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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
悪化する病状
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僕の秘密を君だけに(信次目線)

「信次くん、あまり食べてないですわね。今回はのばらが奢りますから沢山食べましょ」

「いや、兄貴がかなり体調悪そうだったし」


 兄貴があんな風に体調を崩すのは、実は初めてじゃない。

 ただ、たまたまなんだろうけどいつも休みの時だったから、「ちょっと寝かせて」としか言われなかったけど。

 そして、その時と今回の兄貴の症状を見ると。


「信次くんは優しいのね」

「家族だからね。兄貴、そうじゃなくても無理しがちだし」

「じゃあ、元気になった時に食べて貰えるように、ケーキお土産に持ち帰りましょ」

「あ、いいかも。兄貴、ケーキ好きだしね」


 僕が色々悩んでる時も、新しい考えを出してくれるね、のばらさんは。

 お陰で僕もちょっと笑えた。優しいね、のばらさん。


「さ、深川先生に持ち帰るケーキを選びながら、ケーキ食べましょ!」

「そうだね。ありがとね、ちょっと元気出てきたかも」


 兄貴は果物系のが好きかな? とか考えながら、僕もケーキを食べた。

 そう言えば、前クッキー作った時も、のばらさんは2個もケーキ食べてたね。

 今思えば、あれでも我慢してたんだろうな。

 だって今、既に6個目に手を伸ばしているから。

 相変わらずの食べっぷりと、美味しそうに食べる笑顔が本当に好きだな。


「んー、このケーキも美味しいですわ」

「ここのケーキ確かに美味しいね。レシピが気になる」

「そうなのですわ、のばらのお勧めのお店ですわ」

「良いところに連れて来てくれてありがとね」


 また亜美と一緒に来れたらいいね。のばらさん、かなり残念そうにしてたから。

 亜美は今頃、兄貴の看病をしているかな。何となくだけど、兄貴と一緒にすやすや寝てる気がする。


「あ、この味兄貴好きそうだから、兄貴にも持ち帰ろ」

「信次くんの食べているのも美味しそうですわね、次それ食べましょ」

「うん、美味しかったよ」


 本当に食べるのが好きだよね、のばらさんは。

 目をキラキラさせている顔も、可愛いな。


「すみません、こちらのケーキとこちらのケーキ下さいまし」

「かしこまりました!」


 でも、のばらさん、まだ食べるのかあ。

 しかも2個頼んでいたから、これで8個目。

 でも、美味しそうに食べる姿をまた見れるのは嬉しいな、だなんて。

 てか、よく考えなくても、これってデートだよね。

 やべ、一気にドキドキしてきた。

 僕を誘ってくれたのも、のばらさんらしいし。

 これって、意識して良いやつなの?

 全然どうしたら良いか解らないよ。


「あら、信次くん、何か考え事してますの?」

「べ、別に、な、何でもないよ」


 ん、待って。僕ってば、今更だけど、のばらさんにタメ口聞いてない?

 僕の中で、段々とのばらさんの存在が大きくなってく。

 のばらさんものばらさんだよ。そんな僕に突っ込んだらいいのに、平然としてるしさ。


「あ、ごめんなさい、僕、さっきから普通にタメ口でしたよね」

「別にいいのですわ。信次くんの事は信頼してますし。それと、クッキーの件は有難うございましたわ」

「そう? じゃあこのまま話すとして。どういたしまして」

「お陰で、気高いのばらのまま、散る事が出来ましたわ」


 そういえばのばらさん、兄貴が亜美のこと愛してるって知ってて告白したんだよね。

 最初はどうだったか知らないけど、亜美とも仲良くなって、余計にしんどかっただろうな。

 誰かを恨めたら楽なのに、誰も恨めなくなっちゃって。


「のばらさん、本当にしんどくない? 大丈夫?」

「ええ、ライバルだと思ってた亜美とも友達になれましたし、今は信次くんも居ますもの。失愛はしたけど、もっと大事なモノを手に入れましたわ」

「そっか、僕も力添えになれてるなら良かった」

「当たり前ですわ!」


 ちょっと怒った顔をしてのばらさんは言う。

 じゃあ、こうやって誘ってもらった事も、いま2人きりなのも、間に受けていいのかな?

 いや、僕まだ16歳だし、明らかにのばらさんの中では恋愛対象外でしょ。

 兄貴を好きだったくらいだから、歳上好きそうだし。

 冷静になれ、僕。


「これからも力になれたらいいな」

「力になって貰いますわ」


 でも、好きなもんは好きなんだよな。

 諦められたら楽なんだけど、好きなんだよな。


「おまたせしました。フルーツタルトとモンブランです」

「有難うございますわ」


 ああ、また美味しそうに食べてるな、可愛いな。

 思わず、僕も笑ってしまう。そんな顔。

 いつも僕を笑顔にしてくれるよね、のばらさんは。


「んー、美味しいですわ。ケーキ大好きですわ」

「炒飯食べてた時より、笑顔だもんね。のばらさん」


 いつか、ケーキでも焼いたら、美味しいって言ってくれるかな?

 亜美じゃないけど、僕も練習でケーキ焼こうかな。


「また遊びに行く時は、ケーキ焼いて下さると嬉しいのですわ。信次くんのケーキ、絶対美味しいのですわ」

「僕ので良かったら、いつでも焼くよ。楽しみにしててね」

「約束ですわよ」


 あ、早速約束してしまった。

 しょうがないなあ、兄貴じゃないけど本気モードでケーキ焼いてあげるね。


「あ、そうだ。またお願いになっちゃうんだけど、土日どっちか空いてる?」

「日曜日なら空いてますわ。また海里くん?」

「うん、またお願いできるかな?」

「いいですわ。その代わり、お昼リクエストしても良いかしら?」


 良かった。快諾してくれて。

 またのばらさんに会える。テンション上がるなね。

 そしてお昼のリクエストかあ。何でも来い!


「うん。何でもいいよ。何作って欲しい?」

「グラタンが食べたいですの。最近食べてないけど、好きなんですの」

「オッケー。日曜日準備しとくね」

「楽しみにしてますわ」


 また美味しい顔して貰えるように、腕によりを掛けなくちゃね。

 待っててね、のばらさん。


「ごちそうさまでした。晩御飯食べれないといけないから、これくらいにしとくのですわ」

「晩御飯食べるつもりだったんだ?!」

「当たり前ですわ!」


 すごいなあ、僕普通に晩御飯はスルーするつもりだったよ。

 流石のばらさん。僕は思わず笑った。


「のばら、明日は中番ですから休憩時間合うといいですわね」

「僕、休憩時間遅いから難しいんじゃ?」

「2回目で合わせますわ。心配なさらずにですわ」

「じゃ、また会えたらいいな」


 明日は亜美も早番で兄貴も休みだから、のばらさん話せる人が居ないもんね。

 僕ものばらさんに会えたら嬉しいよ。


「お会計してきますから、少しお待ちになってね」

「うん、了解」


 結局、兄貴のケーキ代まで奢って貰った。

 甲斐性ないなあ、僕。

 6個もあるけど、兄貴なら余裕だろうなあ。

 食べれるくらいに体調が回復してくれる事を祈るばかりだ。


「お待たせですわ」

「じゃ、帰ろっか」


 僕はこの時、のばらさんには僕の秘密を明かしてもいいと思ったんだ。


「のばらさん送ってくよ、お家どこらへん?」

「門前町の辺りですわ。送って頂かなくでも1人で行けますわよ」

「了解、高いとこは平気?」

「平気ですけど、何をするつもりですの?」


 僕はのばらさんをお姫様抱っこする。そして。


「な、信次くん?!」

「行くよ、のばらさん」


 僕は背中に羽根を生やし始める。まるで天使の羽根みたいだ。

 ちょっと低血糖になるだけで移動が便利だから、最近使うようになったんだよね。

 正確には、今年から使えるようになったんだけど。


 そして僕達は、舞い上がった。軽々と空へ。

 僕達は、一気に空の一部になった。


「うわ、信次くん、飛んでますわよ」

「実は僕も異能の持ち主。皆には、特に兄貴には内緒だよ」


 兄貴にバレたら怒られるだろうな。

 でも、亜美に異能維持したいって言ったら泣かせちゃうし、今んとこ自分でコントロール出来てるしね。

 僕って本当、性格悪いよね。


「低血糖対策は大丈夫ですの?」

「ファムグレ持ってるから心配しないでね」

「それなら良かったですわ。まさか、空を飛べる日が来るなんて思いませんでしたわ」

「のばらさんだけだよ」


 僕はこっそり照れながら、告げる。

 のばらさんにしか伝えるつもり無かったからね。


「あ、もうそろそろ門前町だけど、もしかしてあの大きなお屋敷?」

「そうですわ。あの近くまで行ってくださる?」

「オッケー」


 2人きりの空の時間は、あっという間に終わってしまった。

 何だかちょっと寂しいな。


「じゃあ、また明日ですわ」

「おつかれ、また明日ね」


 こうしてのばらさんは、お屋敷の中に消えていった。

 ふー、とは言え、異能使いすぎたな。ちょっと目眩がする。

 ファムグレ飲みながら、歩いて家に帰るかな。

 

 でも、好きな人と共通の秘密を作れたのは、なんか嬉しいな、って思っていたり。

信次「皆には内緒だからね、のばらさん」

のばら「わかりましたわ。でもお空は気持ち良かったですわ」

作者「やっと信次の異能出せました。お兄ちゃんに言えば良いのにねー」

信次「だって怒られたくないし、コントロール出来てるからいいでしょ?」

作者「どうなることやら」

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