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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
生理的に無理な人
232/242

司の気持ち(真目線)

「司くん、ここに居ただか」

「真……こっちくんなよ」


 司くん、泣いてるだか? 目が真っ赤っかだよ。司くんは、公園のすぐ近くにある自販機の前で(うずくま)っていたのを見つけたんだけども、何に対して泣いてんだべか?


「泣いてる司くんを、放って置けないだよ」

「取り敢えず移動しようか。俺も不甲斐無いよな、家まで耐えきれなくて」


 そんな訳で公園近くの森で、2人で座りながら話しただよ。


「俺さ、美紀のことがずっと好きでさ。俺達、小学校からの腐れ縁で」

「そ、そうだっただか?!」

「1ヶ月だけ付き合うっての、美紀の提案だろ? 真はそもそも恋愛知らなそうだし」

「お、おっしゃる通りだよ」


 そうだっただか。だとしたら、おらが司くんを傷付けたようなもんだな。おらが自制して、付き合わないって選択をしていれば、こうはなっていなかっただよ。

 そもそもおらは、美紀さんに恋をしてる訳じゃ……ないんだけども、断るってなったとき、少し心がズキズキしてきてな、断りきれんかっただよ。それで提案に乗っちまっただよ。

 ん、でもあのズキズキは、なんだべか?


「美紀が真のこと好きなの、解ってたのにな」

「知ってただか?」

「そりゃ、美紀のこと、ずっと見てたから」

「そうだべか。辛かったなあ」


 おらは、司くんを抱きしめただよ。2人きりなら恥ずかしく無いだ、思い切り泣くだよ。


「でも俺だって、まだ諦めた訳じゃねえからな。まだ真が、美紀の魅力に気付いていない今ならチャンスはあるし」

「美紀さんはよく笑うところと、少し気は強いけど、優しいところが素敵だと思うだよ」

「ちっ、そこには気付いてたか」

「まだ、あまり美紀さんのことは知れてないだよ。彼氏なのに情けねえだよ」


 おらの気持ち次第で、1ヶ月でお付き合いは終わるかもしんねえけど、その間は大切にしたいだよ。我儘かもだけどもよ。

 その間、美紀さんのことをもっと知っていって、恋愛感情がなんなのかを知ることが出来たらいいなと思うだよ。

 その相手が美紀さんならいいな、とは、少し思っていて、だな。

 ん、この気持ちはなんだべか? 少し心がキュンとするというか、ドキドキするというか。不思議だよ。


「まあ、真が気付く前に、美紀には気持ちを伝えたいな」

「そっか、伝える気はあっただな?」

「何も言わずに逃げるのは、違うよなって」

「正直、おらはおらの気持ちがよくわかんねえから、立場もわかんねえけども、気をしっかり持つだよ」

「そっか。ありがとな」

「じゃあ、皆のところに帰るだよ」


 司くんは、「今更戻っても誰もいねえよ」って言ったけんども、皆優しい人達だから、そんなことしねえのは解っていたもんだから、強引に司くんの手を引っ張って、皆のとこに戻ることにしただよ。

 「やめろ、気まずいだろ!」とか言ってたけんども、そんなの知らねえだよ。


 そして、皆のとこに戻ると、皆優しくおら達を出迎えてくれただよ。


「司、何があったの?」

「ごめん美紀、ちょっと俺がどうかしてたわ」

「出来れば私、司とまだ、BBQ楽しみたいんだけど?」

「うん、いいよ」

「じゃ、もっかい火を起こすぞ!」

「やっきそば! やっきそば!」


 おらと深川先生は、急ピッチで火おこしをして、BBQは無事再開されただよ。

 締めの焼きそばを楽しまないことには、BBQは終われないだよ。


 深川先生が焼きそばを作ってる間、兄ちゃんがおらに話しかけてきただよ。


「真、お付き合いって本当ですか?」

「本当だよ。兄ちゃんみたいに、好きとかそういうのは解らねえから、美紀さんを困らせねえよう大切にするだよ」

「好きじゃない相手と付き合うのはお勧めしませんが、相手を傷付ける真似だけはしないで欲しいです」

「解ってるだよ。絶対守るだよ」


 あ、美紀さん真っ赤だ。おら、そんな変なこと言っただか?

 解らないなりに、美紀さんを大切にするだよ、おら。


「ほら、焼きそば出来たぞ。皆で食べよ」

「わーい! 沢山盛っちゃお!」

「ああん、のばらも沢山欲しいですわ!」

「うすっ!」

「ありゃ、焼きそば足りるかなあ?」


 ◇


 焼きそばは、ものの5分で空っぽになっただよ。流石深川先生だよ。もっと買っとけば良かっただな。

 美紀さんも美味しそうな笑顔を浮かべてるから、良かっただよ。

 残りの食材をその後焼いたんだけんども、それもあっという間に無くなっただよ。

 食材が無くなったことで、そろそろBBQはお開きって感じだよ。


「お腹いっぱいですわ」

「うん。僕も」

「帰りはどうします? 前半組と後半組に分かれて送りましょうか?」

「あ、大丈夫。僕、のばらを抱えて家まで帰るからさ」

「え、重くねえだか?!」


 何言ってんだ、信次くん。のばらさんを抱えていくだなんて、いくらなんでも距離がありすぎるだよ。そもそものばらさんだって、歩けると思うだよ。


「あ、そっか、僕の異能教えてませんでしたよね。それじゃ、お先に」

「バイバイですわー」


 信次くんとのばらさんはフワッと浮いたかと思えば、そのまま優雅に空を飛んでいっただよ。

 異能の人、あんま見たことなかったけんども、異能って空を飛べるものもあるだべな。

 正直、ちょっと羨ましいだよ。


「帰りは僕が運転しますね。真は帰ったら、お風呂入って寝てくださいね」

「おら元気だよ?」

「疲れた顔してますよ。後ろの席で休んでてください」

「ありがとだよ、兄ちゃん」


 兄ちゃんには隠し事出来ねえだな、今日は色々あったもんで、疲れが溜まっていただよ。


「私、膝枕してあげるね」

「それ、眠れるだか?」

「真次第、かな?」

「羨ましいな、ちくしょう」


 そんな訳で帰りの車では、膝枕なるものを体験したんだけども、不思議と寝心地が良くて、おらはすごく安心しただよ。

 気付いたら、美紀さんの膝の上で、寝入ってただよ。こんなに幸せに眠れたのは初めてだっただよ。おやすみ、美紀さん。


「すー、すー」

「ゆっくり眠ってね、真」

作者「真は普通に美紀さんのことすきなんだけど、全くそれに気付いてないってやつですな。徐々に解っていくと思うので、暖かく見守っててくだされ」

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