ネモフィラと京平のこと。
それから私達は、先にレジャーシートを敷いて場所取りしてから、ネモフィラをバックに2人で写真撮影をする。
とはいえ、かなり混み合っていたから、場所を探すのに一苦労。なんなら、レジャーシートを敷いた場所から撮影した方が良かったのでは?
「それだとネモフィラが遠すぎるだろ?」
「それもそっか。でもここまで来たおかげで、いい写真撮れたね」
「俺のスマホ最新機種だから、やっぱ綺麗に撮れるな」
うんうん、私も京平も満面の笑みを浮かべて、楽しそうな顔してる。
たまに京平が変顔してきたのはいただけないけど、それもそれで京平らしくて素敵だな。写真貰ったら写真屋さんで焼いて、手帳に挟もう。
「亜美だけの写真も撮ろうかな」
うお、いきなり写真撮られた! もー、絶対変な顔だったよ、私。
「どんな亜美も可愛いよ」
「そ、そう言ってくれるのは嬉しいけどさ」
「待ち受けにしよっと」
この人、良い笑顔で待ち受けにしたなあ、さっきの写真。もう、そう来るなら。
ーーパシャ。
「私も待ち受けにしようっと」
「だー、やられた!」
びっくりした京平も可愛いな。京平にネモフィラが似合ってるや。しかし相変わらず綺麗な顔してるよね、京平。
「1人で写真なんて、恥ずかしすぎるわ」
「え、でも周りの人、結構撮ってるよ?」
「ん?」
そう、こんなに素敵な景色だから、皆写真撮影するし、自撮りもするのである。俗に言うイムスタ映えってやつを狙っているだろうしね。私は、イムスタやってないけどさ。
「はあ、皆良くやるよなあ」
「まあまあ、折角だし、いっぱい写真撮ろ!」
「亜美が喜んでくれるなら、いっか」
◇
こうしてひとしきり写真を撮った私達は、お昼ご飯に、キッチンカーで売ってたケバブサンドを食べながら、一休み。
先にレジャーシート敷いてて良かったよ。もうどこも満員だもん。
「たまにはこういう飯もいいな」
「うん、美味しいしね」
「俺も作ってみようかな。ケバブサンド」
「え、お肉沢山巻き巻きして、大きなオーブンで焼かなきゃだから、難しいんじゃ?」
「似たような味には出来る気がするんだよな、簡単な工程にしても」
あ、もう京平の中で、どうしたら近い味になるかとか想像出来ているんだね。でも、手軽にこの味が楽しめたら最高だよね。キッチンカーでしか食べられないと思っていたし。
「あー、美味かった。ごちそうさま」
「私もごちそうさま。あ、ゴミ袋あるから、ゴミここに入れてね」
「準備がいいなあ。流石亜美」
「へへ、まあね」
なるべくゴミは各自で持ち帰るのがマナーだしね。
「なあ、亜美。我儘言ってもいい?」
「ん、どうしたの?」
「膝枕、して貰いたいなって」
京平は少し照れながら言う。
「うん、いいよ。さあ、どうぞ」
「ありがとな。よいこらしょっと」
京平は安心しきった顔で、私の膝に乗り掛かる。
「ふう、やっぱ落ち着くわ」
「少し寝たら? 疲れた顔してるよ」
「ね、な、い! でも、最近昼寝とか出来るようになったのは、亜美のおかげだよ」
「そう言えば、京平が昼寝するようになったの、最近だね」
家にいる時も、病院にいる時も、以前の京平は絶対昼寝なんかしなかった。明らかに京平が寝不足の時でさえも、笑顔で話し続けてくれていた。
「昔から寝るのが苦手でさ、中々寝付けねえし、寝たら寝たで悪い夢も良く見たし。唯一寝たって感覚があったのは、休みの前の日に、酒に酔い潰れた時で」
「うん、沢山お酒呑んでたもんね」
私達が何度止めても、ベロベロになるまで呑んでたもんね。で、布団に入った後もかなり寝乱れて、お腹だして寝てたもんだから、こっそり布団掛けたりしてたなあ。
「小さかった亜美と一緒に寝てた時も、中々眠れなかったし」
「私も小さかったし、安心感より不安のが大きいよね、そりゃ」
「あ、後、亜美に愛してる人がいるって言われた時も、酒が進まなくて全然眠れなかったな」
「だー、ごめんって」
京平は笑って「もう気にしてないよ」って言いつつ、続ける。
「亜美と付き合う前に抱きしめて眠ったのも、振られたらもう二度と亜美を抱きしめて眠れないよな、って思ってさ。その、亜美を抱きしめて眠れば、幸せな気持ちで眠れるかな、ってさ」
「不安だったの?」
「精神病持ちと付き合いたいってやつ、中々居ないぞ?」
「私は京平だから、それでも愛おしかったよ」
本当だよ。京平の抱えているもの全部、私が背負えたらなって、ずっと思ってたし、今でもそれは変わらないよ。私が京平を守るんだから。
「そんな亜美だったからかな。幸せに眠れたんだ」
「私も。懐かしい夢も見たしね」
「俺もそんな夢を見たな。なんなら、同じ夢だったりしてな」
「ふふ、かもね」
私達は笑い合う。私達仲良しだから、きっと同じ夢を見たんじゃないかな?
そんな気がしてならないよ。
「それから付き合うようになって一緒に眠るようになると、熟睡出来るようになってさ。眠るのも怖く無くなって、亜美に肩揉んで貰った時に、初めて昼寝出来たよ」
「気付いたら眠ってたもんね」
「亜美の優しさと、膝掛けのおかげで、気持ち良く眠れたよ」
京平は優しく笑う。今日はよく笑うなあ、京平。なんだか嬉しいや。
「よく眠れて身体も楽だから、前より笑えるようになってさ。何より、亜美と一緒だと、何もかもが楽しくてさ」
「それはどういたしまして」
「だからありがとな、亜美……」
私こそありがとね。って言おうとしたんだけど、ちょっとタイミングが遅かった。何故なら京平は、幸せそうな顔して眠っていたから。
「すー、すー」
「ほうら、やっぱり眠いんじゃん。おやすみ、京平」
私は京平をポンポンしながら、幸せそうな京平を見て笑った。
◇
それから人も段々と増えて来て、ネモフィラ畑は更に人集りが出来ていたけど、私はのんびり京平を眺めていた。
本当に幸せそうに眠るんだよね、最近の京平。元々睡眠が多く必要な体質ではあるし、幸せに眠れているのは良いことだね。
それにしても私と眠るようになってから、良く眠れるようになった、か。そういう私も、京平の暖かい腕に抱かれて眠るの、凄く好きなんだ。安心出来るから。
だから私もありがとうなんだよ、京平。
「夕暮れ時のネモフィラも綺麗だなあ」
オレンジ色の夕日が、ネモフィラ達を照らして、昼間とはまた違った綺麗な景色を見せている。
京平をそろそろ起こそうかな? でも、かなり幸せそうに眠ってるから、可哀想かな?
信頼して頭を預けてくれてありがとね、京平。愛してる。
やっぱり寝かせてあげよ。ネモフィラは来年も見られるけど、京平が眠いのは今だもんね。
写真だけでも残しておこうかな。私はスマホで、ネモフィラ畑を撮影する。ふふ、ついでに京平の寝顔も、ね。
ーーパシャリ。
「ううん……」
「あ、おはよ。京平」
「ああああ、俺寝てたわ!」
京平はガバっと起き上がる。
ありゃま。スマホのカメラ音で京平起きちゃった。申し訳ないことしちゃったなあ。
そして、やっぱり無意識のうちに眠ったみたいだね。
「起こせよ、亜美!」
「だって幸せそうに眠ってたからさ」
「確かに、幸せだったな。良い夢見てたし」
「ん、どんな夢?」
「内緒!」
もー、意地悪! 夢くらい教えてくれたっていいのにさ!
「ぶー」
「はは、でも亜美と一緒だった夢。だから幸せな夢なんだ」
「ほら、今だって一緒だよ?」
「じゃあずっと幸せだな、俺」
京平は身体を直して、私を抱きしめてくれた。そうだね、ずっと幸せだよ、私も。
嬉しくて私も京平を抱きしめ返した。こんな時間が愛おしくて仕方ないよ。
「すっかり真っ暗になったな」
「京平、そうでもないみたいだよ?」
「ん?」
私はネモフィラ畑を指差す。ネモフィラ畑の中心に、ゲートが建てられており、そのゲートがキラキラ光ってる。あ、ネモフィラ畑もライトアップされてるや。そっか、夜も楽しめる場所だったんだね。
「写真、撮りに行こっか?」
「うん!」
京平「気付いたら寝てたんだよな。亜美の膝枕、気持ち良すぎた」




