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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
恋愛バトル
6/229

亜美の為に(信次目線)

「それじゃー、おやすみー」

「ああ。亜美は明日も早番だもんな。おやすみ」

「亜美、明日はちゃんと起きてよ?」


 正直期待してないけど、僕は亜美に忠告をしながらおやすみって言った。今日は亜美にとって色々あった事だし、早めに眠れるといいな。


「後、兄貴もやっと亜美に敬語禁止って言えたんだね」

「嫌なもんは嫌なら腹を括れって思ってな」


 実は亜美の敬語に関しては、亜美が兄貴に対して敬語を言い始めたその日すぐから、兄貴にめちゃくちゃ相談されてた。

 僕からその事言おうか? って、提案もしてたんだけど、兄貴は自分に対する問題だから、自分で何とかしたかったみたい。

 何であれ、兄貴に対しての亜美の敬語は気持ち悪かったから、敬語が無くなってほっとした。

 弟の僕でさえ、側からみて気持ち悪かったのだから、当の本人である兄貴が嫌なのは当たり前の事だし、気にする事なんてないのに亜美への指摘を先延ばしにしてたのは、本当に何なんだろうか?

 たまに変な考えをする兄貴である。


「兄貴は明日中番?」

「や、遅番。明日は麻生のオペの麻酔科医で入るからな」

「オペ担当で遅番かあ。じゃあ、僕と一緒くらいに家に出る感じだね」

「まさかもう面接取り付けたのか?」

「うん、明日の17時に病院前で待つように言われたよ」

「行動が早いな、信次」


 兄貴から許可が得られたなら、すぐに行動しなくては。

 と、五十嵐病院の採用担当に電話して、面接を取り付けたのだ。

 亜美は嫌がってたけど、やっぱり亜美の恋のライバルはとっちめなければならないし、早く五十嵐病院で働かなくては。僕達家族の絆を甘くみるなよ。のばらさん。


「どういうアピールしたら採用されやすいとかあるかな?」

「ああその件だけど、既に俺からも信次が面接に来る事は院長にライムしたから、問題なく受かるんじゃね? 院長、俺達の事情知ってるし」

「兄貴も行動早。いつの間にライムしたの?」

「ん? 信次から面接受けるって聞いてすぐ」


 てか兄貴、五十嵐院長のライム知ってたのか。普通院長とライムの交換なんて、したくても出来ないだろうに。流石兄貴だ。


「お、今返信来た。聞いて驚け信次。信次なら信頼できるから、もう明日から働いてくれ、だってさ」

「面接パス? よっしゃ!」

「仕事内容は明日伝えるって。時間も場所も、教えてるのと一緒だってさ」

「了解。頑張るぞ」


 うわ、兄貴のコネクション凄すぎる。これで、予定より早くのばらさんをとっちめてぶちのめせるよ。

 でも、のばらさんってどんな人なんだろうか。兄貴にちょっと聞いてみよう。


「ねえ兄貴? のばらさんってどんな人? 亜美から名前だけ聴いたんだけど」

「のばら……? ああ! 冴崎さんか。去年入ったオペ看護師で、今年から総合看護師になってそれ以外もたまにやってて」

「じゃなくて、性格とか!」


 役職とかどーでもいいよ興味ないし! でも総合看やってるなら、仕事は出来る人なのかな?

 因みに、看護師の仕事ですら、またまたこれも法律で大きく進化している。

 以前まではオペ看護師、外回り看護師と別れていたのだが、優秀な看護師は総合看護師として雇用される場合がある。因みに総合看護師を進んでやりたがる看護師は、ほぼ皆無らしいけど。


「悪い子ではないけど、なんか変な喋り方するぞ。後、異能を維持してて患者として月1で話すけど、異能の治療は凄く頑張ってるな」

「ほええ、異能維持してんのか。珍しいね」


 あ、出会いは恐らく異能患者として、か。そうなると、下手したら亜美より付き合い長いのかもしれない。

 いや、小さい頃から知ってるなら、兄貴なら確実に下の名前で呼ぶだろうし。

 でもこれ以上詮索するのも可笑しいか。あとは自分で何とかしよう。

 にしても、異能維持者か。これまた珍しい。


「さあ、俺も寝ようかな」

「え、明日遅番でしょ? 早く起きちゃわない?」

「朝の家事はやりたいからな。やったらこっそり寝直すよ」

「ああ、亜美には内緒だもんね。もう言っちゃえば?」

「や、内緒」


 実は兄貴、朝の家事は亜美に内緒でこっそり手伝ってくれていて、お弁当に関しても最近は兄貴作だ。

 兄貴曰く「信次を助けたいからやるけど、それ亜美に言ったら亜美が無理するから」だってさ。

 これ亜美に言ったら寝坊助を解消してくれそうだし、言えばいいのになあ。毎朝結構大変なんだけどな。


「でも俺の弁当食べて、「美味しかった」って、言ってくれた時は嬉しいな。それ俺が作った! ってたまに言いたくなる」

「あ、解る。そういう顔とか言葉にやり甲斐感じるし、嬉しいよね」


 僕も兄貴に育てられた事もあって、人は助けるのが当たり前って信念は兄貴ほどじゃないながらにあって、家族を助けたくて覚えたのが家事だった。

 今では、嬉しそうな顔をみて、寧ろ僕のが救われてたりするよ。


「僕も亜美の晩御飯の支度終わったら寝るよ。だから布団奥に敷いて寝てね」

「相変わらず頑張るな。無理すんなよ」

「亜美のが頑張ってるから、作ってあげたいだけ。無理はしてないよ」


 僕の帰りより兄貴のが起きるの早いし、亜美も早番だから、ご飯用意してあげないとね。

 亜美は特に兄貴とシフト被んない時、無理しがちだろうから。


「じゃ、おやすみー」

「おやすみ、兄貴」


 僕は兄貴におやすみを告げて、台所で色々家事をやるのであった。


 ◇


 朝、んー今日も良い天気。すぐ洗濯物干せるからありがたい。

 僕は洗濯機を回した後、朝ご飯の支度を始める。


「信次、おはよ」

「兄貴、おはよ!」


 実は兄貴、全然1人で起きれるタイプだ。

 朝起きれない振りも辞めたら?

 って言ってるんだけど、やっぱりそこは、「亜美がしょげるから」なんだとさ。

 亜美には隠し事すんな、ってよく言うのに、自分はかなり亜美に隠し事してる意地悪な兄貴であった。


「弁当箱は揃ってんな。朝と夜何作った?」

「朝は焼き魚とお味噌汁とおひたし。梅干しもだすかな? 夜は亜美のすきなオムライスにした。兄貴の朝ご飯は冷蔵庫に入れとくから、遅番前に食べてね」

「ありがとな信次。じゃ、弁当はそれ以外だな。何にしよっかなー?」


 兄貴ってば、僕にも驚いて欲しいのか知らないけど、僕にもわかんないようにお弁当作るんだよなあ。

 僕も朝ご飯作ってるから、見ていられないのもあるけど。

 因みに2人がご飯を作るので、兄貴は亜美に内緒でIHコンロも買っている。

 ガスコンロ増やせば? って言ったんだけど、お金が勿体ないのと、朝の色々が亜美にバレたくないから、隠せるやつにしたんだってさ。

 なので朝だけIHのを含めて、三つのコンロが頑張ってる。


 僕は朝ごはんを作り終えると、ちょうど洗濯機が終わったよって呼びかけてくる。

 洗濯機の音もあるのに起きない亜美は、逆に凄いとも思う。

 朝ごはんを並べて、洗濯物を干し終わったら、いよいよ亜美を起こさなきゃ。


「兄貴、いま洗濯物干し終わったけど、お弁当できた?」

「おう、もう亜美と信次のは鞄の中入れといたし、夜分の俺たちのは冷蔵庫の中だ。信次は今日弁当2個だもんな」

「じゃあ、亜美起こすから寝といでね。おやすみー」

「おう、おやすみ」


 兄貴が部屋に戻ったのを見計らって、僕はフライパンを手に取る。亜美、今日は何分で起きるかな?


「亜美ー、起きろーー!! ……って、起きないよな」


 僕はフライパンを叩きながら、亜美の部屋へと向かうのであった。


「亜美ー。今日も早番でしょ? いい加減起きなよー」


 僕は亜美をむちゃくちゃ揺すぶる。

 けど、今日は寝言すら言わずにすやすや寝続ける亜美だった。


ーーこりゃ別世界バージョンか。


 昨日は色々あり過ぎて、すぐには眠れなかったのだろう。

 疲れてたと思うのに、本当に可哀想だ。

 でも、亜美も社会人、変に甘やかしちゃいけない。叩き起こさねば。


「うりゃあああああ!」


 僕は、亜美が寝てる布団を吹っ飛ばした。

 リアル布団が吹っ飛んだだね。

 当然亜美を乗せた布団は、亜美を乗せ続ける事が出来なくなり、亜美はそのまま床に叩きつけられた。


「痛たたたた。あ、朝か」

「おそようございまーす。起きるのに20分掛かってるからねー」


 やっっっと亜美が起きた。

 時間ギリギリになってしまったけど、何とかセーフってとこかな。


「嘘……やばすぎ。早く支度しなきゃ!」

「ちゃんと血糖値測るんだよー」


 亜美は毎食事前に血糖値を測って、それをインスリンポンプに記録させる必要がある。

 職場が病院という事もあり、お昼でもこそこそせず血糖値が測れるのは有難いって言ってたっけ。

 その後、その値と食事の糖質から判断して、インスリンを注入する。

 これを間違えると低血糖状態にもなりかねないので、亜美は毎食事前、かなりシビアにやっている。


「んー。ちょい高いけど、今日も患者様多いだろうから、普通通りかな」

「ああ、インフル流行ってるもんね」

「そうなの、めちゃ大変だったよー。信次も手洗いうがいをしっかりね」

「皆病院勤務になるし、消毒液も切らさないようにしなきゃね」


 僕の学校はまだ大丈夫だけど、他の学校でも休校が相次いでいた。

 流石に学校が休校になるレベルならバイト来ちゃダメって言われかねないし、僕の高校が持つ事を祈るばかりだ。


「え、信次、ちょま、もう働く事決まったの?」

「うん、兄貴のコネで」

「京平の根回しか。何てこったい」

「僕たち兄弟の結束の勝利だね」


 亜美には申し訳ないけど、泥棒猫なのばらさんはとっちめなきゃだしね。

 

「でも、何処で働く事になるんだろうね?」

「会計か清掃じゃない? 医学生とかじゃないし」


 僕が倉灘高校に通っている事は、兄貴を通じて院長も知ってるだろうし、頭の良い高校生にやらせやすい職種にはなるはずだ。


「そう言えば、京平明日早番だから通しなんだよね」

「ああ、ちょい時間あるから仮眠と着替えには帰るらしいよ」

「無茶苦茶なシフトだよね……あ、ご馳走様でした! 早く支度しなきゃあああ」


 亜美はかなり慌てた様子で、洗面台へ駆けていく。

 僕も洗面台へ向う。今は兄貴寝てるし、亜美のフォローしてやらないとね。

 と、亜美に遅れて洗面台へいったんだけど、早速亜美は口を歯磨き粉でぐちゃぐちゃにしていた。ちょ、ちゃんと口すすいで!


「亜美、口ぐちゃぐちゃだよ」

「いますすぐとこだったの!」

「後、寝癖やばいよ」

「寝癖治し切れちゃったから諦める……」

「ごめん。買い忘れちゃってたから蒸しタオル用意しといた。髪包めば多少マシになるよ」

「ありがとう!」


 朝の亜美の抜け具合に少し呆れながらも、僕たちは朝の支度を進めるのであった。


作者「ふたりとも亜美の為に頑張ってるなあ」

京介「大切な家族だからな」

信次「放っておけないよね。なんか」

作者「亜美は幸せものやなあ」

亜美「2人ともいつもありがとね」


作者「さて次回は、いよいよ信次のバイトがはじまるぞ。何やらせられるんだろうね?」

信次「いまからドキドキするよ!!」

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