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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
違和感のある京平
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君が居ないと眠れない

「京平、まだ熱あるね」

「薬でおさまってはいるんだけどな。もう少し寝とくよ」

「おやすみ、京平」

「おやすみ、亜美」


 京平、熱あるし身体も怠いだろうに、泣いてる私に気付いて慰めてくれた。

 昨日は京平が高熱を出していたから、不安で仕方なくて。

 そしたら、見たくない夢見ちゃって。

 まだ完治ではないけど、元気そうで良かった。

 ゆっくり寝てね、京平。


 さてと、確か昼には信次がグラタン焼くって言ってたから、今のうちにレモンパイ焼かなきゃ。

 京平が元気になったら食べて貰いたいし。


 あ、そう言えばのばら達来てるんだよね。

 てことは、私の盛大な泣き声も聞いてしまってるよね。

 ドアを出たら、まずは謝らなきゃ。


「うるさくてごめんね、おはよう!」

「あら、亜美。おはようございますわ。昨晩は大変だったらしいわね」

「うん、でも京平が少しでも元気になって良かった」


 のばらには初めて聞かせてしまった泣き声なんだけど、のばらはそれに触れず、私を気遣ってくれた。

 のばら、優しいなあ。


「亜美さん、相変わらずあの夢だと泣いちゃいますね」

「泣けるもんは仕方ないでしょ!」


 海里くんは相変わらず空気読めないね!


「あ、亜美大丈夫? おはよ」

「悪い夢はみたけど、沢山寝れたから大丈夫だよ」


 信次、あれから私達の部屋に入ってないよなあ?

 今はウイルスがウヨウヨしてるから、受験生の信次には大敵だしね。


 あれ、でも、私に布団掛かってたんだよね……。


「信次、部屋入らないで、って言ったのに! 私に布団掛けたでしょ!」

「僕の身体より、亜美を寒い中放置する方がやだよ。僕は今まで風邪引いた事ないし、安心して」


 そう、京平も滅多に風邪引かないから凄いんだけど、信次は生まれてこの方、私の記憶がある限りでは風邪を引いた事がない。

 京平みたいに体温が高いとか、鍛えてるとかもないのに。丈夫な身体で羨ましい。

 因みに私はそんな中、糖尿病の影響もあって、ガンガン風邪を引いてしまうのだけど。


「さあて、今からレモンパイ焼くぞ!」


 と、意気込んでいたんだけど。


「亜美、兄貴に口移しで薬飲ませたでしょ? もう亜美の身体の中にもウイルスはいるから、料理はダメだよ。うつるし」

「えー?! てか何で知ってるの?」

「風邪の平均潜伏期間は1日から4日だから、それまではお弁当作りも禁止ね。大丈夫、僕が作るから」


 なんてこったい。受験生の信次にはなるべく家事させないように、と思っていたのに、そうも行かなくなってしまった。

 ただ、京平も悪気があって風邪を引いた訳じゃないし、私もああするしか薬を飲ませられなかったし、そもそもその前にキスしてるし。

 ここは、甘えるしかないよなあ。申し訳ない、信次。


「受験生なのにごめんね」

「気にしないで。兄貴を助けてくれてありがとね」

「当たり前でしょ」

「朝ご飯は冷蔵庫の中にあるよ……って、どうしたの亜美? めちゃ離れて」

「皆にうつしちゃうかもだから」


 今の私はウイルス塗れ。皆にうつす訳にはいかないもん。


「よく見て、僕たちマスクしてるから。だから気にしないで!」

「亜美も朝ご飯食べ終わったら、マスクするのですわ。手遅れかもだけど」

「マスク苦しいー。取っていい?」

「ダメに決まってるでしょ! 海里のバカ」


 それなら安心だね。私は冷蔵庫から朝ご飯を取り出して温め直しながら思った。

 そしてその間に、血糖値測定とインスリン注入もバッチリやる。


「信次、朝ご飯もありがとね。いただきます!」

「ウイルスに勝てるよう、しっかり食べるんだよ」


 本当に出来の良い弟を持って、私は幸せだなあ。

 私が信次の立場だったら、ここまで出来てないもん。


「信次くん、お母さんみたいね」

「うち、母親居ないからね。兄貴もなんか抜けてるし、僕がしっかりしないと」

「真面目だなあ、信次」


 そう、私も京平もどこか抜けてるから、その分信次が我が家を支えている部分がある。

 我が家の良心って感じだね。

 信次はメンタルも強いし、なんか羨ましいなあ。

 しかも、ご飯作りもバリ最強。隙がない。


「今日もご飯美味しい。ありがとね、信次」

「どういたしまして。あれ? なんか辛そうだね」

「京平が体調良くないから……心配で」

「亜美こそ疲れた顔してるし、寝た方がいいよ。それこそ風邪引いちゃうよ」


 私、そんなに疲れた顔してたのかな?

 

「そうよね、朝4時まで看病してたのなら、まだ休んでいいと思いますわ」

「んー。じゃあ着替えるの止めて寝ちゃおうかな?」

「お昼ご飯は冷蔵庫に入れとくね」

「ありがとね、信次。ついでに京平の氷枕変えとくね」


 とは言っても、眠くは無いんだよなあ。

 まあいいや。京平を眺めながらニヤニヤするか。

 京平の寝顔は、全私を幸せにするからね。


 私は京平の氷枕を冷えたのに交換した後、布団に潜り込んで、京平の寝ている顔を見つめる。

 良かった。呼吸も落ち着いてるし、なんなら気持ち良さそう。

 薬を飲んでこれだから、まだ油断は出来ないけど。


 でも同時に、何で昨日の朝の時点で気付いてあげられなかったのかな、とも。

 京平は私の事を見抜いてくれるのに、私は全然見抜けない。

 ごめんね、京平。


 と、その瞬間だった。

 私の身体がふわっと浮いて、違う抱きしめられている。犯人は、京平だ。


「何悲しそうな顔してんの?」

「京平! い、いつの間に起きたの?」

「ドアを開く音がした時」

「寝たふりしてたんかい!」

「めっちゃ見て来たから、ちょい照れたけど」


 いつもそう。私が悲しい気持ちになってる時は、気付いてくれる。

 私は、何も気付く事が出来てないのに。


「あのな、俺が好きで風邪隠してたんだから、亜美は何も悪くないぞ?」

「気付いてあげられなかったな、って」

「俺は亜美と違って演技派なの。そんな簡単には見抜かせないよ」


 なんじゃそりゃ?! いつの間に京平は、俳優志望になったんだ?!

 いや待て待て、そういう意味じゃない気がする。どういう意味か知らないけど。

 でも、私だって京平の事、見抜きたいのに。


「京平ばっかりずるいな」

「でも、俺の違和感にはすぐ気付いたじゃん」

「いつも話してるもん。解るよ」

「俺は気付かなかったぞー。俺の事なのに」


 京平が笑った。


「だから、俺の事を1番知ってるのは亜美なんだから、自信持ちなさい」

「また上手い事言って」

「亜美とは本音でしか話さないぞ」


 京平がギュッと抱きしめてくれた。

 自信持っていいのかな? だったら、悲しい顔する理由はないよね。

 私も笑った。


「そう、その顔が見たかった」


 満面の笑みで、京平がポンポンしてくれる。

 

「後、もう一個自信持って欲しいとこがあるよ」

「え、なに?」

「俺もう、亜美が居ないと眠れないや。という訳で、おやすみ、亜美」

「え、ちょ、京平?」


 京平は私を抱きしめたまま、眠ってしまった。

 私が笑ったらすぐ寝ちゃうくらい、体調悪いんじゃん。

 てか風邪引いてるのに、私の笑顔が第一優先なんだね。

 私の顔をみて、抱きしめて、笑わせてくれた。

 しかも今は、私が居ないと眠れないのか。可愛いやつめ。


 でも、そういう私も京平が居ないと眠れないみたい。

 だって、あんなに目が冴えていたのに、今は心地良くていつでも眠れそう。

 いつの間にこんな気持ちになったのかな?

 この暖かくて大きな手に、いつも癒されてるよ。

 いつもありがとね、京平。おやすみ。

 

 あ、風邪うつっちゃうかな? まっ、いっか。

作者「どんどんお互いがお互いに、必要になっていくよね」

のばら「のばらもそんな恋、出来るかしら?」

信次「のばらさんなら大丈夫だよ。その、可愛いし」

のばら「それは解っていますけど」

作者「さすがのばらさん」

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