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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
世界一簡単な愛してる
22/220

安心出来る場所

「それじゃあ、2人とも楽しんでいらしてね」

「いってらっしゃーい」


 結局のばらは、10時からの信次と海里くんの勉強会のサポートをする事になり、我が家に残った。

 のばらは飛び級こそしてないが、聖カナリア高校というエリートお嬢様学校卒なので、頭はかなり良い。その為、信次もサポートをお願いしたみたい。海里くんヤバいらしいしね。


 京平も、部屋に閉じ込められている間に着替えたようだけど、なんかビシっと決めちゃってんなあ。

 チェスターコートにニット、スラっとしたパンツも凄く似合ってる。アクセントのグレーのマフラーも良いね。ああ、写真撮りたくなっちゃうよ。


 そもそも遊びに行く事自体かなり久しぶりだ。

 ずっと休みも合わなかったし、休みが合っても大体京平は寝ているし、無理はさせたくないし、で。

 勇気を出して、遊びに誘えて本当に良かった。


「さてと、まずは何処に行こっかな?」

「亜美、リードするんじゃなかったのか? まだ決めてないのか」

「だって久しぶりだから、行きたいとこ沢山あるんだもん」


 そう、私はリードすると言っといて、未だにいく場所を決めかねていた。

 カラオケにも行きたいし、ゲーセンも行きたいし、ボウリングも良いなあ。なんて。

 夜は夜景の綺麗なとこに行って、告白出来たらなあとは思っているけど。


「取り敢えず、区内に出ないとな。駅まで行こうか」

「そうだね、ここら辺じゃあんまり遊び場ないしね」


 駅は我が家から徒歩15分くらい。コンビニと大体同じくらいだね。

 でも、今日も冷えるなあ。一応のばらから借りた服の上に、白いロングコートは着て来たのだけど、それでも寒い季節である。お手手はポッケにインしてる。


「亜美、大丈夫か? 疲れてるように見えるけど?」


 何てこったい、のばらにメイクして貰って、隈は何とか隠したのに、顔に出ちゃったかな?

 京平には、一睡も出来ない事言ってないしなあ。

 でも、私も言い返しちゃうもんね。


「そういう京平は隈凄いよ? 私は寒いだけだから大丈夫だよ」

「なんだ、寒いのか。右手出してみ?」

「え、右手?」


 なんかくれるのかな? と思って、私は右手をポッケから出した。


「ほら、こうすりゃもっとあったかいだろ?」

「え」


 京平は私の手の指の間に指を入れて握ってくれたかと思うと、その手をそのまま京平はコートのポッケにいれた。

 いつもとは何か違う。これは恋人繋ぎだ。でも、これもいつもの妹スキンシップなのかな?

 そうだとしても、私の顔は瞬く間に熱くなっていく。


「ありがとね、京平」

「なんなら俺も寒かったしな」


 京平が優しく笑った。この笑顔に何度癒されれば気が済むんだ、私は。本当にいつも安心させてくれるのは京平なんだよな。


 あれ、緊張が解けたからかなあ。安心したからかなあ。何だか、少し眠くなって来たかも。

 電車に乗れば区内までは30分だから、その辺りで眠れたらいいかな?

 折角のデートなのに眠くなるなんて、私のバカバカ。


 と、チラリと京平を見てみたんだけど、あれ? 京平も眠そうだ。

 京平も安心したのかな。だとしたら嬉しいな。

 これは私が起きてなきゃだ。京平は今週の激務後だから、無茶苦茶眠いはずだしね。


 と、2人で眠そうな顔をしながら駅に着いた。

 こんなに眠そうな顔して歩いてる2人とか、中々居ないよなあ。


「区内は300円か。亜美、シイカ持ってきたか?」

「うん。持ってるよ。チャージもあるよ」

「俺チャージがないなあ。ちょっとチャージするから待っててな」


 待っててな。と言ってる癖に、京平が手を離す事は無かった。寧ろ、力もさっきより入ってるくらい。チャージしづらいだろうに。

 私から手を離そうかとも思ったんだけど、やっぱり離したくないんだよな。つい、手を握り返した。


「お待たせ。じゃ、行こっか」


 こうして、駅に着いても、改札を通り抜ける時も、私達は手を繋いでいた。

 どんな風に見られてるんだろうなあ。


 電車は朝早い事もあって、難なく座る事が出来た。私も京平も、混み合ってる時は座らないタイプなので、眠たい今は地味にありがたい。


 こんな感じで座っていると、少し寝息が聞こえてきた。ああ、やっぱり。京平は寝てしまったようだ。でも手は離さないって、どう言うこっちゃ。

 京平の身体は電車が揺れるたびに少しずつ動いていき、気付いたら、私に寄り掛かっている。

 お疲れ様だったね、京平。少しの時間だけど、安心して眠れてるといいな。


 あ、そうだ。どうせ私達睡眠不足なんだから、この後は漫画喫茶に行こうかな。

 少し広い部屋なら2人揃って休めるし、そんな部屋が無くても、京平だけは寝かせてあげられるかも。

 よし、やっとプランがひとつ決まったぞ。

 と、思ったら、何か眠気がさっきより増してきたぞ。ダメだ、凄く眠いや。少しだけ、私も寝よっと。


 ◇


「亜美、亜美、次の駅で区内だぞ」

「ん、うーん。おはよ、京平」


 あ、気付いたら私、京平に寄り掛かって寝てるじゃん。こんなはずでは……バカバカバカ。


「ごめん、京平」


 私は普通に座り直す。


「謝んなよ。俺も今起きたとこだし。ありがとな、亜美」


 お礼を言われる事なんて、何も出来てないのにな、私。

 こうやって元気付けてくれるのも、いつも京平だったね。


「ただ、俺こそごめん。正直、結構眠いかも。この後、漫画喫茶でもいいか?」

「うん、私もそのつもりだったから。ゆっくり休もうね」


 お互い、考える事も一緒なんだね。なんだかほっこりするね。


「あ、着いた。降りるぞ、亜美」

「うわっと。京平早いよ」

「ごめんな、ゆっくり歩くな」


 私達はゆっくりと、駅近の漫画喫茶まで向かった。この時間なら、よっぽどの事がない限りは空いてるはず。

 後は広い部屋があれば、尚良しなんだけどなあ。と、思いながら歩いていると、漫画喫茶に着いた。


「いらっしゃいませー。お二人様ですか?」

「はい、大人2名で、出来れば少し広い部屋って空いてますか?」


 私がそういうと、店員さんが……。


「ちょうどカップルシートが空いてますので、そちらにお通ししますね。14番の席へどうぞ」

「は、はひ」


 カップル、ではないのだけど、いいのかなあ。でも私も出来れば寝たい。ので、それは黙っといた。でも、カップルに見えたのだとしたら、嬉しいな。ちょっと申し訳ない気持ちもあるけれど。


「ふー、やっと着いたな。亜美といると安心するから、眠たくなっちゃうんだよな。すまんな」

「や、私も京平となら安心できるしね」


 お互い安心出来ているんだね。なんだか嬉しいな。


「あ、亜美のコート貸して」

「え、良いけどどうするの?」

「布団にすんの」

「はい、どうぞ。それじゃ、お休み。京平」


 と、声を掛けたら、身体にふぁさっと何かが掛かった。


「亜美には俺のコート貸してやる。風邪引いちゃうし」

「あ、ありがと。京平」


 京平のコート、京平の匂いがする。凄く安心するなあ。


「こうやって亜美と寝るの久しぶりだな」

「部屋分ける前以来だもんね」

「昔はこうやって、亜美を寝かしつけていたんだぞ」


 と、京平がいうと、急に抱きしめてくる。


「寧ろ俺が安心してるかも。じゃ、お休み」


 抱きしめられたままの私は、心臓がバクバクして止まらなかった。

 確かに昔はこうやって寝た事もあったけど、今はこんな事されてないから慣れないよ。なんだかんだで嬉しいんだけどさ。

 だから、抱き返しといた。

 

 そんな状態で、早くも京平は寝息を立てている。私も、京平の温もりにすごく安心したから寝よっと。

 

 ◇


 そして、私は夢をみた。私が京平を愛するキッカケになった、あの日の夢を。

作者「デート編開始ですな」

亜美「京平がいつもとなんか違う気がする」

のばら「メイク効果がでたのですわ」


作者「一方で、のばらも信次と仲良くなったね」

信次「いやあ、海里がやばすぎて」

海里「数三やぶぇ!」

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