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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
世界一簡単な愛してる
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大盛炒飯ニンニクマシマシで。(作者目線)

 亜美達が漫画喫茶で夢見心地の頃、信次と海里とのばらは、勉強の追い込みをしていた。

 海里は元々自分がヤバい状態である事は自覚していたが、勉強会を通じてこれ程かと、途中顔が真っ青になる事もあったと言う。


「亜美達、どうしてるかしら? あ、海里くん。問2間違ってましてよ。よく見直して」

「京平さん鈍感だから、愛してる言っても通じなかったりして。嘘マジっすかのばらさん」

「昨日のばらさんが振られてるから、そこまで鈍感じゃないとは思うけどね。海里、問5も違うよ。途中式ミスってる」


 海里が苦手な数Ⅲを中心に行っていたが、海里は間違えるわ間違えるわ、で、2人は指摘しまくる始末だ。

 しかも海里は、何処が解らないか解らない状態だから、教える方もかなり苦労する。

 教える側、教わってる側、共に疲れが溜まっていた。


「深川先生、亜美を傷付けたらタダじゃおかないのですわ」

「てか、のばらさん的に、兄貴の事はもういいの?」


 信次は気になって聞いてみた。

 今日の事だが、京平に会ってものばらは、思う以上にサッパリしていたし、その上、京平の事を意気地なしと罵る始末。

 とてもじゃないが、好きな相手に出来る行動じゃないだろう。

 とは言え、そこはのばら様だ。一応確認を取らなければ。


「のばらは精一杯告白したのですわ。だから、もう深川先生はそういう対象としては見てないのですわ。のばらは愛されたいのですわ」

「へぇ、なんかのばらさんらしいね」

「えっへんですわ」


ーーのばらさんって、愛してくれた人を愛したいタイプなのかな?

  

  と、信次は思う。

 でも、だったらのばらはかなりモテるから、いくらでも相手はいるのだ。

 だから、のばらの琴線に触れた上で、の話なのだろう。

 つまりのばらは、誰よりも自分を愛しているのだった。

 それをのばら自身が自覚してないのが玉に瑕だが。


「それに深川先生には、愛してる姫君がいると思いますわ」

「ふぇ? それ兄貴から言われたの?」


 あの兄貴に愛してる姫君?! 信次は俄には信じられなかった。

 仕事は兎も角、休みの前の日に呑んだくれて、次の日は疲れも相まって、最低でも15時まで寝てる兄貴なのに。

 普通愛してるなら、休みの日にデートくらい誘ってもいいのに。

 てか、亜美に泣いちゃダメだよって言ったけど、これは流石の亜美も泣いてしまうだろう。

 信次は自分の発言を、酷く悔やんだ。


「女の勘ですわ。凄く優しい目をする時があるのですわ」

「亜美、大丈夫かなあ」

「大丈夫だと信じてますわ。だって……なんでもないですわ」


 のばらは話を振っといた癖に、隠し事をする。

 そんなとこものばら様クオリティだ。


「でも兄貴、僕に隠し事する事ないのになあ。相談すればいいのに」

「まだ恋も知らない信次くんは、相談に乗れないんじゃなくて?」

「んぐ。まあ、確かにそっか」


 そう、信次はまだ恋を知らなかった。家族愛とか、親友に対する気持ちは理解している。が、恋という感情は解らなかった。


 解らないと言えば、のばらに対するこの気持ちの正体が解らないでいた。友情とも違う気がするし、勿論家族じゃないし。

 亜美の友達だから気を許しているのだろうか?

 信次は、自分の気持ちが解らなかった。


 ただ一つ確かなのは、のばらに対して何かをしてあげたくなる気持ちが多分にある事で。

 この感情は、なんと名付けたら良いのだろうか。

 それについても、信次は名前を付けられなかった。


「あー、お腹空いたのですわー」

「そう言えばもう14時か。集中出来た証拠だね。お昼作るから待っててね」

「あ、俺炒飯がいいな!」

「了解、のばらさんもそれでいい?」

「大盛りでお願いしますわ」


ーーへー、のばらさん結構食べるんだなあ。


 のばらのちょっと意外な一面に驚きつつも、亜美とは違ってスレンダーで、ぷっくりとした胸のあるのばらの身体を見て、何故その身体を維持出来るか解らない信次であった。

 そんな色々と解らない感情を抱えたままでも、信次は炒飯を軽々と作ってしまえるから見事なものだ。


「あ、ニンニクはマシマシで頼みますわ」

「オッケー、海里はニンニクいる?」

「おー、頼むわ。信次も食えよ?」

「うん。食べるよー」


 いつの間に僕達は、ニンニクを食べ合える仲になったのだろうか。海里はともかく。

 とも信次は思ったが、勉強疲れもあるし体力をつけるにはニンニクが1番だし、まあいっか。

 と、結論付けた。皆で臭くなるなら怖くないだろう。


「ほい、できたよー」

「待ってましたわ!!」

「うひょ、美味そ!」


 信次の作ったほかほかの炒飯に、のばらと海里は釘付けになっていた。

 ニンニクと豚の背脂の焦げた匂いに、ほろほろ卵に、パラパラのお米達。

 もう皆、目が炒飯だ。それだけ、お腹が空いていたようだ。


「「「いただきまーす」」」


 皆、思う以上に炒飯にがっついた。特にのばらは普段見せない満面の笑みで、瞬く間に炒飯を食べていく。お皿も既に底が見えてる状態だ。のばらは食べるのも早かった。


「うーん。美味しいのですわ」


 と言うのばらだが、炒飯のお皿はもう空っぽだ。そんなにお腹が空いていたのだろうか?


「のばらさん、もしかしてなんだけど、おかわりいる?」

「な、何で解ったんですの?! 大盛りでお願いしますわ」

「ニンニクマシマシでしょ? 了解」


 のばらの大盛り発言を、半分本気にしてなかった信次だが、ここまで気持ちよく食べてくれると疑うどころか、もっと満足して欲しい気持ちになる。


「ちょっと待っててねー」

「お待ちしてますわ!!」


 信次は、のばらの笑顔を見て、解らなかった感情が事細かに解ってしまった。

 それは初めての経験であり、感情であり、胸の高鳴りだった。

 1人のキッチンで、信次はご飯を炒める音に紛れて呟く。



「どうしよう、僕、のばらさんすきだ」

海里「炒飯まじすき」

のばら「ですわよね」

信次「2人とも沢山食べたからなあ」

作者「しかし、まさか信次がねえ」

のばら「え? なんですの?」

信次「ななななんでもないよ!」


作者「次回は、亜美達のデート目線に戻るよん」

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