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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
生理的に無理な人
234/242

ネモフィラと京平のこと。

 それから私達は、先にレジャーシートを敷いて場所取りしてから、ネモフィラをバックに2人で写真撮影をする。

 とはいえ、かなり混み合っていたから、場所を探すのに一苦労。なんなら、レジャーシートを敷いた場所から撮影した方が良かったのでは?


「それだとネモフィラが遠すぎるだろ?」

「それもそっか。でもここまで来たおかげで、いい写真撮れたね」

「俺のスマホ最新機種だから、やっぱ綺麗に撮れるな」


 うんうん、私も京平も満面の笑みを浮かべて、楽しそうな顔してる。

 たまに京平が変顔してきたのはいただけないけど、それもそれで京平らしくて素敵だな。写真貰ったら写真屋さんで焼いて、手帳に挟もう。


「亜美だけの写真も撮ろうかな」


 うお、いきなり写真撮られた! もー、絶対変な顔だったよ、私。

 

「どんな亜美も可愛いよ」

「そ、そう言ってくれるのは嬉しいけどさ」

「待ち受けにしよっと」


 この人、良い笑顔で待ち受けにしたなあ、さっきの写真。もう、そう来るなら。


ーーパシャ。


「私も待ち受けにしようっと」

「だー、やられた!」


 びっくりした京平も可愛いな。京平にネモフィラが似合ってるや。しかし相変わらず綺麗な顔してるよね、京平。


「1人で写真なんて、恥ずかしすぎるわ」

「え、でも周りの人、結構撮ってるよ?」

「ん?」


 そう、こんなに素敵な景色だから、皆写真撮影するし、自撮りもするのである。俗に言うイムスタ映えってやつを狙っているだろうしね。私は、イムスタやってないけどさ。


「はあ、皆良くやるよなあ」

「まあまあ、折角だし、いっぱい写真撮ろ!」

「亜美が喜んでくれるなら、いっか」


 ◇


 こうしてひとしきり写真を撮った私達は、お昼ご飯に、キッチンカーで売ってたケバブサンドを食べながら、一休み。

 先にレジャーシート敷いてて良かったよ。もうどこも満員だもん。


「たまにはこういう飯もいいな」

「うん、美味しいしね」

「俺も作ってみようかな。ケバブサンド」

「え、お肉沢山巻き巻きして、大きなオーブンで焼かなきゃだから、難しいんじゃ?」

「似たような味には出来る気がするんだよな、簡単な工程にしても」


 あ、もう京平の中で、どうしたら近い味になるかとか想像出来ているんだね。でも、手軽にこの味が楽しめたら最高だよね。キッチンカーでしか食べられないと思っていたし。


「あー、美味かった。ごちそうさま」

「私もごちそうさま。あ、ゴミ袋あるから、ゴミここに入れてね」

「準備がいいなあ。流石亜美」

「へへ、まあね」


 なるべくゴミは各自で持ち帰るのがマナーだしね。


「なあ、亜美。我儘言ってもいい?」

「ん、どうしたの?」

「膝枕、して貰いたいなって」


 京平は少し照れながら言う。


「うん、いいよ。さあ、どうぞ」

「ありがとな。よいこらしょっと」


 京平は安心しきった顔で、私の膝に乗り掛かる。


「ふう、やっぱ落ち着くわ」

「少し寝たら? 疲れた顔してるよ」

「ね、な、い! でも、最近昼寝とか出来るようになったのは、亜美のおかげだよ」

「そう言えば、京平が昼寝するようになったの、最近だね」


 家にいる時も、病院にいる時も、以前の京平は絶対昼寝なんかしなかった。明らかに京平が寝不足の時でさえも、笑顔で話し続けてくれていた。


「昔から寝るのが苦手でさ、中々寝付けねえし、寝たら寝たで悪い夢も良く見たし。唯一寝たって感覚があったのは、休みの前の日に、酒に酔い潰れた時で」

「うん、沢山お酒呑んでたもんね」


 私達が何度止めても、ベロベロになるまで呑んでたもんね。で、布団に入った後もかなり寝乱れて、お腹だして寝てたもんだから、こっそり布団掛けたりしてたなあ。


「小さかった亜美と一緒に寝てた時も、中々眠れなかったし」

「私も小さかったし、安心感より不安のが大きいよね、そりゃ」

「あ、後、亜美に愛してる人がいるって言われた時も、酒が進まなくて全然眠れなかったな」

「だー、ごめんって」


 京平は笑って「もう気にしてないよ」って言いつつ、続ける。


「亜美と付き合う前に抱きしめて眠ったのも、振られたらもう二度と亜美を抱きしめて眠れないよな、って思ってさ。その、亜美を抱きしめて眠れば、幸せな気持ちで眠れるかな、ってさ」

「不安だったの?」

「精神病持ちと付き合いたいってやつ、中々居ないぞ?」

「私は京平だから、それでも愛おしかったよ」


 本当だよ。京平の抱えているもの全部、私が背負えたらなって、ずっと思ってたし、今でもそれは変わらないよ。私が京平を守るんだから。


「そんな亜美だったからかな。幸せに眠れたんだ」

「私も。懐かしい夢も見たしね」

「俺もそんな夢を見たな。なんなら、同じ夢だったりしてな」

「ふふ、かもね」


 私達は笑い合う。私達仲良しだから、きっと同じ夢を見たんじゃないかな?

 そんな気がしてならないよ。


「それから付き合うようになって一緒に眠るようになると、熟睡出来るようになってさ。眠るのも怖く無くなって、亜美に肩揉んで貰った時に、初めて昼寝出来たよ」

「気付いたら眠ってたもんね」

「亜美の優しさと、膝掛けのおかげで、気持ち良く眠れたよ」


 京平は優しく笑う。今日はよく笑うなあ、京平。なんだか嬉しいや。


「よく眠れて身体も楽だから、前より笑えるようになってさ。何より、亜美と一緒だと、何もかもが楽しくてさ」

「それはどういたしまして」

「だからありがとな、亜美……」


 私こそありがとね。って言おうとしたんだけど、ちょっとタイミングが遅かった。何故なら京平は、幸せそうな顔して眠っていたから。


「すー、すー」

「ほうら、やっぱり眠いんじゃん。おやすみ、京平」


 私は京平をポンポンしながら、幸せそうな京平を見て笑った。


 ◇


 それから人も段々と増えて来て、ネモフィラ畑は更に人集(ひとだか)りが出来ていたけど、私はのんびり京平を眺めていた。

 本当に幸せそうに眠るんだよね、最近の京平。元々睡眠が多く必要な体質ではあるし、幸せに眠れているのは良いことだね。

 それにしても私と眠るようになってから、良く眠れるようになった、か。そういう私も、京平の暖かい腕に抱かれて眠るの、凄く好きなんだ。安心出来るから。

 だから私もありがとうなんだよ、京平。


「夕暮れ時のネモフィラも綺麗だなあ」


 オレンジ色の夕日が、ネモフィラ達を照らして、昼間とはまた違った綺麗な景色を見せている。


 京平をそろそろ起こそうかな? でも、かなり幸せそうに眠ってるから、可哀想かな?

 信頼して頭を預けてくれてありがとね、京平。愛してる。

 やっぱり寝かせてあげよ。ネモフィラは来年も見られるけど、京平が眠いのは今だもんね。

 写真だけでも残しておこうかな。私はスマホで、ネモフィラ畑を撮影する。ふふ、ついでに京平の寝顔も、ね。


ーーパシャリ。


「ううん……」

「あ、おはよ。京平」

「ああああ、俺寝てたわ!」


 京平はガバっと起き上がる。

 ありゃま。スマホのカメラ音で京平起きちゃった。申し訳ないことしちゃったなあ。

 そして、やっぱり無意識のうちに眠ったみたいだね。


「起こせよ、亜美!」

「だって幸せそうに眠ってたからさ」

「確かに、幸せだったな。良い夢見てたし」

「ん、どんな夢?」

「内緒!」


 もー、意地悪! 夢くらい教えてくれたっていいのにさ!


「ぶー」

「はは、でも亜美と一緒だった夢。だから幸せな夢なんだ」

「ほら、今だって一緒だよ?」

「じゃあずっと幸せだな、俺」


 京平は身体を直して、私を抱きしめてくれた。そうだね、ずっと幸せだよ、私も。

 嬉しくて私も京平を抱きしめ返した。こんな時間が愛おしくて仕方ないよ。


「すっかり真っ暗になったな」

「京平、そうでもないみたいだよ?」

「ん?」


 私はネモフィラ畑を指差す。ネモフィラ畑の中心に、ゲートが建てられており、そのゲートがキラキラ光ってる。あ、ネモフィラ畑もライトアップされてるや。そっか、夜も楽しめる場所だったんだね。


「写真、撮りに行こっか?」

「うん!」

京平「気付いたら寝てたんだよな。亜美の膝枕、気持ち良すぎた」

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