眠い?」

「んん、あ、信次、おはよ」

「いま16時半だけど、まだ身体疲れてたりする?」

「ああ、思った以上に寝ちゃってた。流石に起きなきゃ」

「退院後って、疲れが溜まってたりするし仕方ないよ。今から晩御飯作るね」

「ありがとね、信次。今から昼ごはん食べるよ」


 しまったなあ、ゆっくり寝過ぎちゃった。

 でも、入院で溜まってた疲労感は大分取れたかな。

 京平の言う通り、休んどいて良かった。

 さあ、お楽しみのご飯たべよっと。

 血糖測定をして、と。150。

 大分落ち着いてきて良かった。インスリンも、注入完了!


「あ、手作りハンバーガーだあ。美味しそう。いただきます」


 んー。やっぱりめちゃくちゃ美味しいよお。

 お肉のジューシーさに、トマトとレタスのフレッシュない感じに、信次特製のピクルスがまた効いてるよ!


「久々の信次のご飯美味しい!! ありがとね」

「入院中は不味いご飯だったらしいしね。美味しく食べてくれて嬉しいな」

「夜ご飯も楽しみ!!」

「お腹すいた頃合いに食べてね」

「うん。ありがとね」


 ああ、私の幸せが戻ってきた。

 美味しいご飯食べないと、やってられないもん。

 それでも生きていけたのは、京平に信次にのばらに蓮に麻生先生が、お見舞いに来てくれたお陰。

 入院中にお世話になった看護師長と朱音と友くんにも、感謝は尽きないよ。

 皆、本当にありがとね。無事退院出来たよ。

 お礼をライムで送っとかなきゃ。


「晩御飯は冷蔵庫に入れておくからね。じゃあ、いってきまーす」

「いってらっしゃーい!」


 信次もバイトに行ってやる事なくなったから、ライム送ろうと思ったんだけど、既に退院おめでとうのライムがいっぱい届いてた。

 皆、ライムまでありがとね。


 順番に返していかなきゃ。

 最初に送ってくれたのはのばらだね。

 『退院おめでとうございますわ。今日はゆっくり休むのですわ』だって。

 うん、ゆっくり休んだよ。ありがとね。っと。


 次は朱音だ。『今寝てるかな? 無理しないでね』か。

 うん寝てたよ。ゆっくり休んだよ。っと。


 あ、蓮からも来てる。遅番だったのに、昼頃届いてるや。

 『退院おめでとう。また病院でな』か。

 昨日は夜中なのに、診てくれててありがとね。と。

 蓮、血糖測定までしてくれたもんね。ありがとね。


 友くんからもだ。『退院おめでとうございます。明日また病院で会えたら嬉しいです。出来れば抱きしめたいです』だって?!

 ありがとね。ハグは京平がいるからダメだよ! って返した。


 京平からも来てるなあ、って思った時、噂をしたら帰ってきた。


「ただいまー」

「お帰りー、京平」

「ちゃんと寝てたみたいだな、顔色良いじゃん」


 京平は、私の頭をわしゃわしゃする。

 内心、不安にさせていたんだろうな。

 心配してくれてありがとね、京平。


「ごめん、京平のライム今見てた。欲しい物は特に無かったよ」

「ああ、寝てるだろうなって思って、ポカルだけ買って来たよ。風邪明けだし、喉も渇いてるだろうしな」

「お、ありがと。気が利くなあ」


 私はポカルを受け取ると、そのまますぐ飲み干す。

 ふー、風邪引いてた時に飲めなかったから、嬉しいな。


「良い飲みっぷりだな」

「明日からまた仕事だしね。回復させなきゃ」

「お互い頑張ろうな」

「うん、頑張る!」


 ポカルの分のインスリン注入をしながら、私は気合いを入れて答えた。

 

「あ、ご飯にする? それとも今から作るけど、お風呂にする?」

「そうだな、亜美がいいな」


 京平は私を引き寄せて、抱きしめてくれた。

 そうだね。やっと2人でこういう事出来るもんね。


「亜美が元気になって良かった」

「京平もね。高熱出した時は泣いたもん」

「泣いてたのに、看病してくれてありがとな」


 夜は更けて行くけれど、私達は時を忘れて抱きしめ合った。

 抱きしめられなかった分を、埋め合わせるように。補うように。

亜美「という訳で、退院できました。皆、ありがとね」

京平「お帰り、亜美」

信次「美味しいご飯、いっぱい作るからね」

のばら「良かったですわ。明日病院で会いましょうね」

蓮「夜中も安定してしてたしな。良かったぜ」

友「抱きしめていいですか?」

京平「帰れ! 変態め」

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