番外編:蓮と朱音2
「うわあ、結構リアルだね。本当に月の上を歩いてるみたい」
「ここでムーンウォークしたら目立つかな?」
「こら、恥ずかしい真似はしないの!」
ムーンウォークはマイケル・ジャクソンのそれじゃなくて、月の表面を歩くような体験が出来る施設で、俺は冗談を言いながら、朱音と月面を歩いていた。因みにムーンウォークは出来ないけど。
月を踏んだ感触ってこんなんなんだな、って思いながら、朱音と一緒に歩けている喜びを噛み締める。
近い未来には火星への移住計画もあることだし、月への旅行も一般的になるのかな、なんて。
その時にも、朱音が隣に居たらいいな、だなんて、かっとびすぎだぞ、俺。
「いつか本物の月にも行けるのかな?」
「その時までには稼げているようになりたいぜ」
「ふふ、蓮ならいけそう」
そんなたわいのない夢物語も、朱音と話していると本当にしたくて、たまらなくなってくるんだ。
2人で一緒に居る未来を、容易に想像してしまう。朱音が解らないのを良いことに。でも、そんな想像をしている時が、楽しかったりして。
ムーンウォークは時間にして、2、3分だったけど、楽しい時間だったな。
「こういうのもいいな」
「でしょ?」
てっきり子供が楽しむものかなあ、とも思っていたんだけど、大人の俺でも中々楽しかったぜ。
まあ、楽しかったのは朱音のおかげもあるあな?
何なら、朱音の顔ばっか見てた気がする。だって、可愛い笑顔を浮かべまくっていたから。
一秒毎に朱音への気持ちが昂っていくよ。俺、告白までに隠しきれっかなあ?
「あ、そろそろプラネタリウムの時間だね!」
「お、もうそんな時間か」
「蓮、きっと驚くよ! すっごく広いんだから」
プラネタリウムは昼からだったよな? 時間が経つのは早いもんだ。
◇
「お、満員だな」
「大人向けプラネタリウムは、回数少ないからね。このプラネタリウムの為に予定合わせた人もいるんじゃないかな?」
例年はこの時期の土日にはやらないらしいけど、珍しくやることになったらしく、余計にお客さんも集まったようだ。
確かに大人だけの組み合わせも、結構居たしなあ。
始まるまで後5分程度といったところで、室内も薄暗くなってきた。
「いよいよ始まるね」
「だな。あのさ、朱音。いつもありがとな。朱音のおかげで、俺、最近また笑えるようになって来たしさ」
「なあに、急に改まって。でも、私が力になれていたなら良かったよ」
この雰囲気が俺を素直にさせてくれた。そんな俺に、朱音が笑う。薄暗い中でも、朱音の笑顔は輝いてる。そんな気がしたよ。
そして室内は更に暗くなって、いよいよプラネタリウムが始まった。
司会の人の説明で、ふわあと天井に星が舞い上がる。キラキラ煌めいて、胸が躍ったよ。
おおぐま座、しし座、おとめ座とか。朱音も星座を指差しながら笑ってる。これらは春の星座で、今が1番見頃らしい。
朱音、夜景喜んでくれるかな? 本物の星は、東京の激しい街明かりがあるから、こんなには綺麗に見られないだろうけど、東京の中では綺麗に見られるところを見つけたつもり。
でも、都会の星はここなのかもしれないな。何となくそう思った。
結局俺はちっぽけだ。
「あれ、蓮、泣いてる?」
「ああ、俺って小さいな、って」
「大丈夫。皆小さいよ」
「ふふ、確かにな」
だよな、空から見たら、星から見たら、俺達は皆ちっぽけだよな。こんな単純なことで泣いちまうなんて、俺もまだまだだな。
いつも朱音に助けられてばかりだ。俺。
◇
「あー、今回も良かったなあ、プラネタリウム」
「思った以上に色んな星座があるんだな」
「そうそう、やまねこ座やかんむり座とか、ね。また一緒に行こうね」
「うん、違う季節のも見たいしな」
勉強はして来たんだけど、想像以上に春の星座があって、とても楽しめたよ。朱音がプラネタリウムを見ながら笑っていたから、尚更だな。
「とりあえず昼飯食おうぜ」
「あ、近場に美味しいパスタ屋さんあるよ」
「じゃあ案内して貰おうかな」
ん、もしかして俺、終始朱音にリードされてるんじゃないか?
今日行く場所を提案したのも朱音だし、昼ご飯の場所も朱音が決めたし。でも、朱音が笑ってるからいっか。夜は俺が喜ばせてやりてえな。
そんなことを考えてるうちに、俺たちはパスタ屋に着いた。結構見栄えもお洒落な店で、「シャンピニオン」という看板がよく目立つ。
パスタ屋なのに、店名はフランス語でキノコなんだなあ。キノコパスタが売りなのかな?
店の中に入ると、お昼時ということもあり、かなり混み合っていた。人気もあるお店みたいだ。
「ふー、念のため予約取っといて良かった」
「予約してくれてたのか、ありがとな」
「いひひ、どういたしまして」
朱音のおかげで、すんなり席に座ることができた。本当にしっかりしてるよな、朱音。
夜は予約とか取ってないよな? 俺、ディナー予約しちまってるんだ。朱音を喜ばせたくてさ。
「あ、夜は予約とか取ってないよな? お礼も兼ねて、夜は俺に奢らせろよな」
「ラッキー! ありがとね。というか、夜も一緒に居てくれるんだ?」
「ん、そんなに意外?」
「今回は朝から一緒だしさ」
確かにただの友達だったら、予定が終わったらそれで終わりだよな。俺もだいたいそうだし。
でも、朱音は違う。ずっと傍にいたいから。朱音はどう思っているのかな?
「ごめん、もしかしたら予定あった?」
「有っても、蓮を優先させるってば。因みに特に予定はないよ」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん」
マジか。俺はまた胸が躍る。朱音、俺を最優先するって言ってくれている。夢じゃないよな?
もしかしたら朱音も? ってバカ、夢見過ぎだぞ、俺。ただ、今の俺が不安定そうに見えるから、心配してくれてるだけだろうし。
笑えるようになったのも最近だしな。
まあいいか、気にしてくれるのはやっぱり嬉しいし。
「それより、パスタ何にする?」
「そうだなあ、朱音のオススメは?」
「キノコのクリームパスタかな。キノコパスタが美味しいんだよ、ここ」
「ふーん、じゃあそれにしよ」
朱音のオススメなら間違いないしな。なんせ店の名前も簡単に言えばキノコだし。
「じゃあ、私も同じのにしよっと」
「あ、呑む?」
「昼だしやめとく。蓮は呑むの?」
「俺も朱音が呑まないならやめとくよ」
この緊張を解きほぐしたいところだけど、酒に頼っちゃダメだよな。
我に帰った俺は、お酒を呑むのはやめて、キノコクリームパスタを2人分注文した。
作者「かなり久々の更新となりました。現在私、鬱症状がかなり出てしまっており、更新ペースはかなりゆっくりになりますが、楽しみに待っててね!」




