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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
生理的に無理な人
241/242

番外編:蓮と朱音3

「お待たせしました。キノコクリームパスタです」

「お、いい匂い。ありがとうございます」


 俺は2皿のキノコクリームパスタを受け取って、一つを朱音の目の前に置いた。なんか運んで貰うより早い気がして、ついついこうしちゃうんだよな。我ながら、変な癖だと思う。

 でも、そんな突っ込まれても仕方ない俺の癖を、朱音は笑顔で受け止めてくれたから、今まで相談もしやすかったんだ。

 多分その時から、朱音のこと信頼してたんだよな。で、仲良くなって、気付いたら好きになってさ。


「ありがとね、蓮。いただきまーす!」

「いただきます」


 好きな人と一緒に食べるご飯は、格別に美味いな。てか俺、何でこんなに気付くの遅れたのかな、朱音が好きだってこと。

 亜美に振られた傷を、こんなにも癒してくれていたのに。ご飯も食べられるようになったし、笑えるようになったし。


「どしたの、蓮? めっちゃ真顔じゃん」

「あ、ごめん。ちょっと考え事してた」

「悩みがあるなら聞くよ?」

「ああ大丈夫、そういうのじゃないから」


 俺は笑いながら答える。いけない、考え込みすぎて朱音を心配させちまった。今はパスタに集中しよっと。どれどれ。


「お、めちゃ濃厚なキノコクリームが美味いな」

「ふふ、でしょ?」

「連れて来てくれてありがとな」

「うふ、どういたしまして」


 朱音と一緒だからより美味しいよ、とは言えないのが歯痒い。そんなこと言ったら、好意がモロバレだからな。告白するまでは我慢だぞ、俺。

 にしても今気付いたけど、朱音の美味しい顔も可愛すぎるな。好きが昂っていく。


「最近は眠れているかな?」

「ああ、昨日はちょいと夜更かしして、電車で寝ちまったけど、一昨日も普通に眠れているよ」


 ああ、今日俺が電車で寝たもんだから、心配してくれているんだろうな。昨日はデートする緊張で、眠れなかっただけなんだけどさ。


「それなら良かった。無理はしないでよ?」

「それを言うなら朱音もな。遅番から早番まで通しとか、良くやってたし」

「えー、最近はないよ?」


 そう言えば最近はないな。前はせっせと合コンに行きまくってたのに、とある時から行かなくなった気がする。

 いつ位からだっけなあ。もう記憶にないなあ。

 でも、俺とこうやってデートしてるってことは、まだ彼氏は出来てないよな? 大丈夫だよな?

 どちらにせよ、最近朱音が無理してないのは良いことなんだけどさ。


「てか、困った時はいつでも頼ってよ?」

「何言ってるんだ? 最近アホみたいに頼りまくってるけど」

「頼りにしてくれていたなら良かった、いひひ」


 よし、こっからは俺のターンだぞ。俺が貰った分、いや、それ以上に朱音を喜ばせてやりたいからな。


 ◇


「いやあ、すっかり長居しちゃったね。それにしてもお互い色々あったんだねえ」

「朱音もハズレ合コンばっかで苦労してたんだな」

「そうなの。まずは身だしなみくらいはちゃんとして欲しいよね」


 結局パスタ屋で話しまくってたら、夕焼け空がこんにちはしてる。1日を朱音と過ごすのは初めてなんだけど、ここまで楽しすぎて仕方なかったよ。

 俺、結構周りを気にするタイプなんだけど、そんな俺よりも先に、色々気に掛けてくれてさ。ああ、だから俺朱音なんだなあ、って、改めて実感したよ。


 そう言えば朱音のが年上なんだよなあ。一個しか違わないけど。しっかり者で、意外と感情に飲まれるタイプで、周りへの気遣いも分け隔てなくて、優しい朱音。

 また朱音を好きになっていくよ。


「ディナーまであと少しだし、そろそろ現地向かうか」

「どんなディナーか楽しみだなあ」

「喜んでくれるといいな」


 今日は朱音のために、下調べしまくって、自分でも店に行って、最高だったお店をセレクトしたから、自信はある。いや、でも、やっぱりちょっと緊張はするな。好きになって貰えたらいいな。ついでに俺のことも。


「ほら、このビルの10階」

「お。楽しみ」


 俺達はエレベーターに乗って、ディナーの店まで向かう。ああ、胸の高鳴りがデートの最初から鳴り止まない。ずっと、ずっと。


「蓮、本当に大丈夫?」

「ああ、めっちゃ元気だぞ!」


 そらこんなに普段と違うし、何かおかしいって思われても仕方ないよなあ。緊張が半端無いのと、強いて言えば少し眠いのはあるけどさ。

 俺の緊張をよそに、エレベーターは刻々と目的地に向かっていく。

 

「お、着いたな」

「楽しみだなあ」


 思わず俺は朱音の手を握った。緊張で自分が制御出来なくなっていて、自分勝手に身体が動いていく。やべ、俺なにやってんだ。でも、離したくない気持ちも結構大きくて。

 ただ、予想に反して朱音は騒ぐこともなくて、受け入れてくれたみたいだ。

 すこし顔が俯いていたのと、さっきよりほんのり赤いのは気になったけど。

 気になってはいたんだけど、それよりも手を握ることを許してくれたのが嬉しすぎて、俺はかなり舞い上がっていた。

 どんどん自分が制御出来なくなっていくのが解った。


 ただ、少し歩くと、もうディナーのお店に辿り着いた。店員さんが俺達に向かっていくのがすぐ目に入って、俺達は自然と手を離した。


「いらっしゃいませ」

「予約していた落合です」

「落合様ですね。こちらへどうぞ」


 実はここも友達が働いていて、落ち込んだ時とかよく来ていたんだ。料理が美味しいのと、落ち着く空間だからさ。よく1人で泣きながら飯食ってたよ。

 つまり内側を見せられるくらい、俺は朱音を信頼してるし、好きなんだ。

 店員さんは、窓際の夜景が綺麗に見られる場所に案内してくれた。友達には、今日告白するからムードが高まりそうなところで、って予約を頼んだんだけど、これは中々良いんじゃないかな。


「わあ、綺麗な夜景だね」

「良い席だよな。これは楽しめそう」


 俺達が席に座ると同時に、店員さんが荷物を入れるカゴを持ってきてくれた。俺は財布だけだったから、朱音のバッグを入れた。


「お飲み物は何になさいますか?」

「じゃあ、俺はクランベリージュースで」

「私はそうだなあ、グレープフルーツジュースを」


 この後告白するし、酒は呑んでいられないからな。ん、朱音は呑まないのかあ。いや、良かったかも。今朱音が酔い潰れたら、俺自分が制御しきれない気がする。さっきだって、手を繋いじまったしさ。これ以上は流石にアウト過ぎる。


「フルコースだし俺の奢りだから、気にせず楽しんでくれよな」

「あ、このシタビラメのムニエルもあるかなあ?」

「うん、魚料理はそれにしたよ」

「楽しみだなあ」


 ところでシタビラメってどんな魚なんだろう? いつもはもっと安いメニュー頼むから、食べた事ないんだよなあ。俺もなんだか楽しみだな。


「私さ、なんか蓮といると楽しいんだよね」

「あ、それは俺も。自然に笑えるし」


 これは本当のことだし、言ってもいいよな。朱音がいたから、また笑えるようになったんだし。


「私、思えば、蓮が初めてかもなあ。こんなに素で話せるのって」

「俺もだなあ」


 と、言ったところで、料理が運ばれてきた。まずは前菜のサラダがやってきて、食べ進めるうちに、料理が次々にやってくる。朱音が嬉しそうに食べるから、俺も次第に変な緊張感が抜けて、穏やかな気持ちになってきた。

 これなら、夜の告白も、問題なく素直な気持ちを伝えられそうだ。シタビラメって魚も旨かったし。

 そう思った矢先だった。


「料理も美味しいし、今満たされてるから、今なら言えそう」

「ん、どうした? 朱音?」


 朱音は急に少しモジモジしだして、顔を下に向けたかと思うと、突如凛とする。誰よりも真っ直ぐな瞳に、俺は思わず見惚れてしまう。そんな風に見惚れていたら。


「私、蓮が好きだよ。これからもずっと一緒に過ごしたい」

作者「朱音から告白!」

蓮の友達「明らかにあいつら、両片思いだったもんな。だから俺、薔薇108本送れっていったんだぜ?」


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