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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
生理的に無理な人
237/242

そのままの君を愛してる

「ああ、美味かった!」

「ぶー」

「なんだよ、ちゃんと俺が奢るって言っただろ?」


 京平、結局一度もトイレに行かなかったし、寧ろ私がトイレで血糖測定とインスリン注入している間に、お支払い済ませてたし。色々とスマート過ぎるよ!

 あーあ、私が奢るつもりだったのになあ。


「亜美が金の心配する必要はないんだからな?」

「京平、よく使い過ぎて、缶コーヒーすら買えない時あるじゃん」

「コーヒーは最近信次が淹れてくれるから大丈夫」


 そんな話をしながら、私達は見晴らしの丘まで歩いていく。勿論、手を繋いで。いつも一緒の時は、手を繋いでくれるよね。それが私は嬉しいんだ。

 私は久々に見る夜景を楽しみにしながら、お腹いっぱいで幸せになった心を携えて笑う。

 京平と一緒に居ると、全ての時間が楽しくて、自然と笑顔が溢れるんだ。付き合ってからは、より楽しくなったしね。


「京平と居ると幸せだな、すごく楽しい」

「俺も。亜美と出会えて良かった」


 京平、これからもずっと一緒に居ようね。一緒に笑い合って生きていこうね。私は京平の手を、ぎゅっと握りしめた。

 すると京平も少し照れた顔をして、握り返してくれる。こんな風に私達らしく生きていこうね。


「俺、色々あったからさ、楽しいって思えることなんて、もう二度とないと思ってたよ。それを、亜美が変えてくれたんだ」

「私もね、友達も出来なかったし、あの女にも愛されなかったし、お父さんも帰りが遅くて、信次はまだ小さかったりで、ずっと寂しかったけど、京平が来てくれてから、毎日笑えてるよ」

「お互い支え合えてるよな、俺達」

「うん、最初から今もね」


 そうだね、出会ってから私達は支え合えているよね。京平は私の病気のことだけでなくて、寂しい心だったり、泣きたい気持ちだったり、沢山補ってくれたよね。京平と家族になれて、本当に良かった。

 彼女になれて、本当に良かった。


「よーし、着いたぞ。後は迷路を抜けるだけ」


 私は京平に引っ張られて、迷路を抜けていく。かなり入り組んだ迷路だけど、京平に身を委ねればいいだけだから、わくわくしながら抜けて行ったよ。

 でも、少し覚えてきたかも。って、京平と一緒に行かない日はないから、覚える必要ないんだけどさ。夜景は2人で見たいもんね。


 こうして京平に引っ張られるまま、見晴らしの丘の1番綺麗に景色が見られる場所まで辿り着いた。


「いつ見ても綺麗なんだよな、ここ」

「本当だね。久々に見たけどいい景色だなあ」

「亜美と一緒だから、より楽しいよ」

「うん、私も楽しい!」


 京平、笑ってる。嬉しいな、京平の笑顔を見ると癒されるんだよね。私も生きてて良かったなって思えるんだ。心も温かくなるし。


「亜美と出会えてなかったら、俺、死んでたよ」

「もう、そういうこと言わないの!」

「本当のことだよ。毎日自責の念に押しつぶされそうになってた」

「京平は何も悪くないじゃん」

「俺が両親を殺したようなもんだし、それは変わらないよ」


 ああ、この人はこんな悲しい気持ちを携えて生きていたんだ。何も悪く無いのに、1人抱え込んで、苦しんでいたんだ。私、京平の闇を背負えているかな。なんなら、京平の闇を振り払えたらいいんだけどな。

 でもどちらにしても、私はずっと傍にいるからね。絶対1人にしないからね。

 私は京平を抱きしめて、頭をポンポンする。


「何も京平は悪く無いよ、大丈夫だよ」

「いつもありがとな、亜美。でも最近は両親が俺を助けたかった気持ちも解るようになって、割り切れる日もあるんだよ」

「ふふ、それなら良かった。そうだよ、京平が大切だからお父さんとお母さんは、京平を守ったんだよ」


 そうは言うけど、京平泣いてる。それだけ京平にとって、重たい記憶なんだね。それだけお父さんとお母さんを愛しているんだね。


「亜美に出会えて良かった」


 京平は私を抱きしめ返して、キスをしてくれた。多分不安になったんだと思う。少しは安心してくれたらいいな。


「やっぱり俺、亜美が居ないとダメだな」

「ずっと傍にいるからね」

「亜美……うん、俺、今言いたいな」


 すると京平は急に跪く。え、どうしたの?


「笑ってる亜美、大丈夫って言ってくれる亜美、泣いてる亜美、困ってる亜美、膨れる亜美、眠っている亜美、美味しい顔してる亜美、優しい亜美、真面目な亜美、努力する亜美、でも頑張りすぎちゃう亜美、そのままでいいよって言ってくれた亜美。そんな亜美の、ずっと傍にいさせてください」


 京平はそう言いながら、小さな箱を取り出して開ける。

 私が箱の中身を見ると、キラキラと光るダイヤモンドが付いた綺麗な指輪が収められていた。え、いつの間にこんなの準備したの?

 私がドギマギしていると、京平は照れながら。


「俺と結婚してください」


作者「遂にプロポーズした京平。亜美はどう返すのかな?」

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