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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
生理的に無理な人
239/242

番外編:蓮と朱音1

 最近亜美に会う勇気が持てない。そんな訳で、最近看護師長に事情を話して、亜美とはシフト合わせないようにしていたんだけど。


「亜美と友達も辞めちゃうの?」

「そんなつもりはねえけどさ、まだ踏ん切りがよお」


 俺はぼやきながら朱音に言う。最近、この問題で朱音と呑んでばかりだ。いつも朱音は笑って「いいよ」って言ってくれるからありがたい。最近は朱音に頼りっぱなしだよ。


「少しずつだよ、蓮。焦らないで」

「その少しずつが進まないから、イライラしてるんだけどな」


 亜美と普通に会って遊びに行って、とかが出来るまでは回復したいんだけど、まだ上手くいかねえや。BBQも最近誘って貰ったけど、全然ダメで適当に理由付けて断っちまったしな。

 まあ、その「適当」が、朱音と遊ぶからにしちまったもんだから、朱音もBBQに行けなくなっちまったから、申し訳無さすぎたんだけど。

 でも、まだ会う勇気は無いんだけど、亜美のこと好きってのは薄らいで来たかな。

 あんなに深川先生深川先生って亜美は言ってるし、おそらくそれが揺らぐこともないだろう。それが告白してハッキリ解った。

 そこら辺は、友と違ってまだ割り切れてる方かな? まあ、俺はキスまでして、引っ叩かたれたしな。


「本当、キスはやり過ぎだったよね」

「ん、顔に出てた?」

「まあね」


 俺のバカ。俺はグイッとビールを飲み干し、タッチパネルでおかわりの日本酒を注文する。


「蓮、呑みすぎだよ?」

「最近呑まないと眠れねえんだよ」

「それだけでも治るといいんだけどね。いいや、私も明日休みだし付き合うよ」

「刺身も追加しようぜ」


 朱音、いつもありがとな。俺は朱音の分の日本酒と刺し盛りを注文して、串カツを頬張る。

 こうした時間が楽しいから、ちょっと楽になるんだよな。亜美のことも忘れられるし。


 ◇


「ごめん落合くん、28日調整出来なかった。どうしても看護師が足りなくて」

「ああ、了解です。俺も頑張ります」


 週明け、亜美と一緒かあ。流石に担当には着かせないだろうけど、休憩時間は被るだろうし、避けるのは絶対違うもんな。

 俺も成長して行かないと。朱音も同じ日出勤だし、何とかしてやる。

 ん、俺、何で朱音を思い出すんだ? こんな時に。

 でも気晴らししてえし、土曜は休みだから、朱音とまた呑もうかな。や、呑みはちょっと前にしたばかりだから、どっか遊びに行こうかな。朱音には世話になってるし、楽しませてやりてえな。


 そんな訳で、俺は朱音にライムを送ると、いつものように「いいよ」って言ってくれた。さあて、どこ連れて行こうかな?

 ん、待てよ。これ、デートじゃね? いや待て、そもそも普段の飲み会だって2人きりじゃね? そっか、俺、朱音にかなり気を許していたんだな。でも、朱音が断ったことはないし、そういう異性として俺のことは見ていないのかな?

 俺は……どうなんだろう。朱音にはかなり助けられてきたし、会うと安心するし、一緒に居ると楽しいし。

 やばい、今更過ぎる。俺バカだ。俺、朱音のこと、好きだったんだ。多分もう普通に亜美に会えるわ。だって俺が好きなのは朱音なんだから。


 うう、弱ったぞ。朱音は全く俺のこと意識してないだろうから、このデートで俺のこと意識して貰わなければ。

 そうと決まれば、友達に相談しまくらなくては。俺は素早くライムをぶん回した。


 ◇


 うう、かなりライムをぶん回したけど、全く当てにならなかった。薔薇108本送れ、だの、キスしろ、だの。気が早過ぎる返事ばかりだったよ。

 しかもキスは失敗したっつーの!


 ただ行き先は朱音とも相談して決めて、プラネタリウムに行くことになった。

 うん、ロマンチックだし、少しは意識してくれるんじゃね? こっそり手を繋いでも……って、バカ。


 いよいよ明日か。仕事も頑張らねえとな。

 今日は内科の診察日。とは言ってもヘルプだから半番で昼からなんだけどな。

 季節外れの風邪の患者様が多いようだ。

 正直風邪はウイルスだから抗生剤は効かねえんだけど、熱冷ましくらいは処方出来るしな。

 それにコロナやインフルの可能性だって、否定は出来ない。しっかり診察しなくては。

 俺は頬をパン! っと叩いて、診察室に入る。


「宜しくお願いします」

「宜しくね、蓮」

「お、今日は朱音か。宜しく!」


 恋心を意識してすぐに朱音に会ったので、俺の頬は紅潮する。バカ、バレるのは恥ずかしいぞ。


「ほら、早く座って。患者様呼ぶよ?」

「あ、ごめんごめん」


 ◇


「お疲れ、蓮」

「朱音もお疲れさん。診察終わったし、休憩行こうぜ」

「あ、私早番なの。明日遊びに行くしね」

「え、じゃあ休憩は?」

「安心して。早めに取ったから。じゃ、お疲れ様! また明日ね」

「おう、また明日な」


 ちぇ、朱音と飯食いたかったんだけどな。仕方ねえや、今日友も中番だから、友と飯食うか。

 俺は休憩室で友を見つけると、明日のことについてお互い語り合う。


「明日、朱音さんに告白するんですよね?」

「おう。ふとした時に、好きだなあって気付いてさ。意識させる為の告白になるけど」

「僕達はそういうのとは縁のない、楽しいBBQですからね」

「はは、BBQでそういうのはねえよな」


 あの時は起きないと思ったんだけど、BBQでも起きたんだよなあ。まあ、この話は置いといて。


「少しは意識してくれっかなあ、朱音」

「てっきり付き合ってるもんだと思ってましたよ、最近2人きりで呑んでましたし」

「最初は朱音が俺のこと気にして、誘ってくれたんだよな。それから次第に頼るようになって、好きになって」

「今まで2人きりっていうのに、違和感なく過ごしてた蓮がバカですよね」

「本当にな! でもそれだけ朱音にとって、俺は友達でしかねえんだよ」


 自分で言ってて虚しくなるけど真実だもんなあ。明日は朱音に、蓮って良くない? って、思って貰わなきゃ。


「今日は友に会えて良かったよ。気が楽になった」

「明日は別々になりますが、お互い楽しみましょうね」

「ああ、フラれるだろうけど、ダメージデカい気がするから、そしたらまたBBQやろうぜ」

「ええ、そうしましょうね」


 朱音が俺を癒してくれたから、亜美とも遊べるだろうしな。なんなら、友とも久々に呑めるなら、フラれた傷も癒えるだろう。って、フラれる前提なのが悲しいな。


「少なくとも楽しませたいな。朱音には助けて貰ったし」

「大丈夫ですよ。朱音さんですし」

「ん、どういう意味だ?」

「深い意味はありませんよ。ふふ」


 ◇


 そんな訳でいよいよデート当日。朱音の好みは解らないけど、俺にしては格好良い感じにはなったんじゃないかな?

 にしても、プラネタリウムかあ。ガキの時にチラッと見て爆睡しちまったんだよなあ。今日はそうならないといいけど。

 待ち合わせは駅。朱音を待たせたくないし、早めに行かねえとな。

 準備を終えた俺は、駅まで歩いていく。

 やべ、緊張してきた。今まで普通に2人きりで呑んだりしてたのに、意識し出したらこれだもんな。

 プランも練って来たけど、プラン通りに行くと良いんだけどな。

 プラネタリウムを見た後で、本物の綺麗な星空を見せてやりたくて、必死こいて良い場所見つけたんだよな。

 東京で星空見える場所って、あんまないからな。


 って、考えてるうちに駅まで着いた。流石にまだ朱音はいねえな。俺はスマホを眺めながら時間潰しをする。そうでもしないと、ドキドキが止まらなかったから。

 ダメだったとしても、朱音はこれからも俺と一緒に過ごしてくれるかな?

 一緒に呑んだり、遊んだり、さ。

 思えば俺は、本当はとっくに失恋の傷なんか癒えてて、朱音と呑みたかっただけなんじゃないかって気もして来た。

 それが無くなっちまうかもだけど、この気持ちに気付いたからには、しっかり伝えたいから。

 いや、でも無くなったら耐え切れるかな、俺。やばい、なんか涙が止まんねえ。1人涙を拭っていると。


「どうしたの? 蓮」

「あ、朱音。な、何でもねえよ。朱音がいるなら」

「え、どういうこと?」

「ああいや、こっちの話。早く行こうぜ」


 バカだな俺、朱音と居られなくなるかもって思っただけで泣いちまうだなんて。そうだよ、友達には困ってないけど、一緒に過ごしたいのは朱音となんだ。朱音とだけなんだ。

 朱音は不思議そうな顔をして俺を見つめるけど、流石にこんなこと言えないしさ。


 俺達は改札を潜って、プラネタリウムのある区内まで向かう。区内には科学館があって、そこにプラネタリウムがあるって訳。プラネタリウムの時間までは、科学館を回ろうって話もしてる。


 ふふ、横の朱音もいつもより可愛くて、より緊張感が増して来た。

 今日の為にオシャレしてくれたんだよなって思うと、俄然気合も入る。

 今日のデートは絶対楽しいものにしてやるぜ!


「蓮、少し寝たら? 隈すごいよ?」

「そうか? 全然普通だぞ」

「無理しないでよ」


 昨日緊張のあまり、一睡も出来なかったんだよな。それに今の瞬間だって朱音と話していたいし、落ち落ち寝られっかよ。1秒1秒が、朱音によく思って貰えるチャンスだぞ。逃してなるものか。

 って、思ってたんだけど、朱音が俺の頭をポンポンしてくる。や、止めろ、眠たくなるじゃねえか!

 朱音め、俺の気持ちも知らないで。いや、違うか、俺を解ってるから、寝かせようとしてくれてるのか。

 なんか朱音と居ると安心出来るんだよな。だからこそ、色んな相談事もしていたし、こうやって眠たくなるんだよな。

 ああ、ダメだ。俺の負け。もう寝るよ。おやすみ。


「すー、すー」

「おやすみ、蓮」


 ◇


「蓮、着いたよ。起きて」

「ふわあ、良く寝た……って、ごめん朱音。俺、もたれ掛かって」

「眠れてなかったんでしょ? 良く眠れたなら良かったよ」


 結局俺は移動中起きることはなく、朱音にもたれ掛かって寝ていたようだ。重かっただろうに、朱音のやつ何も言わないでさ。くそ、ますます好きが増していくばかりだ。

 加えて、俺の情けないポイントも加算されていくばかり。こんなんじゃダメなのに!


 まあいい、こっからだ。プラネタリウムで、解説の声よりも先に、俺が星座を当てて、朱音に蓮賢いじゃん! って思って貰ってだなあ。

 この日の為に星の勉強もして来たんだからな。


「ほら、蓮。こっちだよ」

「あれ、朱音スマホ見ないで行けんの?」

「うん、よく行くんだ。科学館」


 ほええ、そんなイメージ全然無かったけど、良く行くのかあ。知らない朱音を知れたのは素直に嬉しいな。ということは、俺が星の知識をひけらかすより、朱音が語る話を聞いた方が楽しそうだな?

 格好は付かないけど、そうしようかな? 朱音も星のこと、話したい気がするし。

 そんなことを考えている内に、多摩六都科学館へ到着した。

 緊張している俺をよそに、朱音のやつ、俺の手を握って引っ張って行きやがった。思わず握り返したけど、良かったよな?


「ね、このまま手を繋いでてもいい?」

「おう、いいぜ。汗っかきだからごめんな」


 え、朱音から手を繋ぎ続けたいって来たぞ?

 それだけ俺のことがどうでもいいのか、それとも俺にもワンチャンあるってことか?

 正直緊張しちまうぜ。好きな子と手を繋げるのは、朱音と手を繋げるのは嬉しいんだけどさ。

 そんな訳で俺は緊張が解れないまま、朱音と科学館を回る。


「からだの仕組み、かあ。研修医時代を思い出すなあ」

「あ、深川先生そういうの丁寧に教えてくれそうよね」

「そうそう。結構ぎゅうぎゅう詰めだったけど、難なく合格出来たから俺最短じゃね? って思ってたんだけどな」

「流石に蓮の時代と深川先生の時代は、内容も違うし、そうそう越えられないよ」


 そりゃ、約10年前と今とじゃあ、違うのも当たり前だな。覚えなきゃいけない知識も増えている訳だしな。

 だけど、それを物ともせず、深川先生は覚えているし、教えられるんだよな。やっぱ化け物だよ、あの人。


「でも、結構子供向けの体験とか多いけど、朱音は良くどこに行くんだ?」

「んー、いつもは軽く展示物をみてプラネタリウムだなあ。あ、でも今日は蓮もいるし、ちょっとは体験やろうかな?」


 そう言いながら、朱音はムーンウォークと呼ばれる体験に俺を引っ張っていく。既に何人か並んでいて、人気さが伺える。


「これやってみたかったんだよね。いつも1人で行くから断念してたけどさ」

「また一緒に行こうぜ」

「えへへ、ありがとね」


 そっか、朱音はいつも1人でここに来てたのかあ。気晴らしにって感じなのかな? だとしたら、俺は朱音の一部に入れてもらえたのかな。だとしたら、異性として意識されてなくても嬉しいな。


 そう言えば俺、誰かを自分の中に入れようとしたことあったっけ?

 友達は多いけど、それが無意識に出来ていたのはもしかしたら朱音が初めてかもしれない。

 知らず知らずのうちに頼って、甘えて、安心できて、自分のことを相談出来たりして。

 そっか、だから俺、朱音が好きなんだな。受け止めてくれ続けていたから。感謝しかないよ。


「ほら、蓮。ムーンウォークの順番来たよ!」

「お、楽しみだな」

亜美「楽しいデートになるといいね」


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