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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
無理はしないでね
49/240

カレーを食べすぎた結果

 それからどれくらいの時間が経ったんだろう。

 京平の優しさで、私はすっかり寝入ってしまった。

 心がパンパンだったのも落ち着いたしね。

 そろそろ起きなくちゃ。


 起きて隣を見ると、京平が優しい目をして私を見ていた。

 そっか、ずっと傍に居てくれたんだね。

 ありがとね、京平。


「おはよ、亜美」

「おはよ、京平。傍にいてくれてありがとね」

「俺も亜美の傍にいたいしな」


 私は嬉しくなって、京平の唇に自分の唇を押し当てた。

 

「ちょ、不意打ちは反則だぞ」

「キスしたかったんだもん」


 こうやって顔を真っ赤にする京平も可愛いんだよね。

 自分からする時は平然としてるのに、私からすると照れてくるのは不思議だけど。


「今何時かな?」

「20時。ちょっと遅いけど、晩御飯にするか」

「今日は信次がカレー作ってくれたよ」

「だよな、すげえ良い匂いするもんな」


 泣いたのもあるだろうけど、かなりお腹が減った。

 おかしいな? 飲み物のカレーを少し飲んだはずなのに。飲み物だからかな?


「カレー温め直すから、ちょっと待ってろよ」

「あ、私がやるよ」

「亜美は無理すんなよ、座ってな」

「じゃあ、お言葉に甘えよっと」


 その間に私は血糖値を測る。と、120。

 良かった、インスリン注入忘れなかったから、爆上がりしてないや。

 今月は、ヘモグロビンA1c下げなきゃだしね。

 今日はカレーだから、少し多めに注入しなきゃ。

 沢山食べる未来しか見えないし。


「はい、お待たせ」

「ありがとね、京平」

「「いただきます」」


 んー。やっぱ信次のカレー美味しい!

 煮込まれた野菜とお肉が絡み合って、まろやかな感じがもう最高。

 なんかスパイシーな感じが今日はあるのも、また食欲をそそるんだよね。


「やっと亜美の笑顔が見れて良かった」

「京平が京平の事話してくれたからだよ。ありがとね」

「いつも受け止めてくれてありがとな。そこら辺、めちゃくちゃ俺甘えてるよ」

「京平だからだよ。当たり前じゃん」


 私を慰める為に、話したく無かった事を話してくれてありがとね。

 話してくれた時、凄く震えていたし、怯えていたし。

 少しずつ、今以上に、京平を知っていけたらいいな。

 そして、全部受け止めるし、傍にいるからね。


「おかわりしよっと」

「お、もう食べたのか」

「なんかお腹空いちゃって」

「今日は沢山泣いてたもんな。俺の為にありがとな」


 京平は優しく笑ってくれた。

 京平こそ、私を受け止めてくれて、守ってくれてありがとね。


「京平が最高だからだよ」

「いつもそうやって褒めてくれるよな。凄く救われてるよ」

「本当のことだもん」


 そう言いながら私は、カレーを大盛りにした。

 

「おいおい、食べ切れるのか。それ」

「今日は残念ながらいけちゃう」

「俺もおかわりしよ。亜美見てると、食欲そそられるわ」

「しちゃおしちゃお!」


 結局私達は、カレーを2杯おかわりして、2人して食べ過ぎた事を後悔しながら、ソファーを枕にして2人でごろ寝した。


「ふー、流石に食べすぎたわ」

「お腹苦しいー」

「しばらく横になろうな」


 ふへ、にしても食べ過ぎたなあ。

 流石に京平と同じ量は多いよね。食べれちゃったけど。


「京平のお腹パンパンだね」

「そういう亜美もな。音鳴るんじゃね?」

「って、叩かないの」


 心のパンパンが治った直後に、お腹がパンパンになってるってなんか笑えるね。

 そして、私のお腹は、なんか甲高い音が響いているし。


「良い音が鳴るな」

「人のお腹で遊ばないの」

「はは、悪りぃな」


 まるで悪戯っ子のように京平が笑った。

 そんな顔も可愛くて好きなんだよね。


「あ、泣いた理由なんだけど、他にもあってね」

「ん? 悲しい事でもあったのか?」

「違うよ。京平が私達の為に挨拶回りしてくれてた事と、京平が慰めてくれた事が嬉しくて泣いたの」

「当たり前の事だから、そんな事で泣かないの」

「私は泣き虫だからね、泣くよ」


 そう、苦しくて泣いただけじゃなくて、嬉しくて泣いたのもあるんだ。

 その嬉しいをくれるのは、いつも京平だよ。


「いつでも慰めるから覚悟しとけよ」

「いつもありがとね、京平」


 やっぱり私のが助けられてるよ。

 私が眠れない時にポンポンしてくれたり、慰めてくれたり、抱きしめてくれたり。

 亜美に甘えてるなんて言ってたけど、京平は全然甘えてないと思うんだけどな。

 もっと甘えてもいいのにね。


 と、京平が何か思い立ったかのように話しかける。


「後、日曜日の夜、そろそろ報告しないとな」

「ん、何を誰に?」

「亜美のお父さんに、俺達が付き合ってる事」

「ちょうど電話の日だもんね。信次の事も言わなきゃ」

「俺はかなり緊張するし、何か言われるかな」

「京平なら大丈夫だよ」


 実は父親にも、京平を愛してる事は既に伝えていた。

 流石の父親も、京平君に迷惑だろ? とか、相手にされないだろ、って心配されてたんだけど、ちゃんと想いが届いた事を伝えたいな。

 正確には9年間両片思いだったこと……は、京平がこのロリコンが! って怒られるかもだから、黙っとくか。


「許されなかったらどうしよう、謝り倒そうかな」

「許さなかったら、私が許さないから大丈夫」

「こらこら、お父さんに歯向かうんじゃないよ」

「だって、私は本気で京平と付き合ってるもん」

「亜美がそうしなくて済む事を祈るよ」


 京平を許さなかったら、いくらお父さんでも許さないもんね。

 今まで散々京平の魅力的な所を電話で語り倒してるのに、通じてないなんて嫌すぎるもん。

 京平は最高の人なんだから。

 日曜日はレモンパイに父親に、盛りだくさんだなあ。


 ここまで話して、京平はふーっとため息を吐いた。


「にしても、今日はランニング無理だわ。明日からにしよ」

「え、走るつもりだったの?」

「予想外に食べなければ、な。亜美が美味しそうに食べるせいだぞ」

「だって美味しかったんだもん!」

「明日からは一緒に走るからな?」

「うう、走るの嫌なんだけどなあ」


 昔から私は運動音痴で、走るのは特に苦手。

 唯一頑張れたのは、小学生の時に親子競争が運動会であって、その練習を京平として以来かなあ。

 京平ったら親子競争なのに直談判して、一緒に出てくれたんだよね。

 あの時が私の全盛期だったよ。


「俺は亜美と走れるの、嬉しいけどな」

「そもそも京平速いじゃん、着いていけないよ」

「俺はジョギング程度で走るから、大丈夫だって」

「うー、それならワンチャン着いてけるかなあ」


 確かに京平と走るのは久しぶりだから、それは喜ばしい事なんだよね。

 体力も付くし、ヘモグロビンA1cも下げられるから悪い事はないし。

 疲れるだろうけど、なんとかなるかな。


「俺も走ってた頃よりは体力落ちてるだろうし、頑張らないと」

「私も頑張るぞ!!」


 てか、京平の本気モード、めちゃくちゃ早かったのに、それでも体力落ちてるのか。

 ランニングで体力が上がるだろうから、本気モード解除されたら、もっと早い本気モードになるだろうな。

 

「って、中々お腹苦しいの治らないー」

「そんなすぐには治らないだろ。素直に横になっとけ。ほら、腕枕するから」

「ありがと、京平。あったかいや」

「亜美もあったかいな」


 京平の腕枕、なんか安心出来るなあ。

 お腹いっぱいなのもあるし、ちょっと眠たくなっちゃう。

 さっき寝たばかりなのにね。


「あー、ダメだ、なんか寝そう」

「亜美は疲れてるだろうし、もう寝たらどうだ? 風呂は明日入ればいいし」

「お弁当の下拵(したごしら)えしてないし」

「今日の弁当美味しかったから、大丈夫」


 うー、そう言われると寝たくなっちゃうな。

 

「明日は走るんだし、早めに寝た方がいいぞ」

「じゃあ、そうしよっかな」

「じゃ、部屋に行こうか」


 ちょ、京平ったら、またお姫様抱っこしてくる。

 確かにお腹は苦しいけど、歩けないほどじゃないのに。

 京平は私を布団に下ろすと、大きな欠伸をし始めた。


「というか、俺も寝ようかな。亜美抱いてたら、眠たくなってきた」

「お互い早起きしなきゃだね」

「明日は一緒に風呂入ろうな」

「ありがとね、京平」


 京平は横になって、私を抱きしめてくれた。

 お腹いっぱいの状態で寝れるって、ある意味幸せだよね。

 しかも、京平の腕に抱きしめられてだもん。

 なんだろ、満足感がすごいや。


「幸せそうな顔してるな、亜美」

「京平と一緒だからだよ」

「俺も幸せだよ。いつもありがとな」


 私達はお互い抱きしめ合った。

 一緒にいる事が、お互いの幸せだって噛み締めるように。

 凄く安心してるよ。私の大切な人。愛してる人。

 もっと幸せにしてあげられたらいいな。

 京平が、もう苦しまなくて済むくらい。

 

「おやすみ、京平。今日もお疲れ様。頑張ったね」

「おやすみ、亜美。ありがとな」


 一緒だとすぐ寝ちゃうよね、私達。

 少なくとも私にとっては、京平は1番安心出来る場所だからだね。

 愛してるよ。京平。


 私達はほぼ同時に寝息を立てて、眠りについた。


 ◇


「ただいまー。亜美達もう寝てんのかな? お、2人とも幸せそうに寝てるや」

信次「2人とも僕の帰りを待たずに寝てんだもん。ちょっと寂しいや」

作者「カレー食べすぎたのが原因やろな。腹一杯だと眠くなるしな」

信次「前も食べすぎてたのに。学ばない2人だなあ」

作者「それだけ君のカレーが美味しかったのだよ」

信次「確かにそう考えたら、ちょっと嬉しいかも」

作者「次回は番外編だよん」

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