BBQが始まった!
今日は遂にBBQの日! 朝早くからだけど、昨日は仕事終わりにご飯食べたあと、すぐに寝たから体調もバッチリだよ。
外でやるから熱中症対策で帽子もかぶって、お気に入りの服を着て。
「亜美待て、その服と帽子は止めろ」
「ぶー」
「もう亜美の服と帽子は準備してあるから、早くこっちに着替えな」
もー、京平の意地悪。と、思いつつも京平が出してくれた服に着替えるんだけどさ。でも今日くらいは、魔女でも良いと思うんだけどなあ? 遊びなんだしね?
「TPOをわきまえな、亜美」
「可愛いは正義だと思って」
「どんな格好でも亜美は可愛いから、安心しな」
サラッとそういうこと言うんだから。私の顔は真っ赤になる。
そんな私を京平は無視して、着替え終わった私の手を握って、部屋を出ようとする。ちょま。まだ落ち着けてないよ!
「照れた亜美も可愛いよ」
「だー、そういうことじゃなくてさ」
私の反応もむなしく、私は真っ赤な顔のまま、部屋を出ることになった。
リビングではすでに信次とのばらが支度を終え、私達を待ってくれていた。
「亜美、顔赤いけど大丈夫?」
「私悪くないもん。京平のせいだもん」
「あ、なるほど。理解した」
「乙女ですわね。亜美ったら」
「可愛いよな」
未だに京平の可愛いは、聞きなれないんだよなあ。11年間言われなかった可愛いを、今は沢山言ってくれるから嬉しいなあ。
だったらもっと早く言ってくれてたら良かったのにね。おケチ。
「うるせ。照れ臭かったんだよ」
「あ、そうだったんだね」
◇
やがて真くんの車が時任家にやってきた。
「真くん、有難うね」
「いえいえだよ。兄ちゃんと美紀さんは、もう公園に送り届けただよ」
「あ、確かにこの車、8人乗りだもんね」
「うす」
あ、池林先生、自己紹介を省略する気だな? 初めましての信次がいるのになあ?
相変わらずシャイが激しすぎるなあ。
「あ、深川先生に時任さんと冴崎さん! 隣にいるのは信次くんだよね? 初めまして。小森沙羅です。あ、このうすって言った人は、池林省吾くんだよ」
あ、小森先生は、普通に自己紹介してくれたや。
池林先生の分まで、ご苦労様です。
「俺は東条司。美紀がいないとつまんねえよ」
「こんにちは。時任信次です。姉と兄が、いつもお世話になってます」
もー、東条くんはこんな時まで美紀さんのことを話すし、皆個性豊か過ぎるね。
「よいしょっと。材料は何買ったんだ?」
「野菜と肉と、魚と焼き鳥セットと、焼きそばと色々だよ」
「お、結構買ったねえ!」
「沢山いるからな、沢山買っただよ」
「うすっ」
「沢山食べようね、池林くん」
あ、池林先生、好きな食べ物があったのかな? なんだか嬉しそう。言葉数は少ないけど、表情は出やすいタイプなんだね。
「男性陣は、まず火起こしだな。一応着火剤持って来たから、すぐ火はつくだろうけどな」
「え、ライターでチャチャってつくんじゃあ?」
「バカ亜美。炭はそんな簡単にはいかねえよ」
「はは、確かに楽では無えな。炭はじっくり火がつくだよ」
え、知らなかった。そういえば私、BBQって小さい時に京平と信次と一回やったっきり、やってないや。火起こしって、そんなに大変だったんだね。
きっと、京平が大変過ぎたから2度目はなかったんだろうなあ。火起こしして、材料切って、ゴミの後始末して……負担が大き過ぎたよね、きっと。
「あ、違う違う。毎年公園の予約取りに失敗しただけ。その一度のBBQは、公園の予約、麻生がしてくれたからなんとかなったんだよ」
「そうだったんだ」
「亜美達が笑ってくれたし、何度でもやりたかったよ、俺は」
「久々に兄貴と亜美とBBQ出来るのは嬉しいよ、僕。のばらや皆もいるしね」
「ですわ」
そんなことを話しているうちに、目的地の公園へたどり着いた。公園には、BBQコンロが備わっていて、炭で火を起こしさえすれば、すぐにBBQが出来る場所だった。
ご丁寧に、野菜を切るキッチンもあるや。
私達は車から降りて、友と美紀さんがいるスペースに向かう。私達は、5番のコンロを使うらしい。
5番コンロまでいくと、既に友が慣れない手つきで火起こしをしていたのと、美紀さんが手慣れた手つきで野菜を切ってくれていた。
「深川先生、助けてください。火がつきません」
「ほら、着火剤。後は一緒にやろう。って、団扇すらなかったのか。そりゃ難しいわ」
「うす!」
「時任先輩と小森先生も、一種に野菜切りましょ!」
京平はいつも使っているうさぎちゃんの団扇を使いながら、手際よく火を起こしていく。私達は早く野菜を切らなきゃね。
「うほ、私はたまねぎ担当なの?」
「おまかせしまーす!」
「美紀、俺が変わるよ」
「司は火を起こしておいで」
あれ、東条くん、いつのまに?
それだけ美紀さんと一緒に居たかったのかな?
でも、男性陣は頑張って火起こししてくるのだよ。
東条くんはバツが悪そうに、コンロに走って行った。
さ、野菜切っていかなきゃね。
「私は焼きそば用のキャベツ切っていくわね。あ、焼きそばって他に何か入れたかしら? にんじんもあった気がしなくもないような」
「僕とのばらは、野菜と肉を串に刺していこうか」
「がんばりますわ!」
BBQは食べるまでの準備が忙しい。でも、こうやって皆で頑張るのも楽しいよね。
子供の時は見てることしか出来なかったけど、今は何でも出来るもんね。
小さかったとはいえ私10歳だったんだし、野菜切るのくらい手伝わせてくれても良かったのになあ、京平。
あ、段々と思い出して来たけど、何もやらせてくれなかったんだった。俺がやるから、亜美は食べてな、って、焼いたとうもろこし渡された!
それだけ、京平が両親が家から居なくなった私達を元気づけたかったんだろうな。昔から優しいな。京平の気持ちが温かったから、私達も笑えたんだよね。
「時任先輩、何泣いてるんですか?」
「あ、ごめん。初めてのBBQで、京平が優しかったなあ、って思い出し泣きしちゃった」
「優しいですもんね、深川先生」
「あれ、時任さん、たまねぎで泣いてたんじゃなかったんですね」
「うう、今来たよおお。めちゃ沁みるよおおお」
たまねぎと感極まっての涙が同時に出た私は、涙を拭きながら、続きのたまねぎを切り進めて行ったんだけど、涙が止まらなくって、途中から小森先生に変わって貰った。
信次とのばらも、いそいそと串打ちをしてくれたので、準備は着実に進んでいく。
「よし、火も安定してきたな。亜美ー、もう焼けるぞー」
「今持ってくね!」
「私も手伝います、時任先輩」
私と美紀さんは、切り終わった材料を運んでいく。信次とのばらも、串を打ち終わったみたいで、串を運んでくれてるや。
小森先生は、焼きそばの材料を、真くんが持って来たボウルにまとめてくれた。
「亜美、有難うございます。並べるのは僕がやりますね」
「ありゃ、煤だらけだね」
「火起こししてましたしね」
「ほら、美紀も寄越せよ」
「ほい、司」
私と美紀さんは友と東条くんに材料を渡した後、京平のところへいく。
可哀想に、汗びっしょりになってる。今は飲み物を飲みながら、涼んでるみたい。
「京平、汗拭きなよ」
私は持っていたハンカチで、京平の汗を拭う。
「ありがとな、亜美。もう大分暑くなって来たな。ああ、アイスコーヒーうめえ」
「京平は3月ごろから、夏用のパジャマに切り替えてたもんね」
「え、そうなんですか?」
「俺、暑がりだからさ。今年の夏もキツいだろうな」
京平は毎年夏になると、クーラーの効いた部屋で、若干ボーっとしながら過ごしてる。それだけ暑さに体力を持ってかれてしまうんだね。
そろそろ扇風機も出さなきゃだな。クーラーと扇風機を、ダブルで使ってるもんね。
私も同じ部屋なんだけど、私はまだ扇風機で充分だから、京平に包まれながら温まろうっと。
「亜美は寒がりだもんな」
「体温調節があんま上手くなくてさ」
「時任先輩この時期でも、カーディガン着てますもんね」
「あ、おらも着てるだよ」
「うわ、びびった。真かあ」
真くんも汗だくだ。火起こしが分かりそうなメンツは、京平と真くんくらいだったろうしなあ。
美紀さんが見かねてか、真くんの汗を拭いてるや。
ん、なんだか美紀さんも暑そう。だって顔が赤いもん。
「病院内は機械も多いから、冷房強めだもんな」
「腕まくりできるくれえ温かい深川先生が羨ましいだよ」
「回診や診察で体力使うからな。看護師ほどじゃねえけど」
そう言った京平は、ひとあくびすると。
「亜美、BBQは炭水化物が少なめだから、インスリン注意しろよ」
「今ちょうど注入しようとしてたけど、炭水化物は焼きそばだけだもんね」
「カーボカウントに乗っとると、BBQも結構ヘルシーだよな」
カーボカウントとは、食べ物の糖質、炭水化物量に応じて、インスリンの量を決めることで、インスリンポンプでは、糖質を入力することでインスリンが注入出来るのだ。
お肉と野菜は糖質がほぼないので、カロリーはあるものの、カーボカウント的にはヘルシーということになる。
そんなこともうとっくに解ってるのになあ。心配性だね、京平は。
「解ってんならいいけどさ」
「うす」
「あ、タレとお皿準備してくれたんだね、池林くん。はい、焼きそばの材料も揃いましたよ!」
池林先生と小森先生もやってきた。いよいよ、BBQの開始だね!
「お肉も野菜も焼けて来ましたよ!」
「沢山食べるぞー!」
「ビールも飲み物もあるだよ」
亜美「研修医メンバーと遊ぶのは初めてだね」
京平「そういえばそうだな」
沙羅「深川先生と遊べるの、楽しみです!」
省吾「うす」




