お弁当の中身
「「いってきまーす」」
「2人ともいってらっしゃーい」
私達は京平に見送られながら、各々の行くべき場所に向かった。
なんか心なしか京平が、ちょっと落ち込んでるように見えたけど、気のせいかな?
落ち込むような事は何もないはずなんだけどなあ。
病院の更衣室に着くと、のばらとバッタリ会った。のばらもそう言えば早番だもんね。
「おはよ、のばら」
「亜美、おはようございますわ」
「昨日のお休みは何してた?」
「ショッピングに行ってましたの。服を衝動買いしまくりましたわ」
「お、また見せてね」
のばらは楽しい休日を過ごせたみたい。
良かった良かった。
「あ、そう言えば今日お互い早番ですわ。約束のケーキ食べに行きたいですわ」
「うん、行こ! 信次に連絡しとかなきゃ」
「信次くん確かバイトお休みよね? 呼んじゃいませんこと?」
「え、いいの? じゃあ呼ぶね」
最近のばらと信次、仲良いよなあ。
って、よくよく考えたら、のばらの分と信次の分、私が奢らなきゃじゃない?!
弟とは言え、急に誘ってる訳だしね、今回は。
いや、これで朝の件の釣り合いも取れるし、いっか。
京平にはまたの機会にケーキ奢ってあげよ。
京平、甘いもの好きだもんね。
「亜美、ニヤけてますわよ」
「え、嘘?! やだ、恥ずかしい」
「どうせ深川先生の事を考えてたのですわね。バレバレですわ」
本当私ってば、京平の事考えるとすぐにニヤけちゃう。
今日会えるとしたら、京平が残業無しって条件で夜。
京平が残業ありだったら、明日は私、早番だから会えない。
1人で起きる、早起きするって約束したしね。
もー、今すぐ京平に会いたいよ。さっきまで一緒だったんだけどさ。
「そんな事言われちゃうと、会いたくなっちゃう」
「恋する乙女ですわね。亜美可愛すぎますわ」
「京平が残業になりませんよーに!」
そんな事を言いながら、私達はナースステーションに向かった。
今日は病院が休みなので、巡回勤務となった。
私が診ている患者様は、少しずつ元気になってきてる。
でも、病気は急に悪化する場合もあるから、すぐに患者様の変化に気付かなきゃ。
「よ、亜美」
「あれ? 蓮じゃん。今日は医師会合では?」
「昼からだから、それまでは巡回だぜ」
「なるほ、着替え面倒臭いやつだね」
「言えてる! 地味にめんどいわ」
ほえー、早番だと巡回勤務してから医師会合かあ。
京平、いつも水曜日は中番だからなあ。
絶対飲み会行きたくないからだろうな。
内科主任部長に昇進してから、留守番勤務出来なくなったとか言ってたし。
「ま、飲み会で内科部長をよいしょして、早く昇進するぜ」
「おー、昇進したら焼肉奢ってね!」
「高級焼肉奢るぜ!」
そんな話をしながら、蓮は自分の巡回勤務に戻っていった。
京平はもうこれ以上昇進したくない、って言ってたなあ。逆に。
内科部長クラスになると、そのまま副院長になったりして、中々現場入れなくなるらしいから、それが嫌みたい。
事実、今の内科部長は、副院長も兼任してるしね。
蓮はそこら辺どうなんだろう?
おっと、私も自分の巡回しなきゃ。検査もあるしね。
◇
「松本さん、かなり値正常になりましたね」
「皆さんのお陰で回復してきました」
「もうすぐ退院出来そうですね」
「後は動けたら、ですね。まだちょい痺れがありまして」
「早く正常になると良いですね」
「はい、有難うございます」
九條リ音さんも、大分元気になってきた。
本当に良かった。後はリハビリ次第みたい。
今日京平が再度見て、退院日が決まる感じかな。
「時任さん、巡回終わった?」
「はい、今終わりました」
「ちょうど良い時間だから、休憩行っといで。いつも通りまとめてでいいよ」
「はい、行ってきまーす」
やっと12時か。京平も今病院に着いた頃だね。
あー、今日はスーツ姿拝めるかなあ。
京平のスーツ姿、好きなんだよなあ。
改めて、京平が残業になりませんよーに!
休憩室に行くと、既にのばらが席を取っといてくれてた。
「あ、亜美! こちらですわ」
「のばらお疲れ」
「お疲れ様ですわ」
「さあ、待ちにまったお弁当はなーにかな?」
お弁当の中身は、かにさんウインナーと卵焼きと肉巻きアスパラとサラダとプチトマト。と、桜でんぶご飯。
え、タコさんが居ないじゃん! 京平にフェイクを仕掛けられたぜ。
それよりも、この桜でんぶご飯……ハートだ。
「あら、信次くんがハートとか珍しいわね」
「違うの、実はお弁当ね、京平が作ってたの。今日それを教えて貰って」
「教えたから、躊躇なく愛を伝えてるって事ね。素敵ですわ」
「何だか照れるなあ、こういうの。嬉しいけど」
京平が私を愛してくれてる、って実感出来るから私はこういうの好きだな。
でも、京平がこういうのやるとは思わなかった。
どんどん知らない京平が、顔を覗かせてくる。
その度に、私も嬉しくなるんだよ。
また、知らない京平が見れたらいいな。
「ふふ、亜美が幸せそうで良かったですわ」
「京平に、信次に、のばらも居てくれてるからね」
これは本音。彼氏の京平に、弟の信次に、友達ののばら。皆が私を幸せにしてくれてるよ。
「嬉しいですわ。私も亜美の幸せの一部ですのね」
「当たり前でしょ」
「仕事終わりがより楽しみになりましたわ」
そう言えば、のばらとどっか遊びにいくの初めてだもんね。
いや、私、のばらどころか、友達と遊びに行くの初めてだ。
友くんや蓮とは、学校や病院でしか会ってないもん。
「実はね、のばら。引くと思うけど、私友達と遊びに行くの初めてなんだ」
「引きませんわよ。その、なんて言うか、のばらもですの」
「え?! のばらも?」
「ですの」
お互い、顔が真っ赤になった。
そっか、私達本当に不器用だったんだね。
初めてのお出かけ、楽しもうね。
「あら、2人ともお揃いね」
「あ、朱音」
「佐藤さん、お疲れ様ですわ」
朱音も休憩室にやってきた。合コンはどうだったのかな?
「一緒にご飯たべてもいい?」
「どうぞですわ」
「いらっしゃい、朱音」
「お邪魔しまーす」
そう言えば、朱音とご飯食べるの初めてだなあ。
「ちょ、亜美、そのハートのご飯何?」
「深川先生の手作りですって」
「なんですと。あの深川先生が料理もするのか」
「ちょっと意外ですわよね」
「照れちゃうけどね」
そっか、皆にとって、京平が料理する事自体が意外なんだ。
私にとっては、小さい頃はずっと京平がご飯作ってくれてたから、もう意外でも何でもないしなあ。
言わば、京平のご飯が俗に言う母の味なんだ。
「あ、冴崎さんも私の事、朱音でいいからね」
「共に戦った仲ですものね。私の事ものばらって呼んでくださいまし」
「宜しくね、のばら」
あ、また新しい友情が産まれそうな予感。良き良きだね。
「今日の医師会合、遂に麻生夫婦が揃うらしいわよ」
「え、麻生先生結婚してたの?!」
「のばらも知りませんでしたわ」
「そっか、2人とも4年前の結婚式知らないもんね。あの2人、病院で式あげたんだよ」
しかも病院で式を挙げたのかあ。
「麻生先生の惚気、やばいんだよ。奥さんの名前出しただけで、1時間は軽いね。医師会合、成立してるかなあ。嫌な予感がするんだよね」
「麻生先生、帰されたりしませんこと?」
「え、一応外科主任部長なのに?!」
なんだろ、麻生先生の惚気も気になるけど、惚気がやばすぎて帰される麻生先生も、それはそれで面白い。
「医師会合、どうなってるんだろう」
「一回くらい覗いてみたいよね」
医師会合かあ。京平、どうしてるんだろうなあ。
だるいとか、現場入りてえとか、考えてそうだな。
何考えてるのかな?
亜美「まさか京平がハートにするなんて」
作者「可愛い事する35歳だな」
朱音「意外だったわ。まー、あんだけ惚気てたしね」
のばら「のばらも惚気る深川先生みたら、動画に残さなきゃ」
京平「何話してんだ?」
のばら「あ、深川先生! 惚気てくださいまし!」
京平「や、やだよ。恥ずかしい。本人いるし」
作者「次回は京平目線だよん」




