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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
生理的に無理な人
228/242

いつもありがとう(京平目線)

「ただいまー」

「むにゃむにゃ」

「お帰り。京平、亜美。って、やっぱり亜美は寝たのか」

「うん。1時間だけ寝かせて、一緒にご飯食べるよ」


 久々の残業だったし、そりゃ疲れるよな。俺も亜美と飯食べたいし、一緒に横になろうかな。


「じゃあ、俺も少し横になるよ。おやすみ、お父さん」

「おやすみ、2人とも」


 信次は緊急のバイトで、のばらは中番だから、皆22時くらいには揃うかな。

 正直俺も眠いし、亜美と一緒に眠るとするかな。

 俺は亜美を布団に下ろして布団を掛け、ごろんと亜美を抱きしめて横になる。

 うん、やっぱり落ち着くや。幸せって感じがする。いつもこうやって、亜美から幸せを貰っているよ。


 にしても、人数が足りないとは言え、うちの病院勤務時間が長いよなあ。

 今日みたいに残業になると、かなり帰りも遅くなっちまう。

 俺みたいに診察で座りっぱなしならまだしも、看護師の亜美は動き回ってるしな。

 亜美には無理してほしくないけど、頑張るって言い張るんだろうなあ。

 そんな亜美を心配しつつ、俺は亜美にキスをする。お疲れ様、亜美。

 ふわあ、眠気がそろそろ限界だな。おやすみ、亜美。一緒にゆっくり眠ろ。


 ◇


「あ、やば! 寝ちゃってた!」


 ふわあ、亜美が起きてきたか。まだアラームは鳴ってないから、そんなに慌てることないのにな。

 

「おはよ、亜美。まだ22時前だから大丈夫だよ」

「おはよ、京平。寝心地良すぎて、寝入っちゃったよ」

「それだけ疲れてたんだな、お疲れ様」


 寝起きでちょっと昂った俺は、思わず亜美にキスをする。

 自らの精欲に、ちょっと驚きながら。亜美を欲しがる自分に、納得しながら。


「これはお帰りのキスだから、次は楽しいキスな?」

「そんな京平が愛しいよ、私」


 寝る前にもキスした癖に、何度でもキスしたくなるよ。少し荒れる亜美の吐息が、俺の気持ちを昂らせるよ。

 にしても、楽しいキスって、何なんだ俺? まあ、いっか。

 亜美と一緒にいたら、何をしても楽しいからさ。

 幸せだな。愛しいな。ずっとこうしていたいな。

 亜美、いつもいつもありがとう。亜美と付き合ってから、毎日が楽しいんだよ。

 もう一回キスして……。


ーーぐきゅるるるるきゅるる。


「あ」


 俺の腹が盛大に鳴き出した。そういえば、夜ご飯まだだったな。


「京平、もしかしてご飯食べてないの?」

「うん。亜美と食べたかったから」

「じゃあ、一緒にご飯食べよ?」

「そうしよっか」


 亜美とキスし続けたかったけど、食欲には敵わねえな。俺達は、食卓に向かう。

 お父さんはもう寝たみたいだな。信次達は、まだ帰ってないか。

 それなら、と、俺は2人分のオムライスを温める。


「うひゃ、今日はオムライスか!」

「今日は亜美の好きなものにしたくてな」

「ありがとね、京平」


 寝言で返事してたのは、やっぱり無意識だったんだな。そんな亜美も、可愛くて仕方ないけどさ。

 やがてレンジも温め終わったよ、って教えてくれたから、俺はオムライスを取り出して運ぶ。


「ほい、お待たせ」

「うひょー! 美味しそう! いただきます!」

「いただきます」


 ふふ、亜美が美味しい顔してくれてるや。亜美の美味しい顔も、愛おしいな。


「香ばしいチキンライスと、ふんわり卵のコラボレーションが絶妙過ぎて、もう最高だよお!」

「おかわりは、バターライスとビーフシチューのオムライスにしてみたよ」

「流石京平、準備良いね!」


 この亜美の顔を見ながら、飯を食べたかったんだよな。だって、数百倍美味しく感じられるから。うん、美味え。

 本当に俺、改めて亜美に生かされてるよな。

 亜美がいるから、生きていけてるというか、笑えるというか。


「あ、今日はオムライスだったんだね。ただいま!」

「ただいま帰りましたわ」

「お、お帰り。信次にのばら」

「お帰り。のばらの分、温めるよ」

「あ、僕がやるよ、兄貴」


 オムライスを食べてたら、信次とのばらも帰って来た。2人ともお疲れ様。

 信次はのばらの分のオムライスを温めながら、話しかける。


「今日は大変だったらしいね。のばらは指導係だからなんとか帰れたけど、中番遅番も、残業になるっぽいよ」

「今日はオペ看護師の指導係でしたわ」

「お。兼任なんだね」

「のばらはどっちも出来るもんな」

「えっへんですわ!」


 最近中番が多いのは信次とご飯食べたり、一緒に帰りたいからだと思ってたけど、そんな事情もあったんだな。

 まあ、のばらのことだから、中番がいいのですわ! と言って、収まるとこに収まった可能性も否定出来ないな。


「にしても、亜美21時まで仕事だったんでしょ? 流石に長過ぎだよね」

「そうそう。疲れ過ぎてちょっと寝ちゃったよ。あ、オムライスおかわり」

「もっと看護師が増えたらいいんだけどね。オッケー、温めるね」

「しまったな。今日は医師会合に出て、勤務時間について意見すべきだったな。いいや、今から院長に相談してみよう」


 五十嵐病院は、早番は7時から19時まで、遅番は17時から5時までとかなり長い。唯一残業が多くなりすぎないよう、中番だけが12時から22時までと、8時間勤務になっている。

 2時間休憩があるとは言え、早番遅番は10時間勤務。

 10時間勤務なら、もう俺は慣れたし、たまにある残業も苦ではないけど、看護師の亜美は動き回るし、しんどいよな。


「8時間が普通なんだし、診察のない看護師だけでもそれで回せたらいいんだけどな」

「病院で働いている以上は、仕方ない気もするけどね」

「医者は兎も角、亜美達看護師は激務なんだから、無理して欲しくないよ」

「全然大丈夫だよ! 寧ろ京平のが無理してるじゃん」

「いや、そんなことは……」


 ないこともないか。事実、俺は亜美に頼れているから、最後まで仕事出来てるようなもんだしな。

 亜美が居なかったら、精神的にも肉体的にも、すぐに限界が来て、ぶっ倒れていてもおかしくない。

 若い時と、アラフォーの今は、同じじゃないよな。


「でも、亜美が居るからなんとかなるよ」

「無理しないでよ?」


 心配しすぎだぞ、亜美。俺は亜美の頭を撫でる。亜美、いつもありがとな。


「はい。のばら、亜美、お待たせ。確かに兄貴は、無茶ばっかするからなあ」

「この前は、明らかに帰るべきでしたわ。いただきますわ」

「んー、おかわりも美味しい」

「でも無事、診察できたぞ?」

「亜美の力を借りまくって、でしょ?」


 むう、でも確かにそうだな。亜美が来てくれなかったら、眠れなかったし、気持ち悪いのも治らなかったからな。

 患者様の為に頑張りたくて、だったけど、結局亜美に迷惑かけただけじゃねえか。


「ごめんな、亜美」

「ううん、私が京平を助けたかったんだから、気にしないで」

「診察したかったから、助かったよ。ありがとな」


 ありがたいことに、俺の診察を受けたくて五十嵐病院を選んでくれた人も多くいらっしゃるから、その人達に応えたいんだよな。

 異能も糖尿病も、専門医は俺だけだしな。


「ごちそうさま。亜美、疲れたし風呂は明日にして、もう寝ようぜ」

「私もごちそうさま。うん。私は明日中番だし、京平は休みだし、久しぶりに2人でゆっくり眠れるね」

「そうと決まれば、さっさと歯を磨くか」


 ◇


「おやすみ。信次、のばら」

「ふわあ。おやすみ2人とも」

「亜美眠そうだね? おやすみ」

「おやすみなさいませですわ」


 部屋に入るなり、すぐに着替えて2人で布団にダイブする。あ、亜美はもう寝ている。しかも、幸せそうな顔をして。

 お腹いっぱいで眠れるのって、気持ちいいもんな。その幸せに俺も含まれてたら嬉しいよ。

 俺は亜美に布団を掛けた後抱きしめて、うつらうつらと眠りにつく。やっぱり亜美を抱きしめてると、安心出来るんだ。眠れるんだ。

 やっぱり俺、亜美と眠る時間が1番好きだな。幸せな気持ちになれるから。


「おやすみ、亜美」


 愛してるよ。亜美。おやすみ。今日も幸せに眠れそうだよ。

 温かい亜美を抱きしめながら、思った。

京平「亜美の寝顔に癒されるよ。おやすみ」

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