世界一泣きじゃくる返事
「え、嘘、プロポーズ?」
「俺にしてはストレートに言えたぞ?」
京平も私と一生居たいって考えていてくれていたんだね。私は嬉しすぎて、わんわんと泣き出す始末。そんな私の涙を、京平は優しく拭ってくれた。いつだって優しいな、京平は。
「ありがとね、えぐ、私も、京平と結婚したい」
「どんな時も離さないからな」
そう言うと京平は優しく抱きしめて、頭を撫でながら、キスしてくれた。
なんだかいつもより優しくて癒されるキスだなあ。愛しさが増していくよ、京平。
それでもずっと夢に見てた京平のお嫁さんになれるんだ、って考えたら、嬉しい涙は中々止まらなかったけど。
「ごめんな、泣かせちまって」
「ううん、その、嬉しすぎて。京平も同じこと考えてくれていたんだな。って」
「亜美が居ない人生なんて、考えたくも無いよ」
「ずっと一緒だからね」
私も京平を抱きしめる。いつだって京平は暖かい。いつだって私を安心させてくれるんだ。愛してる、愛してるよ、京平。絶対離さないんだからね。
「旅行が終わったら、結婚式場探しに行こうな」
「うん、呼びたい人沢山いるもん」
「っと、その前に挨拶だな。お父さんに報告しなきゃな」
「あと、大平さんと有紗ちゃんにもね」
「あー、今から緊張してきた!」
京平でも緊張するんだなあ。でも私も、大平さんと有紗ちゃんに挨拶するのは、やっぱり緊張するなあ。
2人が大切に育てて来た京平だもん。反対されるかもしれないし。
私、京平に助けてもらってばかりだし。
「何思ってんだよ。俺のが助けられてるぞ?」
「そ、そうかな?」
「本当に優しいな、亜美は。選んだのが亜美で良かった」
京平は私をポンポンしてくれた。ずっと京平を支えるからね、私。今こうして、京平が支えてくれてるように。
「亜美、指輪、嵌めてもいいか?」
「うん、付けたい!」
京平は私の左手薬指に結婚指輪を嵌めてくれた。前に貰ったペアリングも嵌めていたんだけど、結婚指輪は綺麗に左手薬指に納まってくれた。えへへ、嬉しいな。
「病院では嵌められないのが残念だなあ」
「ああ、鈴木先生もそれは嘆いていたなあ」
「あ、そう言えば京平の指輪は?」
「ん、亜美に渡したのは婚約指輪。結婚指輪は2人で見に行きたいなって」
あ、婚約指輪だったのか。てことは、最終的に指輪は3つになるのかあ。左手薬指に、嵌りきるかなあ?
「だから全部嵌めようとするなよ」
「だって全部大事だもん」
「でも、亜美のそんなとこ、嫌いじゃないよ」
◇
それから私達は2人で写真を撮って、お父さんにすぐ挨拶したかったから、そのまま帰りの電車に乗った。
あ、因みに旅行会社には色々ありすぎたから、来週行く事にしたよ。ただ私達の休みが合わないから、京平が取りに行ってくれるみたい。
それにしても、お父さん、びっくりするかなあ?
「ああ、それだけど、近々亜美にプロポーズするってのは、家族には相談済みだぞ」
「え、マジか」
「予定では旅行先で言うつもりだったんだけど、感情が昂って、今しかないな、って」
「しかも早まったんだ、予定よりも」
「旅行も信次の提案でさ。2人きりになりやすいからいいんじゃないか、って」
もー、家族全員私に隠し事をしてたのか! 流石にちょっと切ないぞ!
「俺も最初で最期のプロポーズだから、相談に乗って貰いたくてさ」
「そりゃ緊張もするし、相談もしたいよね」
「亜美を喜ばせたかったからさ」
「うん、すごく嬉しかったよ」
「泣くほど喜んで貰えるとは思わなかったよ」
私達は笑い合う。出会ってからもうすぐ12年だけど、日に日に京平を知っていって、日に日に愛してるが増していくよ。
こんなに信頼出来る人が傍に居てくれて良かった。
「俺も亜美が傍に居てくれて良かった。安心出来るからさ、この俺がだよ?」
「私も。抱きしめられるとすぐに眠たくなるし」
「寝付きいいもんな、亜美。そんな亜美の寝顔を見るのも良いんだよなあ」
「あれ、いつも寝顔見てたの?」
「見てるとより安心するからさ」
私の寝顔も、京平に安心感を与えることが出来ていたんだね。
それにしても胸の高鳴りが中々止まないな。嬉しいを通り越して、身体が驚いているんだな。
「はは、亜美もかあ。俺も心臓のバクバクが止まんねえよ」
私は思わず京平の左胸を触ってみたんだけど、本当だ。素早くバクバクしてる。確かにこれから挨拶だもんね。
「帰ったらスーツに着替えたいから、風呂入ってああ。なんか混乱してきた」
「大丈夫、落ち着いて。でも、お父さん早めに寝るだろうから後日でもいいのでは?」
「や、お父さんからプロポーズしたらすぐ挨拶しに来て欲しいって言われててさ。でも、お父さんを無理させたくないしなあ」
京平は少し頭をもたげると、ライムを打ち始めた。横からこっそりみたんだけど、お父さんに挨拶のことを聞いていたみたい。多分後日になると思うけどなあ?
でも、お父さんの感情はそうは行かなかったみたいで。
「かしこまる必要ないから、帰ったらすぐ挨拶して欲しい、だって。大丈夫かなあ」
「普通に京平と話したいんだよ。お父さんのことだし」
普段から一緒に暮らしてる家族でもあるんだし、普段の京平と私について話したいんだろうなあ。2人で私を育てたようなもんなんだしね。
2人のおかげで、私はこんな亜美になったんだけどさ。
「最高の亜美だよ」
「もう、京平ってば」
◇
「「ただいまー」」
「おかえり。亜美、兄貴。兄貴やったじゃん」
「ああ、お父さんから聞いたのか?」
「うん、2人ともおめでとう」
信次はそういうと京平を抱きしめる。信次も心配してたんだろうなあ。
あ、そんなこと言ってたら私も抱きしめられた。心配させてごめんね、信次。ありがとね。
「あ、亜美とお兄様ですわああ!」
おっと、のばらも2人まとめて抱きしめてきたよ。のばらもありがとね。
「お父様が待ってますから、2人とも行ってあげて。すごく緊張されてますわ」
「でも、やっぱりスーツに着替えた方が……」
「お兄様! それではお父様が持ちませんわ!」
そんな訳で、私達は早急にお父さんが待つリビングに向かう。カチャっとドアを開けると、お父さんがぱああっと笑ってくれた。
いよいよ、挨拶だね。
「さあ、2人とも座って」
「京平、こっち座って」
「お、おう」
敢えて京平に声を掛けたんだけど、やっぱり京平はかなり緊張しているみたい。お父さんからもかしこまらずに、って言われてるのになあ。
「まずは2人とも婚約おめでとう。亜美の夢だったもんな、京平のお嫁さん」
「うん、小学生6年生の頃ね、プロフィールかなんか書くやつがあって、夢のとこ、京平のお嫁さんって書いたもん。授業参観のときに、慌てて修正テープで消したけど」
「そんなことしてたのか、亜美」
「だって、あの時は内緒の恋だったもん!」
家族なんだから諦めるって道もあったんだけど、私の恋心は止まらなくて、気付いたら愛すようになって、それからもずっと愛し続けて、今に至るんだもんね。諦めなくて良かった。まさか京平が告白してくれるとは思わなかったけどね。
「正直、ここに至るまではどうだったんだ? 京平」
「お父さんにも前に言ったけど、亜美が12歳の時に異性として意識するようになりまして、いつか亜美が大きくなったら伝えようって思っていましたが、俺なんかじゃ亜美に釣り合う訳がないって、半ば諦め掛けていました」
「え、そうなの?」
「だったんですけど、亜美に愛してる人が居るって言われた時は自分でも想像出来ないくらいショックで、ああ、諦めたく無いなって思ったんです」
「愛してるのは京平だったんだけどね」
お父さんはにんまり笑って、話を続ける。
「京平、亜美を幸せにしてくれてありがとう。奈美は、亜美への嫌悪感を私の前では出さなかったし、そんな亜美の心の傷にも気付かないばかりか、精神がやられたとは言え、亜美と信次には寂しい思いをさせてしまった。亜美が今笑えてるのは、間違いなく京平のおかげだよ」
「いえ、笑わせて貰ってるのは、むしろ俺の方で……生きようって思わせてくれたんです」
「はは、かしこまらなくていいよ。普段通り話そう」
そう言いながらお父さんは、泣きながら私を抱きしめる。
「亜美が幸せになってくれて良かった」
「うん、私、幸せだよ」
「これからも亜美を宜しくな、京平」
「ありがとな、お父さん」
あ、京平も泣いてる。今までのことを思い出していたのかな? 私はお父さんを振り解いて、京平をポンポンする。
「もう、いつも亜美は京平だな」
「いつものことだもん!」
「ありがとな、亜美」
それから、今日は特別な日だから家族皆で集まって、少しお酒を嗜んだよ。あ、信次はファムグレね。
ただ、のばらもテンションがあがって、薔薇を100本以上咲かせてくれたから、のばらも信次とファムグレを飲んでいたけどね。
私はそれをのばらと一緒に活けて、キッチンで一呼吸。
「亜美、より幸せになるのですわよ」
「ありがとね。まだ京平の育ての両親への挨拶があるけどね」
「緊張しますわね。応援してますわ」
「のばらもありがとね。のばらが居なかったら、私京平と付き合えてないもん」
「えっへんですわ! あ、薔薇は飾っておきますから、亜美はもうお休みになって」
そんな訳で私はお言葉に甘えることにして、酔った身体を布団にダイブ。今日は色んなことがあって疲れちゃったよ。
でも少し休憩したら、また呑むんだ!
って、思ってたんだけど。
「亜美、もう寝た方がいいぞ」
「あれ? 京平はもういいの?」
「お酒は好きだけど、禁じられてはいるし、そんなには呑まないよ」
「じゃあ、一緒に寝よ!」
私達は2人で抱きしめ合う。お互い疲れ切っていたから着替えもせずに眠る。
寝息を立てる京平が愛おしいなと思いながら、私も眠りにつく。
これからもずっと一緒だよ、京平。
作者「物語はまだまだ続くんじゃよ」




