僕達が守るから(信次目線)
「のばらさん起きて。ご飯食べられなくなっちゃうよ」
僕はまずのばらさんを起こす。のばらさん、まだお昼ご飯食べてないもんね。
「んー、あらやだ。のばらったら寝てしまいましたのね。しかも信次くんの肩まで借りて」
「のばらさんならそれは全然いいよ。気にしないで」
「起こしてくれて有難うですわ。昼ご飯食べなきゃですわ」
そういって取り出したのはパン一個。
のばらさん沢山食べる人なのに、人前では隠したいのかな?
「あと、多かったら家帰ってからでいいんだけど、サンドイッチ作ったから、良かったら食べて」
「信次くんのサンドイッチですの?! それは今から食べますわ!」
のばらさん、いつも休憩時間のご飯は少なめだから、ちょっと心配してたんだよね。
だからこっそりでも食べられるように、サンドイッチにしたんだけど、亜美達も寝てるしすぐ食べてくれるみたい。
のばらさんは持って来たパンを食べ終わった後、僕のサンドイッチを食べてくれた。
「んー。美味しいですわ。流石信次くんですわ」
「美味しそうに食べてくれてありがとね」
「それはこっちの台詞ですわ。有難う御座いますわ」
本当、この美味しそうに食べる顔が1番好きだなあ。
僕の方がそれに救われてるなんて、のばらさんは思いもしないんだろうな。
「ご馳走様ですわ。今日は体力使いましたから助かりましたわ」
「どういたしまして。じゃあそろそろ亜美達起こそうかな」
「2人仲良く寝てますのね。微笑ましいのですわ」
あれから一度も起きなかったもんな、2人共。
それだけ2人にとって、お互いが大切な居場所なんだろうね。
「亜美、兄貴、そろそろ起きなよ」
「「おはよ、信次」」
「同時に起きましたわ。仲の良い事ですわ」
「亜美もおはよ」
「京平、おはよ」
起きてすぐに、2人共顔を見合わせるもんな。
家族として、2人が幸せそうに過ごしているのは、本当に嬉しい。
特に亜美からは兄貴への気持ちを相談されてたから、思いが叶って良かったと思う。
亜美は辛い思いを沢山してきたから、これからは幸せでいて欲しいしね。
「んー。お陰で大分疲れも取れたし、午後からも頑張るか」
「京平、無理はしないでね」
「解ってるよ。じゃあ行ってくる」
兄貴はそういうと、早歩きで休憩室を出ようとして、足の小指を机にぶつけてた。
あーあ、あれ痛いよね。可哀想に。
「ま、間に合わなかった……」
「いてえええ!!!」
もう周りの人皆笑ってんじゃん。家族として恥ずかしいなあ。
亜美がすぐ兄貴に駆け寄った。
「京平、ソファーで手当するね」
「うう、ありがとな、亜美」
「間に合わなくてごめんね」
「や、普通に俺が悪いから気にすんなよ」
亜美はやっぱり優しいよね。こんな大爆笑ネタでも、笑わずすぐ助けにいくし。
亜美が怪我とかの手当するようになったのも、兄貴がよく怪我するからだったしね。
亜美が五十嵐病院で働くようになってからは、大分減ったけど。
僕も呆れるんじゃなくて、亜美みたいにすぐ助けに行かなきゃだよな。
「はい終わり、もう早歩きはダメだよ」
「本当俺ってダメだなあ」
「ダメじゃないよ、早く患者様のところに行こうとしたんでしょ? その気持ちは格好良いよ」
「慰めてくれてありがとな、午後もがんばるよ」
兄貴は歩いて休憩室を後にした。
亜美も僕達のところに戻ってくる。
「あれ、のばらは行かなくていいの?」
「私は14時半まで休憩ですの。という訳で、もう少し寝ますわ。おやすみですわ」
「おやすみ、のばらさん」
のばらさんはそういうと、うつ伏せになって、気持ちよさそうに眠り始めた。
「よっぽど疲れてたんだろうな」
「だね。ギリギリまで寝かしといてあげようね」
僕は自分のコートをのばらさんに掛けた。
少しでもゆっくりのばらさんが眠れますように。
「むにゃむにゃ。サンドイッチおかわりですわ」
◇
「のばらさん、今23分だよ。そろそろ起きないと」
「むにゃ、もう食べられませんわ」
「のばら! 起きて!!」
亜美が大きな声を出すと、のばらさんはむにゃむにゃ言いながら起きて来た。
そんなとこも可愛いんだけど、もうすぐ仕事だよ。
本当は寝かせてあげたいんだけどね。
「おはようございますわ、亜美に信次くん」
「おはよ、のばらさん」
「おはよ、のばら。もう時間ないから急いだ方がいいよ」
「本当ですわ! 起こしてくれて有難うございますわ!」
のばらさんは僕にコートを渡すと、慌てて休憩室を後にした。
嫌がってはなかったよな。良かった。
寝顔も可愛かったなあ、のばらさん。
「じゃ、そろそろ帰ろっか」
「そうだね。皆仕事に戻ったしね」
見張り役が終わった僕達は、家に向かって歩き出す。
「亜美、かなり泣いてたけど、体調大丈夫?」
「うん。今日は京平と一緒に眠れたしね」
「疲れた顔してるし、帰ったらちょっと寝ときなよ」
「うん、ありがとね」
兄貴の事を考えすぎて心がパンパンで、思い切り泣いてたもんな。
亜美、泣く時は精一杯泣くから、いつも疲れた顔になるんだよね。
「今日はカレーにしようかな。亜美好きでしょ?」
「わ、それはテンションあがる! ありがと!」
「起きる頃に食べられるようにしとくね」
カレーなら兄貴もすきだしね。美味しいの作るからね。
「「ただいまー」」
「さ、僕は早めに晩御飯つくろ。亜美は寝といで」
「じゃあお言葉に甘えて。手伝えなくてごめんね」
「大丈夫、普段より時間あるしさ。おやすみ、亜美」
「おやすみ、信次」
さーて、今日はこの前仕入れたスパイスもあるし、試しながら美味しいの作るぞ。
流石に時間ないから、ルーは使うけど、ね。
野菜と肉を切って、ニンニクをオリーブオイルで炒めて、香りが出て来たら野菜と肉を炒めて。
炒める時にちょっとスパイス入れて、炒め終わったら、野菜と肉を煮込んで。
30分くらい煮込むから、その間に勉強しとこうかな。
火は弱火にしてっと。
何気に僕、キッチンで勉強しがちだなあ。
でも意外に集中出来ちゃうから不思議。
リビングに行く時間も、勿体無いしね。
よーし、いい感じに煮込めたから、カレールーを入れて、あと10分で完成だね。
その間に洗い物しとかなきゃ。
カレーが出来上がった頃、亜美が起きてきた。
「すごくいい匂いする……。おはよ、信次」
「おはよ、亜美。ちょっと食べる?」
「え、でも私、間食は禁止されてるし」
「大丈夫、カレーは飲み物だから。インスリンは注入しなよ」
「じゃあちょっと食べちゃお!」
何だかんだで僕、亜美に甘いなあ。
でも、そんな食べたそうな顔みちゃったら、誰だってあげたくなるから仕方ないよね。
「兄貴には内緒ね」
そういって僕は、カレーを盛る。茶碗に一杯分。
「ありがとね、信次!」
そして亜美は満面の笑顔になるもんだから、僕も作った甲斐があるってもので。
「どういたしまして。さ、洗濯物畳もっと」
でも亜美、涙痕が濃くなってんだよね。
夢の中でも泣いていたのかな?
兄貴、帰ってきたら、亜美を慰めてあげてね。
僕は洗濯物を取り込んで、畳んで、それぞれのタンスにしまう。
亜美の分は流石に部屋に置くだけだけど。
僕は弟とは言え、見られるの恥ずかしいだろうしね。
僕が洗濯物を運び終わった頃、亜美もカレーをすっかり食べ終わって、証拠隠滅。洗い物をしてた。
「あ、信次、洗濯物ありがとね。カレー美味しかった! ありがとね」
「泣くのって体力使うしね。また泣いてたでしょ?」
「うん。気付いたらまた泣いてた」
「僕も兄貴に関しては、怖い想像もしちゃうんだけど、兄貴なら大丈夫だよ。亜美が居るもん」
勿論僕も居る。僕達にとって、兄貴は自慢の兄貴なんだからね。
あ、亜美は、自慢の彼氏って思ってるかもだけど。
「うん。落ち込んでたら、次はすぐに慰めるもん。京平が落ち込む理由なんて、本当はないんだから」
「いつも兄貴の取り越し苦労だもんね。無駄に考えるというか」
「もっと、自信持って欲しいのにな」
僕はそうだね、って言いながら、頷く。
僕達で兄貴を守れたらいいね。これから先も。
作者「京平が落ち込むのは、大体病気のせいなんですが、自信が無いって性格は徐々に治していけるといいよなあ」
亜美「うん、京平は最高だもん」
作者「亜美達家族が、どう京平を支えていくか、やな」
信次「守っていけたらいいな」




