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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
生理的に無理な人
240/242

番外編:蓮と朱音2

「うわあ、結構リアルだね。本当に月の上を歩いてるみたい」

「ここでムーンウォークしたら目立つかな?」

「こら、恥ずかしい真似はしないの!」


 ムーンウォークはマイケル・ジャクソンのそれじゃなくて、月の表面を歩くような体験が出来る施設で、俺は冗談を言いながら、朱音と月面を歩いていた。因みにムーンウォークは出来ないけど。

 月を踏んだ感触ってこんなんなんだな、って思いながら、朱音と一緒に歩けている喜びを噛み締める。

 近い未来には火星への移住計画もあることだし、月への旅行も一般的になるのかな、なんて。

 その時にも、朱音が隣に居たらいいな、だなんて、かっとびすぎだぞ、俺。


「いつか本物の月にも行けるのかな?」

「その時までには稼げているようになりたいぜ」

「ふふ、蓮ならいけそう」


 そんなたわいのない夢物語も、朱音と話していると本当にしたくて、たまらなくなってくるんだ。

 2人で一緒に居る未来を、容易に想像してしまう。朱音が解らないのを良いことに。でも、そんな想像をしている時が、楽しかったりして。

 ムーンウォークは時間にして、2、3分だったけど、楽しい時間だったな。


「こういうのもいいな」

「でしょ?」


 てっきり子供が楽しむものかなあ、とも思っていたんだけど、大人の俺でも中々楽しかったぜ。

 まあ、楽しかったのは朱音のおかげもあるあな?

 何なら、朱音の顔ばっか見てた気がする。だって、可愛い笑顔を浮かべまくっていたから。

 一秒毎に朱音への気持ちが昂っていくよ。俺、告白までに隠しきれっかなあ?


「あ、そろそろプラネタリウムの時間だね!」

「お、もうそんな時間か」

「蓮、きっと驚くよ! すっごく広いんだから」


 プラネタリウムは昼からだったよな? 時間が経つのは早いもんだ。


 ◇


「お、満員だな」

「大人向けプラネタリウムは、回数少ないからね。このプラネタリウムの為に予定合わせた人もいるんじゃないかな?」


 例年はこの時期の土日にはやらないらしいけど、珍しくやることになったらしく、余計にお客さんも集まったようだ。

 確かに大人だけの組み合わせも、結構居たしなあ。

 始まるまで後5分程度といったところで、室内も薄暗くなってきた。

 

「いよいよ始まるね」

「だな。あのさ、朱音。いつもありがとな。朱音のおかげで、俺、最近また笑えるようになって来たしさ」

「なあに、急に改まって。でも、私が力になれていたなら良かったよ」


 この雰囲気が俺を素直にさせてくれた。そんな俺に、朱音が笑う。薄暗い中でも、朱音の笑顔は輝いてる。そんな気がしたよ。


 そして室内は更に暗くなって、いよいよプラネタリウムが始まった。

 司会の人の説明で、ふわあと天井に星が舞い上がる。キラキラ煌めいて、胸が躍ったよ。

 おおぐま座、しし座、おとめ座とか。朱音も星座を指差しながら笑ってる。これらは春の星座で、今が1番見頃らしい。

 朱音、夜景喜んでくれるかな? 本物の星は、東京の激しい街明かりがあるから、こんなには綺麗に見られないだろうけど、東京の中では綺麗に見られるところを見つけたつもり。

 でも、都会の星はここなのかもしれないな。何となくそう思った。

 結局俺はちっぽけだ。


「あれ、蓮、泣いてる?」

「ああ、俺って小さいな、って」

「大丈夫。皆小さいよ」

「ふふ、確かにな」


 だよな、空から見たら、星から見たら、俺達は皆ちっぽけだよな。こんな単純なことで泣いちまうなんて、俺もまだまだだな。

 いつも朱音に助けられてばかりだ。俺。


 ◇


「あー、今回も良かったなあ、プラネタリウム」

「思った以上に色んな星座があるんだな」

「そうそう、やまねこ座やかんむり座とか、ね。また一緒に行こうね」

「うん、違う季節のも見たいしな」


 勉強はして来たんだけど、想像以上に春の星座があって、とても楽しめたよ。朱音がプラネタリウムを見ながら笑っていたから、尚更だな。


「とりあえず昼飯食おうぜ」

「あ、近場に美味しいパスタ屋さんあるよ」

「じゃあ案内して貰おうかな」


 ん、もしかして俺、終始朱音にリードされてるんじゃないか?

 今日行く場所を提案したのも朱音だし、昼ご飯の場所も朱音が決めたし。でも、朱音が笑ってるからいっか。夜は俺が喜ばせてやりてえな。

 そんなことを考えてるうちに、俺たちはパスタ屋に着いた。結構見栄えもお洒落な店で、「シャンピニオン」という看板がよく目立つ。

 パスタ屋なのに、店名はフランス語でキノコなんだなあ。キノコパスタが売りなのかな?

 店の中に入ると、お昼時ということもあり、かなり混み合っていた。人気もあるお店みたいだ。


「ふー、念のため予約取っといて良かった」

「予約してくれてたのか、ありがとな」

「いひひ、どういたしまして」


 朱音のおかげで、すんなり席に座ることができた。本当にしっかりしてるよな、朱音。

 夜は予約とか取ってないよな? 俺、ディナー予約しちまってるんだ。朱音を喜ばせたくてさ。


「あ、夜は予約とか取ってないよな? お礼も兼ねて、夜は俺に奢らせろよな」

「ラッキー! ありがとね。というか、夜も一緒に居てくれるんだ?」

「ん、そんなに意外?」

「今回は朝から一緒だしさ」


 確かにただの友達だったら、予定が終わったらそれで終わりだよな。俺もだいたいそうだし。

 でも、朱音は違う。ずっと傍にいたいから。朱音はどう思っているのかな?


「ごめん、もしかしたら予定あった?」

「有っても、蓮を優先させるってば。因みに特に予定はないよ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん」


 マジか。俺はまた胸が躍る。朱音、俺を最優先するって言ってくれている。夢じゃないよな?

 もしかしたら朱音も? ってバカ、夢見過ぎだぞ、俺。ただ、今の俺が不安定そうに見えるから、心配してくれてるだけだろうし。

 笑えるようになったのも最近だしな。

 まあいいか、気にしてくれるのはやっぱり嬉しいし。


「それより、パスタ何にする?」

「そうだなあ、朱音のオススメは?」

「キノコのクリームパスタかな。キノコパスタが美味しいんだよ、ここ」

「ふーん、じゃあそれにしよ」


 朱音のオススメなら間違いないしな。なんせ店の名前も簡単に言えばキノコだし。


「じゃあ、私も同じのにしよっと」

「あ、呑む?」

「昼だしやめとく。蓮は呑むの?」

「俺も朱音が呑まないならやめとくよ」


 この緊張を解きほぐしたいところだけど、酒に頼っちゃダメだよな。

 我に帰った俺は、お酒を呑むのはやめて、キノコクリームパスタを2人分注文した。

作者「かなり久々の更新となりました。現在私、鬱症状がかなり出てしまっており、更新ペースはかなりゆっくりになりますが、楽しみに待っててね!」

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